Caravanとまた新しい旅に出よう。【横山シンスケのライブオアダイ】連載:第2回

コラム | 2017.09.05 17:00

Caravan

僕には自転車で小旅行をするという趣味がある。
簡単な荷物だけリュックにつめ、ロードバイクでその日の内に行けそうな場所を決めて向かい、辿りついた場所で泊まる場所を探して泊まり、翌日も適当に場所を決め、自転車で行けるとこまで行き、そして夕方になると輪行(自転車をたたんで専用の袋に入れ電車に乗せる)で、家に帰るという独自な自転車小旅行で、いまだに大好きで続けている。
もう何年か前、そんな小旅行に慣れてきた頃に、僕はミニスピーカーを自転車に取り付け、スマホをラジオとつなげて、ミニスピーカーから流れるFMラジオの音楽とかを聴きながら自転車に乗るようになった。
それで、ある夏にまた自転車小旅行に出かけ、海沿いを気持ちよく走ってた時、ラジオからある曲が流れ始めた。

♪~調子はどうだい?友よ 愛すべきロクデナシよ~
 ~この世界は まるで映画の様な ラストシーンばかりじゃないけど~♪

「いい曲だなあ・・・」。
開放的な気分で海沿いを自転車で走る自分に、その曲の歌声とメロディと歌詞はあまりにもジャストフィットしてしまった。
曲が終わる前に僕は自転車を止め、あわててメモの用意をして、まだ紹介されてなかったその曲名とアーティスト名をメモる準備をした。
そして、曲の終わりにDJの女性は「Caravanで“Trippin’ Life”でした。」と言った。
「キャラバン?、バンドかなあ?、ソロアーティストかなあ?」。
僕は色々想像しながら、そのとっても旅っぽいアーティスト名と曲名をメモった。

その年の冬。また小旅行に出かけた時、着いた場所でいつものように適当に宿を探して、なぜだったか宿泊者達の交流スペースのある安いホステルに泊まる事になった。
僕は一人旅が大好きなので、そんな知らない宿泊者達同士で交流するような場所が大の苦手なのだが、夜になぜだかそのホステルの交流場所に集まらなければならない事情があった。
そして、そこに集まった宿泊者数人と苦手ながらおしゃべりした後に、あるネオヒッピーという感じの無精ひげのまだ若めの男性宿泊客が部屋からギターを持ってきて、「ではせっかくなんで1曲ご披露を・・・」とか言い出した。
「うわ、めんどくせえ、これオレが一番苦手な流れだ。」と、その場をこっそり抜け出そうとした時に、そのネオヒッピーの男は歌い出した。

♪~ここでないという何処かへ 行きたがる人の群れを抜け 僕はここにいようと決めた~
 ~さあ行こう 誰も知らない場所まで 歌うよ 声の限り 君に届けって祈ってる~♪

「うっ・・・いい曲だなあ・・・」。
そのネオヒッピーが思いのほか歌とギターが凄く上手かったのもあったが、その曲がめちゃくちゃ心に響き、僕は感動してしまった。
歌い終わった後に、そのネオヒッピーは「Caravanという人の“STAY”という曲でした」と唄ったその曲を紹介した。
またCaravanという名前が旅先で偶然出てきて、僕は驚いたのだった。

Caravanと言えば「旅」という人は、本当に多い。
僕もこのように、旅先でCaravanの曲に偶然触れた2回の実体験が素晴らしかった為、それ以降、小旅行にCaravanを必ず持っていくようになった。
実際、僕のよく見る旅や音楽のメディアや、僕のまわりの情報だけで集約すると、「聴くと旅に出たくなる」「旅先で聴きたい」というアーティストでは、Caravanはダントツ一位人気のアーティストになるのではないかと思う。
僕の知人のヒマさえあれば国内外で旅ばかりしている男性は「Caravanは体の一部みたいなもん」とまで言っていた。(でもそう言われるのってアーティスト冥利に尽きますよね)。
Caravan自身が、幼少を海外で育ち、その後も世界中を旅してまわっている事や、旅しながらのライブが多い事。
そして何より旅がテーマの曲がとても多い事が、その一番の理由なのだろうが、僕はCaravanのその楽曲の全てに、「旅で聴きたくなるマジック」のような自然なギミックが入ってると、いつも感じる。
Caravanの楽曲には、速すぎる曲も遅すぎる曲もない。全曲が一貫して「誰が聴いても気持ちのいいテンポとリズム」だ。
コード展開も海外の楽曲のように少なく、最小限のコード展開の中で、音楽の気持ちよさが追求されている。
だからきっと日本語の分からない外国の人達がCaravanの曲を聴いても、その楽曲の「気持ちよさ」のようなものはきっと伝わるような気がする。

そして歌詞もシンプルな言葉のみで、誰しもが共感できるようなフレーズや、メッセージで構成される事が多い。
でもそんなふうに、シンプルな歌詞と曲に、説得力とリアリティを持たせ、沢山の人の心をひきつけるというパフォーマンスは、当然ミュージシャンにとっては最も難しい事で、多くのアーティスト達がそれを実現させたくて、みんな日々悪戦苦闘しているのだが、Caravanは昔からいつも、それを自然体でさらりと、やれている印象がある。
僕らはロックに自由や夢を求めるが、現実はまったくもって自由ではないし、叶わない夢だらけで、僕らは疲れ、色んな大事な事を忘れていってしまう。
でも、Caravanがあの歌声で“ 僕は飛べる 何処まででも ”とか、“ もう二度と消えない炎を燃やそう ”と歌うのを聴いていると、その夢想家の絵空事のような歌詞が、不思議な説得力とリアリティを持ち、自然と自分の中に入ってくる。
そして僕らは今も、自由な鳥のように空を飛ぶ事ができるし、決して消えない炎がある、という大切な事を思い出し、気付く事ができるのだ。

■Caravan /『サンティアゴの道』PV

10月にCaravanの事務所であるHARVEST(ハーベスト)の10周年を記念したライブイベントが開催される。
自分の事務所の10周年を記念したライブをやるというのもCaravanらしいなあ、と笑ってしまったんだが、6年前にメジャーレーベルを離れ、今日まで自分たちだけで納得のできる充実したアーティスト活動をやってこれた事が、きっと素直にうれしかったんだと思う。
何とかなるだろうと思って独立しながらも、不安だらけだったという事は、Caravanやスタッフの口から何度か語られていた。
だから、そんな自由な活動が続けていけてる事を、それを支えてくれてる昔からのファン、そしてネットで楽曲配信をしないという、今どき信じられないインディペンデントな活動にも関わらず、じわじわと増え続けている新しいファン(そんな活動が支持されてるのかも)と、みんなで一緒に、お祝いしたいんだと思う。

■Caravan / Homesick travelers Special Live 2015 Document

Caravanのライブは、いつでもどんなとここでも、そこにいるすべての人の心をやさしくも鷲づかみにしてしまい、魔法のような音楽体験をさせてくれる。そして、そこにいるみんなを「ああ、やはり音楽はいいなあ」とか、「ああ、旅に出たいなあ」という、シンプルな気分にさせてくれる。
この10月のCaravanの記念すべきライブはきっと素晴らしいライブになるだろう。
僕もそれまでに、またCaravanを持って、新しい旅に出ておこう。

HARVEST 10th Anniversary Special Live ~The Harvest Time~

10月15日(日) 昭和女子大学人見記念講堂
16:30 開場 / 17:30 開演
出演:Caravan(vo&gt) 小林洋太(gt) / 高桑 圭 / Curly Giraffe(ba) 椎野恭一(dr) / 堀江博久(key)

チケット NOW ON SALE!

★HARVEST 10th Anniversaryメモリアルチケット プレゼント!
※事前に発券したチケットとメモリアルチケットを当日会場にてお引き換えいたします。
※引換時間は開場1時間前より予定しております。
※メモリアルチケットの引換えは当日のみとなります。

関連リンク

RELEASE

ハーベスト10周年記念アルバム
Caravan 「The Harvest Time」

★ハーベスト10周年記念オリジナルフルアルバム「The Harvest Time」会場にて特別先行販売!

横山シンスケ

渋谷のイベントライブハウス「東京カルチャーカルチャー」店長・プロデューサー。その前10年くらい新宿ロフトプラスワンのプロデューサーや店長。司会やライターもやってます。Caravanが言ってた「旅の一番いいとこは旅の最中でなく、帰ってきたマイホームが新鮮に感じられる瞬間」という発言には物凄く共感しました。

横山シンスケ ツイッター:https://twitter.com/shinsuke4586
東京カルチャーカルチャー:http://tcc.nifty.com/