HONEBONE、アルバムを携え全国6カ所を巡るツアーがスタート!初日のバンド編成ライブをレポート

ライブレポート | 2026.07.28 20:30

HONEBONE TOUR 2026 「トゥーフェイス」~顔だけでも見にこいや~
2026年7月20日(月・祝)東京・Shibuya WWW
【出演】HONEBONE / Key.野口紗依子 / Ba.木下きえ / Dr.脇山広介(tobaccojuice) / Gt.スーパーさったん(IRIS MONDO)

本文では曲名、演出の記載がございます。
ネタバレを気にされる方はライブ参加後にお読みください。

人間は楽しいことがあると、自然と笑顔になり、悲しいことがあると、つい涙を流してしまう生き物である。誰かと一緒に笑うことで、楽しさはさらに大きな喜びとなり、誰かと一緒に涙を流すことで、悲しみは少しだけ温かいものへと変化する。HONEBONEのライブにもこのことが当てはまる。彼らの音楽には、喜怒哀楽、さまざまな感情を共有・増幅・解放してくれる機能が備わっていて、その機能はライブで全面的に発揮されるからだ。

アルバムツアー『HONEBONE TOUR 2026 「トゥーフェイス」~顔だけでも見にこいや~』の初日、東京・Shibuya WWW公演は、全人類に「見にこいや」と言いたくなる、素晴らしいステージとなった。今回のツアーは、初日の東京公演と最終日の大阪公演がバンド編成で、それ以外は2人編成で行われる。

この日はバンドアクトだが、オープニングナンバーの「なあ兄弟」は、川口とエミリ、2人だけでの演奏で始まった。ビートたけしの「浅草キッド」が流れる中、2人が登場。川口がアコースティックギターでコードを1つ鳴らし、続いてエミリが歌い始めた。語りかけるような温かな歌声とぬくもりのあるギターが染みてきた。<おんなじだね>というフレーズで川口のハモりが加わることで、歌詞の意味がさらに際立っていく。耳をそばだてて聴いていると、2人の歌と演奏とがすぐそばで鳴っているようだ。パーソナルな歌と演奏なのだが、2人だけの閉鎖的な空間ではなく、会場内全体に開かれている。体温まで伝わってくるようなパフォーマンスによって、会場全体がHONEBONEの世界へと引き込まれていった。

ホラー映画のサウンドトラックにありそうな不気味な音色(レスリースピーカーから流れるハモンドオルガンのような音)のSEが流れて、ステージ背後の白い幕にツアータイトルとメンバーのクレジットが映し出された後に披露されたのは、最新アルバム『トゥーフェイス』1曲目の「人間はつらいよ」だった。川口とエミリに加えて、野口紗依子(Key)、木下きえ(Ba)、脇山広介(Dr)、スーパーさったん(Gt)という6人編成だ。4人のメンバーが加わり、音数が増えることによって、演奏に彩りと厚みが生まれ、野口のピアニカも効果的だった。おどろおどろしいムードの漂うアンサンブルの中、エミリの物憂げな歌声が、人間という生き物の背負う悲しき業を浮き彫りにしていった。

“つらさ”や“しんどさ”をやり過ごすためには、ビールやスイーツといった物理的なエネルギー補給が有効だ。「とりあえず、生!」が始まると、会場内にお祭りのようなにぎやかなムードが漂った。エミリの「とりあえず、生!」というコールに、観客も「生!」とレスポンス。川口もノリノリで踊りながらギターを弾き、ハモっていた。飲んでいないにもかかわらず、飲んだかのような陽気かつゴキゲンな空気が充満した。

エミリと川口のかけ合い漫才のような楽しいMCに続いて、最新アルバム『トゥーフェイス』からの曲が数多く演奏された。「インドア・ブギ」は、外連味たっぷりのエミリの歌声と味わいのあるコーラス(バンドメンバーも参加)が楽しかった。川口のギターのカッティングで始まった「マイライフ、マイライブ」は、バンドのグルーヴィーな演奏に乗って、エミリの伸びやかな歌声が真っ直ぐ届いてきた。エミリの歌声は繊細さと力強さを兼ね備えていて、表情豊かだ。野口の情感漂うキーボードから始まった「最悪」では、エミリの愁いを帯びた歌声に聴き入った。映画のようなストーリー性のある歌の世界を、バンドの丹念な演奏が立体的に浮かび上がらせていく。最後の<バイバイ>というフレーズが深い余韻を残した。

「『トゥーフェイス』は2面性をテーマにしたアルバムです。ふざけることも大好きですが、悲しいこと、寂しいことにフォーカスしてしまう自分もいるので、両方とも出すことに決めました。今回のアルバムは、自分の中では別れもテーマになっています。このテーマは、これからも歌っていこうと思います。みんなもきっと経験したこと、あるいはこれから経験することだからです」

そんなエミリのMCに続いて、別れをテーマとした歌が3曲演奏された。「さよならといっしょに」ではエミリが時折、目をつぶって歌っていた。その歌声を、川口のギターとバンドサウンドが優しく包み込んでいた。歌とピアノで始まったのは「Love is not enough」だ。ドラムの脇山はマレットでの演奏。ファルセット混じりのエミリの歌声は、祈りを捧げるように響いた。悲しみの中だからこそ、生まれる美しさがある。「Pink Sky」では、紫とピンクの照明に照らされながら歌うエミリの切実な歌声が、悲しくも美しかった。やがてエミリの歌声が、夜明けの空が刻一刻その表情を変えるように力強さを増して、バンドの演奏も白熱。川口が叫びながら、ギターをかきむしっていた。悲しみや喪失感を生命エネルギーに変換していくようなエモーショナルなバンドの演奏にも、胸を揺さぶられた。エミリと川口はもちろん、野口、木下、脇山、スーパーさったんも歌心あふれるプレイを展開していた。この3曲のパートでは、エミリがたびたび、視線と手を上に向けて歌っていた。渋谷WWWは地下にあるライブハウスだが、エミリが上を見上げて歌う姿を見ていると、その頭上に薄紅色の空が広がっているかのようだった。

「生きていくからには、悲しみの先にある楽しさを思って生きていきたいし、自分を思ってくれている人を思って生きていきたいです。ここに来ているみなさんを思って歌っています」というエミリの言葉があり、「人はいつか」が演奏された。“サヨナラ”がテーマの歌でありながら、不思議な明るさと温かさがあって、エミリの朗らかな歌声、川口の優しいコーラス、なごやかなバンドサウンドが体の中に沈殿している心の澱を融解していくようだった。「あと何回」では、エミリの歌声がどこまでも遠く、そして深く届いてきた。これはラブソングであると同時に、愛する覚悟を胸に刻む歌でもあるのだろう。

後半は一気に畳みかけていく展開となった。「生きていれば、苦しい出来事、悲しい出来事、痛かった出来事があると思います。痛かった出来事を思い出して聞いてください」というエミリの言葉に続いて始まったのは「いてえじゃねえか」だ。ソリッドなバンドの演奏に乗って、エミリと川口がステップを踏みながら、歌い、演奏し、観客はハンドクラップで参加。会場も一体となって、「いてえ、いてえ、いてえ」とシャウト。「ストレス、溜まっているんだろう。声を出して置いていこう」とエミリがあおると、「ウオーッ」と観客が応えていた。こんなにも楽しそうに「いてえ」と叫べるところにも、HONEBONEのライブの魅力がある。

さらに読売ジャイアンツの丸佳浩選手の登場曲にもなっている「夜をこえて」へ。エミリの歌、川口のギター、バンドの演奏、観客のハンドクラップが一体となって夜を駆け抜けていった。途中で一瞬、エミリの歌と川口のギターだけになる場面があった。バンドアクトであるからこその緩急の落差が気持ちよかった。会場内には疾走感と爽快感、そして開放感が充満した。川口のファンキーなギターのカッティングで始まったのは「地獄に落ちようか」だ。ストロボライトが激しく点滅を繰り返す中でのスリリングな歌とダイナミックな演奏が、観客を地獄ではなく、天国へと誘っていく。川口がギターを高く掲げてフィニッシュすると、大きな拍手と歓声が起こった。

「ここにいるみんなに」という言葉に続いて披露されたのは「生きるの疲れた」。愚痴をつぶやくようなウイスパーボイスで始まり、川口のアルペジオが歌声に寄り添うように響いた。「人間はつらいよ」にも通じる、生きづらい時代をサバイブしている主人公の胸の内が、率直な歌声とヒューマンな演奏によってリアルに伝わってきた。「大脱走」では、<逃げろ、逃げろ>という観客とのコール&レスポンスが起こり、多くの拳が突き出された。エミリと川口は、ステージ上に設置された台の上に立ち、観客をあおっていた。HONEBONEの音楽によって、会場内の全員がしんどい世界からの脱出を鮮やかに果たしていく、見事なエンディングだった。

鳴り止まない拍手の中、HONEBONEの2人とバンドメンバーが再登場。アンコールでは不穏な空気の漂う「ドクター」が演奏された。エミリのニヒルでクールな歌声、川口とスーパーさったんのブルージーなギターに導かれて、観客がアンダーグラウンドな世界へと引き込まれていった。この意外性のある展開は、オカルト映画のエンディングを思わせた。ハッピーエンドだと思ってホッとしたところで、その安心感を覆すバッドエンドになる流れを連想したからだ。「ここでこの曲が来るの、かっこよくない?」とエミリが言うと、「言わないほうがかっこいいよ」と川口。そんなデコボコなMCもHONEBONEのライブの楽しさのひとつだ。

アンコール最後の曲はカントリーテイストの漂う旅立ちの歌、「サラバ!」だった。鮮度の高い歌と開放感あふれる演奏に、客席のハンドクラップが加わって、みずみずしいエネルギーが渦巻いた。ツアーの初日は、新たな旅の第一歩でもある。コンサートの最後に、新たな始まりのエネルギーをはらんだ歌が演奏されるところは、HONEBONEならでは。「良い旅(ツアー)を」と声をかけたくなった。

ツアーとアルバムのタイトルは「トゥーフェイス」、二面性という意味だが、この日のステージからは、HONEBONEの多面的な魅力が伝わってきた。バンド編成で多彩なパフォーマンスが展開されたが、そのすべてが人間味にあふれていた。最新アルバム『トゥーフェイス』はバンドサウンドを想定して作られた楽曲も多く収録されているので、その歌の世界がライブという場で立体的に展開される楽しさも堪能した。デュオのステージもいいけれど、バンド編成のステージもいい。彼らのコンサートには、さまざまな楽しみ方のできる奥の深さと幅の広さがある。

改めて感じたのは、今の時代にHONEBONEの音楽があって良かったということだ。現実の世界には、しんどいこと、つらいことがたくさんある。逃げても逃げても、しんどいことにつかまり、がんじがらめになってしまう危険性もある。HONEBONEの音楽は、そんな時の強い味方である。彼らのライブに行けば、もれなく音楽の処方箋を受け取れるだろう。ツアーは9月13日まで続いている。さらに、11月8日には、ヒューリックホール東京で、HONEBONE史上最大のワンマンライブも予定されている。顔だけでも見にいこうや。

SET LIST

01. なあ兄弟
02. 人間はつらいよ
03. とりあえず、生!
04. インドア・ブギ
05. マイライフ、マイライブ
06. 最悪
07. さよならといっしょに
08. Love is not enough
09. Pink Sky
10. 人はいつか
11. あと何回
12. いてえじゃねえか
13. 夜をこえて
14. 地獄に落ちようか
15. 生きるの疲れた
16. 大脱走

ENCORE
17. ドクター
18. サラバ!

公演情報

DISK GARAGE公演

HONEBONE TOUR 2026 "トゥーフェイス" 顔だけでも見にこいや

2026年7月20日(月・祝)東京・Shibuya WWW
2026年8月1日(土)仙台・誰も知らない劇場
2026年8月8日(土)福岡・秘密
2026年8月22日(土)札幌・musica hall cafe
2026年8月29日(土)名古屋・ハートランド
2026年9月13日(日)大阪・246ライブハウスGABU

【出演】HONEBONE(東京・大阪:バンドアクト)
【東京・大阪】Key:野口紗依子 / Ba:木下きえ / Dr:脇山広介(tobaccojuice) / Gt:スーパーさったん(IRIS MONDO)

チケット発売中

HONEBONE史上最大のワンマンライブ

2026年11月8日(日)ヒューリックホール東京(有楽町)

チケット発売中

  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 撮影

    小野洋平

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  • DI:GA ONLINE 10周年

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