HYDE、オーケストラを携え歌と真摯に向き合った“JEKYLL”ツアー国内公演がフィナーレ。最終日をレポート

ライブレポート | 2026.04.28 19:00

HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL
2026年4月1日(水)ぴあアリーナMM
トップ画像撮影:田中和子

激しいHYDEから静かなモードのHYDEへとシフトし、弦楽器、管楽器、パーカッション、バンド、コーラスを含め、総勢22名からなる“JEKYLLオーケストラ”を従えて、今年1月、極寒の冬の季節に始まったHYDEのソロコンサートツアー<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL>が、3月31日、4月1日、神奈川・ぴあアリーナMM公演で、桜が咲きほこる春の訪れとともに一区切りを迎えた。『ROENTGEN』の続編となるニューアルバム『JEKYLL』の世界観を各地に届けてきた本ツアーのなかから、ここでは国内公演のフィナーレを飾った4月1日のチケット完売公演のレポートをお届けする。

厳かで、静寂な空間だからこそ聞こえ始める音がある、浮かんでくる情景がある……。柔らかな光に包まれた真っ白な雪景色、やがてそれは静かに波打つ真っ暗な海となり、光がまったく届かない海底まで落ちていくと、そこには漆黒の暗闇が広がっている。そこから這い上がるように出口を探して激しくもがき、最後は夜空を照らす星に自分を重ね、降り注ぐ真っ白い羽の群れにくるまれて、この世ではない別世界へと飛び立っていく。そんな、重厚な映画を1本見終わったような達成感だ。<HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL>、HYDEとJEKYLLオーケストラがこのツアーを通して構築してきた集大成は、まさに国宝級ともいえる圧倒的な完成度へと到達していたのだった。

ステージを覆っていた緞帳が静かにあがり、コンサートは3月11日に配信リリースしたニューアルバム『JEKYLL』のオープニングナンバー「DIE HAPPILY」で幕を開ける。ロングコートの裾を優雅に揺らしながら、甘く柔らかな歌声を届けるHYDEはどこか気高く、気品が溢れている。深く被った帽子から見える眼差しは、激しいHYDEのときのオーディエンスを威嚇するような視線とは異なり、アンニュイな雰囲気。間奏でピアノソロが始まると、スタインウェイ&サンズのピアノを弾いていた本ツアーのバンマスでもあるhicoに、敬意を込めて、そっと手を向けるHYDE。その所作までもがなめらかで、指が空気を撫でる音まで聞こえてきそうだ。続けて、TOMORROW X TOGETHERへの楽曲提供で話題となった「SSS」へ。前半からウッドベースが曲をグルーヴさせ、さらに途中からそこにホーンが加わり、曲をスウィングさせていくアレンジが、曲のなまめかしさを際立たせる。HYDEの歌声がどんどん色気を匂い立たせていったところで、次の「MAISIE」へと展開。曲が始まると、HYDEの眼差しの奥には強いオーラが宿る。声色には次第にミステリアスな毒が宿っていき、男女のコーラスがさらに曲を狂おしい響きにしていく。“ねえ その手で壊して”“君のこと ケシたい”と、HYDEお得意のゴシックホラーな世界観がたっぷり盛られたこの曲では、ステージに立つHYDEはまるで魔法使いのよう。ロングコートの裾をはためかせると、そのたびに、場内にはどんどんアンニュイな空気が広がっていった。

撮影:石川浩章

「『JEKYLL』へようこそ」という挨拶でその空気を日常へと引き戻したHYDEは、最初に25年前に制作したソロ1stアルバム『ROENTGEN』について触れ「オーケストラを主体とした映画音楽のようなアルバムだったんですけど、すごく作るのが大変でなかなか次が作れなかったんですが、25年経って『JEKYLL』というアルバムをリリースすることができました」と穏やかな口調で会場に話しかけた。そうして「普段は激しい曲をやっていますが」と前置きしたあと「今日はいい子ちゃんで(笑)座ってご覧頂きます。このメンバーで演奏するのも今日が最後なので、耳の穴かっぽじって聴いて下さい」と茶目っ気たっぷりな言葉で客席に張り詰めた緊張感を和ませたあとは、「SO DREAMY」でコンサートは再開。

撮影:田中和子

HYDEがレストランのオーナーで、年に1度だけ訪れるお客様をもてなす気持ちで書いたというこの曲では、場内に冬の季節が到来。ピアノの音がパウダースノーのようにキラキラ降り注ぐなか、クリスマスを思わせる温かくドリーミーな空気を、HYDEが甘くやわらかなタッチのヴォーカルで表現していく。HYDEの声にハモるコーラスで、観客たちをさらにハートウォーミングな気持ちにしていったあとは、激しいHYDEのライヴでもおなじみ、みんながもっとも聴き馴染みのある「HONEY」「GLAMOROUS SKY」を続けて披露していく。「HONEY」はボサノヴァ風にアレンジしたアコースティックギターから始まり、風をなびかせるように軽やかにホーンの響きがそこに重なったあと、フルートが聞き慣れたカウンターメロディーを爽やかに奏でてこの曲の爽快感を引き出していった。テンポをかなり落とした「GLAMOROUS SKY」では、HYDEはあえて椅子に腰掛けて動かず、“あの朝”に想いを馳せるようにせつない歌声で歌唱してく。そのせつなさを、ホーンセクションのオシャレなアンサンブルを使って、華やかに解き放っていったところは素晴らしかった。激しいHYDEのときとは別のもう一つの楽曲が持つ顔、魅力を存分に引き出したこの2曲は、まさにHYDEとJEKYLL、その二面性を分かりやすく体現した部分だったといえる。「あの曲にこんな表情があったなんて」とファンを大いに驚かせたあと、コンサートはオーケストラアンサンブルでHYDEの歌をどこまでも堪能していくバラードコーナーへ。

椅子から立ち上がったHYDEがハンドマイクを持ち、舞台中央にやってきて始まったのは「NOSTALGIC」だった。息を多く含んだ柔らかな声を慎重にコントロールし、耳元に語り掛けるように滑り込ませていく歌声に、観客の誰もが引きこまれる。その声が高音パートに差し掛かると、どこまでも細く、いまにも消えていきそうな響きで儚さを表現。その歌を覆うように流れ込んでくるストリングスとピアノが、歌の儚さをさらに深めていく。そうして、歌は最後のサビの歌唱へ。ため息のようなブレスを1つ入れ、“with you“と歌ったあと、フェイクでサウンドとアドリブで戯れていったところは、薄暗い照明も相まって、淡い色彩の絵画を見ているようで鳥肌が立った。そうして、アウトロを弾くピアノから、そのまま曲は「TATTOO」へ。HYDEは横向きになって再び椅子に深く腰掛ける。オーケストラの譜面台を照らすライトと、HYDEを照らす赤いスポットが薄暗いステージに奥行きのある世界を生み出し、そのなかでHYDEはものすごい集中力で、ゆたうように低音をたっぷりと響かせて、心の奥底に刻まれた深い懺悔の気持ち、痛みを歌い紡いでいく。オーケストラは、HYDEの歌の強弱に合わせて、繊細なニュアンスで音をそこに重ねる。そうして、HYDEが寂しげなメロディーを口笛で吹き、夜のしじまを場内に呼び寄せると、ステージのバックに星空のような光が広がる。そのまま次の「FINAL PIECE」が始まると、コーラスがまるでゴスペルのように天空から降り注ぎ始め、HYDEの歌は穏やかな質感へと変わる。その歌声がサビに向かってどんどん弾力性を増し、神々しいまでに輝きだすと、場内はいつしか神聖な空気に包まれ、心がいっきに洗われていった。

撮影:田中和子

曲が終わった後も、JEKYLLオーケストラがアドリブで演奏を続けていると、そこに“よこはっま~”とHYDEが歌で加わっていく。“ぴあアリーナ~エムエッム~”と会場名を歌い込んだフレーズで、観客たちを笑わせたあとは、本ツアーで恒例となったご当地グルメをステージで食べるもぐもぐタイムへ。もちろん、この間も演奏と歌はアドリブでずっと続いている。そのなかで、この日は神奈川で人気のプリン専門店・マーロウのプリンを手に持ち“マーロウ”“プリ~ン”と何度も連呼。その途中、“あと1曲で終わりですぅ~”と歌って、客席を騒然とさせたあと“エイプリルフール!”と熱唱してみせたところは、ファンも大爆笑。そうして、前日はこのコーナーであんまん(パンダまん)を食べ、あんまんは歯にくっついて水分をとられ、その後歯にくっついたまま歌っていたことを歌で告白したあとは、ほっこりした笑顔を浮かべて“今日はプリンで良かった~”と歌唱しながら、プリンを口に運ぶと、場内はものすごい歓声が上がる。このようなもぐもぐタイムさえも、HYDEオーケストラの演奏に乗せたアドリブの歌で、違和感なくこの公演に馴染ませていたところはさすがだった。

そして、コンサートはこのあと、そのアドリブ演奏がどんどんスローになり「DEFEAT」からロックモードへと突入。コートを脱ぎ、白いブラウスシャツに着替えたHYDEは、モニターアンプに片足をのせ、真っ赤な長いマイクコードを床にバンバン叩きつけながら激しくシャウト。この曲が起爆剤となって、これまでおしとやかにジャジーな演奏を続けていたオーケストラはどんどんダイナミックになり、ロックにメラメラと燃え始める。パーカッションのスリリングなソロ演奏で気持ちをどんどん高めていったあと、ラストは立ち上がってプレイするサックスとHYDEがバトルを展開。フェイクで立ち向かう熱戦を観た客席からは、盛大な拍手が湧き起こっていった。その熱狂を次の「FADING OUT」で、内省的な方向へと向けていく。浮遊感あるアンビエントな打ち込み。そこにフレットレスベース、ギターが重なり、長めのイントロで厳かな空間を構築したあと、HYDEはファルセットとフェイクを多用した滑らかな歌声をサウンドに重ね、その声を波動のように場内に広げていく。そうして、静謐な世界へと誘っていったあと、始まったのは「SMILING」だった。真っ白い雪が降り積もっていく世界をリリカルに描くストリングスをバックに、HYDEはとびきり透明度の高い声で、せつなくも美麗な旋律をなぞっていく。主人公の抱えた悲しみを断ち切るように、フルートが鋭い音色で入り込んでいったあと、HYDEは手に持っていたマイクコードをそっと手離し、儚さが張り詰めた物語を最後までドラマチックに表現してみせた。

撮影:石川浩章

撮影:田中和子

このあとは、本ツアーを振り返り「数年後、小さなクラブとかでしっとりと歌いたいなと思って、今日演ってきた『JEKYLL』のような曲を作りました」と伝えた。そうして「クラブで“あの頃あんなことがあったね”と思いながら、みんなは僕の歌を聴いて、たまに泣く訳です。それを観て、僕もたまにもらい泣きをするんです。(クラブの収容)人数は50人ぐらい。1席20万ぐらいだけど(笑)」といって、このオーケストラ公演から繋がっていく未来のクラブ公演について、具体的な構想を明かした。そうして「集中していきますよ。残り数曲。次は25年前にリリースして、いろんな人に愛されて育った曲だと思います」という言葉を添え、コンサートは「EVERGREEN」の歌唱へと移っていく。

撮影:田中和子

本公演のなかで、唯一アルバム『ROENTGEN』から選曲されたこのナンバー。天井には大きなミラーボールが現れ、客席に細い無数の光が広がっていくなか、HYDEはそっと目を閉じて、曲を愛してくれたみんなのために自分のエゴを押し消し、オーケストラが奏でる曲のなかへと入り込み、歌と音を一体化させ、穏やかな光に包まれた美しい旋歌だけを観客の心にしめやかに届けていった。そこから「THE ABYSS」へ。とたんに光は途切れ、ピアノの演奏に重厚なストリングスが加わるイントロで、場内は深い深い海底へと引きずり込まれる。歌いだしたHYDEからは、「EVERGREEN」で押し消していた感情が洪水のようにあふれ出す。歌の主人公を憑依させ、奈落の底でもがき苦しむ様子を歌、表情、すべてを使ってパフォーマンスしていくHYDE。それを音で表現するオーケストラの深淵な演奏のなかに、観客たちを魂ごと引きずり込んでいったあと、聞こえてきたのは「RED SWAN」だった。HYDEはキリッとした表情を浮かべて視線で会場全体をとらえたあと、圧倒的な声量で、ダイナミックな歌声をアリーナの最上階まで飛ばしていく。その歌声をさらに遙か彼方へと飛ばすように、オーケストラの演奏も力強く響き渡る。歌と演奏は、みるみる生命力に溢れていき、天空ではそれを祝福するかのように、ミラーボールが華やかにきらめきだす。曲の最後、HYDEが後ろを振り返り、コンダクターとなってオーケストラを操り、曲のエンディングをビシッと決めたあとは、そのエネルギッシュな空気感をさらに増幅させるように、次の「BREAKING DAWN」を高らかに熱唱。“僕を信じて”“夢は叶う”と力強い言葉が放たれると、場内はさらにきらめきだし、そのパワーをティンパニが力強く後押し。後半はマーチングドラムまで聞こえてきて、フルートやトランペットまでもが鮮やかに響き渡り、そのまま曲はノンストップで「夢幻」へと展開。HYDEはさらにアクティブになり、コーラスとアイコンタクトをとりながら、エモーショナルな歌を掛け合い、歌いながら何度もオーケストラを振り返り、それぞれのパートを煽っていく。歌1つでオーケストラと堂々と対峙し、各パートの演奏の熱量を引きだし、どこまでも高めていったところは、このツアーでHYDEとJEKYLLオーケストラがさらなる領域へと突入した姿を感じられた部分だった。そうして、コンサートは公演のラストナンバー「LAST SONG」へ。さっきまで希望に溢れていた空気を打ち消すように、場内は再び暗闇に包まれる。オーケストラの演奏はより格式高い演奏で厳かな空間を作り上げ、そのなかで狂気を宿らせながら、救いのない歌を白い羽が降りしきる映像をバックに歌うHYDEは、なにもかもがエキセントリックで、圧倒的だった。オーケストラを従えたコンサートで、ここまで独自の路線を貫きながら唯一無二の異空間へと人を連れて行けるのは、HYDEにしかできないこと。激しいモードのHYDEが、昨年まで行なっていた<HYDE [INSIDE] LIVE 2025 WORLD TOUR>で、血糊にまみれながら壮絶なパフォーマンスを繰り広げた同ナンバーを、このツアーでも最後に演奏し、HYDEとJEKYLLの二面性が表裏一体であることをしっかりと観客に知らしめたあと、コンサートは幕を閉じて終了。

撮影:田中和子

撮影:石川浩章

スタンディングオベーションに応えて、再び緞帳が上がると、客席とオーケストラが一丸となって真っ白いサイリウムを灯し、場内を星空のような天空にしてみせる。ステージに姿を現したHYDEは、このサプライズに「隠してた?」「うわぁ~、真っ白!」といって大感動。最後に「このツアー、すごくいい経験になりました。歌に向き合うツアーになったと思います。この後はオーストリア公演、ラルク(L'Arc-en-Ciel)もあるしね。こんなに好き勝手やってこれたのは、雨の平日でもこうして集ってくれる良き理解者のお陰です。今後も自分の楽しいことを追求して、逃げ切りたいと思います」と宣言し、大きな投げキッスを客席にプレゼントしながら、HYDEは舞台を去っていった。

撮影:石川浩章

撮影:田中和子

今後、5月17日に自身の故郷である和歌山での凱旋コンサートが急遽決定し、5月25日、自身が観光大使を務めるオーストリアのウィーンで、現地のオーケストラと共演するコンサートで本ツアーを締め括るHYDE。この日のコンサートの終演後には、5月13日に『JEKYLL』のフィジカル盤、6月6日にはアナログ盤を続けてリリースすることをスクリーンを通して発表。その後は、L'Arc-en-Cielとして8月に<SUMMER SONIC 2026>でヘッドライナーをつとめ、さらに、10月からはL'Arc-en-Ciel結成35周年を記念したツアー<L’Arc-en-Ciel 35th L'Arc-en-Ciel TOUR>を行なうことも発表している。このツアーを通して、歌に磨きをかけ、アーティストとしてさらにポテンシャルを高めたHYDEに期待していて欲しい。

SET LIST

01. DIE HAPPILY
02. SSS
03. MAISIE
04. SO DREAMY
05. HONEY
06. GLAMOROUS SKY
07. NOSTALGIC
08. TATTOO
09. FINAL PIECE
10. DEFEAT
11. FADING OUT
12. SMILING
13. EVERGREEN
14. THE ABYSS
15. RED SWAN
16. BREAKING DAWN
17. 夢幻
18. LAST SONG

公演情報

DISK GARAGE公演

HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wakayama

2026年517() 和歌山県民文化会館 大ホール

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HYDE Orchestra Tour 2026 JEKYLL in Wien

2026年525()ウィーン・コンツェルトハウス 大ホール(オーストリア)

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日本時間5月26日(火) 2:30よりライブ・ビューイング (生中継)、同日19:00よりディレイ・ビューイング (収録上映) 決定!

 

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Information

2026年311() 配信リリース、513() CDリリースのニューアルバム「JEKYLL」のアナログ盤を、66() に発売することが決定!

 

≫詳細はこちら

 

 

  • 東條祥恵

    取材・文

    東條祥恵

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  • 撮影

    田中和子

  • 撮影

    石川浩章

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