空間演出ユニットhuez「3.5次元のライブ演出」──15周年に向けた主催ライブシリーズと新代表の決意

インタビュー | 2026.03.04 18:30

2011年の結成以来、年間数百を超えるライブ演出に携わる、空間演出ユニット・huez。今年、2026年には15周年を迎え、2月22日にSpotify O-EASTではアニバーサリーライブの開催が予定されている。
それにあわせてhuezの関わるライブ演出シーンの現在地とその先について、huezの新代表のjotaka / 高橋丞太郎(Video Director / Motion Graphics Designer)を中心に、同世代の気鋭メンバー、アナミー / 穴水駿哉(Lighting Designer)、キング(Eventer / Team Manager)の3人に話を聞いた。リアルとデジタルのあいだにある“3.5次元”的な演出を掲げ、15年にわたってアーティストから絶大な信頼を受けるhuezの信念とは、いかなるものか。世代交代を果たしながらも受け継がれる、その特異性をひも解く。

主催ライブシリーズの始動と、huezの現在地

──15周年、おめでとうございます!昨年4月に世代交代といえる代表交代が発表されていましたが、まずは、jotakaさんが新代表に就任した経緯を教えていただけますか。
jotakahuezにメンバーとして関わりはじめてから自分の仕事が映像のクリエイティブと演出なので、照明やレーザーと比べて一つの案件に対して時間をかけて制作することもあって、各メンバーと密度あるコミュニケーションをとってきました。その流れもあって中心メンバーとして音頭を取ることも増えて新代表に、という打診があったのかなと思っています。
──デザイナー/エンジニアなどの専門家が所属する一方、キングさんのように、イベンター/チームマネージャーという役割の人間が所属しているのも、huezの特色ですよね。
jotakaキングは、もともとアーティストマネージャーをやりながらっていう経緯で、huezに参加しはじめて、そのなかで大きかったのは、「ENTERTAINMENT」っていう主催ライブシリーズが生まれたこと。そこで、イベンターとしての仕事もこなしはじめて、それに合わせて、これまでの経験をすべて踏まえて、チームマネージャーとして、強い力を発揮してるっていうのが、いまのキングですね。
──「ENTERTAINMENT」という主催ライブシリーズは、どういった経緯ではじまったんですか。
キング​​近年、クラブイベント、あるいはクラブイベント内にライブセットが組み込まれる形式が増えている一方で、『ENTERTAINMENT』は出演者の数を絞りライブセットを中心にパフォーマンスしてもらうのを軸に置いてて、huezの持ち味であるライブ演出をしっかりとアウトプットできるイベントとして開催しています。
それと個人的な考えとしては、huezというチームの認知度を上げる役割も担えたらなと思っています。

huez presents「ENTERTAINMENT」vol.03 メインビジュアル

──すでにライブエンタメシーンを中心として年間数百のライブに関わっている上で、認知度が課題というのはどういうことでしょう?
キングこれから先、売れていくアーティストの方と二人三脚でライブをつくっていく中で、huez自体が微力でもシーンに貢献できるような動きをしていければと思っていて、今回の15周年にあわせたhuez presents「ENTERTAINMENT」vol.03は、そのショーケースとなるようなものになってくれればと思って企画を進めてきました。
今まで15年間、huezが培ってきたライブ演出のノウハウを、演者の方とも来場者とも共有することで、アーティストのみなさん、来場者のみなさん、そしてhuezメンバーにも刺激があるような企画になればと思っています。まだチケットも販売中なので、ぜひ観に来て、今のライブシーンの熱量を感じてもらえたらと思っています。
──キングさんから認知度という単語がでましたが、その課題の先に代表のjotakaさんが目指していることを教えてください。
jotaka認知度については、huezの成長とのかみ合わせの課題もあると思っています。いま、メンバーそれぞれがスペシャリストとして活動の場を大きくしていて、チームというよりは、それぞれ個人に根ざす部分がかなり強くなってきています。数年前、コロナ以前のときなど、1000キャパぐらいまでだと、huezで演出すべて受けさせていただくことも多くて、一つの大きなチームとして動いている感じがありました。その意味で、いまは個々のキャリアが伸びている一方で、チームとして動く機会が減っていることが課題だと感じています。ただ、それはメンバーの成長に伴う一時的な反動でもあると思っていて、これから先、キャリアとスキルセットがもう1段階あがったら、変わってくる部分は大きいと思う。強い演出集団として、もう1回、技術を再集結させて、更に大きいパワーとして出したい、そして、そこからさらにまた個々にもフォーカスが当たっていく循環を目指したいです。

新世代が信じる、huezに受け継がれる意志

──huezは、アーティストやオーガナイザーと同じ目線に立ち、その世界観を重視する、領域横断的な演出を強みとしてきました。これは、新体制になっても引き継いでいく信念ですか。
jotakaこのフレーズは、全体の雰囲気といいますか、チームの血液として存在している気がします。
──アナミーさんも、照明をやられるとき、このフレーズのようなことを意識していたりしますか。
アナミー僕もアーティストの世界観や伝えたい事を自分なりに解釈して照明プランを組んでいます。そして、自分の担当したアーティストのファンに自分自身がなって、この曲の時にどんな照明だったら気持ちが高ぶるだろう?感動できるだろう?とファン目線で考えてプランを作成していますね。かなりアーティストや曲に感情移入してしまうタイプなので、まず自分が感動できないと、ほかの人が見ても感動できないと思っています。自分が良いと思う明かりしか出さないように意識はしています。
jotakahuezメンバー、それぞれで、いろいろと振る舞い方は違うんですけど、アナミーは特に、アーティストとバンドを組んでいるような感覚に近いように見えます。ひとつのチームとして、一人のバンドメンバーとして、アーティストや、アーティストマネージャー、プロデューサー側と、接しているっていうような。
アナミーそれはすごくあります。逆に言えば、そうなれないと、ぜんぜん良くない。自分が感情移入できないと、自分の照明にならないんです。

コロナ禍を経たシーンの変化と技術発展

──jotakaさんは、コロナ禍以前にhuezに加入し、コロナ禍を経て現在に至る、コロナ禍世代とも言える経験を積まれてきたわけですが、コロナ以前以後でライブシーンに対して変化を感じることはありますか。
jotakaリアルと配信、2つのパッケージをつくるというのが定着したと思います。リアルライブのプラスアルファとして配信を見るという。リアルのチケットを取れなかったお客さんはもちろんだけど、リアルで見たお客さんがアーカイブとして配信を見るという楽しみ方をしはじめたのは、コロナ以降だなと感じます。コロナ禍のときに配信の映像に抵抗がなくなったのかなと。それと、コロナ禍のときに映像を主体につかってライブMV的な感じでパッケージで配信をした知見が、いま、もう一回リアルライブに戻って活かされていますね。
アナミーコロナ禍に、いろいろ実験みたいなことをして、今、技術的に新しいことをやれているのはあると思う。例えば、バーチャル空間の中でVtuberのライブの照明を操作するとか。今はかなり技術や理解が深まって業界的に最適化されてきてはいますが、やっぱりその知識が役立ってる部分がありますね。
──いま、注目していたり、挑戦したい技術はありますか。
jotakaここ最近の技術の発展は驚くことばかりです。AIに注目すると、ここ1年、2年のあいだにあり得ないぐらいの技術革新が起きつづけている。自分は映像出身だからかなり危機感を持っています。照明とかレーザーとかは、ある意味アナログすぎて、親和性があまり良くないから、おそらくはそこまで馴染まないんじゃないかなって思いますが。もしかしたら、いままでの社会のなかで技術っていうのは、ある程度人間のキャパシティのなかで処理できる情報だったのが、人間のキャパシティで処理できないような領域に来ているのではと思っていて。そういったなかで、例えば、ライブでも一部にはMRとライブの融合といったような実験的なことやってる人たちもいますが、自分はいま一万人規模のライブを想定するならば、過去の技術の再発明みたいなものを発掘したほうがいいんじゃないかなっていうふうに考えています。アナログとデジタルの中間点的な手法ですね。そこを発見していくっていうのは、これからのライブ演出にとって大事なことだと思います。

15周年を経た、huezという集団創作チームの展望

──改めて照明、レーザー、映像、プログラミングなどを専門とするデザイナー/エンジニアが10数名いる集団としてのhuezについて教えてください。
jotaka自分たちと世代の近いライブ演出に携わるチームというのは、いくつかはあるのですが、映像クリエイターのチームが比較的多い印象です。専門家が複合的に所属しているチームとなると、デザイナー/エンジニアが3、4人とプロデューサーなどで5人ぐらいのチームがあるという感じですが、いま、huezは、照明が4人、レーザーが3人、映像が6人、演出が3、4人という感じなんです。やっぱり、自分はhuezの魅力というのは、何か特殊な、スキルセットが一つあるというよりは、チームとして横幅が広くあることだと思っていて、それぞれがスペシャリストとしてやっていながら、全員で共作もできるというのが魅力だと思っています。

最後に15周年を経て、新体制となった現在地からの展望を教えてください。

jotakaいま、年齢層も少し幅が広がってきていて、20代後半、30代前半、30代後半の3層があります。そして、この先、新人発掘していくというので、次の世代にさらに受け継いでいくという展望があります。いまコアのメンバーの人たちは叩き上げ気質の人が多いので、これから新しいメンバーが入ったときに、ギャップが大きいから、そこをどうしていくかは自分に課せられる課題になると思っています。それでも、huezは下積みとかなく現場経験がつめるフラットかつ実力主義なチームでありつづけたいです。

自分は、ある意味、宗教的にライブの力を信じていて、そこに参加してアーティストの価値をもっと高めたい。お客さんも、ライブ終わって、今日のライブ良かったわって、次の日、朝起きても、自分の好きなアーティストがこれだけのもの表現してるんだったら、なんかここから今日の仕事がんばろうみたいなメンタリティに持っていくっていうのが、すごく大事だと思っていて、自分がライブっていうシーンで仕事してる理由として、それはすごく大きい。何かの活力や救いになればいいってのはある。自分はライブが持つ力を信じてるんです。

PROFILE

huez

huez (ヒューズ) は、2011年に東京で結成された Visual Artist / 空間演出ユニット。ライブステージや展示などの様々な出力を制御し、ソフトウェアや機材の開発までを行う少数精鋭のチーム。レーザー、照明、映像などを使用し、コンサートや催事場展示などでの空間演出を行う。近年では、バーチャルライブ開発や演出なども行っている。メンバーはアート、演劇、照明、映像、レーザー、プログラミングなど、様々なバックグラウンドをもつ。アーティストやオーガナイザーと同じ目線に立ち、その世界観や物語を重視する領域横断的な演出を強みとする。

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