京都発の三人組バンド、KI_EN(キエン)が初ツアー「奇縁ノ壱」を開催!旅立ちのときを経て新たな空へ。

ライブレポート | 2025.12.26 12:00

KI_EN 初ツアー2025「奇縁ノ壱」
2025年12月14日(日)渋谷TOKIO TOKYO

京都発の三人組バンド、KI_EN(キエン)の初めてのツアー「奇縁ノ壱」、その東京公演を目撃した。全員が2003年生まれの新進バンドだが、すでに早耳音楽ファンをざわつかせている注目の存在だ。11月にデジタルリリースしたファーストアルバム『旅立ちのとき』は、タイトル曲の共同プロデューサーにトオミヨウを迎えた渾身の一作。まさに今が旅立ちのとき、飛躍をかけたライブにTOKIO TOKYOのフロアはしっかり埋まった。ステージ中央に吊るされた提灯に灯りが入る。始まる。

アカペラで歌いだすボーカル・野川爽良(そら)の、豊かな声量と艶やかな声質にいきなりぶっ飛ばされる。なんて声だ。1曲目「性根」は、ずしりとヘヴィな手ごたえのドラマチックミドルバラードで、橋本歩夢(あゆむ)の弾く厚みのあるキーボード、ギターの澤 風雅(ふうが)を加えた三声ハーモニーが力強く自己主張してる。一転して「創造と感動」は、メタリックなギターがリードするダークなロックチューン。さらに「Fifty-Fifty」はメロディアスなピアノと饒舌なギター、切なげなボーカルがせめぎあうエモーショナルなナンバー。正体がつかみづらい。しかし目が離せない。

「奇縁ノ壱へようこそ。まさかのドラムいるんかい! ベースいるんかい!と、驚いた方もいると思います」(野川)

楽曲のシリアスなイメージに比べて、MCは気さくで朗らか。普段は3人+音源でのライブだが、このツアーはドラムとベースを加えた生バンドでやることをアピールすると、ここから序盤とはガラリと趣を変えてポップで爽やかな楽曲を連発する。明快なシャッフルビートに乗って走る「記憶の地図」、クラップと手振りがおおらかな一体感を生む「輪廻」、野川がアコースティックギターを奏で、ノスタルジックな切ないメロディを届ける「春風」。ピアノポップとギターロックを織り交ぜて、時に文学的で硬質な言葉を散りばめながら、日常の些細な出来事と永遠とを織り交ぜるような独特の世界観。

「みなさん、アルバム聴いてくれましたか? 人生で1枚目のアルバムなので、等身大の自分を描きながら、時間に対する考え方や物事に対する考え方を書いてみました」(野川)

一番大切にしている曲をーー。そう前置きして歌った「旅立ちのとき」は、ピアノと歌の静かな歌いだしから、力強いバンドサウンドへ成長してゆくドラマチックな1曲。「夢のまた夢」は澤がギターと鍵盤を器用に操るスローバラード、そして「忘れられんな」は野川がギターをバイオリンに持ち替えて歌う、ゴスペルの要素を感じるグルーヴィーなナンバー。3人ともプレイヤーとしての引き出しが多く、楽曲は多様なバラエティに富む。ぐんぐん引き込まれ、時の経つのがあっという間だ。

「TOKIO TOKYOからKI_ENがお送りする『OATBI STATION』、みなさんこんばんは!」(野川)

いきなり何が始まったか?と思ったら、α-STATION(エフエム京都)でオンエア中のKI_ENのレギュラー番組の東京出張版で、今宵のテーマは「好きな祭り」。徳島出身の澤は阿波踊り、京都出身の橋本は貴船祭、野川は祇園祭を挙げ、特に野川の家は祭の役員で本人も役員ということで、威勢のいい掛け声も手締めのセリフもまさに本物。「ほいっとー!」「よーさの!」と、観客全員を神輿に乗せて盛り上げ、そのまま後半戦になだれ込む作戦は大成功で、ここからフロアの熱気と一体感がググっと上昇。R&B色の濃い曲調に野川のバイオリンがよく映える「Better(ALBUM ver.)から、ねばっこくファンキーなグルーヴチューン「シミラー」、そしてミラーボールの輝く下で「茶柱」へ、野川が橋本に「行ったれ!」と檄を飛ばしてソロをうながす。序盤のロック、中盤のポップ、そして後半のクラブ/ダンスミュージックへと、「こんな引き出しもあるのか」という驚きが次々と飛び出してくる。KI_ENのライブは変幻自在だ。

野川と橋本は幼馴染、野川と澤は音楽専門学校の同級生。大阪在住だった澤を京都に呼び寄せ、3人一丸となって音楽に邁進した成果のファーストアルバム『旅立ちのとき』を誇らしげに語る3人。熱い思いを込めてラスト2曲、「星空に一番近い場所」はピアノがリードする壮大なバラードで、地声とファルセットを器用に操りながら渾身のシャウトを聴かせる野川の気迫がすさまじい。最後は「Better」のシングルバージョンで、尖ったロックギターとファンキーなグルーヴ、カラフルなキーボードと伸びやかなボーカルでフロアを揺らす。それは若さと勢いの中に大器の片鱗を忍ばせた、初々しくも堂々たるパフォーマンス。

アンコールでは未発表のアコースティック曲「日晴」(ひばれ)を、3人の見事なアカペラハーモニーでしっとりと。そしてアルバム『旅立ちのとき』から冬のバラード「スノーハート」を、クリスマスムードいっぱいでロマンチックに。最後は全員揃って「よーさの!」「チャチャチャ!」の手締めで終わる、明るくも余韻の残るエンディングに観客はみんな笑顔だ。

どんな曲調も歌いこなす野川のボーカルを軸に、全16曲のすべてで異なる表情を見せながら、100分のライブをやりきったバンドのポテンシャルの高さに疑いはない。旅立ちのときを経て新たな空へ、2026年にどこまで高く飛べるか、追うのが楽しみなバンドがまた一つ増えた。

SET LIST

ENCORE
01. 性根
02. 創造と感動
03. Fifty-Fifty
04. 記憶の地図
05. 輪廻
06. 春風
07. 旅立ちのとき
08. 夢のまた夢
09. 忘れられんな
10. Better(Album ver.)
11. シミラー
12. 茶柱
13. 星空に一番近い場所
14. Better

Encore
15. 日晴(Acoustic ver.)
16. スノーハート

公演情報

DISK GARAGE公演

no-no × ESAKA MUSE pre. NEW SINGLE【手を振る】Release Event『記憶の花束』

2026年1月28日(水)大阪 ESAKA MUSE
出演:no-no、KI_EN and more

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  • 宮本英夫

    取材・文

    宮本英夫

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  • 東 美樹

    撮影

    東 美樹

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