
「第26回東京フィルメックス/TOKYO FILMeX 2025」が11月21日(金)~11月30日(日)に有楽町朝日ホール、ヒューマントラストシネマ有楽町にて開催されることが決定した。
オープニング:ヴェネツィア女優賞作品が登場

『太陽は我らの上に』
The Sun Rises on Us All (日掛中天) / 中国 / 2025 / 131分
監督:ツァイ・シャンジュン (CAI Shangjun 蔡尚君)
<STORY>
きっかけは、病院での偶然の再会だった。かつて恋人関係にあったメイユンとバオシュウは、長い別離を経て、再びお互いの人生に深く関わることになる。メイユンには既婚者の恋人がおり、彼の子どもを妊娠したばかりだった。だが、刑務所を出て同じ街で暮らすバオシュウが末期がんだと知り、メイユンは彼を自らのアパートに迎え入れ、治療に専念させようとする。
本作では、共通の秘密によって痛ましくも絡み合った男女の愛憎が描かれる。数年前、男は女の犯した罪の責任を被って入獄した。しかし、わずか1年ほどで、女は新しい人生を始めてしまう。刑期を終えた男は、自己犠牲が無駄に終わり、愛が憎しみへと変化した世界へと足を踏み出す。秘めた過去を抱えた男女の葛藤をスリリングに描いた本作は、寡作なツァイ・シャンジュンの待望の長編第4作。2011年の『人山人海』(ベネチア映画祭監督賞)や2017年の『氷の下』に続くフィルメックス上映作品となる。
愛と憎しみ、そして贖罪の不可能性について描かれたこの物語は時に容赦なく展開し、観客の心を揺さぶるだろう。生々しい映像によって、倫理的に複雑な物語を繊細かつ重厚に描くツァイの作風はここにきて新たな高みに達している。本作はベネチア映画祭のコンペティション部門で上映され、主演のシン・ジーレイ(辛芷蕾)が女優賞を獲得した。
クロージング:ベルリン監督賞受賞の注目作

『大地に生きる』
Living the Land (生息之地) / 中国 / 2025 / 129分
監督:フオ・モン (HUO Meng 霍猛)
<STORY>
1991年の中国。3人きょうだいの末っ子チュアンは、家族と離れ、別の村の親戚に預けられる。両親が兄姉を連れて南部の都市・深圳に出稼ぎに行くことになったからだ。大家族のなかで元の苗字のまま生活している彼は、村に完全な帰属意識を持つことができずにいたが、それでも曾祖母やおばの愛情に包まれながら日々を過ごす。10歳の少年の目を通して、激動期の中国の知られざる一面が描かれる。
本作では春から冬にかけての農村の日常が、辛抱強く、偏見のない観察的な視点で描かれていく。当時の中国は工業化が急速に進行していたが、主人公の少年の暮らす農村には電話も近代的な農業機械もなく、村民たちは外界からほぼ隔絶された状態にある。映画は筋書きよりも、葬儀や結婚式といった人生の節目の出来事を通して展開する。登場人物たちはそれらの出来事に巻き込まれ、彼らが望むと望まざるとに関わらず、不確かな未来へと導かれる。その過程で、健全なものもそうでないものも含め、彼ら・彼女らがどのように物事を受け止め、重労働から政治的抑圧に至るまで様々な苦難にいかに対処し続けているかが明らかにされていく。ありふれた人間ドラマでありながら、季節が移り、人生が続いていく中で、両親や上の世代の辛苦を新しい世代がどう受け継ぐのかという問いに、抵抗と絶望の間で揺れ動きつつも、この作品は真摯に向き合っている。ベルリン国際映画祭のコンペティション部門でワールドプレミア上映され、銀熊賞(監督賞)を受賞した。
プレイベントでは、蘇った香港ニューウェーブ重要作を一挙上映
Revisiting the Hong Kong New Wave: M+ Restored Selection (全3作品)
第26回東京フィルメックスでは、香港の現代ビジュアルカルチャー美術館「M+(エム・プラス)」が修復した3本の香港映画を紹介する。M+はシャネルの支援を受けて映画修復プロジェクト「M+ Restored」を2023年7月に立ち上げ、「香港ニューウェーブ」の重要作品の4Kデジタル修復に取り組んでいる。その最初の成果が今回の上映作品。
1970年代末に登場した香港ニューウェーブは、スタイルと題材の両面で当時のメインストリームの商業映画と一線を画し、その後の香港映画の発展に大きく寄与するとともに、世界の映画作家にも影響を与えた。M+ Restoredは、ニューウェーブ映画の創造的な実験精神と技術革新に焦点を当て、映画の復元と並行して当時の映画人へのインタビューや調査にも取り組み、映画という文化遺産の再評価を目指してる。
フィルメックスのプレイベントの上映作品は以下の通りだ。フェミニズム的視点でも再評価されるメロドラマ、リアルな描写が光るサスペンス、鮮烈なビジュアルのホラー、いずれも香港映画史に刻まれる重要作品。どうぞお楽しみに。
董夫人 レストア版

THE ARCH(董夫人) / 香港 / 1968 / 95分
監督:トン・シューシュン ( T'ANG Shushuen 唐書璇)
南カリフォルニア大学で学んだ女性監督・唐書璇(トン・シューシュン/セシリア・トン)の初監督作にして代表作。香港の既存の映画産業外で製作され、独立作品として公開された最初の映画でもある。17世紀中国を舞台に、夫の死後も婚家に尽くしていた董(とう)夫人が、自宅に滞在する兵士への恋情と貞淑を重んじる道徳規範との間で引き裂かれる。1969年のカンヌ国際映画祭の第1回監督週間などで上映、1971年の金馬奨で女優賞など4冠を受賞した。
ザ・システム レストア版

THE SYSTEM(行規) / 香港 / 1979 / 88分
監督:ピーター・ユン ( Peter YUNG 翁維銓)
撮影監督として活躍し、インディペンデント映画の先駆者でもあった翁維銓(ピーター・ユン)の長編監督デビュー作。キン・フー作品の常連俳優・白鷹(パイ・イン)演じる麻薬取締捜査官が、様々な権謀術数を駆使して麻薬王の逮捕に挑む姿をスリリングに描く。ドキュメンタリー制作の経験を生かし、警察・情報提供者・麻薬密売人の複雑な関係性や攻防をリアルに描いた画期的な犯罪ドラマ。
愛殺 レストア版

LOVE MASSACRE(愛殺) / 香港 / 1981 / 91分
監督:パトリック・タム ( Patrick TAM 譚家明)
ウォン・カーウァイ監督の『欲望の翼』などの編集でも知られる香港ニューウェーブ初期の代表的監督・譚家明(パトリック・タム)の鋭い才気が爆発するサイコスリラー。サンフランシスコを舞台に、失恋した友人を助けようとした女子大生が思わぬ恐怖に巻き込まれる様を大胆な色彩設計で描く。ヒロインを演じるのはブリジット・リン(林青霞)。ウォン・カーウァイ作品に欠かせない才人ウィリアム・チョン(張叔平)の美術監督デビュー作でもある。
チケットは11月6日(木)正午から発売。今後の続報もぜひチェックを。







