ASKA、”Who is ASKA !?“=「This is ASKA!」最高のバンドメンバーと共に真のエンターテインメントを証明した、日本武道館初日をレポート

ライブレポート | 2025.03.14 12:00

Travel TV presents ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025
-Who is ASKA !?-
2025年2月14日(金)日本武道館

「待たせたね~!」というASKAの言葉に、観客が大きな声と拍手で全面的に同意していた。挨拶する側もされる側も実感がこもっていたのは、すでに29公演を回ってきたところだったからだ。2024年9月からスタートしたツアーも2月14日(金)、15日(土)の日本武道館公演を残すのみとなっていた。本記事ではその初日、2月14日(金)のステージの模様をレポートしよう。

オープニング映像が映し出されていた幕が上がって、コンサートが始まった。オープニングナンバーは「GUYS」だ。ブラスの印象的な音色のイントロが鳴り響くと、熱いハンドクラップが起こった。ASKAの伸びやかな歌声とダイナミックなバンドの演奏、パワフルなコーラスによって、瞬時にして館内に高揚感や祝祭感が満ちていく。さらに「Love Affair」、「HANG UP THE PHONE」と、80年代後半から90年代のステージを彩った曲が立て続けに演奏された。ASKAとコーラス2人のフェイクの掛け合いは実にソウルフルだ。歌、コーラス、演奏、演出の完成度がとてつもなく高い。ここまで待たせただけのことはある。本数を重ねる中で、演奏や演出をブラッシュアップしてきた成果が見事に表れていたからだ。ライブ冒頭から息をもつかせぬ白熱の展開が続く。上下左右、ステージ上のトレス(照明塔)など、さまざまな角度から降り注がれる立体的な照明の光が映えている。これは聴覚だけでなく、視覚も存分に楽しませてくれるコンサートだ。

「今回のツアー、コンセプトははっきりしています。ASKA中級編です」とASKA。1990年代のCHAGE and ASKAのツアーが持っていたエンターテインメント性の高さ、スケールの大きさを今の時代に蘇らせるステージだ。さらに「LOVE SONG」「BROTHER」と、90年代のライブでお馴染みの曲が演奏された。ASKAの音楽を長年にわたって聴いてきたファンは、懐かしさで胸がいっぱいになったのではないだろうか。ただし、これは単なる過去の再現ステージではない。ASKAの今の歌声で歌うことによって、そしてまた、バンドのメンバーが今の瞬間の息吹を吹き込むことで、今の時代にリアルに響く音楽として見事に成立していたからだ。

ASKAとともにこのステージを支えているバンドは、澤近泰輔(Piano)、江口信夫(Drums)、荻原基文(Bass)、鈴川真樹(Guitar)、クラッシャー木村(Violin)という気心の知れたメンバーに加えて、設楽博臣(Guitar)、David Negrete(Sax)、高橋あず美(Backing vocal)、結城安浩(Backing vocal)という4人が新たに参加している。David 、高橋、結城の3人は2024年6月に行われたデイヴィッド・フォスターの『HITMAN David Foster & Friends』公演のメンバーでもある。つまりASKAが多大な影響を受けた音楽家、デイヴィッド・フォスターとの縁が、今回のツアーにも繋がっているのだ。設楽とは20年ほど前にレコーディングスタジオで出会い、「いつかあのギタリストと一緒にやりたい」とのASKAの思いが、長い年月を経て実現したのだ。設楽のガットギターで始まった「Girl」はASKAのソロの名曲の1つ。炎と氷の混在と表現したくなる陰影の濃い歌の世界を、ASKAとバンドとが見事に表現していた。

「映画(『ブレードランナー 2049』)で、植物が出てくるシーンがヒントになって、未来の人に向かって作った曲があります」との言葉に続いて演奏されたのはソロ曲「未来の人よ」(2018年配信曲)。ASKAの語りから始まるこの曲は"1979年のあの日の空"から"遠い未来の空"までもが描かれた壮大なナンバーだ。ステージの背後には青空と白い雲の映像が映し出されている。両手を広げながら歌うASKAの歌声が遠い未来まで届いていくようだ。ASKAの歌の懐の深さは、聴き手の想像力を刺激してくれるところにも表れている。「未来の人よ」は詩的で内省的で哲学的な要素も備えている曲だ。でも頭ではなく、胸に響いてくるところが素晴らしい。今回のツアー、90年代の曲が軸となった構成だが、実はASKAの近年のソロ曲の魅力を再発見するステージにもなっていたと思うのだ。演奏されたすべての曲が名曲。この表現が誇張でないことは、このツアーのステージを観た人ならば納得してくれるだろう。

「めぐり逢い」「You are free」などのCHAGE and ASKAの名曲に挟まれていたソロ曲「プラネタリウム」も近年のASKAのラブソングの代表曲の1つだ。人を好きになることの喜びやかけがえのなさが描かれているのだが、ラブソングの名手であるASKAの手にかかると、幸せな気持ちの背後にある居心地の悪さや不安感までもが描写されていく。とてもスウィートなラブソングなのに、胸が苦しくなる瞬間があった。他のシンガーへの楽曲提供について、語る場面もあった。その話の流れの中で、「チカちゃん(澤近)、あの曲を歌いたい」と急きょリクエストして、コードを口で示し、予定になかった中森明菜への提供曲「予感」を1コーラス歌う場面もあった。軽く口ずさむように歌いながらも、せつなさや悲しみが波のように押し寄せてくる。その歌声に対して、そして、瞬時に反応して演奏したメンバーに対して、惜しみない拍手が起こった。「予感」を聴けることを“予感”していた人はおそらくほとんどいないだろう。人との出会いと同じように、歌との出会いも一期一会のものである。貴重な時間が流れていく。この流れのままに、鈴川と設楽のアコースティックギターによる演奏のもとで、薬師丸ひろ子への提供曲でもある「止まった時計」が披露された。ここでのせつなさの極地と言いたくなる歌声にも酔いしれた。

「はじまりはいつも雨」では、歌詞の中にある<水のトンネル>というフレーズを連想させるブルーの照明の中での歌と演奏が見事だった。「PRIDE」は1989年発表のCHAGE and ASKAの曲だが、澤近の手により、新たなアレンジが施されて、2021年にASKAのソロ曲としても発表されている。今回のツアーではソロバージョンを元にしたアレンジだ。「PRIDE」はライブを重ねる中で成長してきた曲でもある。ASKAのその時々の心境と呼応することで、歌の表情が変化してきたのだ。白いスポットライトを浴びながら歌ったこの日の「PRIDE」からも、これまでとは違う表情が見えてきた。胸の中にある感情の残骸のようなものを浄化するパワーを備えた歌として響いてきたからだ。ゴスペル的なテイストが色濃くなっていたと形容できるかもしれない。毎回歌が新鮮に響いてくるところにも、ASKAの歌い手としての非凡さと自在さがある。

前半が終了すると、近年のツアーで恒例となった雑談タイムに突入。ASKAがステージ上でリラックスした姿勢となり、メンバーとの世間話を楽しむひとときだ。客席からの声に反応する場面もあった。野太い声で「ハッピー・バレンタイン!」と声がかかると、ASKAがすかさず「"ハッピー・バレンタイン"ってそんな低い声では聞きたくない!」とユーモアまじりに返す場面もあった。メンバー紹介を挟んで後半へ。

後半の1曲目「誰の空」では、ASKAの意志の強さが伝わってくる強靱な歌声とバンドのダイナミックな演奏によって、館内の空気が一気に引き締まった。続いて「HEART」のイントロが流れると、悲鳴のようなどよめき声が起こった。そのどよめきを意訳すると、「よっ、待ってました!」もしくは「キターッ!!」。ASKAがマイクスタンドを回しながら歌っている。観客が両手を振り上げて熱狂している。ASKAとバンドと観客とが一体となって、どんどん高みへと上り詰めていく。割れんばかりの拍手の嵐がおさまると、ステージの下手に移動したASKAがアカペラで「太陽と埃の中で」のサビを歌い始めた。サビを歌い終わり、ASKAが両手を挙げた瞬間に、バンドの演奏が始まり、ステージ上にも客席にも一斉に真っ赤な照明で染まった。まるで武道館に太陽が昇ったかのようだ。そして太陽のような歌声が人々の胸の中を温めていく。すかさず客席のシンガロングとハンドクラップが加わっていく。客席の熱い反応に対して、ASKAがひと言、「サンキュー!」。感極まった観客の声・声・声。興奮がさらなる興奮をもたらしていく。

興奮の連鎖は途切れることがない。たたみかけるように、「僕はこの瞳で嘘をつく」へ。ステージ背後のスクリーンには女性12人のストリングスチームによる演奏風景が映し出されている。歌うほどに、ASKAの歌声は伸びやかだ。クライマックスに次ぐクライマックス。感動につぐ感動。客席では興奮しすぎて、わけがわからなくなっている人々が続出したのではないだろうか。ダメ押しで観客の頭の中を真っ白にしたのは「YAH YAH YAH」だ。ASKAの歌声が会場内の全員の胸に炎を灯していく。観客がもれなくこぶしをあげている。バンドのメンバーも演奏しながらも片手があくと、すかさずこぶしを挙げている。武道館の中に圧倒的な開放感と爽快感とが漂った。日々の生活の中で溜まった鬱屈や閉塞感を吹き飛ばしていくパワーを備えたこぶしのような歌声、そして歌声のようなこぶしだ。"Who is ASKA !?"という問いに答えるならば、This is ASKA、これがASKAだ。

熱狂が冷めないカオスの状態から、一瞬にして歌の世界に引き込まれたのは「消えても忘れられても」でのASKAのボーカルだ。澤近のピアノに導かれて、つぶやき声のようなウイスパーボイスから始まり、どんどんエモーショナルになり、その真摯な歌声が胸の中を揺さぶり続けた。弱さも本音もむきだしにした歌声を聴いていると、眉間の間が熱くなってくる。<君は誰かひとりでも><幸せにすることができたかい><愛になれるかい>という問いかけがダイレクトに響いてくる。これもThis is ASKA、そしてThis is Meだ。ASKAの歌にこんなにも揺さぶられるのは、リスナーひとりひとりの歌でもあるからだろう。

観客が手にしたスマホのライトがまるで星の輝きのようだったのは「歌になりたい」だ。ヒューマンな歌と演奏が染みてきた。今回のツアー、90年代の人気曲が軸になっている一方で、「未来の人よ」や「歌になりたい」など、ASKAのソロ曲が共鳴しあって、大きな流れを作っていることも実感した。「同じ時代を」もそうした流れを形成している曲の1つだ。プログレッシブロックに通じる起伏に富んだ構成の曲だが、表情豊かな歌声とニュアンスに富んだ演奏は格別だ。ASKAが同じ時代に生きていること、そしてリアルタイムでその歌声を聴けることの幸せを感じた。スクリーンに車窓からの映像が映し出されて最後には海の映像となっていく。深い余韻の残る演出だ。

「お前は何歳になったんだ? その声いつまで出るんだ? そう自分に問うと、答えが出てくる。喜んでくれる楽曲があるんだったら、歌わないのはもったいない。そんな活動を目指していきたいと思います」とのASKAの言葉を、熱くて温かな拍手が包んでいく。最後に演奏されたのは「On Your Mark」だ。凜とした歌声と雄々しい演奏とが聴き手の背筋までも伸ばしていくようだった。ASKAが指を指しながら歌っている。その指の先には2階席や3階席の観客がいて、その先には空があり、さらに夢の斜面が広がっているに違いない。ASKAは今もなお、夢の斜面を登り続けているのだろう。観客に挨拶するASKAに、拍手と歓声が降り注いでいく。"Who is ASKA !?"という問いに対して、“世界でもっともお辞儀する姿が絵になる音楽家”と答えたくなった。

"Who is ASKA !?"という言葉の入ったツアー、おそらくステージを観終わった人、ひとりひとりの中でその答えを見つけたのではないだろうか。その答えは人の数だけ、いやそれぞれの中にもたくさんあるかもしれない。筆者があえて1つだけ選ぶとしたら、"ASKAとは常に挑み続ける人"という答えだ。武道館公演に続いて、アジア公演も大盛況のうちに幕を閉じた。4月30日にはアジアツアーのファイナルとなる『ASKA ASIA CONCERT TOUR 2025 -Who is ASKA !?- 海外公演 ファイナル』東京国際フォーラム公演も予定されている。アジアツアーの集大成のステージと位置付けられるだろう。ただし、今回の武道館がそうであるように、国際フォーラムでのファイナル公演も終わりではなく、1つの節目に過ぎないのだろう。つまり、次なる光景へとつながっていくに違いない。ASKAはすでに未来を見つめている。

SET LIST

01. GUYS
02. Love Affair
03. HANG UP THE PHONE
04. LOVE SONG
05. BROTHER
06. Girl
07. 未来の人よ
08. めぐり逢い
09. プラネタリウム
10. You are free
11. 止まった時計
12. はじまりはいつも雨
13. PRIDE
14. 誰の空
15. HEART
16. 太陽と埃の中で
17. 僕はこの瞳で嘘をつく
18. YAH YAH YAH
19. 消えても忘れられても
20. 歌になりたい
21. 同じ時代を
22. On Your Mark

公演情報

DISK GARAGE公演

ASKA ASIA CONCERT TOUR 2025
-Who is ASKA !?- 海外公演 ファイナル

2025年4月30日(水)東京国際フォーラム ホールA ※SOLD OUT!

Travel TV presents
ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025
-Who is ASKA !?- 追加公演

2025年7月23日(水)鳥取・とりぎん文化会館 梨花ホール
2025年7月24日(木)広島・ふくやま芸術文化ホール リーデンローズ 大ホール
2025年7月31日(木)福島・いわき芸術文化交流館アリオス アルパイン 大ホール
2025年8月6日(水)富山・オーバード・ホール 大ホール
2025年8月13日(水)愛知・刈谷市総合文化センター
2025年8月15日(金)三重・四日市市文化会館
2025年8月19日(火)千葉・市川市文化会館 大ホール

 ■FC先行受付(抽選)
受付期間:2025年3月14日(金)10:00〜2025年3月23日(日)23:59
詳細はASKA Official Fanclub「Fellows」

その他ライブ情報

『FIRST SAIL ”COMTEC PORTBASE OPENING CEREMONY” 〜ASKA Live Docking〜』
2025年4月16日(水)名古屋 COMTEC PORTBASE

『ASKA ASIA CONCERT TOUR 2025 -Who is ASKA !?- in SEOUL』
2025年8月23日(土)高麗大学校化汀体育館 (KOREA UNIVERSITY TIGER DOME)

ASKAファンクラブイベント『ASKA × Fellowas 〜感謝祭〜』
2025年8月29日(金)福岡
2025年8月31日(日)愛知
2025年9月3日(水)4日(木)東京
2025年9月14日(日)札幌
2025年9月19日(金)大阪
2025年9月23日(祝火)宮城
※詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。

INFO

CS 日テレプラスで3ヶ月連続ASKA特集放送決定!

『ASKA 10 DAYS SPECIAL グッバイ&サンキュー東京厚生年金会館 -ここにあなたの足跡を -』放送
2025年3月23日(日)17:30〜

 

4月:『ASKA Premium Concert Tour -Wonderful World- 2023』放送
5月:Travel TV presents『ASKA CONCERT TOUR 2024≫2025 -Who is ASKA !?-』日本武道館1日目公演を放送

  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 撮影

    河本悠貴

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