Psycho le Cému 25th ANNIVERSARY
「QUARTER CENTURY」 METEOR MISSION~最終ミッション~
2024年9月23日(月)LIQUIDROOM
22本のライヴを重ね(名古屋公演は台風の影響により10月に延期振替)、すでにおなじみになったオープニングからメンバーが登場。そこへ、風の吹く音が流れ出し、鐘の音が響く。高まる緊張感。真っ赤な照明の明滅に彩られた「NEO」が、この夜の幕を切って落とした。2デイズの2日目であることが功を奏してか、DAISHIはのっけから絶好調のようだ。ギターソロでLidaとAYAの二人が珍しくセンターに並んだ姿を目にすれば、オーディエンスのテンションは急上昇。会場全体がそのままの勢いで走り出したかのように、突き進んでいく。
5曲目の「摩天楼カオス」まで、ライヴでの定番曲が惜しげもなく盛り込まれ、メンバーもオーディエンスも気合いを入れまくり、バチバチと火花が出るような熱い瞬間が続く。激しく荒れ狂うような頭で埋め尽くされたフロア。悲鳴のような怒号のような声が響き渡る空間。ライヴハウスならではの熱を感じさせる光景が、ライヴ序盤にして完璧なまでに作り上げられ、最高のスタートダッシュとなった。
続く「Sky-High」で、それまでの荒々しい表情を一変させると、青空へとはばたいていくような広がりとキラキラした光が放たれた。DAISHIの歌は、いい意味で愚直と表したいほどまっすぐで、だからこそ一切のにごりのない光をまっすぐに届けられるのだろう。手拍子を求めるseekに続いたファンの手拍子が、会場を包み込む。
ここで、地球防衛軍(DAISHI、AYA)と、それぞれ別の星からやってきた異星人(Lida、seek、YURAサマ)が、漆黒の隕石から地球を救うためのミッションを遂行するため奮闘するお芝居が進行。このツアーではメンバーそれぞれが脚本に取り組み、各公演で個性あふれるお芝居が繰り広げられた。ファイナルではYURAサマの手による脚本に素朴な(笑)ギミックや映像を組み合わせ、おおいに笑いを誘いながらも、ミッション遂行への手がかりをとうとう手にし、ストーリーは急展開。
そこへ始まる「ファイティング!」では元気いっぱいに戦いに挑む曲のメッセージが、ストーリーの進行と、さらに現実のバンドとしての歴史や目指す未来と重なるようにも感じられる。Psycho le Cémuと言えば、キャラクターやコンセプト抜きに語れないバンドであるが、それは単なる虚構の世界を超えて、そのストーリーを彼らが生き、彼らの生き方がストーリーになっているのだ。
「大江戸旅ガラス」で、会場はたちまち和の情緒に包まれる。それでもまるで違和感なくライヴが展開していくのは、これまで変幻自在に自分たちを作り上げて来たからこそ。ちょっぴり強引なぐらいに観客を引きずり込む、表現の筋肉のようなものが発達しているのだろう。新コンセプトをスタートさせた一方で、新曲の披露やリリースがなかったこともあり、既存の曲の扱いの巧みさは際立っていた。それは、1,100円の当日券が呼び水になって久々に訪れたファンの熱に再び火をつけることに一役買ったはずだ。
「おっは~」とAYAが元気いっぱいに可愛くMCをスタート。と思ったが、今日のAYAはいつも以上に暴走気味で、Lidaへの不満を爆発させる。負けじとLidaもAYAへの不満を口にするものの、その可愛さにノックアウト。AYAが何をするにも「カワイイ~」を連発。二人のやりとりにファンは黄色い歓声をあげる。
「ムーンライトダンス」「もう一度、くちづけを」と、大人っぽくムーディな時間を演出したかと思うと、「よく来た、オトコーッ!」と、seekが男性ファンに呼びかける。コロナ禍以降からだろうか、ライヴを重ねるごとに目に見えて男性ファンが増えている。熱い反応を受けて、「Murderer・Death・Kill」から、赤い照明に映し出される殺伐とした空気が会場中に広がっていき、怒涛の攻撃を畳みかけるようなナンバーが続く。
それでもseekは、「東京、足りねえよ!」と激しく煽り、オーディエンスはひたすら己の肉体を使って応えていくのみ。DAISHIは露悪的な歌いっぷりを「銀狼」で披露し、「武士道」では孤高のサムライの佇まいを見せる。王道のヒーローである勇者以外にも、さまざまな表情を見せる彼は、バンド内ではアイデアの発案者であり、プランを立てる策士であり、それでいていじられもするという愛されるべき存在だ。
熱がさめやらぬところへ、漆黒の隕石を止めるためのヒミツが明らかになる。地球防衛軍は過去に銀河警察と呼ばれており、その警視総監(YURAサマ)から、人々が夢を叶えることで隕石を小さくできるというメッセージがあったことが判明したのだ。銀河警察というワードに、観客からは大きな歓声が沸き起こる。「銀河警察VS宇宙海賊」は2002年に彼らが掲げていたコンセプト。20年近い歳月を経て、ストーリーを関連づけるアイデアに驚かされる。
その根本にあるのは、夢をかなえていくことが命題でもある、Psycho le Cémuというバンドのアイデンティティだろう。2024年現在の彼らが夢へ向かう次の一歩としてここで発表されたのが、来たる2025年5月2、3日、アクリエひめじ大ホールで行われる、「姫路シラサギROCK FES2025」。タイトルロゴが映し出されると、オーディエンスは一瞬とまどう様子を見せたが、それほどに大きなとびきりのニュースだった。
「姫路で会おうぜ!」とDAISHIが高らかに呼びかけ、本編最後は「未来少年×未来少女」。未来の少年少女へのメッセージは、Psycho le Cému自身への、彼らを応援しているファンへの、そしてこれから出会う未来のファンへの願いでもある。彼らの前に広がる明るい未来そのもののような、輝きに満ちた光景が本編の最後を締めくくった。
アンコールでは、メンバー一人ひとりが素直に思いを届けたMCだけでなく、最後に演奏された「君がいる世界」も含め、どこまでも人間らしい、血の通った姿が眩しかった。派手なコスチュームに身を包んでいても、その熱い心はにじみ出るように伝わってくる。そんな彼らの情熱が、この5人とファンを、必ずや、あの場所へと導いていくのだろう。その可能性が確実に高まっていることを、強く感じた一夜となった。