ゆきむら。、完全復活。混乱の中から這い上がり、繊細さ、衝動、本音のすべてを吐露した気魄溢れるステージ

ライブレポート | 2024.05.08 21:00

お前ら待たせたな。これが俺のマニフェスト 2024
2024年4月30日(火) LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)

2022年に本格的なソロ活動を再開した歌い手のゆきむら。2023年は2月に幕張メッセ イベントホール、春に東名阪Zeppツアー、8月に東京ガーデンシアターでのワンマンライブを成功させるも、それ以降は思うように活動できない時期が続いたという。そんなゆきむら。の復活劇として開催されたのが「お前ら待たせたな。これが俺のマニフェスト 2024」。ゆきむら。の再スタートを目に焼き付けるべくファンが駆け付け、会場のLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)は満員の観客で埋め尽くされた。

(※以下、ライブの演出に言及する箇所がございます)

ステージを覆った幕にライブのキービジュアルを基調としたオープニングムービーが流れると、その幕が落ちステージには玉座に腰掛けたゆきむら。の姿があった。1曲目ではクールな佇まいを見せながらも、観客と目を合わせながら再会を喜ぶ。その後はダンサーとともにダンスパフォーマンスを見せ、ダークな楽曲の世界を艶めかしく描いた。

映像と同時に、ゆきむら。による朗読が流れる。内容はこれまでの自身の辿った軌跡を詩的に表現したもののようだ。その後は挑発的な楽曲をたたみかけ、ステージにはバンドメンバーも加わりさらに迫力ある音で魅了する。会場はたちまちディープなムードに包まれ、曲の世界に入り込んで歌うゆきむら。は、毒に侵されながらも必死に生にしがみつく戦士のようだ。この闇もろとも引き連れて夢に食らいつこうとする途轍もない気魄に溢れたゆきむら。を、会場は固唾を呑んで見守った。

再度朗読を挟むと、ゆきむら。からは考えられないような、柔らかく繊細な楽曲が始まる。歌詞に自身の状況を重ねるように一言一言噛み締めて歌い上げる様子に、観客も熱い視線を送った。ミドルナンバーで衝動的に声を張り上げたかと思えば、優しい歌声を響かせるというシーンは、ゆきむら。がこの数ヶ月間抱えていた混乱を象徴していただろう。その後は可憐に舞いながら透明感のある歌声を響かせ、曲の終盤にゆきむら。が手を左右に振ると、観客たちも手に持ったペンライトを同じように振る。その光景は手と手を取り合うようにも見え、お互いがお互いを心から必要としていることを十二分に物語っていた。

ファンへのメッセージをしたためた最後の朗読のセクションを挟むと、ステージ上のゆきむら。が口を開く。「君たちにも夢がありますか? 君たちにも何かがありますか?君たちにも明日が見えますか?」と声を震わせながら訴えたゆきむら。はギターロックナンバーを立て続けに歌唱し、マイクスタンドを蹴り上げ、踏みつける様はまるでゆきむら。自身のもどかしい心情を表現しているかのようだ。その繊細さと荒々しさの二面性で観客一人ひとりの心を激しく揺さぶった。

ここまでノンストップで走り切ったゆきむら。は涙を流しながら、「最近自分がよくわからなくなる。何になりたいとか、何でここにいるのかわからなくなることがたくさんある」と本音を吐露する。だがそれでもファンと会いたかったという旨を語り「こんなに集まってくれると思わなかった。当たり前じゃないと思ってます」「いっぱい言いたいことあったけど、お前らの顔を見たら忘れちゃったよ!お前らが泣かせたんだよ、最高だよ!」とゆきむら。らしい言葉で感謝を伝えた。

「俺、これから初心にかえって一つずつお前と一緒に未来を歩んでいこうと思ってるから。信じてついてきて!」と告げると、最後に今の自身の気持ちを投影した新曲を披露。ここから再スタートを切るという決意表明が、歌声の隅々から伝わってきた。

幕が下りると、そこには今後の活動についてのゆきむら。の夢や心情をしたためた決意表明、メンバー紹介を交えたエンドロール、ファンに宛てたメッセージが映し出された。そのほとんどがゆきむら。本人による手書きで、観客は一つひとつにあたたかい拍手を送った。

この日完全復活を遂げたゆきむら。は、今月18日に豊洲PITにて「お前ら待たせたな。これが俺のマニフェスト 2024 完結編」を開催する。「完結編」という単語が加わったことからも、豊洲PITではさらにパワーアップしたライブが期待できるだろう。さらに何を隠そう豊洲PITは、ゆきむら。がかつて参加していたグループであるニコキャスにとってラストライブの、Knight A - 騎士A -にとって初ライブの会場だ。メンバーとともに終わりと始まりを迎えた場所で、ひとりで、そして今までゆきむら。を支えてきたファンとともにどんな景色を作り出すのだろうか。ゆきむら。の新たなる世界への一歩は、ここからまた動き出す。

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