LINDBERG Debut 35th Anniversary Tour「Thanx a Million☆」
2024年4月28日(日)EX THEATER ROPPONGI
温かくて熱い空間が出現していた。バンドと観客とで一緒に作りあげた感動的な夜となった。LINDBERGのデビュー35周年アニバーサリーツアーのファイナル公演、4月28日のEX THEATER ROPPONGI。ステージの背後には飛行機の形のロゴマークがデザインされたバックドロップがかかっている。オープニングSEが流れて、そのバックドロップの前にメンバーが姿を現した。渡瀬マキ（Vo）、平川達也(Gt)、川添智久(Ba)、小柳“Cherry”昌法(Dr)というLINDBERGの4人に加えて、サポートメンバーの佐藤“darling”達也（Key）が加わる5人編成でのステージだ。
渡瀬マキ（Vo）
平川達也(Gt)
川添智久(Ba)
小柳“Cherry”昌法(Dr)
佐藤“darling”達也（Key）
オープニングナンバーは「会いたくて」。1曲目からパワフルなバンドサウンドが全開となった。＜会いたくて 会いたくて あなたに＞という歌詞は、観客へのメンバーの思いとも重なるように響いてきた。しかし、渡瀬の声のコンディションは万全ではなかった。4月24日に横浜スタジアムで、野球の試合後に行われる予定だったスペシャルライブ（試合が長引いて、ライブは中止となった）の待機中に体を冷やし、扁桃腺を腫らしてしまったのだ。だが、ピンチをチャンスに変えて、一丸となれるところにもLINDBERGの強みがあるのだろう。渡瀬の喉の不調をカバーするように、メンバーが力強い演奏とコーラスを披露していく。しかも、渡瀬の声が途切れることはあっても、歌に込めた思いは途切れない。どんなことがあっても歌を届けるのだという意志が歌声に宿っているからこそ、客席に歌がしっかり届いてきたのだろう。「I MISS YOU」「SUNSET BLUE」など、1曲終わるごとに、観客が熱烈な拍手と声援を送り、メンバーの名前を叫んでいる。
「おかげさまでデビュー35年です。どうもありがとう」と渡瀬が観客に感謝の思いを伝え、メンバーもお辞儀している。さらにこんなMC。「ヘンな声でごめんよ。このツアーは今日で最後だというのに、このガラガラ声。泣ける～」とのこと。また、この日のステージの趣旨の説明もあった。
「このツアーは“みんなの背中を押した曲”ということで呼びかけて、みんなに投票してもらいました。なんと181曲もありました。今回は上位の曲を忖度なく、そのままの順位でお届けします。全曲、120％、みんなが歌える曲です」との渡瀬の言葉に、「やったー！」と客席から声がかかった。
ハンドクラップの中で始まったのは「Dream Factory」だ。背中を押されるだけでない。鼓動が高鳴り、胸が熱くなる曲がたくさんある。声の調子は完全ではなくても、渡瀬の歌声には、人の心を揺さぶるエネルギーが宿っている。そしてその歌声を中心として、バンドのメンバーが力を結集して、音を奏でていることがわかる。「Dream On 抱きしめて」は、客席からたくさんのこぶしが振りかざされる中での演奏。平川のギターも実に伸びやかでエモーショナルだ。川添と小柳の奏でる力強いグルーヴに、客席が揺れている。
「狙ったの？ “Dreamコーナー”でした（笑）。今回はね、ベイベーたち（LINDBERGのファンのこと）、わかってるの？というくらい、すごいセトリなんですよ」と渡瀬。確かに、投票によって構成された曲順でありながら、曲と曲とが共鳴しあう瞬間もあり、有機的な流れを感じた。
「35年、山あり谷あり、山あり谷谷谷あり、いろんなことがありました。ベイベーたちと一緒に歩んできました。いい時もそうでない時もLINDBERGを支えてくれて、本当にありがとうございました。そのお礼をいうツアーだからね。この曲が序盤で、でてきます」という渡瀬のMCに続いて、「今すぐKiss Me」。観客が手拍子して、一緒に歌っている。「カモン！ 女の子」と渡瀬がシャウトすると、女性の歌声。LINDBERGの代表曲「今すぐKiss Me」が終盤でなく、序盤で演奏されたのは、ファンの中で思い入れのある曲がたくさんあるからだろう。「君のいちばんに」では、渡瀬はタンバリンを叩きながらの歌。躍動感あふれるバンドの演奏に会場内が揺れた。
「ベイベーたち、ちゃんと座る時間も作っているのよ。よく考えているなと思った、このセトリ。うまい具合にバラードが固まっているのよ。3曲分も座れるんだよ」と渡瀬。背中を押す曲は、エネルギッシュなナンバーだけではない。「every little thing every precious thing」「MINE」「LOOKING FOR A RAINBOW」など、じっくり聴かせる曲が続く場面もあった。「every little thing every precious thing」は現役時代の藤川球児投手の阪神タイガースの頃の登場曲である。大切な人を支えることのかけがえのなさが描かれた歌だ。背中を押す側の思いも詰まった歌の世界が深く染みてきた。「LOOKING FOR A RAINBOW」は、虹のように七色の光が輝く中での演奏となった。
中盤は番外編ということで、上位にランクインした曲ではなくて、メンバーがセレクトした曲が続くコーナー。「YOU BELONG TO ME」では、コーラスもたっぷりとフィーチャー。ベースソロとギターソロの掛け合いが楽しいナンバーだ。ドラムソロも全開。「TOUCH DOWN」では渡瀬が飛び跳ねながら歌っている。渡瀬がハンドマイクを客席に向けると、バンドのメンバーも観客もシンガロング。LINDBERGが35年かけて培ってきたもののひとつは、この麗しい空間だろう。日替わり曲の「GLORY DAYS」は、せつなさのにじむ歌と演奏が印象的だった。
後半はリクエストの上位曲が並ぶ構成。「行くぞ～！」という平川のシャウトで始まり、ハンドクラップが加わる中での「10セントの小宇宙(ゆめ)」、会場内のシンガロングが感動的だった「ROUGH DIAMOND」や「GAMBAらなくちゃね」など、背中を押しまくる曲の連続となった。「ベイベー、一緒に歌ってくれてありがとう！」という渡瀬の言葉に続いては「Over The Top」。困難を乗り越えていこうとするパワーがほとばしっている。勇気あふれる歌声が、この瞬間にふさわしい。本編の最後は「BELIEVE IN LOVE」だった。「逹也～！ ともちゃん～！ Cherry～！ darling～！」と、渡瀬がメンバーの名前をシャウトしている。もちろんここでも観客もシンガロング。演奏が終わり、メンバーがステージから去ると、大きな拍手とともに、メンバーの名前を呼ぶ声が飛び交っていた。
アンコールでは、リクエストの第1位に輝いた「LITTLE WING」が演奏された。曲名がファンクラブの名称にもなっているLINDBERGにとってもファンにとっても大切な曲だ。ハンドクラップの中での歌と演奏。＜傷つく勇気を 忘れちゃだめさ＞というフレーズを観客が歌うと、渡瀬が「忘れんなよ！」とシャウトしている。＜明日を信じて 飛び続けるよ＞というフレーズは、LINDBERGの35周年以降に向けての約束の言葉のようにも響いた。
「ありがとう～！ まじでごめんね。冬のツアーがあったら、絶対リベンジさせて」と渡瀬。歌いながら、涙がこぼれ落ちる場面もあった。だが、この涙が次なる活動への糧となるのは間違いないだろう。メンバー同士のチームワークの素晴らしさとともに、バンドと観客との絆の深さも実感した。35周年ツアーのファイナル公演は、これまで数多くの困難を乗り越えてきた彼ららしいステージとなった。助け合い、励まし合い、感謝し、勇気を振り絞り、全力で乗り越えていくコンサート。背中を押す歌がたくさん演奏された。だが、バンドが観客の背中を一方的に押すのではなくて、互いが互いの背中を押すようなステージでもあった。この循環エネルギーによって、LINDBERGはさらなる高みを目指して飛び続けていくのだろう。
SET LIST
プレイリストを公開！
≫ LINDBERG ファンが選ぶ「私の背中を押してくれた曲」
01. 会いたくて -Lover Soul-
02. I MISS YOU
03. SUNSET BLUE
04. Dream Factory
05. Dream On 抱きしめて
06. 今すぐKiss Me
07. 君のいちばんに
08. every little thing every precious thing
09. MINE
10. LOOKING FOR A RAINBOW
11. YOU BE LONG TO ME
12. TOUCH DOWN
13. GLORY DAYS
14. 10セントの小宇宙(ゆめ)
15. ROUGH DIAMOND
16. GAMBAらなくちゃね
17. OVER THE TOP
18. BELIEVE IN LOVE
Encore
En01. LITTLE WING
