⼩⼭⽥壮平、弾き語りツアーFINAL「喜びを一つひとつ見つけて進んでいきたい」

ライブレポート | 2022.12.06 18:00

⼩⼭⽥壮平弾き語りツアー2022
2022年12月1日(木) LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)

12月1日、小山田壮平が『小山田壮平弾き語りツアー2022』のファイナルとなる東京公演をLINE CUBE SHIBUYAで開催した。今年は4月からバンドツアー、10月から弾き語りツアーを開催して勢力的に全国を回り、「TRAVELLING LIFE」な日常を徐々に取り戻す一年に。その締め括りと言うべきこの日のライブは、シンガーソングライターとしての充実した現在地を確かに感じさせる、素晴らしい内容だった。

開演時刻を過ぎ、フラッとステージに登場してアコギを持つと、andymoriの「投げKISSをあげるよ」からライブがスタート。何かと不安の多い時代だからだろうか、〈大丈夫ですよ 心配ないですよ〉と呼びかける歌声は、これまで以上に優しく響く。「革命」でアコギをかき鳴らしながら熱量たっぷりにがなる姿はバンド時代と何ら変わりないが、ファンファンのトランペットによるお馴染みのフレーズをブルースハープで吹いた「1984」も、やはり裏声を用いたサビの歌声がとても優しい。

この日のライブ前半はandymoriの楽曲が多くセットリストに含まれていて、2008年発表のデビュー作『アンディとロックとベンガルトラとウィスキー』から「ベンガルトラとウィスキー」、さらには「遠くへ行きたい」を歌唱。「遠くへ行きたい」と、その次に披露された「16」は青年期の混乱や内省的な心情をつぶやくように歌う楽曲で、こういった青さやナイーブさが伝わってくる曲を、年齢を重ねた今の小山田が歌っても何ら違和感がないのはスペシャルな部分だ。andymori時代から追いかけているオーディエンスもそれなりの年齢になっているはずだが、小山田の音楽を聴くと心の奥にある思春期性がよみがえるような感覚があり、だからこそ、彼の音楽を聴き続けているファンも多いのではないかと思う。

MCでは今年の9月に男の子が誕生したことを伝え、赤ん坊のおもりの話をして父親としての表情を覗かせつつ、「12月に僕の弾き語りライブにやってくるみなさんはもう親戚みたいなものだと思ってます」と笑い、大きな拍手が起こる。そう、やはり月日は流れたが、それぞれの人生を歩んできたオーディエンスとの関係はより親密になっている。この日唯一披露されたALのナンバー「輝く飛行船」では銀幕に美しくもサイケデリックな照明が映し出され、場内は幻想的な雰囲気に。さらに、「ローヌの岸辺」ではキラキラと光る水面のような模様が投影され、「恋はマーブルの海へ」ではカラフルなライティングが場内を彩ったりと、ライブ中盤はステージ演出も非常に効果的だった。

骨太な歌を聴かせる「アルティッチョの夜」、音源ではピアノの印象も強いが、アコギのシンプルな演奏だからこそ〈かわいい人よ 愛しい人よ〉のリフレインがより耳に残る「サイン」、ビートルズのカバー「Blackbird」に続いて披露されたのは、「旅の仲間たちとレコーディングをして、ミュージックビデオを作りました」という紹介とともに、今年6月にFULL OF LOVE名義で公開された「FULL OF LOVE」。〈窓を開けたら アンドロメダにも手が届きそう〉と歌うこの曲は、andymoriの「宇宙の果てはこの目の前に」の頃から変わることのない未知への憧れや期待感とともに「LOVE」を歌い上げる名曲。〈今LOVE LOVELOVE/君を想ってる 眠れぬ夜に願いを込めて〉という歌詞からは「All You Need Is Love」のオマージュ的な側面も感じられ、「Blackbird」からの繋ぎにニヤリとさせられる。

〈茜色の空〉〈マジックアワー〉といった歌詞に合わせて背景の色調が変化していった「夕暮れのハイ」に続いては、「時をかけるメロディー」を披露。アコギを爪弾きながら、混沌とした時代を射抜くように力強く「光」を歌い、一聴してすぐに名曲であることが伝わってくる。この日は新曲・未発表曲が数曲歌われているが、どの曲も引き込まれるものがあり、ぜひ早期の音源化を期待したい。そして、本編ラストに歌われたのは「旅に出るならどこまでも」。2018年から弾き語りツアーを開始し、バンドと弾き語りを並行させて音楽の旅を続け、本当に素晴らしいシンガーソングライターになったことを再認識させる名演だった。

アンコールでは「いろんな心配事が尽きない日々ではありますけど、喜びを一つひとつ見つけて、進んでいきたいと思っております……いいことを言おうとして失敗してます」と笑い、最後まで飾らない小山田壮平の姿があった。ラストはブルースハープを吹きながらの「Sunrise&Sunset」。悲しみは消えないが、人生は続く。青い空と、この歌とともに。

SET LIST

01. 投げKISSをあげるよ
02. 革命
03. 1984
04. それは風のように
05. ゆうちゃん
06. ベンガルトラとウィスキー
07. 遠くへ行きたい
08. 16
09. 輝く飛行船
10. ローヌの岸辺
11. 恋はマーブルの海へ
12. アルティッチョの夜
13. 雨の散歩道
14. ダンス
15. サイン
16. Blackbird(ザ・ビートルズ cover)
17. FULL OF LOVE
18. 君に届かないメッセージ
19. 夕暮れのハイ
20. 時をかけるメロディー
21. 旅に出るならどこまでも

ENCORE
01. スライディングギター
02. Sunrise&Sunset

SHARE

小山田壮平の関連記事

アーティストページへ

最新記事

もっと見る