バンドを本格始動して僅か1年ながらミュージックシーンの一頭地を抜く帝国喫茶がファーストアルバム『帝国喫茶』を発表。
初期メンバーにより録音された自主制作音源EP『開店』(2021年10月発表)のリレコーディング楽曲なども含まれている。まさに名刺代わりになる1枚は、その名も『帝国喫茶』。
コロナ禍の2020年夏、関西大学軽音サークルで一緒だったメンバーで結成され、2021年夏に初ライブを行ない、同年秋に杉浦祐輝(Gt.Vo)・疋田 耀(Ba)・杉崎拓斗(Dr)・アクリ(Gt)という現メンバーが揃う。そこから僅か1年、彼らは明らかに同年代の中で一頭地を抜いている。
まだ見ぬ多くの聴き手との出逢いを希求した今年6月リリースの1st EP『まちあわせ』。疾走と刹那を持ち合わせた収録曲『じゃなくて』を中心に、まだ見ぬ多くの聴き手と実際に出逢えた音源となり、東京・大阪・名古屋のクラブサーキットイベントでは耳の早いミュージックラバーたちが集まり入場規制も記録された。
心気充実な状態の中、満を持して完成されたファーストアルバムだが、12曲中8曲はメインメロディーメイカーの疋田が作詞作曲を担当。UKロックやブラックミュージックから日本語ロックを愛する彼は、普通のロックバンドに陥らない様に実験要素を重要視したという。
「プロデューサー視点で見ていった方がいいし、色々な角度から新しい杉浦の良さを出していきたいと常に考えていた」(疋田)
「誰の作った曲でも自分が歌えば自分のバンドだと思っている」と言い切る杉浦だが、今作は遂に彼の作詞作曲ナンバーが2曲収録されるのも注目点である。元々、ソロで弾き語り自主音源を出していた事もあり、疋田や杉崎の楽曲とはまた違って、憂いがあるアコースティック基調のナンバーとなった。弾き語りでも歌っていた「部屋の中で」と新たに書き下ろした「星のマーチ」は必ず聴いて欲しい。
「弾き語りで何曲か作ったけど、バンドでやりたいと想ったのは『部屋の中で』だけだったし、初めて手応えを感じた曲だった」(杉浦)
ロマンチックな独自の世界観を楽曲で表現する杉崎も、映画好きの彼らしい「恋する惑星」を今作では書き下ろしている。
杉浦、疋田、杉崎と3人それぞれがタイプの違う楽曲が書けるのは本当に強みである。あくまでバンドにとって通過点でしか過ぎないファーストアルバムだが、現時点での集大成を体感して頂けるのではなかろうか。
また、バンド周りのロゴやグッズなど今まで全てのイラストを手掛けているアクリ(Gt)による喫茶店をモチーフにした今作のジャケットも観てもらいたい。
次なる局面に達している彼らの成長は、まだまだ留まる事を知らない。
帝国喫茶の歴史は始まったばかりである。これからも楽しみでならない。