銀杏BOYZ、バンド編成ツアー開催中。良質なメロディで雄弁に語りかけてくるアコースティックライヴ

ライブレポート | 2022.03.23 18:00

銀杏BOYZ アコースティック・ライブツアー2022 「僕たちは世界に帰ることができない☆」
2022年3月14日(月)Zepp DiverCity(TOKYO)

銀杏BOYZが6カ所に及ぶアコースティック・ライヴツアー2022「僕たちは世界に帰ることができない☆」を3月に開催。ツアー2日目となるZepp DiverCity(TOKYO)公演は、汗と唾が飛び交う銀杏BOYZのカオティックなライヴを挿入したオープニング映像で始まった。それが終わると、マスクを付けた峯田和伸がステージ中央にある椅子に腰掛け、おもむろにマスクを外す。場内は水を打ったような静けさである。

まず峯田はアコギを持ち、17年前にリリースした『DOOR』収録曲「人間」の弾き語りで幕を開けた。「戦争反対」とリフレインする歌詞が脳内に響き渡り、会場の空気を一気に自分色に染め上げていく。

「(有観客)ライヴをやるのは2年半ぶり」と告げ、集まってくれた観客に感謝の言葉を述べ、本来ならば小さい会場でやるつもりだったと付け加えた。次の「NO FUTURE NO CRY」の途中から、山本幹宗(G)、加藤綾太(G)、藤原寛(B)、岡山健二(Dr)が加わり、バンド・バージョンで披露。ちなみに、この曲は山本のみエレキ・ギターを使う変則的なアコースティック編成を取っていた。「若者たち」、「駆け抜けて性春」と続き、牧歌的な雰囲気ながら、内側から焚きつけてくる歌声と演奏がまた新鮮に映る。
毎日人と会えなくて、自分が自分でなくなってしまう感覚。コロナ禍で抱く心境は、峯田も同じだった。その中で今回のツアーに向け、アレンジを考える上でスタジオに入り、メンバーみんなと音を出したとき「自分が自分を取り戻している感じ」になったようで、「久々に人前で歌うの、楽しみだなあ」と初々しい言葉も飛び出した。

そして、寝る前に好きな本の好きな箇所を読むんですと切り出すと、夏目漱石の『三四郎』のとある部分を峯田は朗読し、「恋は永遠」に移る流れも良かった。「骨」に入ると、ここでリード・ヴォーカルを務めたのはなんと岡山で、爽やかな歌声が意外なほど楽曲にマッチ。峯田はコーラスに回る斜め上を行く“アレンジ”でファンを驚かせた。「頭の中で二度とライヴができないんじゃないかと思い・・・今日は嬉しい」と言うと、「夢で逢えたら」へ。アコースティックだと、無垢なメロディが浮き彫りとなり、改めて名曲だなあと痛感。GOING STEADY〜銀杏BOYZと峯田が作り出すメロディの素晴らしさは、ここであえて言及する必要はないだろう。今回のアコースティック編成では、本来のメロディの良さが際立ち、楽曲が持つ丸裸の魅力に気づくことが多々あった。というか、それの連続だったと言っても過言ではない。

中盤に差し掛かり、「僕が曲を初めて作ったのは18歳。あの頃は世界が敵で、その敵に勝たなきゃと思い、死に物狂いでバンドをやっていた。世の中がコロナになり、世の中が瀕死の状態になり・・・負けるな世界、戦争に負けてはならない。ウクライナの空の下でも子供が眠り、星が降り・・・」とMCした後に「新訳 銀河鉄道の夜」に繋ぐ。ステージ背面は星空のライティングが付き、儚くも美しいメロディが会場を優しく包み込む。客席には目に手を当てる人もちらほら見かけ、多くの観客の心を鷲掴みにしていた。

「アーメン・ザーメン・メリーチェイン」を経て、後半に向けてDr.kyOn(Key)を新たに迎えて「光」をプレイ。ここから峯田は椅子から立ち上がり、歌により一層感情を込めていく。「東京」、「BABY BABY」と曲が進むと、これまで着席していた観客が総立ちとなり、拳を突き上げる光景が広がった。本編を「僕たちは世界を変えることができない」で締め括り、アンコールで再び姿を見せた峯田は「久しぶりのライヴで歌詞は飛ぶし、いままでギターでギャー!とやって誤魔化していたんだなと。銀杏BOYZはまだまだだなと。このメンバーで6年経ってなくて、これからもいい曲作って、いいライヴをやる」と決意表明のような言葉を口にした。

それから「夜王子と月の姫」、「GOD SAVE THE わーるど」、最終曲「少年少女」においては峯田を筆頭にメンバー全員がエレキに持ち替え、オリジナル・バージョンで会場を沸かせた。さすが、銀杏BOYZ。最後の最後にチャブ台をひっくり返す破天荒さで、この日は幕を閉じた。

ライヴ中に「この形態は最初で最後かも」と初のアコースティック・ライブツアーについて話す場面もあった。荒々しいパンキッシュな銀杏BOYZももちろん最高だが、良質なメロディで雄弁に語りかけてくる銀杏BOYZも捨てがたい魅力があった。今後はバンド/アコースティックの2つのスタイルを導入してほしい。心の底からそう思わせるほど、感動せずにはいられないライヴであった。

なお、この後もツアーは続き、3月31日のZepp Sapporo公演のチケットも発売中なので是非足を運んでもらいたい。

  • 取材・文

    荒金良介

  • 撮影

    村井香

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