いつもは月二回更新ですが、この5月は3回に分けてアップしました。なお、「ツアーがこの後も続く」「生配信の後もアーカイヴが残るので、これから観る人もいる可能性あり」なライブは、なるべくセットリストに触れないようにして書きました。
5月30日(土)17:00 柴田聡子『弾き語りツアー風“柴田聡子のインターネットひとりぼっち‘20”』@YouTube
5月22日富山から、6月27日東京まで、全国13本の弾き語りツアー『柴田聡子のひとりぼっち’20』が全公演延期、ならば、行われるはずだったのと同じ日時に「富山風」「金沢風」と銘打って、自宅からYouTube生配信で弾き語りライブを届けよう、という企画。で、その5本目の「松江風」がこの日。
この日より前のライブでは、訪れるはずだったライブハウスの店内の写真をバックに使ったりしていたが、この日はなし、夕日に染まる自室がそのまま映っている。2曲歌い終わったところで、その理由を説明。松江のスタッフから送られてきた写真が、ライブハウスの中だけじゃなくて、街の風景がたくさんあった、それがとてもきれいなので見せたい、ということだったようです。で、MCのたびに写真を出すが、確かにどれもとてもきれい。宍道湖に沈む夕日とか、橋とか、係留されている屋形船とか。「初めて松江に行った時、この橋を渡ったんですよ」などと、本人が解説していくのも楽しい。
それから、以前、ラミ子(彼女のバンドのメンバーで学生時代からの友人で、パートはコーラスだが、元々はダンサーというかアイドルというか、えーと、説明が難しいので詳しく知りたい方は要検索)とふたりで松江の大根島に旅行に行ったそうで、その時に撮ったラミ子の写真をスライドショー的に次々と出しながら、「ラミ子とシバッチャンの仲良しソング」を歌う、というコーナーも、この日はあり。
セットリストは毎回ガラッと変わるが、7月3日リリースの新しいEP『スロー・イン』の4曲はやる、と決めている模様。どの曲もいいが、6月10日に先行で配信リリースになる「変な島」という曲が特に強力だった。
あともうひとつ、びっくりしたこと。音の良さだ。音の質感とかリバーブのかかりかたとか、自室でひとりでやっているとは思えない鳴り。このクオリティ、彼女といつも仕事をしているDUB MASTER Xがアドバイスしたからであることを、リアルサウンドのこのインタビューを読んで知りました。「柴田聡子が明かす、“ひとりぼっち”配信の手ごたえ 自粛生活への不安と気づきも:Real Sound」
5月30日(土) 20:00 ROTH BART BARON @MoonRomantic Channel
ニュー・アルバム『けものたちの名前』のリリース・ツアーのファイナルを、目黒パーシモン大ホールで行うはずだったこの日に、「青山月見ル君ヲ想フ」にてライブをやって「月見ル」の特設サイト「MoonRomantic Channel」で生配信。チケット代は1,000円、プラス投げ銭もできるシステム。当初の予定どおり、三船雅也(vo/g)と中原鉄也のメンバーふたりに、ギター、キーボード、ホーン(とかパーカッションとか鍵盤とか色々)×3が加わった、7人編成でのライブだった。
こういう「興行が中止になった日時に生配信ライブをやる」企画って、これまで僕が観てきたものだと、興行より尺を短くして、10曲前後とかで行うものが多かったが、ROTH BART BARON、本当に本番どおり、2時間ちよっとの尺で、みっちりやった。
という、大満足なボリューム。見応えあるカメラワーク(台数多いしスイッチングもいい)。メンバーふたりとギタリストはライブハウスのフロアで演奏、他のサポート・メンバー4人はステージで演奏、というポジショニング。などなど、総じて「ライブをやって生配信しました」というよりも、「リアルタイムで作って届けるライブ映像作品を作りました」という趣だった。つまり、通常の、お客さんを入れて行うライブだと作れないものになっていた、ということだ。そこに興奮した、というか、観ていて不思議な気分になった。
ご視聴ありがとうございました!
7台カメラ!
本日より3日間アーカイブでご覧頂けますよ、是非とも😀😀😀https://t.co/dyma43JLS8 pic.twitter.com/LvTCADLum2— ROTH BART BARON (@ROTHBARTBARON) May 31, 2020
5月31日(日) 19:00 関取花 @YouTube
「延期になった『春の五線譜ツアー』のバンドメンバーによるライブを生配信!」(公式サイトより)というわけで、『家で五線譜』と銘打って行われた企画。メンバーもスタッフも、本番で集結するはずだったままの布陣で、YouTubeの関取花のチャンネル「dosukoi records」で生配信。ライブ収録もできるスタジオ、みたいな場所からの中継だった。ステージ後方の壁や、天井や、マイクスタンドなどに、運動会とか文化祭みたいなDIYな飾り付けがされている。
関取花、この生配信ライブがなんであるのか、という説明を、合間合間で何度もはさんでいた。途中から観た人にも伝わるように、という配慮だったのだと思う。その一回目は「4月に行うはずだったツアーのセットリストの中から、珠玉の十数曲をたっぷりお送りします。合間合間には、私のライブにお越しの方はご存知のように、よくしゃべります」という言い方だった。で、確かによくしゃべっていた。
本人もメンバーも、無観客生配信とはいえ、ライブをやれること、一緒に音を出せることの喜びに全身を乗っ取られていることが伝わってくる、終始ハイテンションで楽しい空気のライブ。曲が始まるたびにコメント欄がワッと湧くのが、その楽しさに拍車をかける。途中で、4月30日の赤坂BLITZにゲスト・ミュージシャンで出演するはずだった、という紹介で、シーナアキコ(グロッケンやマリンバなど)も加わってから、音がいっそう華やかになった。
あと、中盤のMCで「あたりまえの毎日がきたら、その幸せを噛み締めて生きていきたいと思います」と言っていたのには、「ほんとそうだよなあ」と、共感しました。
生配信ライブ #家で五線譜 ありがとうございました!さまざまなサポートをして下さったスタッフの皆さん、サポートメンバーのみんな、そして何よりご覧いただいた皆さんのおかげで本当に最高のライブになりました🏠💐私はやっぱり、ライブが大好きです。次は会場で必ず会いましょう! pic.twitter.com/mskwUTNlcH
— 関取 花 (@dosukoi87) May 31, 2020
5月30日(土)31日(日) 20:00 Caravan @ZAIKO
5月30・31日の渋谷さくらホール2デイズ、興行としては中止だがその日時に有料生配信でライブをやる、予定どおり1日目は『”The Folky Smoky Revue”Returns』と銘打って堀江博久とふたりで行い、2日目は『”Radio the Caravan” 〜All Request Day〜』というタイトルで、ひとりで、全曲お客さんからのリクエストに応える、というもの。
というわけで、30日はROTH BART BARONと、31日は関取花と、力いっぱい時間がかぶったので、そのふたつを生で観て、Caravanの方は後でアーカイヴで観ることにしました。チケット代は1日2,000円、プラスで投げ銭システムあり。場所は都内の某スタジオ。どこだか知らないが、レコーディング・スタジオっぽい広くて立派な作りだった。
1日目、Caravanの足元にはバスドラ、グランドピアノに向かった堀江博久の背後にはパーカッションや鍵盤ハーモニカやアコーディオンやマンドリンなどが用意されている。というふうに、曲によっていろんな楽器を操りながら、時にはドラムマシンを使いながらのライブ。
ハープとギターと歌のCaravan+グランドピアノの堀江+リズムマシンという編成での「Morning Song」で始まり、Caravanは歌とギター+堀江は鍵盤ハーモニカでスタートし途中でピアノに移る+リズムマシン、による「TRIPPIN’LIFE」で終わる、全10曲(※6曲目の次の、3コードの短いセッションも1曲としてカウントしました)。
「自粛中にいっぱい曲を作っていて。その期間の最初に作った」曲である「Magic Night」は3曲目に歌われた。ラストの「TRIPPIN’LIFE」を歌う前には、Caravan、「みんなと同じ空間で、”The Folky Smoky Revue”をできる日を夢見て」という願いを口にする。
あと、「普段のライブでできないことをやりましょうか」と、事前に募集した質問にふたりで答えるコーナーが、3回にわたって設けられた。箱に入っている質問の紙の中から1枚引いては、「おふたりは学生時代どんなアルバイトをしてましたか?」なんていう質問に答えていく。ちなみに、堀江は高校時代は年末に市場で鮭とか売っていて、そのあとはモスバーガー。Caravanは最初にやったバイトはビル清掃で、そのあとオーディオユニオン(ディスクユニオンのオーディオ店)など、いくつもバイト経験あり。初めて日比谷野音でライブをやった頃まで、バイトしていたそうです。
そして2日目、ひとりバージョン。お客さんがチケットを買う時にリクエスト曲とメッセージを入れられるシステムになっていて、それを紙に起こしたものを箱に入れて、Caravanが1曲ずつ引いていく。「マネージャーのはからいで」100枚に1枚ぐらいの割合で、自分の好きな曲をやっていい紙も入っていたそうだが、それ、最後まで引き当てられることはなかった。本番が始まってからもリクエストがどんどん来ていて、MCのたびに紙がガサーッと追加されていたので、無理もないと思う。なお、Caravan、昨日よりも足元の機材や楽器のセッティングがとても多い。どの曲が来てもいいように用意しているんですね。
「独特の緊張感がある……」などと言いながら、Caravanが引き当てた1曲目は「アイトウレイ」。「やった曲を書いていきます」と、譜面台のノートに曲名を書いてからスタート。
2曲目で「Today’s the Day」が出て、「これ新曲で、全然準備してなかったわ、歌詞あるかな……ない。じゃあ覚えてる限り歌います」とスタートするが、歌に入ったところでいきなり間違えてストップ。「これ、ちょっと準備させてください。(マネージャーに)歌詞の用意、もしできたら、お願いします、あとでやります」と、次に引いた「DAY DREAM」に行く。4曲目の「Back to Roots Again」を歌う前に「まだ配信でね……これ、(生で)みんなの前でやってたらどうなってたかな、って考えたら怖くなりましたね」と本音を漏らす。7曲目ではさっき飛ばした「Today’s the Day」を見事完奏。「(リクエストが)すげえ満遍なく、いろんな曲がきてる。で、『ハミングバード』とかのライブでよくやる曲はないっていう」というMCに続いて引いた11曲目が、「ハミングバード」──。
というふうに、ひとりきりのアコースティック・ライブだが「淡々と」とか「ほのぼのと」といった趣では全然ない、「緊張感」という意味でも「テンション」という意味でも、常に高い状態ではりつめている感じで、そこにとにかく引き込まれるライブだった。本人曰く、「普段の(セットリストが決まっている)ライブだったら、『ここで盛り上がって』とか、自分の中でイマジネーションがあるんだけど、今日はそれまったくないからね」。そりゃ確かにそうよね、と、納得。
「ハミングバード」の次=12曲目「ほんの少し」を経て、残り時間があまりないらしく、2曲まとめて引く。13曲目は5曲目にやった「Beautiful Loosers」が出たので引き直し、 「モアイ」そして「旅について」を歌って、全14曲・約1時間半のリクエスト・ライブは終了。「Callin’」のMVが流れる。
去る前にCaravan、「全部ゆっくりリクエストを見せてもらって、今後のセットリストにフィードバックしたいし、何が人気あったかっていうのも集計してみようと思います」。で、「ぜひ次はまた本当のライブで会えるのを楽しみにしてます。今日はどうもありがとう、Caravanでした」。