No Buses
トップバッターは男女混合の4人組ロックバンド、No Buses。全曲英詞のスタイルで、今、日本国内だけでなく海外のリスナーにも支持をされている彼ら。だからこそ、1組目にして観客の期待もかなり大きかった。スモークのかかった薄暗いステージに姿を現すと、近藤大彗(Vo&Gt)が“……こんばんは、No Busesです”と静かに挨拶をしたのをきっかけに演奏へ。1曲目は今年9月にリリースしたばかりで、彼らにとって初の全国流通となる1stアルバム『Boys Loved Her』から「Sleepswimming」を披露。爽快感を含みつつ、どこか不穏で攻撃的。楽しくノレるだけじゃない、複合的な魅力がそこにあった。そのまま間髪入れずに「Slowday」「Cut My Nails」「Dirty Feeling」を演奏。曲を重ねるごとにフロアーを飛び跳ねる人が増えていく。そして、MCに突入すると近藤が再び口を開いた。“どうも、こんにち…いや、こんばんは。今日はお足元の悪い中、っていうか…ありがとうございます(笑)”たどたどしく喋るその様は、妙に微笑ましかった。そして、話はイベント出演の経緯について。“7月くらいに、GRASAM ANIMALの歌代くんと船橋の定食屋で食事をして、その後に喫茶店へ行ったんですよ。僕はシフォンケーキで向こうはかき氷を食べて。なんか、中学生のデートみたいな感じだったんですけど。その時にイベントに出ることを決めて…っていう感じでして”。MCでは素朴な好青年だが、演奏になると精悍な顔つきに変わる、その緩急に惹かれた。こうして、およそ30分のステージは観客の大きな拍手とともに幕を閉じた。
The Songbards
2組目は神戸を拠点に活動をしているThe Songbards。The Beatles、Oasisに傾倒しているだけあって、骨太なビートとポップス度の高いメロディーが魅力だ。1曲目は「雨に唄えば」で《止まない雨はないなんて》と歌い上げ、当日の天候に合わせた選曲で初っ端から自分たちの世界へ観客を誘った。その後「ハングオーバー」「Time or Money?」を歌ってMCへ。“正直、今日の企画に誘ってもらうまでGRASAM ANIMALを知らなかったんですけど…”と上野皓平(Vo&Gt)。“だけど(今日のライブに)呼んでいただいた後に、YouTubeでMVを観たら「これ、めっちゃ好きなやつちゃうん!?」と思って。リハーサルを見て、もっと好きになりました”と好意を伝えた。そして4曲目に歌った「Inner Light」が特に素晴らしかった。Aメロを歌い出した途端、会場にフワッと金木犀の香りが運ばれたような錯覚を起こすほど、秀逸なメロディーとアレンジ。さらに「春の香りに包まれて」では、優しい春の風が顔を撫でる心地良さを感じた。The Songbardsの楽曲は素朴なアレンジや演奏のテクニック以上に、聴く人に情景や匂いを想起させてくれる。ラストに選んだのは「太陽の憂鬱」。2分50秒のロックンロールは、出だしの1音を鳴らした瞬間に会場をダンスフロアに変えた。計8曲、表情豊かな楽曲を演奏して満面の笑みでステージを完走した。
GRASAM ANIMAL
ラストはこの企画の発起人である、GRASAM ANIMAL。木屋和人(Vo&Gt)は以前、とあるインタビューで“俺らは過去の音楽史すべてに勝たなければいけない”と話していた。それだけ音楽に対する向き合い方がストイックであり、その言葉を裏付けするように独創性も非常に高い。この日、ステージに姿を見せると1曲目「Sir,Fried Monster」から会場の空気を掌握した。ファンクネスで妖艶で、なんかエロい。目の前のお客さんはジャンプでなく、腰をクネクネさせて彼らのビートに身を委ねている。2曲目「HERO」を歌い終えたところで、木屋が口を開く。“リリースがあるとかじゃないんですけど、なんか楽しそうだなと思って今回の企画を考えてみました。今日はみなさん、本当にありがとうございます。心の底から思ってます、ありがとう”。観客から拍手が送られる中、自身の心境を告げた。“嫌なことを言うと、3カ月前までは心の底から「ありがとう」と思えなかったけど、俺の中で変革が起きまして。すごい感謝があふれて止まらないんですよ。次、絶対に「Bali High」はやりたい”。宣言通り3 曲目は「Bali High」を披露。“俺ら、いろんな曲があって。一体どんなバンドなんだって言われるんですけど、別にどんな曲があっても良いじゃないか、音楽って愛でしょ!って曲をやります”。そう言って4曲目「POCARI SWEAT」を演奏。僕は、彼らの作る踊れる曲も好きだが、メロディメーカーっぷりを堪能できる歌モノも好きだったりする。続く「ヤモメ」や「抱きしめたい」もまた、もっと評価されるべき優れたポップスだと思う。“まだまだ見えないことがいっぱい。良いことが沢山待ってるよ! 楽しいよ! みんな楽しいんだ!”と木屋が突然、何の脈絡もない言葉をハイテンションで言い放ち、「Y字路より」「LOVE OIL」を演奏して本編が終了。しかし、このまま観客が帰るはずもなく、すぐさまにアンコールへ突入。再びステージに姿を見せた4人が最後に歌ったのは「俺たちに夏はない」だった。“これでもくらえ”と言わんばかりに、爆発的なサウンドと歌。それに呼応するように踊り歌う観客たち。ミラーボールの下、僕らは踊った。明日のことなど考えず、ただただ踊ったのだ。
SET LIST
■No Buses
01. Sleepswimming
02. Slowday
03. Cut My Nails
04. Dirty Feeling
05. Yellow Receipt
06. Number Four or Five
07. When You Sleep With Your Son
08. With or Without It
■The Songbards
01. 雨に唄えば
02. ハングオーバー
03. Time or Money?
04. Inner Light
05. 春の香りに包まれて
06. 悪魔のささやき
07. ローズ
08. 太陽の憂鬱
■GRASAM ANIMAL
01. Sir,Fried Monster
02. HERO
03. Bali High
04. POCARI SWEAT
05. ヤモメ
06. 抱きしめたい
07. Dogs(新曲)
08. Here Comes The Dogs(新曲)
09. Y字路より
10. LOVE OIL
ENCORE
11. 俺たちに夏はない
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