水曜日のカンパネラが贈る、堅いものをほどくエンタメショー!“ガラパゴス”的なアプローチに愛があふれていた

ライブレポート | 2018.07.09 21:00

ひと時の静寂を経て始まった「愛しいものたちへ」では光量を絞り、ピンポイントで感性に訴える表現にトライ。水滴の音、コムアイの倍音成分がオーディエンスの受動器官を刺激する。ステージの縁に座って五円玉を池へ投げ入れる彼女、水面に映る光と影の揺らぎ、波紋が美しい。そして「西玉夫」でいよいよその中へ足を踏み入れ、「クラーケン」になると果敢に踊ってみせる。“アザラシ”“蛸”に思いを馳せるかのように。一方、ステージには緑の蛸バルーン(ビニール)が現れ、いびつに大膨張。蛸が暴れ狂っているみたいな演出、暴風雨や洪水をイメージさせる音塊に圧倒されつつも、奇抜なエネルギーの充満が心地よかったりもした。

「マトリョーシカ」を歌いながら、中央のPA席に向かって再び観客の間へと入っていくコムアイ。周囲がすっぽり闇に包まれ、蛸バルーンも彼女を追って客席を転がる。水のパートを奥ゆかしく締め、いよいよクライマックスへ。新作ミニアルバム『ガラパゴス』からの楽曲がどんどん飛び出す。ループが気持ちいい「南方熊楠」の途中で「ライト兄弟」をインサートしてまた戻るという流れに、「見ざる聞かざる言わざる」へのノンストップ繋ぎと緑黄色ライトが鮮やかに映えるさまに、会場は大いに沸き上がり、外国人のファンを含めて踊り狂わずにはいられない人たちが続出!「贏政」ではドラムンベースの効いたトラックに乗せて光MAXのトランス状態に達し、特大元気玉みたいな極彩色の光に照らされて躍動するコムアイが非現実的で神々しい。

全開の照明で表現を爆発させたあとは一転、再び極小の光を纏って「かぐや姫」。先日出演したTBSテレビ『A-Studio』では生の弦アレンジパフォーマンスが話題を呼んだが、ステラシアターにおいてはとてもシンプルな佇まいで歌声を届けていた。さっきのド派手な演出とは対極であるにもかかわらず、それでも歌がものすごく活き活きと聞こえてくるのは、水曜日のカンパネラのショーが五感を楽しませてくれている証と言えよう。時空の旅の終着を報せるかの如く、アウトロでコムアイはステージ後方の扉奥へと姿を消した。

気付けば最後の曲だった。夜のステラシアターは涼しい風が吹いている。ステージ後方がゆっくり開くと、緑の芝生と森が現れ、芝生の上には炎を灯したたくさんのキャンドル。コムアイの姿もある。ここまで表現してきた水、風、光、闇に加え、最後は炎をバックに「キイロのうた」を粛然と披露。草木の香り、燃える匂いに鼻腔がくすぐられるシチュエーションもいい。やがて、精霊のように火の中心へ入っていくコムアイ。深々とお辞儀をし、最後に感謝の言葉を述べた。

「今日はお越しくださって、ありがとうございました。すごい数の人たちが完璧なチームワークでショーを支えてくれてます。そして、こんなに遠いところまでこんなにお客さんが来てくれるとは思わなかったです。本当に、いつもありがとうございます」

アンコールはなし。引き締まった潔いショーだった。DI:GA ONLINEのインタビューで「情報/カロリー過多のだだ漏れな演出じゃなく、もっとツボを突く表現がしたい」「みんなが耳を澄ませる状態を作りたい」と語っていたコムアイだが、彼女自身少なからず手ごたえのある公演になったのではないかと思う。歌のパワー、腰や耳などを喜ばせる没入感、チームで作り込んだ舞台美術に音響に照明が圧倒的だったし、新作ミニアルバム『ガラパゴス』のナンバーはライヴの転換点、ピークの役割をしっかりと担っていた。映像の類をほとんど使わず、ダンサーを従えなかった点も攻めたポイントのはず。富士山の姿ははっきりと拝めなかったものの、夜空には星がきれいに輝いていて、素敵な余韻が十分すぎるくらいにありました。

幻想的で自由奔放な、堅いものをほどくエンタメショーを終えた水曜日のカンパネラ。11月からは東京、大阪、北海道、沖縄の全国4都市で『ガラパゴス ツアー』を開催する。さらなる酩酊と恍惚、非現実の世界を求めて。

セットリスト

01. ラー
02. 小野妹子
03. シャクシャイン
04. 一休さん
05. マチルダ
06. ゴッホ
07. 桃太郎 Remix(Cosmic ver.)
08. ウランちゃん
09. ユタ
10. 愛しいものたちへ
11. 西玉夫
12. クラーケン
13. マトリョーシカ
14. 南方熊楠〜ライト兄弟〜南方熊楠
15. 見ざる聞かざる言わざる
16. 贏政
17. かぐや姫
18. キイロのうた

公演情報

DISK GARAGE公演

「ガラパゴス ツアー」

2018年11月7日(水) 新木場Studio Coast(東京都)
2018年11月10日(土) サッポロファクトリーホール(北海道)
2018年11月30日(金) 味園 ユニバース(大阪府)
2018年12月8日(土) ナムラホール(沖縄県)

★オフィシャル先行受付
受付期間:7月2日(月)21:00~7月15日(日)23:59
受付URL:http://w.pia.jp/t/wed-galapagos/

チケット一般発売日:2018年9月8日(土)

RELEASE

「ガラパゴス」

NEW EP

「ガラパゴス」

2018年6月27日(水)SALE
(ワーナーミュージック・ジャパン)
※CD盤、アナログ盤を同時リリース

INFORMATION

映画出演情報

「猫は抱くもの」(公開中)
【監督】犬童一心
【出演】沢尻エリカ、吉沢 亮、峯田和伸、コムアイ(水曜日のカンパネラ)/岩松 了ほか
✳︎水曜日のカンパネラが劇伴を担当

「猫は抱くもの」オフィシャルサイト

  • 田山雄士

    取材・文

    田山雄士

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  • Photo by

    SAKI YAGI

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