
the shes gone LIVEHOUSE TOUR 2026
~10th ANNIVERSARY~ シズゴの日
2026年4月25日(土)豊洲PIT
シガー・ロスの「Hoppípolla」に乗せてステージを覆う斜幕にライトが当たり、幻想的な空間が作り出されるとメンバーが登場する。兼丸(Vo/Gt)がギターを弾いて歌い出すや否や彼のシルエットが大きく映し出され、そこに西尾マサキ(Gt)、松田ナオト(Ba)、熊谷亮也(Dr)のシルエットも重なると、兼丸の「今日この日から10周年が始まります。最高の1年、最高の1日にしましょう!」という高らかな掛け声とともに斜幕が落ち、「タイムトラベラーと恋人」でツアーの幕を開けた。西尾は煌びやかな音色を奏で、松田は華やかなアクションとともに骨太な低音を繰り出し、熊谷のビートはそれらをスケール大きく届ける。兼丸の憂いを宿したボーカルも、この日会場に集まった観客やこの10年で出会った様々な人々へと感謝を投げかける、堂々とした佇まいだ。
威勢のいいカウントで間髪入れずに「ラブストーリー」、ドラムのつなぎから「甘い記憶」と初期のポップソングを立て続けに披露し、観客もクラップや身体を揺らすなどして4人の音を味わう。the shes goneの瑞々しい音色と正直な歌詞は、花の香りを連れてくる春風のように聴き手の記憶を呼び起こし、安定感のあるグルーヴには聴き手の中にある朧げな記憶すらも鮮明に蘇らせる説得力が漲っていた。それは喜びに満ちた楽曲も、悲しみを滲ませる楽曲も、強い思いがしたためられているからに他ならない。その後の「Make my day」「サプライズ」「きらめくきもち」も威勢のいい雄大な音色だった。
「君のパレード」ではパワフルでありながらも人懐っこさのある音色に観客もクラップで思いを重ねる。一転「panorama」ではメランコリックなメロディとエッジの効いたロックサウンドで効果的なコントラストを作り、ここを境に徐々に会場は内観的なムードに包まれ始めた。兼丸がおもむろにギターをつま弾くと、弾き語りで「ふためぼれ」を歌い出す。4人で柔らかくも奥行きのある情景から躍動感を作り、アウトロの不穏なムードを増幅させるとそのまま「想いあい」へと華麗につないだ。兼丸は寂寥感のあるメロディを訥々と歌い、4人全員がそこに光を当てるように一音一音へ集中力を注ぐ。間奏のシューゲイザーテイストの気魄溢れるアプローチも会場を波のように飲み込み、観客も彼らの作り出す世界の奥深くへと潜った。
「春の中に」は細やかなリズムワークや豊かなコーラスワークが桜の花びらが柔らかな風に乗る様子を想起させ、兼丸の弾き語りから始まったバラード「栞をはずして」は屈強かつ真摯な思いがひしと伝わる。愛情や喪失感、強がりなど様々な感情がきらめくボーカルも少しずつ熱を帯び、終盤では観客もその思いに共鳴し、愛情や感謝を伝えるように歌を重ねた。さらに静謐な夜を彷彿とさせるロマンチックなベースソロを挟み、ステージ背面にあるミラーボールが会場全体に白く眩い光を降り注ぐと「shower」へ。ゆとりのある音色はとても荘厳で、そこから4人の熱量が増していく様に息を呑む。フロアもその気魄に圧倒されてか、演奏終了後もしばし拍手をするのを忘れるほどだった。
兼丸は“the shes gone”というバンド名について言及した。「バンドがいつかなくなってしまったとしても、曲やCDはずっと聴いてくれる人のそばに居続けてほしい」という思いが込められたこの言葉には、初めてちゃんと好きになった恋人との関係を相手から絶たれたことに起因しているという。大切な人が離れてしまったという事実が、自身の劣等感やコンプレックスにつながっている旨を明かし、「でも振り返ってみれば、ふられてよかったかなと思うようになってきました。暗い曲もいっぱいあるけど、久しぶりに演奏してみると作った頃や過去にライブしたときの気持ちが蘇ってきて。“the shes gone”は、僕の人生の名前なんだと思う。その人生に関わってくれて本当にありがとうございます」と10年間で得た出会いを噛み締める。
そして結成直後に西尾が短期留学に行ってしまったときにひとりで路上ライブをしたものの思うようにいかなかったことを振り返り「ひとりじゃ何もできないからthe shes goneに助けられているし、(メンバーやチームの)みんなに助けられているからこそあなたに見つけてもらえました」「この“つながり”は言葉にして、曲にしてちゃんと伝えるから。だから今あなたが目の前にいて、心の底からうれしいです」と告げると、「まぼろし」を披露した。音の一つひとつから、ぬくもりと優しさ、これからもこの手をつないでいたいという願いがあふれる。「ラベンダー」で観客が手を左右に振りながら歌う様子は、彼らが差し出したその手を握り返すようにあたたかく、互いを思い合うとても美しい光景だった。
すると一転「ダーリンレス」でアグレッシブかつダンサブルなサウンドを展開し、その熱をそのまま「最低だなんて」「嫌いになり方」でブーストさせてゆく。少年のように演奏に没頭する4人の姿に触発され、観客も高らかにクラップとシンガロングを捧げた。本編ラストへの導入に乗せて観客がクラップを鳴らすと、その光景に感極まった兼丸は「楽しすぎて呂律が回らない。でも楽しいことが伝わればいいや!」「そのまま手拍子もらっていいですか?」と呼び掛け、「シーズンワン」では楽曲を追い風にして情熱的に「愛してるよ!」と叫ぶ。新しい物語をともに作っていこうと約束を交わすようなステージは、とてもすがすがしかった。
アンコールではまず6月3日にリリースされる新曲「マリーミー・マリーユー」をサプライズ披露する。ここからさらに幸せへと歩み出そうと呼びかける幸福感に満ちたウェディングソングは、その後に兼丸がMCで話した「あなたとこれからも一緒にいたいという思いを込めて歌った」という言葉のとおり、まさに今の彼らやこの日のライブを象徴していた。
最後にメンバーがひとりずつこの日の思いを言葉にした。オリジナルメンバーの西尾は兼丸からバンドに誘ってもらった際に快諾したこと、当時はここまで長くバンドを続けているとは思っていなかったことを振り返り、「この景色は(当時の自分にとって)幻のよう」「こういう日がまた迎えられると信じて今後も活動を頑張ります」と決意をあらわにする。2022年10月に正式加入した熊谷は「(オリジナルメンバーの)彼らが10年間かけて作り上げたこのステージからの景色は、泣いてる人も笑ってる人もいて、心に来るものがありました」と敬意を表す。さらに自身がサポートメンバーに立候補した際に送った長文メールを読み返したことに触れて感慨に浸り、「自分の場所から見えるこの日のメンバーの表情がとても楽しそうで、今日は最高の日だと思いました。こういう日をまたどんどん一緒に作っていきましょう」と呼びかけた。
2025年3月に正式加入した松田は「大好きなメンバーと大きいステージに立てることはすごく幸せ」と歓喜の念を表明し、「観に来てくださった皆さんとも出会うべくして出会ったと思うので、今後とも力を振り絞ってかっこいい姿を見せていく」と気合いをのぞかせる。最後に兼丸も「今日という日をエネルギーにして、ここからツアーをいっぱい回ります」「全身全霊であなたをお迎えします。不器用かもしれないけど、規模とか人気とか流行りとか関係なく、この4人で、この4人だからできることを、あなたのために1秒1秒届けていきたいと思います」と熱い眼差しを浮かべた。
そしてthe shes goneで初めて制作した楽曲「緑とレンガ」をエネルギッシュに届け、この日を締めくくる。その澄んだ音色はここから始まる10周年ツアーへの、そしてバンドの未来へと向けた宣誓のようでもあった。このツアーは6月からの9公演は春/夏ソング、9月からの11公演は秋/冬ソングを中心としたセットリストで構成され、1年を通してすべてのリリース楽曲を披露するという。この10年で楽曲を成長させ続けているthe shes goneならば、各箇所で各楽曲に新たな輝きを生み出せるだろう。充実のツアーとなること、さらにバンドと楽曲が進化することを確信させる、非常に頼もしいステージだった。
SET LIST
01. タイムトラベラーと恋人
02. ラブストーリー
03. 甘い記憶
04. Make my day
05. サプライズ
06. きらめくきもち
07. 君のパレード
08. panorama
09. ふためぼれ
10. 想いあい
11. 春の中に
12. 栞をはずして
13. shower
14. まぼろし
15. ラベンダー
16. ダーリンレス
17. 最低だなんて
18. 嫌いになり方
19. シーズンワン
ENCORE
01. マリーミー・マリーユー
02. 緑とレンガ
























