摩天楼オペラが希望ある未来への一歩を踏み出した“15th Anniversary Live”をレポート!

ライブレポート | 2022.05.13 18:00

摩天楼オペラpresents 15th Anniversary Live
2022年5月4日(水・祝) 東京・大手町三井ホール

摩天楼オペラが5月4日、結成15周年を祝うワンマンライブ『15th Anniversary Live』を開催。会場チケットが即座にソールドアウトしたため、当日は生配信も行われた。ライブ中には昨年からサポートをつとめていた優介(Gt)が正式メンバーとして加入。6月22日に3年ぶりとなるフルアルバム『真実を知っていく物語』を発売し、7月からは各会場2DAYS公演、各日コンセプトの違うライブを行なう『15th Anniversary Tour -EMERALD-』と題したツアーを、全国9都市18公演行うことも発表した本公演のレポートをお届けする。

結成当初からメロディックなスピードメタル、パワーメタルを軸に、ときには激情的なシンフォニーにのせて、あるときは重厚感あるクワイア、またあるときはオペラー(=ファンの呼称)の歌う合唱とともに、ヴィジュアル系シーンのなかでも美しさと激しさを兼ね備えたサウンドを奏でてきたバンド。それが摩天楼オペラだ。15回目の結成記念日、今回彼らが会場に選んだのはバンド初となる大手町三井ホール。会場の入り口には、オペラーたちが15周年を祝うために彼らに贈ったデザイン、配色まで凝りに凝ったゴージャスなバルーンフラワースタンドが勢揃い。これが横一列に並んでいるだけで壮観だった。

席につくと、開演時間を数分押して場内が暗転。無音のなかメンバーがオンステージ。オープニングナンバーは「Eternal Symphony」だった。バンド名がプリントされた巨大なバックドロップ、客席の頭上を駆け抜ける無数のレーザービーム。ホールならではの演出とともに、大手町のオフィス街のど真ん中、高級感ただようエレガントで美しい会場に迫力のメタルサウンドが広がっていく様は圧巻!現実から非現実の扉を開けたあとは、「Sacrifice」へ。イントロから観客は頭を振り、拳を突き上げ、「Anemone」では燿(Ba)が頭上に手を伸ばし、クラップを求める声に答えてオーディエンスが歓喜の手拍子を送る頃には、会場はいつものロック空間へと塗り変わっていた。曲が終わったあと、鳴りやまない拍手のなか、苑(Vo)が15周年を迎えたことについて「ここにくるまでは奇跡の連続だった」と振り返った。そうして、摩天楼オペラとして初めてワンマンライブを行ったとき「自分たちを好きな人の前で自分たちの好きな曲だけをやれるここは、俺らの遊び場だなとMCでいったと思うんだけど。15周年を迎えたいまも、同じ気持ちでここに立っている気がします」と伝えると、会場にはひときわ大きな拍手が広がった。

苑(Vo)

「今日は思いっきり楽しもうぜ」とオーディエンスを煽って、「ANOMIE」から代表曲を連発。観客はヘドバンにジャンプ、ペンライトを振るなど、様々なアクションでバンドを後押し。舞台上では赤いショルキーを激しく華麗に弾き倒す彩雨(Key)と変則的なフレーズを入れまくる燿がステージ前列に飛び出し、場所を入れ替わってオーディエンスをさらに煽っていく。苑が「飛べー!」と叫んだあとの「MONSTER」は、イントロから床が抜けるんじゃないかと思うほどの勢いで観客は一斉にジャンプ。レインボーカラーのレーザーが場内に広がるなか、燿のファンキーなサムピングが観客の体をさらに揺さぶり、オーディエンスをモンスター化させたところに「Justice」だ。シンセのストリングスと彩雨のキーボードの音色が観客の気持ちをぐっと盛り上げていって、歌いたい、でも歌えない。その思いを込めるように、客席は激しいヘドバンで応戦。

「悲哀とメランコリー」でもオーディエンスはタオルを掲げながら、一糸乱れぬヘドバンを場内に作ってみせる。その熱気を「RAINBOW」がさらにバーストさせる。スピードメタルのなかで燿、響(Dr)、彩雨、昨年からサポートをつとめる優介(Gt)各々が激烈なプレイを仕掛け、それを苑がサビのキャッチーなメロディーですべて受け止め、伸びやかなハイトーンヴォイスを使ってクライマックスへと導いていった先の多幸感。ここで清々しささえ感じられるところまで気持ちを解放できるのは、メタルサウンドが基盤にありながらも15年間“美メロ”キラーであり続けた彼らの極みだ。前半戦だけでここまでのピークを作り上げてみせた摩天楼オペラ。だが、彼らの音楽の凄さはこれだけでは終わらない。

燿(Ba)

響(Dr)

苑が姿を消し、始まったのは「SYMPOSION」。インスト曲の概念を覆すようにベースのフレーズが曲をリード。そして、各々がテクニカルなプレイを披露しながら、楽器隊だけで美しい音空間を構築していく。彩雨がステージにセットしたキーボードへと移動。単音弾きのフレーズを繰り返しているとバックドロップが徐々に降下。ベートーベンの「月光」を思わせる三連符のメラッコリックなピアノソロへと移り変わってくと、舞台後方にこのホール最大の特徴であるガラス窓が前面に広がり、その窓にオフィス街と街路樹と空、東京タワーの大パノラマが広がる。景色に見とれていたら、知らない間に苑の歌が加わり、始まったのは「もう一人の花嫁」。ここからはドラマチックな旋律を得意とする摩天楼オペラならではの、激情の世界が幕を開ける。重厚なバウンドサウンド、その上を美しいストリングスやピアノが包み込みながら、起伏の激しい展開を繰り広げていくこの曲。アウトロではその音が途切れ、苑がアカペラでビブラートをきかせたロングトーンを使い、花嫁になれなかった主人公の気持ちを見事に代弁していった。三連つながりで次の「Helios」へとつなぐと、彩雨は再び後方のキーボードへと移動。ピアノの華麗なフレージング、“覆い尽くせ 希望の陽よ 何よりも天高くあれ この空の全て~”のパートを歌う苑のハイトーンが、窓の外に広がる空に向かって抜けていったシーンは本当に絶景で、「Helios」という楽曲のスケール感が改めて脳裏に刻み込まれた場面だった。そうして、荘厳なSEが流れるなか、再びバックドロップが窓を覆い、曲は「Innovational Symphonia」へ。シリアスなムードのなか、疾走していく旋律に場内の熱量が一気に高まる。豪華絢爛なシンフォニックメタルのスケール感、ダイナミズムを変幻自在なサウンドワークでたっぷりと体現してみせた摩天楼オペラ。曲が終わると場内は盛大な拍手に包まれていった。

このあと、苑は先ほどの壮大な演出について触れ、「摩天楼を背負って演奏する姿をみなさんに見せたかった」と告白。そうして、コロナ禍からどんどん有観客でライブができるようになったいま「今日は15周年のライブ。ここから未来に向かう希望を発表したいと思います」と語り始めたあと、これまでサポートを務めてきたギタリストの優介が正式メンバーとして加入することを発表した。このあと、優介初の挨拶は「ご紹介に与りました」という丁寧な言葉から始まり、「サポートを始めて1年2カ月。摩天楼オペラに携わる前は、今後のキャリア上積極的に表舞台に立つことはあまり考えていませんでした。そのなかで“バンドは楽しい、ライブは楽しい”という10代の頃に一番強く抱いた気持ちを、このメンバーが掘り起こしてくれました。ここからは止まりたくない。突っ走っていきます」と笑顔で挨拶を締めくくった。

優介(Gt)

「音楽に真面目な人。だから俺たちともしっくりきた」と彼を正式メンバーに迎えた理由を述べた苑は「今日この瞬間から5人になると決めました」と清々しい表情で宣言。再び場内が大拍手に包まれるなか、6月22日に3年ぶりにフルアルバムをリリースすること。そして、このアルバムを提げて全国ツアーを行なうことを立て続けに発表。「まだまだ摩天楼オペラ、先に進んで、希望ある未来を作っていくんで、これからもよろしくお願いします」といったあと、さっそく新曲「真っ白な闇がすべてを塗り替えても」をパフォーマンス。イントロから響の2バスが激しく暴れ出し、疾走感たっぷりくるスピードチューンだ。そのなかでやってくるエモーショナルなサビメロに胸が高鳴る。そこから間髪入れずに、最新シングル2曲を連打。中盤、ソロでつなぎ、歌とピアノの余韻が残る中、再びバンドインしていく緊張感がたまらない「終わらぬ涙の海で」と、3拍子を信じられないようなスピードで刻むリズムが光る「儚く消える愛の讃歌」。この最新作3曲を通して、混沌とした現代を未来へと切り開いていったところで、本編は終了した。

彩雨(Key)

アンコールは苑以外のメンバーが話す場面があり、そこでは「15年前は中学生だった」という響は「摩天楼にドラマーとして成長させてもらった」と感謝の気持ちを述べ、燿は若い新世代が今日から2人になったことで「ハイブリッドになっていく」とバンドの未来を予想。彩雨は「山あり谷ありの15年だった」と振り返った上で「そのなかで今日が一番ワクワクしている」と笑顔でいい、優介は「15年もバンドが存続すること自体とんでもないこと」と分析し、「ここから16周年に向けて自分も成長していきたい」と伝えた。そうして「僕の気持ちが落ちたときに書いた曲を、あのときと気持ちは違うけど、演奏したいと思います。心のなかで歌ってください」と苑が語りかけたあと、歌ったのは、あの曲「PHOENIX」だった。この曲に歌い込んだ“僕らは未来から愛されている”というメッセージを、彼らは何度メンバー脱退があっても不死鳥のようにこうして蘇り、自分たちが信じている音楽さえあれば、未来は開かれていくことをアクトを通して実感させていったのだ。オーディエンスは歌いたい気持ちを抑え、心で合唱を彼らに届けた。

「伝えたいことは全部伝えたし、ここからは無茶苦茶していいですかー!」と苑が叫び、「BURNING SOUL」から始まったダブルアンコールは音圧も熱量も炎をあげるようにバースト。プレイ中、何度も椅子から立ち上がってフロアを盛り上げ続ける響、正式メンバーになった優介もフロントに出ずっぱりでアクトしていく。ものすごい勢いでバンドと観客の熱量が真っ向からぶつかり、渦巻くなか、この日1番の熱狂空間を最後の最後に作ってみせた摩天楼オペラ。

終演後、ロビーは5人になった摩天楼オペラのアー写とともにニューアルバム『真実を知ってく物語』のジャケット、全国ツアー『15th Anniversary Tour -EMERALD-』の日程を告げる新しいポスターに模様替え。この日の公演中に、苑の口から今回のツアーについて<DAY1-追憶の摩天楼>は摩天楼オペラの代表曲、<DAY2-真実を知っていく物語>はニューアルバムの曲をメインとした内容になることも告げられた。
15周年、新体制で制作したニューアルバム、ツアーともども、希望ある未来へと向かういまの摩天楼オペラを、その目と耳で確めてほしい。

SET LIST

01.Eternal Symphony
02.Sacrifice
03.Anemone
04.ANOMIE
05.MONSTER
06.Justice
07.悲哀とメランコリー
08.RAINBOW
09.SYMPOSION
10.もう一人の花嫁
11.Helios
12.Innovarional Symphonia
13.真っ白な闇がすべてを塗り替えても[新曲]
14.終わらぬ涙の海で
15.儚く消える愛の讃歌
Encore1
01.PHOENIX
02.ローンデイジー
03.alkaloid showcase
Encore2
01.BURNING SOUL
02.Psychic Paradise

公演情報

DISK GARAGE公演

15th Anniversary Tour -EMERALD-

DAY1:追憶の摩天楼/DAY2:真実を知っていく物語
2022年7月2日(土)3日(日) 横浜BAYSIS
2022年7月9日(土)10日(日) 福岡DRUM Be-1
2022年7月23日(土)24日(日) 仙台MACANA
2022年8月6日(土)7日(日) 札幌SPiCE
2022年8月13日(土)14日(日) 柏PALOOZA
2022年8月20日(土)21日(日) 名古屋Electric Lady Land
2022年8月27日(土)28日(日) 西川口Hearts
2022年9月3日(土)4日(日) 大阪MUSE
2022年9月30日(金)10月1日(土) 新宿BLAZE

Club摩天楼先行
受付期間:2022年5月4日(祝)21:00~5月15日(日)23:59
※横浜公演~札幌公演までの受付となります。
※詳細はオフィシャルサイトをご確認ください。
※Club摩天楼新規ご入会の方もお申込いただけます。

RELEASE

『真実を知っていく物語』

FULL ALBUM

『真実を知っていく物語』

2022年6月22日(水)SALE

全国主要CDショップでの販売を始め、iTunesや世界中のダウンロードサイトでの配信もスタート!
※全曲のInstrumentalも含む2枚組となります
※Instrumentalの配信はありません
※インストアイベントは開催の有無も含め、後日発表いたします
  • 東條祥恵

    取材・文

    東條祥恵

    • ツイッター
  • ライブ撮影

    かわどう

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