fox capture plan結成15周年記念インタビュー第三弾!最初の集大成的な作品『CAPTURISM』と、新たな側面を打ち出した『DISCOVERY』を振り返る

インタビュー | 2026.09.23 18:00

今年結成15周年を迎えたfox capture planが、結成から2021年までに発表したオリジナルアルバム10作品を、完全リマスタースペシャル盤として、自主レーベルCapturisM.より順次リリース。9月23日には第三弾として、7thアルバム『CAPTURISM』と8thアルバム『DISCOVERY』が発売され、「Capturism」と「NEW ERA」の新録バージョンは配信でもリリースされる。実質的なセルフタイトル作である『CAPTURISM』と、コロナ禍を経て、バンドの新たな側面を打ち出した『DISCOVERY』はともに15年のキャリアにおける重要作。今回のインタビューではこの2作について振り返るとともに、15周年を記念して今年行われたアニバーサリーライブ「RE:FRAME」についても振り返ってもらった。
──前回の取材の直後に2026年度後期のNHK連続テレビ小説「ブラッサム」の音楽を担当することが発表されました。バンドにとっても大きな出来事ですよね。
カワイ ヒデヒロ(Ba)「おー!」っていう感じでした(笑)。でも朝ドラをやったことある作家の友達とか、叔父(作曲家の川井憲次。「梅ちゃん先生」、「まんぷく」などで朝ドラの音楽を担当)とかからも、前情報で「曲数が多い」っていうのをずっと聞いてたので、「これは気合いを入れてやらないと」みたいな感じでしたね。
──叔父さんからは何か言われましたか?「ついに朝ドラか!」みたいな。
カワイそういうの全然ないです。「頑張ってね」って言われました(笑)。
井上 司(Dr)ちょうど一年前ぐらいに、メンバーとミーティング中に当時のマネージャーに連絡が来たんですけど、びっくりしました。やっぱり朝ドラは誰もが知ってますからね。なので、ずっと言いたかったことがやっと言えた、みたいな感じで、反響もすごかったです。「朝ドラは毎日欠かさず見てる」みたいな友達も結構いましたね。
岸本 亮(Pf&Key)劇伴の音楽をやるようになってちょうど10年経つので、今まで積み上げてきたことを評価していただけたのかなって。でもそれこそ曲数も多いし、今回改めて劇伴の難しさも感じていて、初心に戻ったような感じもありつつ、今まで身につけてきた、経験してきたこともしっかり発揮してっていう感じで、すごくやりがいがあります。
──9月28日の放送開始を楽しみにしています。今回の取材では完全リマスタースペシャル盤の第三弾『CAPTURISM』と『DISCOVERY』を振り返りたいと思いますが、2018年に出た『CAPTURISM』は実質的なセルフタイトル作と言えますよね。まずはこの作品であり、この時期を振り返っていただけますか?
岸本『CAPTURISM』のリリースツアーのファイナルがEX THEATERで、コロナ前だと過去最大級のキャパシティで。そこまでは順調にステップアップしていってる感覚があったし、集大成的な感じがあった気はしますね。

岸本 亮(Pf&Key)

──過去2回の取材も踏まえると、最初の三作でピアノトリオとしてのベーシックができて、次の三作でストリングスやシンセ・電子音を使って、さらに幅を広げた上で、改めてfoxらしいものを作った。ある種の原点回帰的な側面もあり、だからこそ7枚目にしてセルフタイトルのような作品になったのかなと。
岸本そうですね。『CAPTURSIM』は個人的にも好きなアルバムの中に入ってくる作品です。「Greatest Blue」とか「Paradigm Shift」とか「Because Of You」のカバーもそうですけど、今もセットリストに入ることが多いですし。ツアーの本数とか、ツアーの中で出演するイベントの本数も、この時期めちゃくちゃ多かった記憶がありますね。
井上初めてアルバムを作るために高崎のTAGO STUDIOで合宿をして。

井上 司(Dr)

岸本JABBERLOOPでも使ったりしてて、ピアノもいいし、ドラムの録り音の空気感もすごくよくて。あと都内のスタジオだと終わってから飲みに行くのが好きだったりするんですけど、TAGO STUDIOだと録りに集中できるので、めちゃくちゃクリエイティブになれるのもよくて。
井上結局飲みには行ってたけどね(笑)。

カワイ ヒデヒロ(Ba)

岸本「Paradigm Shift」みたいな曲は次の「NEW ERA」に…両方カワイくんの曲なんですけど、繋がりというか、片鱗みたいなのはこのときすでにあったのかなって。曲の構成感というか、ストーリー性みたいなものが曲に反映されてる。
──『DISCOVERY』から新しいモードに入っていくけど、その予兆がこの時点であると。
井上『CAPTURISM』をリリースするちょい前ぐらいにツアーがあって、初めてBLUE NOTEでワンマンをやったんですよね。
岸本BLUE NOTEのBLUEから着想を得て、「Greatest Blue」っていうジャズをイメージしたツアーをやって、それきっかけで書いた曲(「Greatest Blue」)も入ってるし、「We Are Confidence Man」もジャズテイストが強いから、そっちの側面も結構出てた時期ですね。
カワイ劇伴も結構コンスタントに入るようになってきて、いろいろやることが増えて、でもアルバムは作んなきゃって、てんやわんやだった記憶しかないですね。「We Are Confidence Man」のMVには小手伸也さんが参加してくれて、ドラマ仕立ての構成でやってもらって。頼んだら割と気軽に「いいですよ」って言ってもらえて、あれも面白かったですね。女優 (ひなた日姫)さんがカナダに留学する前日とか前々日ぐらいの撮影で、出演してもらって、そのまま「空港向かいます!」みたいな感じだったり(笑)。
──「Capturism」はNEW TAKEが収録されていて、変拍子はfoxの十八番ではありますが、ここまで何度も拍が変わる曲はなったかなと。
岸本最初の頃の「capture the Initial“F”」とかは7拍子で終始完結するんですけど、速いBPMで拍子が変わっていく、よりスリリングなものを出していって、その集大成的なものを見せないといけないっていうのはあったかもしれないです。最初の録音はクリックを聴いてやってるんですけど、NEW TAKEではクリックを外して、こっちの方が勢いとかノリが出るなって。ただ途中に結構難しいブレイクとかが入ってたりするので、ライブでやんの怖えなっていうのはちょっと思ってます(笑)。ドラムとベースが交互に演奏したり消えたりするパートがあるんですけど、そこでもちょっと遊びが入ってたりして、よりライブのフィーリングに近づいたかな。
井上「Capturism」は最初のデモを聴いた瞬間に「これは体に悪い」っていう(笑)。あのイントロが「これ何拍子?」みたいな、最初全然つかめなくて。
岸本大クレームでした(笑)。
──ずっと6拍子ではあるけど、表と裏が入れ替わってる?
岸本そうですね。ポリリズムみたいなのをやってて、初見で聴くと「これなんやねん」っていう。騙し絵みたいな感じで、そういう狙いで作ってます。
井上でもライブでやってるうちにもう結構慣れた感じになりましたけどね。
カワイ「Capturism」はライブであんまりやりたくないですね(笑)。とにかく疲れるんですよ。この頃は初期と違って、乳酸溜まる系じゃない曲が多くなってきたんですけど、そこに急にまたマッチョな曲を作ってきて、「また疲れるじゃん」と思って。
──ファンも多い曲だと思うので、是非これからもライブでやってください(笑)。
井上はい、きっとやると思います(笑)。

──『CAPTURISM』からちょっと空いて、2020年の11月に『DISCOVERY』がリリースされました。コロナ禍もありつつ、『CAPTURISM』というバンドの最初の集大成のような作品ができたからこそ、新しいモードに向かったのがこの時期だったかなと。 
岸本その前の2019年に配信シングルを2曲出していて。
──「夜間航路」と「NEW ERA」が出てますね。
岸本あと11月・12月にビルボードライブのツアーが決まって、ストリングスとホーンセクションを入れたツアーにして、その二つが2019年に新しく始めたトピックの二大要素で、それが思いっきりアルバムにも反映されたと思います。仰っていただいたように、『CAPTURISM』がそれまでの集大成的なものだったので、次は一回ストッパーを外してやっても面白いんじゃないかって。 エレキベースを使い始めたのも『DISCOVERY』からだと思う。
カワイ劇伴では弾いてたけど、foxの曲でエレベを入れたのは初めて。
岸本「夜間航路」も新しいフェーズに入ったことを発信しないとなっていうのがありましたし、 「不可思議のカルテ」と「Into the Spiral」にはホーンセクションが入ってたり、『CAPTURISM』まででやった音楽性をさらに一新する何かっていうのは考えてた気がします。あと一回通しで聴いたときに気づいたのは、ドラムのフィルがめちゃくちゃトリッキーなのがやたら多いのも一つ特徴かな。
井上結果的ではあるんですけど、確かに手数が多い曲とか、今までにやらなそうな感じが結構あるかもしれないですね。これもTAGO STUDIOで合宿で録ったんですけど、リズムの録りに時間をかけた覚えはあるんですよ。今までだったら「この感じでいこう」みたいな感じでポンポン進んでたのを一回止めて、自分がやらなそうなフィルをやってみようかなと思ったり、結構時間をかけたのを覚えてます。
カワイ「Spread Out」は別で録ったんだっけ?
岸本そう。オーディオメーカーのタイアップでカワイくんが作った曲。
カワイこのぐらいのときから広告のお仕事とかで「過去のあの曲の感じがいいんですよね」と言われることが多くなった気がして、foxサウンドみたいなのが浸透してきたんだなと思った記憶はありますね。多分「Spread Out」は「Butterfly Effect」みたいな感じがいいですって言われて、それだけじゃつまらないからシンセを入れたけど、多分広告の方はシンセ入ってないんじゃないかな。それまでは「foxっぽいものを」と言われたときに、なんとなく筆を走らせる感じだったけど、ちゃんとエッセンスを一つ足したり、いろいろ考えて、積み上げるように作る思考になったのもこの時期だった気がします。
──ホーンもそうですけど、ライブの再現性は一旦置いておいてちゃんと作り込む。
カワイそうですね。作品の中でちゃんとアンサンブルする、みたいな。
岸本「NEW ERA」も最初は「これライブでどう表現しようかな」っていうのがあったんですけど、今はそんな不安もないぐらい、ライブでほぼ毎回やっていて。
──「NEW ERA」はNEW TAKEが収録されていますが、もともとどういう着想であの曲が生まれたのでしょうか?
カワイ三連系のリズムの曲はあんまりfoxでやってないなってところから入って、最初のサビまでは普通に作ったんですけど、シンセソロの曲ないし、変わった事をしたいし、ひねくれたくなりまして。それでどういうリズムにしようかってなったときに、三連符の四分音符を普通の四分音符として捉えるみたいな手法 (メトリックモジュレーション) をやってみようと思って。で、四つ打ちにしてみたら、これかっこいいかも、みたいな。谷口(当時の所属レーベル・Playwright主宰の谷口慶介)が当時の紹介で「スペースディスコ」って書いてて、「ディスコっぽいか?」って思った記憶がある(笑)。
岸本劇伴の曲だと最初のテーマをまた最後同じようにやって終わってもしゃあない、みたいなところがあって。
カワイ繰り返す必要がないから、1コーラスとかが多いんですけど、この曲は2回目を四つ打ちのテンポのままやってみよう、みたいな。
岸本そういう曲が増えてきてた時期かもしれない。後半全然違う展開になったり。
カワイ確かにね。コードも違うし、譜割りも違うのは面白いなと。突っ走ってそのまま終わるのも開ける感じがしていいじゃんと思って、自分でも「NEW ERA」は結構気に入ってます。
岸本最初の「NEW ERA」はピアノを先にバーッと録ってから後でシンセソロを重ねたんですけど、最新版のは一発録りに近い感じで。ソロだけ録り直したりしてるんですけど、それもソロの尺は丸々ピアノとシンセ両方並べてやりましたね。そっちの方がライブ感が出るので。
井上元の「NEW ERA」はストリングスとかも入ってるけど、NEW TAKEはトリオだけで。普段のライブでやってる感じなんですけど、やっぱり今までの僕らとはちょっと違う系統の曲で。でも結果ライブでやっていくうちに、ほぼ毎回のライブで投入するぐらい、ライブのクライマックスに持ってくるような曲になって、僕ら的にも代表曲の一つになったし、ファンの人もこの曲好きっていう人が結構いますね。自分で演奏しながら、最後ストレートに戻ってくるところがすっごい気持ちいいんですよ。
カワイビルボードで10人編成でやった「NEW ERA」はすごく良かったですね。
──「夜間航路」はSpotifyの再生数が「Butterfly Effect」や「the last story of the myth」と並んで非常に多くて、代表曲の一つになっているなと。
岸本2010年代の末はシティポップのブームがピークぐらいに盛り上がってたので、それは意識してました。あとは当時ピアノ系のインストバンドが多くなりすぎて、自分たちがその筆頭っていう自覚もあったからこそ、新しいアプローチを出していかないとなっていうのもありました。そうしたら、別に狙ったわけではないですけど、Spotifyのプレイリストに結構取り上げてもらえて、そこでちょっと火がついたのはありましたね。「疾走する閃光」とかとは対極というか、両方自分の曲ではあるんですけど、片やファストロック、日本のロック系で、「夜間航路」は音色からテンポ感から真逆を行ってるけど、インストバンドの形態でやってるから、無理やり感が出なかったのかなって。こういうことを歌もののロックバンドがやってしまうと「路線変更しちゃったな」と思われかねないですけど、僕らの場合は「アプローチを変えてきたな」っていう評価をいただけたのかなと。

  • 金子厚武

    取材・文

    金子厚武

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