
──伊藤さんが作曲家生活35周年、上倉さんが音楽活動20周年になります。キャリアのあるお2人にとって、DESTINY 8はどういう場ですか?
上倉ゲーム音楽のバンドって、大まかに2種類だと思うんです。メーカー所属のサウンドクリエイターが主体になっているバンドと外部ミュージシャンのみで構成されているバンド。だけど、DESTINY 8はどちらでもない。作曲家のイトケンさんがフリーだし(※2001年にスクウェアを退社)、自らプレイヤーとしてライブ込みで演奏を行い、今も引き続き「サガ」 の楽曲を担ってらっしゃる。さらに世代の異なる外部ミュージシャンが加わり、化学反応が生まれたという「サガ」 オフィシャルバンドですから、他にはない独特の面白さがあります。そして、制作側にいることが多い僕にとっては、人前に立つ機会を得られる貴重な場。聴き手の反応がダイレクトにもらえると、気分がリフレッシュできるんですよね。
伊藤組ませていただいた喜びや感謝はあったんですが、自分たちの想像以上に愛されているバンドなんだと最近わかってきて。別の現場でも「DESTINY 8のライブ行きます!」と声をかけてくださる方がいたり。印象深いのは「サガ」 シリーズのプロデューサーの市川雅統さん。僕らのことを好きだと公言し、気にかけてくれるのがありがたいです。とても“熱い”方でね。ワンマンをはじめとするこれからの活動を通して、ファンのみなさんにはもちろん、市川さんへ恩返しがしたいなと。そういった願望も個人的に持ってます。

──ちなみに、伊藤さんの35周年ライブの際、バンドが改名予定であるというお知らせをされていました。
伊藤さっき話に出ましたが、まだまだ可能性を広げられそうな気がするので。自由にやっていくうえでの過程として改名も考えている、ということですね。今回の大切なライブをどう成功に導くか。その結果、先々のビジョンが見えるんじゃないかと思います。
上倉例えば、改名によって活動の選択肢が増える、メンバーのポテンシャルが一段と発揮できるならっていう。あくまで前向きな意図です。
──今後の展開を楽しみにしてます。上倉さんと伊藤さんが思う「サガ」 ミュージックの魅力についても聞かせてください。
上倉作曲者のイトケンさんとは違い、僕を含めた5人はユーザー寄りなんですね。小学校のときに出会った『魔界塔士Sa・Ga』(1989年)から現在に至るまでの全シリーズをプレイしてきたので、ちゃんとストーリーを汲んだアレンジにしたいし、当時のいろんな記憶が甦って人生を振り返るような気持ちにもさせられる。それがモチベーションになるのが不思議だなと感じてます。わかりやすい魅力は何だろう……「サガ」 シリーズの音楽って、王道を行った「ファイナルファンタジー」シリーズと比べたら、なんでもありな世界観というか。あえてチャレンジをされていたんでしょうけど。

伊藤“「ファイナルファンタジー」とは逆を行かなきゃ”精神でね。僕もまだ20代。尖ってました(笑)。
上倉尖った姿勢が曲にも表れてます。なおかつ、鼻歌で口ずさめるくらいにメロディアス。
伊藤うん、強みはメロディでしょう。師匠格の植松伸夫さんがそういう考えなので、倣ったところはありつつ、曲作りの面で持ち味がドンと出ました。植松さんとは違う個性が自分にはおそらくあって、同じく「サガ」 シリーズに携わった笹井隆司さんや浜渦正志くんにも当然あって、各々のカラーがいい形でゲームにハマったんじゃないかと。僕の場合は幼少期に影響を受けたニューミュージック系の歌謡曲とか、クラシックピアノを学ぶ流れで知ったポール・モーリアとか。映画音楽も好きです。いずれにしてもメロディアスな歌もの。その傾向が顕著だから、歌に近いメロディはひとつの特色ですかね。
──20代の頃に作った曲は、どう聴こえるものですか?
伊藤今の僕では絶対に作れない。40代でもリアレンジをするタイミングがあったんですけど、いざ原曲を聴いたら、脳内で鳴ってたテンポ感とまったく違って。あきらかに自分のテンポ感が遅くなっている事実に驚かされましたもん。“これが年を取るってことか!”“「四魔貴族バトル1」こんなに速かったっけ?”みたいな(笑)。その時点で鍛え直さなきゃいかんなと思い、DESTINY 8を組むときはなるべく若い頃の感覚に戻したかった。
上倉オリジナルより速くしちゃった曲もあります。ドラムの岡島さんが「待ってくれ!」となってました(笑)。言ってみれば、自分たちの首を絞めるようなアレンジ。ちょっとスポーツ的です、DESTINY 8のライブは。
伊藤「七英雄バトル」(『ロマンシング サ・ガ2』/1993年)じゃない?
上倉ですね。メンバーでも話してるけど、「七英雄バトル」はメロディラインやコード進行がまさに歌謡曲なんですよ。メロがadd9(アドナインス)で終わるとか、フレーズ感を含め、音楽的に一筋縄ではいかない作りになっていて、「サガ」 シリーズを代表するナンバーだと思いますね。DESTINY 8のMV曲にも選ばれました。
伊藤バージョンをたくさん録ってきたのと、『ロマンシング サ・ガ』(1992年)で全エネルギーを出し尽くした直後のミッションというのもデカいかな。灰の状態から火を起こすように、苦しんで作りましたよ。そんな「七英雄バトル」が未だに演奏できる、好きと言ってくださる方が多いのはシンプルに嬉しい。あのとき頑張ってよかった。よく仕上げたなとも思う。アレンジ次第でこうも活きるのかと新たな発見があったり。僕の中でまだ可能性を秘めている曲なんです。メロディが残る曲にして正解でしたね。どう料理してもらっても大丈夫なので。
七英雄バトル -Encounter with the Seven Heroes- (DESTINY 8)
──ツーバスがドコドコ唸るヘヴィメタル調のアレンジになっても、メロディの良さは際立っています。
上倉あははは(笑)。メロディが強いからこそ、どんなアレンジにも耐え得る曲だと思います。鐘の音を入れようが、分厚いコーラスを差し込もうがOK! 「サガ」 シリーズといえば、やっぱりバトル曲がカッコいいです。
伊藤「サガ」 のライブでさ、もしもバトル曲をいっさいセットリストに入れなかったらどうなるんだろう? 暴動が起こるかもね(笑)。
──先日放送のテレビ朝日系『熱闘甲子園』では、「四魔貴族バトル1」(『ロマンシング サ・ガ3』/1995年)がBGMに使われたそうで。
伊藤そうなんですよ。作曲家の僕としては、番組にマッチしてるかどうか客観的な判断ができなかったんですけど、喜んでくれた人もいたみたいです。
「四魔貴族バトル1」(DESTINY 8 Mini Live『ロマンシング サガ リ・ユニバース』2周年祭より)
──高校野球に馴染んでました。ワンマンライブに合わせて開始となったDESTINY 8のストリーミング配信も、ぜひチェックしてほしいですね。
上倉リハーサルはこれからですけど、セットリストは決まりました。メンバーそれぞれの思うベストなセトリを作ったうえで、5案のいい部分をイトケンさんに抽出してもらった感じです。
伊藤こだわりが見えた曲の並びなどは、そのまま引用してます。
──メンバー全員の想いが詰まったライブになるということですね。見どころを挙げるなら?
上倉ライブではまだ演奏していない曲もやります。ずっと観てくださってる方は、そのあたりがポイントになるんじゃないかな。
伊藤自分以外が素晴らしいミュージシャンばかりなので、不安は何ひとつありません。僕はMCに命を懸けます! そこでどれだけ沸かせられるか(笑)。
上倉MCで30分は行かないように気をつけましょう(笑)。
伊藤我々が曲の速さに挑む一方、お客さんも体力勝負になるはず。渋谷WWW Xはオールスタンディングですから。果たして、どんな感じになるのか。
上倉ゲーム音楽のライブで珍しいですよね。バトル曲もあれば、じわっと聴かせる曲もあり。ボリューミーな内容です。
上倉考えますか(笑)。メンバーとお客さんの距離感が近いのもレアですね。テクニック面、手の動きや高速ぶりは確認しやすいはず。
──原曲のメロディを忠実に奏でつつ、ソロパートなどが追加されてますし、今後バンド名が変わるかもしれないという意味でも必見のライブです。
伊藤6年間の集大成かつ新たな可能性を探る、楽しい日にしたいと思います。
上倉ロックアレンジの「サガ」 ミュージックを、生で体感してください!

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