人間椅子、最新アルバム発売記念ワンマンツアー、近年最多の全15公演開催!

インタビュー | 2016.02.19 13:00

人間椅子

──まずは、アルバム・タイトルからも窺える今回のコンセプトについて聞かせてください。

和嶋慎治(Vo&Gt) 僕らは、ダークな感じの曲調でヘビーなサウンドに日本語を乗せるということで1stからずっとやってきて、今回ももちろんそういう音楽をやるんですけれども、聴いてくれる人がだいぶ増えて来たなということを手応えとして感じていまして。そこでさらに「バンド名は知ってるけれど音は聴いたことがない」という人にも聴いてもらいたいなと思いまして、そのためには…。いままでアルバム・タイトルが難しいものが多かったんですよね。それはそれで、僕らのスタイルなので構わないとは思ってるんですが、でも今回はタイトルだけでこういうことをやってるんだというのが分かるようにしたいと思いまして。去年、またOZZFESTに出て、バンド名を知ってもらう大きなきっかけにもなったと思うので。アルバムで何をやるかということに関しては、暗い音楽をやるんだけど、その音楽を通じて生きる歓びであったり、光を見るということをやりたいんですよ。で、日本の昔の怪談というのはただ怖いとか気味が悪いとか、そういう事だけではなくて、根底には優しさや愛があるように思う訳です。だから、怪談というテーマでやると、分かりやすくて、しかも自分たちがやりたい感じでやれるなと思ったんですよね。

──今回のアルバムを聴くと、人間椅子の音楽のいちばんベーシックな部分をさらに突き詰めたという印象だったんですが。

和嶋 そうですね。ベーシックな部分をいっそうエッジを効かせて、しかも洗練されたかなあという気がしてます。だから、どの曲もそれぞれにキャッチーさもあると思うんです。大きかったのは、去年いろんなイベントに参加して、いろんなミュージシャンの方といっしょに舞台に上がって刺激を受けたり、劇伴やエンディングテーマの楽曲を作ったりしたんです。それで、ただ自分たちの好きな音楽をやるというだけじゃなくて、聴かせるためにはどうすればいいかということを少し勉強出来たような気がしていて、その成果もうまい感じで出てるように思います。

──鈴木さんは、今回のアルバム作りにはどんな気持ちで臨んだんですか。

鈴木研一(Vo&Ba) 僕は、平成4年からやってたアルバイトがほとんど本業みたいになってたんだけど(笑)、それを辞めまして、バンドだけでやっていくぞっていうことを決めたのが去年だったんですね。それで、曲作りに使える時間がグッと増えまして、“ここまで時間が増えたんだから、いい曲を作ろう!”という強い気持ちで相当に考えて、選び抜いた曲を今回は入れることが出来ました。和嶋くんは常々「人間椅子は再スタートをきった!」と言ってますが、再スタートというか、本気出したら凄いぞというところを見せない訳にはいかないなという感じでしたね。

──ノブさんは、最近の人間椅子を取り巻く状況についてどんなことを感じ、そのことが今回のレコーディングにどんなふうに繋がっていると思いますか。

ナカジマノブ(Vo&Dr) いつもレコーディングの時には、前回を超える曲を作りたいと思ってやるんですが、演奏の部分でも前回を超えたいと思ってるんですね。僕は人間椅子に入って12年目なんですけど、テクニック的にもグルーヴ的にも前回を超えたいというその気持ちの部分で今回初めて少し余裕を感じながらやれたんです。それで、いろんなことを考えながらやるということができたんですけど、それは多分、研ちゃんと和嶋くんと10年やってきた結果として考える道筋を短く辿れるようになって、それで余裕が出来たということなんじゃないかなあという気がしてるんです。だから、今回は今までより深く“このアルバムではどう表現しようかな?”ということを考えられたんですが、その時に僕が参加する前の人間椅子の曲をちょっと聴き返したりもして、その中で常にライブでやってるような曲のテイストを振り返ってみると、前作までで自分がやろうとしてたことよりももっとシンプルだなということに気づいたんです。シンプルで、やっぱりグルーヴが大事で、そのシンプルな中でかっこよさを表現するということをやってるなっていう。だから、今回はテクニック的にいままでやれなかったこういうことがやれたぜ!みたいなことじゃなくて、人間椅子の素みたいなかっこよさを俺なりに表現したいなと思ってやったんですけど、それがもしかしたらベーシックということだったのかなと今の話を聞いてて思いました。

──ノブさんが入って12年目という話が出ましたが、その12年の間に人間椅子というバンドに何か変化があったように思いますか。

ナカジマ 基本的には、信念もかっこいいと思ってるものも変わってないです。表現したいものも変わってないと思いますが、表現方法の中の3人が見てる共通視点というか、「こういうかっこいいものにしよう!」っていう共通言語みたいなものが毎回ちょっとずつ変わって、例えば今回だったら“怪談”という方向性のなかでやっていったわけで、その方向性は少しずつ変わっていってるということは感じます。

──そこでまた話は最初に戻るのかもしれませんが、和嶋さんが最初に言われたより広く聴いてもらうことを意識したということが曲作りや演奏に具体的にはどういうふうに反映されましたか。

和嶋 基本的なところは変わらないんだけど、つまりはハードルが上がったということだと思います。楽曲のクオリティーを上げるということですね。で、時間をかけると、やっぱりいい曲になるんですよ。もちろん、元になるものがよくないとダメなんですよ。石炭をいくら磨いても宝石にはならないけど、宝石は磨けば磨くほど綺麗になりますよね。そういう意味で、曲の原石を磨き上げる集中力やエネルギーを以前よりも注ぎ込んだという感じがします。というか、そうしないと求めているものにならないというか。で、いろんな人とやるなかで、人が人間椅子というバンドに求めているところも意識するようになりました。ただ作ってもダメだな、というか。求められていることをやりつつ、そこに好きなことを入れて曲を作りたいなと思うようになりましたし。他者を意識するようになったということだと思うんですけど。それから、去年またOZZFESTに出ましたけど、ということは海外のバンドと同じステージに立つわけで、そこでは同列に聴かれることになるわけですよね。日本のバンドだからこうなんだ、というふうには思われないように、そういう意味でもハードルは相当上げましたよね。ただ、そこで意識したのは日本人なりの表現をしないと海外の人は認めてくれないだろうなっていうことで、外タレがやってるようなことをそのままやっても、「そういうのは、ウチの国にもいるよ」って言われちゃう。アジアの日本という国なりの文化を何か入れないと、海外のロック・ファンは「オオーッ」と盛り上がってくれないんじゃないでしょうか。そこを以前よりもいっそう意識して、うまくロックと融合するようにそこは時間をかけてね。もちろんそういう要素をただ入れればいいという話でもなくて、ただドメスティックなものを入れただけだとかえってかっこ悪くなりますからね(笑)。

──いまのお話にあった、「人が人間椅子に求めているもの」をうまく折り込むというのは具体的にはどういうことですか。

和嶋 かっこいいリフをより意識するということですよね。

鈴木 リフがぼくらの最大の武器ですからね。歌では他のバンドにかなわないところもありますけど、リフでは日本では誰にも負けないっていう自負はあるんですよね。

──「雪女」と「マダム・エドワルダ」と、今回は女性主人公の2曲が入っているのも、人間椅子のアルバムではちょっと新鮮ですね。まあ、雪女は女性なのか?という話はありますが(笑)。

和嶋 ああ、そうですね。まず、基本的にあまり恋愛の歌はやらないようにしてるんです。やったとしても、苦しい恋というか実らぬ恋の曲で、アルバムに1曲あるかないかという感じなんですけど、やっぱり“死とエロス”という副題をつけたからですかね。女性というのは美しさを体現する存在だと思ってるんで、今回は出したかったんですよ。男からみた女性ということではありますが、そこには存在の悲しさみたいなものもちょっと感じたりして。それをなんとか表せないかなという気持ちはあったと思いますね。

──そこで雪女が出てきたのは?

和嶋 それはやっぱり“怪談”というテーマからですね。美しさと恐ろしさの象徴として、雪女の曲を作りたいと思って。

鈴木 でも、雪女の曲を作ろうと思って、普通あのリズムにはならないよね(笑)。さすが着眼点が違うなあと思ったんですけど。

和嶋 地吹雪の感じですよね。下から雪が舞い上がってくる感じを出したかったんです。それは、自分が雪国出身で良かったなあと思いましたよね。あの身を切られる寒さを知ってるっていうことが大きかったと思いますね。

鈴木 そうかあ。地吹雪に16ビートを感じてたんだ。そうかあ。でも、雪にはなんか、リズムがあるよねえ。

和嶋 静かに降ってるときは、相当ゆっくりなんですけど…。

鈴木 あれは、アルペジオっていう感じだね。

和嶋 そして、吹雪いてるときの、あの痛みを感じるほどの音ね。

──歌詞とサウンドのコントラストということでいうと、「地獄の球宴」は個人的にはユーモアさえ感じさせるように思いましたが。

鈴木 僕は地獄の絵をよく見るんですけど、ただ怖いだけじゃないんですよね。ちょっと滑稽なところもあって、そこがいいんですよね。この曲は、そんな感じが出せないかなとは思ってたんですけど。

──MVは、1曲目の「恐怖の大王」ですね。

和嶋 アルバム全体を包括できる曲かなと思ったんで。つまり、ヘビーな部分もあるし、変拍子的な要素も入ってるし。リズムが変わるプログレッシブ・ロック的な要素も入ってるし、そういう僕らが好きでよくやる要素が全部入れられた曲だなということですね。

──アルバムリリース後にはすぐに全国ツアーが始まります。

和嶋 今回は、1ツアーとしては、ここ15年くらいでいちばん多い本数になりますね。ずうっと行ってなかったところに行くし。

──例えばどこですか。

和嶋 秋田とか、そうですね。

鈴木 宇都宮とか…。

和嶋 宇都宮はデビュー以来ですよ。

鈴木 広島もあんまり行かないし、高松もこの間やっとまた行くようになったところだし。

和嶋 で、そういうところに行くと、やっぱり“待ってました!”という感じなんですよ、お客さんも。ノブくんにブッキングはやってもらってるんですが、ライブハウスの人たちもすごく喜んでくれてるみたいだし。

ナカジマ 今回の15本というのは、僕らが増やそうとしてこうなったというわけじゃなくて、例えば「ここは前回行ってないから行こうか」とか、「今回はオリジナル・アルバムを持ってのツアーだから少し規模を大きくしようか。じゃあ、九州は1カ所じゃなくて2カ所。東北はゆかりのあるところだから、もう2カ所くらいやろうか」みたいな感じで、そういうふうにやっていった結果がこうなったということなんですよね。

──それで、東京公演がファイナルになるわけですが、どのバンドに聞いてもツアー15本目くらいというのはいちばんいい具合にまとまってくる時期のようですね。

和嶋 相当いいと思いますよ。

鈴木 いやあ、枯れちゃってるかもしれないよ(笑)。

ナカジマ ただ、バンドが進化してるからこそ本数が増えてきてる、ということはあると思うんです。パフォーマンス自体、“この人たち、ホントに50歳なの?” という感じだと思いますから、そういう意味でも若いバンドにも負けないライブになると思います。

和嶋 今回のアルバムはハードルが高くなってるという話をしましたが、それは演奏の部分でもそうなんで、ライブで挑戦し甲斐があるというか、ライブではよりかっこいい音楽を披露できるんじゃないかと思います。

──楽しみです。ありがとうございました。

インタビュー/兼田達矢

『怪談 そして死とエロス ~リリース記念ワンマンツアー~』

2016年3月8日(火)
HEAVEN'S ROCK Utsunomiya
18:30 開場 / 19:00 開演

2016年3月19日(土)
赤坂BLITZ
17:30 開場 / 18:30 開演

NOW ON SALE

3月19日(土)赤坂BLITZ GET TICKET受付(当日引換)

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