兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第189回[2025年7月前半・久々のsyrup16g、初めてのOoochie Koochie、TESTSETと電気と羊文学で3日続けてリキッドルーム、等の8本を観ました]編

コラム | 2025.08.07 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライターである兵庫慎司が、半月の間に自分が観たすべてのライブのレポを書く連載の189回目=2025年7月前半編です。
Ooochie Koochieのツアー初日を観た広島グリーンアリーナ、ここ、前にも来たことあるな、なんだったっけ……と記憶をさらったら、オアシスの来日公演でした。2000年3月14日、なので25年前。当時自分がいたBUZZという音楽雑誌で、この時のオアシスの来日ツアーを、編集部みんなで手分けして、観れるだけ観て記事にする、という企画をやって、自分は横浜アリーナ・広島グリーンアリーナ・宮城県のグランディ21に行ったのでした。

7月3日(木)19:00 syrup16g @ Zepp DiverCity(TOKYO)

今年2025年は、昭和に換算すると100年、ということで『syrup16g TOUR 2025〜孤毒の百年〜』と銘打って行われたツアーの、二回ある東京公演のうちの一回目(もう一回は7月9日恵比寿The Garden Hall)。
昨年11月2日に日比谷野音で行ったワンマン『遅死11.02』を、Blu-rayにして4月23日に発売、というリリース物があってのツアーでもある。
ここ数年のsyrup16gのツアーは、「ニューアルバムが出たので」とか、「あのアルバムのリリースから16周年なので再現ライブやります」とか、「全部新曲でやります」とか、そういうようなお題目が毎回あった。というのと比べると、今回はそういう縛りがゆるい。
そのせいか、最新アルバム『Les Misé blue』を曲順どおりにやりつつ、ところどころで曲を抜いて代わりに別の曲(どれも解散前の頃の代表曲)を入れる、というような、ちょっとおもしろいセットリストになっていた。「はい、ライブの定番曲です」というのは、「神のカルマ」「Sonic Disorder」「coup d’Etat」「空をなくす」ぐらいだったし。
なお、二度のアンコールで演奏された5曲のうち、3曲は再始動後の曲で、1曲は、このツアーで初公開された新曲。
今年のsyrup16g、新音源のリリースの予定とかは(今のところ)ないけど、このツアーの後も、UNISON SQUARE GARDENの対バンイベントに出たり (7/29、Zepp Sapporo)、『UKFC on the Road 2025』に出演したり(8/9、Zepp Haneda)、ART-SCHOOLのトリビュートアルバムに参加したり(8/20リリース)と、ちょこちょこ動きがあります。

7月5日(土)18:00 佐野元春&THE COYOTE BAND @ さいたま市文化センター大ホール

デビュー45周年のツアー『45TH ANNIVERSARY TOUR MOTOHARU SANO AND THE COYOTE BAND』の1本目。THE COYOTE BANDの20周年でもある。この日から12月まで5ヵ月かけて27公演。ここまで大規模なツアーを行うのは20年ぶりだそうです。
懐かしのヒット曲から近年の名曲の数々まで揃ったセットリスト。佐野元春もTHE COYOTE BANDも、もともと凄腕の集合体とは言え、ツアーの初日だとは思えない仕上がりっぷりで、その上、アグレッシブさやナイーブさもパフォーマンスから滲む。これ以上はないだろう、と思うくらい、大充実のステージだった。でも1本目だから、きっとさらにどんどん良くなるんだろうな。

7月6日(日)16:30 フラワーカンパニーズ @ 江東区文化センターホール

2年にいっぺんくらいのペースで行っているアコースティック・ツアー『フォークの爆発』、今年は福島の喜多方、東京の江東区の(最寄り駅が)東陽町、三重の松阪、広島の福山、という4本。その2本目がこの日。
初めて行きました、この会場。フラカンも初めてだそうです。東陽町には江東運転免許試験場があって、昔、そこで丸一日免停の講習を受けた。その最後に、東陽町の街に出て交通安全の黄色いタスキを掛け、「横断中」の旗を持って交差点に立った──というMCをギタリスト竹安堅一がして、客席、大笑い。竹安、「あとでその時の写真、アップしときます」。後日、オフィシャルサイトのブログ(鈴木圭介と竹安が担当している)を見たら、確かに上がっていました。さらに大笑いしました。
今年はグレートマエカワが全編アップライト・ベースを弾く、という新しいトライアルもあり。RCサクセション「よォーこそ」のカバーで始まったり、昔、友部正人と鈴木圭介が共作した「人間をはるか遠く離れて」を歌ったり、自分たちもお客さんも着席してのライブであるという安心感からか、MCが長くなったり。
あと、フラカンの隠れた大名曲である「夜明け」を聴けたのが、特にうれしかった。経年劣化の逆で、リリース(1999年)から年を重ねれば重なるほど良くなる、この曲。沁みる。

7月8日(火) 18:30 銀杏BOYZ @ Zepp DiverCity(TOKYO)

3月〜4月に完全DIYで行った、初のアメリカ西海岸ツアーで出た赤字を埋めるツアー。と、峯田和伸が言っていた。ここで言っています。 ≫ 【銀杏BOYZ:インタビュー】『銀杏BOYZ×羊文学“じゃぽんVol.1”』開催間近「羊文学は、CDとレコード、全部持ってる。カセットまで持ってる」
そんな、計4本のZeppツアー『昭和100年宇宙の旅』の東京公演。二部構成になっていて、一部と二部の間で、そのアメリカ西海岸ツアーのダイジェスト映像が流れた。
上に貼ったインタビューの時、峯田は、「アメリカ西海岸ツアーで鍛えられた実感あるんですよね。だいぶ自分の中で、意識、変わったところもあって」「今までと違うことを、見つけられたんだよね。これから日本でも、こういう感じでやれたらいいな、っていうのが、見つかった気がした」という話をしていたが、その言葉どおりのものを感じた、観て。
セットリストは(特に後半)、いつもの鉄板の選曲・曲順だったし、わかりやすく何かが変わっていたわけではない。強いて挙げれば、MCがちょっと短めだったのと、中盤から後半にかけてサポートでUCARY & THE VALENTINEが参加した(キーボードやコーラスやボーカル等を担当した)ことぐらい。
でも、なんでしょう、生まれ変わった、とまでは言わないが、新しくなっている、何かとても。マインドとか気構えとかの問題なんだと思う、たぶん。
あと、ライブの中盤でのこと。大阪の古い友達が、先々週に事故で亡くなった、このツアーの大阪公演で会ったのが最後になってしまった──という話をしてから「ナイトライダー」をやった時、峯田、歌いながら泣いているように見えた。
それから、新曲をやった。メロディと言葉をしっかり伝えるタイプの曲だった。
後半では、銀杏BOYZのライブは今年はあと2本だけ、という報告もあり。11月〜12月に宮藤官九郎の舞台『雨の傍聴席、おんなは裸足…』に出演するから、という事情もあると思うが、ライブがない代わりに新曲をいっぱい作っている、レコーディングもしている、と峯田は言った。そう遠くないうちに、新しいアルバムが出る、ということですね。楽しみにしています。

7月12日(土)17:00 Ooochie Koochie @ 広島グリーンアリーナ

奥田民生と吉川晃司の広島出身還暦記念ユニット、Ooochie Koochieの全国ツアーの初日。
レーベルが各ウェブメディア等に配信するオフィシャルのライブレポを書きました。THE FIRST TIMES→Yahoo! ニュースにアップされたやつを貼っておきます。
【ライブレポート】奥田民生×吉川晃司“Ooochie Koochie”全国ツアーがふたりの地元・広島で開幕

7月13日(日)18:00 TESTSET @ LIQUIDROOM

この日から3日続けて、リキッドルームに通った。毎年この時期にリキッドルームが何本も企画している、「恵比寿に移って×周年記念」(今回は21周年)のシリーズ・ライブ、この日がTESTSET、翌日は電気グルーヴ、翌々日は羊文学だったので。
TESTSET、観る度に、自由で、しなやかで、ポップで開かれたライブ・パフォーマンスになっている気がする。まりん(砂原良徳)の機材の種類や配置が、以前とは変わっていたりもした。
あと、7 月30日リリースの新曲「Deleter」を演奏します、その時に同曲のMV素材撮影を実施します、という発表が、事前にあった。「素材」ということは、編集して一部を使うのかな、と思ったが、後日、完成したMVを観たら、全編ライブだった(他の映像とミックスされたりもしているけど)。かっこいい。こちらです。≫ TESTSET - Deleter (Official Music Video)
それから、オープンから開演までの間、KURANGEがDJをやった。サカナクションの江島啓一とレコーディング・エンジニアの浦本雅史のユニット。これもすばらしかった。出番が終わった時の拍手と歓声の量、ちょっとすごいものがありました。

7月14日(月)19:00 電気グルーヴ @ LIQUIDROOM

この連載の前回で触れた電気のツアーもそうでしたが、このリキッドルームでのライブについても、ぴあ音楽の連載『思い出話を始めたらおしまい』に書きました。≫ 第十六話:まりん(砂原良徳)が参加した電気グルーヴのライブ(後編)
なお、「ママケーキ」の冒頭でアカペラで歌うところ、まりん、自分の代わりにagraph牛尾憲輔に歌わせていた。ということだけ、その連載に書き忘れたので、ここに書いておきます。

7月15日(火)19:00 羊文学 @ LIQUIDROOM

羊文学も、毎年のようにこのリキッドルームの周年企画に出ている。ツアーはアリーナ2デイズがあたりまえ(しかもド平日でも完売)のバンドになった現在でも、こうして出演を続けている。たぶん、リキッドを好きなんだと思います。
で、そんな羊文学、最近のアリーナでのワンマンも、フェスとかも、それなりにマメに観ているつもりだが、この日は特に、どえらくかっこよかった。もう大変にオルタナティブで、ガレージで。
リキッドルームだから、わざとコアな演奏のしかたにしたりとか、コアなセットリストを組んだりしたわけでは、ないと思う。「more than words」とか「Burning」とか、「OOPARTS」とか「春の嵐」とか「FOOL」とかもやっていたし。
ただ、活動スケールがここまで大きくなっても、このバンドの根っこのオルタナ感やガレージ感は変わらないので、大掛かりな音響システムや照明や効果映像などがない(というか必要ない)リキッドルームという場所になると、その根っこがリアルに表れる、ということなのだと思う。
開場時間にオープニングDJを務めたTOMMY(BOY)が、途中で乱入してスクリーミングしまくる、という演出もありました。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

    • ツイッター

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る

RECOMMEND編集部オススメなう!