兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第63回[2020年9月前半・観た配信ライブ全部書く]編

コラム | 2020.09.25 17:00

イラスト:河井克夫

 音楽などのライター、兵庫慎司が、主に音楽のライブ、時々演劇やお笑いやプロレスなどの「生で観た公演」について短いレポを書き、月2回ペースでアップしていく連載です。新型コロナウィルス禍以降は、配信ライブを観てレポを書いておりますが、前回は全7本のうち2本が生で観たライブで、今回は5本中2本が生で観たライブです。
 あと、毎回フラワーカンパニーズと突然少年ばっかり観ている、という事実には、自分でも、ちょっとどうなのよ、という気がします。それから中村佳穂のところ、いくら親しいからって人が書いたレポのURLを貼って「詳しくはそちらを」って、おまえライターとしてどうなのよ、という気もします。

9月1日(火)19:00 フラワーカンパニーズ・うつみようこ&YOKOLOCO BAND @新代田FEVER/Streaming+

 フラワーカンパニーズ、2020年は、『月刊フラカンFEVER』と銘打って、毎月新代田FEVERで対バンでライブを行っていく予定だった。で、1月2月は普通に開催できたが、3月11日のうつみようこ&YOKOLOCO BANDとの対バンは新型コロナウィルス禍で興行としては中止、同日同時刻にその2バンドで、FEVERから無料生配信ライブを行った。そして4月以降はご存知のとおり、ライブハウスにメンバー&スタッフが集まるのもダメ、みたいな按配に世の中がなって、配信もできなくなっていたが、ようやくまた動き出すことができたのがこの日。3月11日の振替公演として、お客さん50人限定、有料配信もありで開催された。フラカンが客前でライブを行ったのは半年ぶり。配信はStreaming+、2,500円で、9月2日(水)21:00までアーカイブ視聴可能だった。
 で、これ、フラカンのファンクラブの会報に載るレポを書く仕事で、生で観せてもらえた。なので詳細を書くのは自粛しますが、なんせ300人は入るFEVERに50人、イスありで2バンドとも座ったまま観る、もちろん歓声NG、というわけで、やはり、普段と比べると、かなり異様な空気のライブだった。
 ただし、そんな状態でも懸命にステージに思いを飛ばすお客さんたちと、お客さんたちに思いを飛ばすバンド×2、その念がステージとフロアの間を飛び交うのをひしひしと感じる、もどかしい分却って幸福を味わえた、そんな時間でもありました。

9月2日(水)21:00 突然少年 vs ペドラザ/神々のゴライコーズ @新代田FEVER/YouTube

 まずこれ、3バンドの対バンではありません。「ペドラザ/神々のゴライコーズ」でひとつのバンド名です。新代田FEVERの公式YouTubeチャンネルで無料生配信(投げ銭あり)、3日後までアーカイブ視聴可能。
 この日は、FEVERの中で2バンドが向かい合ってセッティングし、1曲ずつ交互に演奏していく、というユニークな試みだった。で、観てみたら、期待以上に、すんごいおもしろかった。
 いい意味でとにかく目まぐるしくて、目が離せなくなる。突然少年がこういうタイプの曲をやったあとに、ペドラザはこんな曲をやるのか! みたいな、将棋の手の指し合いみたいな楽しさもある。ライブハウスの客席フロアも使っているから、これもまた、無観客じゃなきゃできない試みだもんなあ……と思ったが、考えたら、リキッドルームくらいキャパあったら、お客さんを入れても、やってやれないことはないかもしれませんね。今後、有観客でもやってくれないかな。無理か、大変すぎて。でも、そんなことを観ながら考えてしまうくらい楽しかった。

9月5日(土)19:00 東京事変 @NHKホール(東京)/PIA LIVE STREAM,ZAIKO,WOWOWオンデマンド、全国の映画館

 東京オリンピックの開催日だった7月24日(金祝)に、NHKホールでライブを行ってシューティング、それをこの日に配信。配信先は3つで、PIA LIVE STREAMとZAIKOは税込2,222円、WOWOWオンデマンドはWOWOW加入者限定で無料、いずれも9月6日(日)23:59までアーカイブ視聴が可能。全国の映画館でも、9月5日(土)、12日(土)、13日(日)、14日(月)の4日限定で公開された。さらに後日、10月4日(日)19:30からWOWOWプライムで放送されることも発表になった。
 まあ、とにかくすごいもんでした。SPICEにレポを書きましたので、そちらをぜひ。

SPICE「東京事変が多彩な演出や衣装、卓越した演奏で魅せた無観客配信ライブの全貌」

9月12日(土)20:00 中村佳穂 @京都UrBANGUILD/LIVEWIRE

 スペースシャワのオンライン・ライブハウス、LIVEWIREで配信された中村佳穂のライブ。場所は、彼女の昔からのホームである京都UrBANGUILDで、撮影はBUMP OF CHICKENや星野 源等々との仕事で知られる映像監督、林響太朗。チケット代は前売り3,000円で当日3,300円、9月22日(火祝)23:59までアーカイブ視聴可。
 で。すごすぎた。音楽的にできないことがないくらいの、圧倒的な技術がまずある上で、その技術を超える発想が溢れ出るというか、いや、発想以前に「身体が自然にそう動いてしまう」みたいに本能が口と両手を突き動かす、中村佳穂というのはそういうアーティストである、と、僕は思っていたのだが、なんかもう、その究極みたいな時間だった。「ミュージシャン」とか「表現者」とかよりも、「こういう生き物」と呼びたくなる。なんなんだ、この人。
 知人のライター鈴木淳史が書いたレポが、終了後すぐにSPICEにアップされていたので、詳しく知りたい方はぜひそちらをどうぞ。

SPICE「中村佳穂、LIVEWIREにて配信ライブを開催ーーどのように音が鳴ってるかを想像しながら聴く不思議な音楽世界」

9月13日(日)17:00 突然少年、ハロルド作石 @下北沢シェルター/ニコニコ動画

 しかしよく配信ライブやってるな、突然少年。この日はニュー・シングル『ボール』のレコ発ライブで、まず下北沢シェルターで無観客ライブを行い、その後『ボール』を共に作ったハロルド作石(ジャケットを描く、という形でのスプリット・シングル)とメンバー4人でアフタートーク、というもので、ニコニコ動画で無料生配信(投げ銭あり)された。で、私、そのアフタートークの司会進行の仕事をいただいて、シェルターに行きました。
 なので、ライブを生で観ることができたんだけど、いやあ、すごかった。新型コロナウィルス禍が強まって、「ライブハウスにメンバーが集まるのもNG」みたいになった4月頃はちょっと足が止まったが、緊急事態宣言が明けたあたりから、すごい本数の無観客配信ライブをやっているおかげだと思うが、もうこのバンド、「無観客」という事実が一切関係ないパフォーマンスをできる人たちになっている。
 「ボール」「ゴーストタウン」「フロムアンダーグラウンド」「アンラッキーヤングメン」「火ヲ灯ス」「100年後」「雨の日」「魂の味」そして最後にもう一回「ボール」をやって終了、まさに情熱が爆発しっぱなしの全9曲。観ているこっちも、2曲目あたりから無観客だってことを完全に忘れていた。
 なお、その9曲が終わったら4人はそのままフロアに下りて、僕と作石さんが待っているテーブルについて、アフタートークがスタート。ボーカル&ギターの大武茜一郎は上半身裸のまま。で、作石さんと突然少年、お互いがお互いの作品や活動についてとても活発に質問をし合うトークになって、私、ほぼ何もしなかったような気がしないでもありません。

  • 兵庫慎司

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    兵庫慎司

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