Guiano初となるツーマンツアーファイナル!ゲストにカンザキイオリを迎えたSpotify O-EAST公演で、ふたりの音楽が響き合う

ライブレポート | 2026.11.05 18:00

Guiano Split Tour 2026 ―私の心に、あなたがいた―
2026年10月30日(金)Spotify O-EAST
出演:Guiano / カンザキイオリ

今年2作目となるフルアルバム『風景を見るあなたの瞳に、神はいた』を9月にリリースしたGuianoによる初のツーマンツアー「Split Tour 2026 ―私の心に、あなたがいた―」。みゆな、笹川真生、NakamuraEmi、眞名子 新といった彼がリスペクトするアーティストを各地に招いて開催され、ツアーファイナルとしてカンザキイオリとのSpotify O-EAST公演がセッティングされた。

Guianoとカンザキは旧知の仲かつクリエイティブレーベル・KAMITSUBAKI STUDIOの初期メンバーであることに加え、ボーカロイドクリエイターから音楽キャリアを開始し、現在はシンガーソングライターとしても活動するという遍歴や、ソングライティングだけではなく歌声そのものにも人の心を惹き付ける力があること、死生観をテーマに楽曲を制作することが多いなど、世代や音楽性は異なれども共通点や親和性の高い者同士だ。友人であり、仲間であり、時にライバルでもあるふたりの音楽が響き合う空間は、歪さまでもが美しく見えるほどに純粋な愛情に満ちていた。

開演時刻を迎えると同時に、会場が暗転する。まずはゲストのカンザキイオリの1時間ステージである。

紗幕が掛かったステージに単身現れたカンザキは深々と一礼し、観客は大きな拍手を送った。そこからマイクスタンドの前に移動してアコースティックギターを抱え、観客はその一挙手一投足を固唾を呑んで見守る。1300人の観客がいるとはにわかに信じにくいほどの静寂が広がっていた。するとカンザキは小さくギターをつま弾き、それと同時に電球色のバックライトがぼんやりと灯る。そこから彼が力強いカッティングとともに「アダルトチルドレン」を歌い始めると会場が華やぎ、張りつめていた空気が瞬時に解き放たれた。

彼のボーカルは等身大の大人のときもあれば、少年時代が蘇ってくる瞬間もあり、泣いているように感じられたかと思いきや笑っているようにも見えるなど、彼の心身に詰まったこれまでの人生と様々な感情がリズムに乗せて波のように押し寄せる。自身の内面にある弱さやコンプレックスをメロディと言葉でさらけ出せることは音楽の強度に直結しており、彼の歌唱はそれにブーストをかける。観客もその声が起こす心の波形に、じっくりと身を委ねた。

ほのかに陰を感じさせながら、柔らかく穏やかな語り口で挨拶をしたカンザキは、様々なユーモアを交えて観客とコミュニケーションを取る。そして全曲アコギ弾き語りを行うと宣言すると、「(弾き語りは)誤魔化しがきかないし、俺ギターうまくないからさ。でも下手なまま聴こえちゃっても、それが俺だからいいかなと思って」「みんなと仲良くなりたいから、ちょっとだけ遊びませんか? 俺と一緒に声を出してみましょう」と続け、シンガロングの練習からそのまま「成長痛」へつないだ。観客と音を奏でることに興じた後は、「自由に捕らわれる。」をアカペラで歌い始める。歌詞の一つひとつに血を注ぎ込む姿は、紗幕越しでありながらも鋭い精魂がこちらの心臓を貫くようだった。

「Guianoくんを支えているいちばん近いスタッフさんが好きと言ってくれた曲」と言い披露した「死ぬとき死ねばいい」は、楽曲に宿る感情を歌にするだけでなく、その人の思いを背負うような情熱や、Guianoが理想的な環境で音楽活動を行えていることへの喜びなども滲む。アウトロで自然とフロアから湧き上がったシンガロングも、カンザキの思いに共鳴するようだ。

この日のカンザキの歌声には、いつもの熱量に加えてGuianoへの並々ならぬ思いが宿っていた。「畢生よ」のセルフカバーの後、そのムードはさらに色濃くなる。自身の近況を明かすと、「音楽のために生活があるのか、生活のために音楽があるのか。その答えをずっと探しているけれど、まだ誰も教えてくれないんですよね。音楽ってなんなんだろうと思います」と話し、そういった逡巡や葛藤を落とし込んだ「ダイヤモンド」を歌い出す。彼の心の中、ひいてはすべての音楽家の心の中に巻き起こる嵐を追体験するような感覚に陥っていると、彼は間髪入れずにGuianoの「無題」をカバーを披露した。

「無題」は「ダイヤモンド」同様に、作り手の苦悩も綴られた楽曲だ。それを歌うカンザキの生々しいボーカルからは、カンザキとGuianoが共鳴した理由が直感的に伝わってくる。アウトロでGuianoの楽曲について「すごく綺麗で、心が揺れる瞬間があって、丸裸で、隠してたものが全部剥がれ落ちるよう」と語り、「だから今日は、Guianoくんに言いたいことを、丸裸で曲にしてみました」と告げると、新曲「音楽の使い方」を披露した。心に湧き上がる思いを書きなぐった赤裸々な歌詞は、一つひとつが鋭利で、喉の奥が詰まるように重い。それだけの感情をGuianoに宛てたのは、もとい宛てることができたのは、カンザキが彼に対して信頼、羨望、尊敬の念を抱いていたことに加えて、Guianoの心の中に自分自身を見ていたからではないかと推測する。両者がお互いの作品を介して深い対話をしてきたことが痛烈なほどに伝わり、その気魄に観客も大きな拍手を届けた。

最後にGuianoが好きだと言った「不器用な男」を届け、Guianoへの賛辞と感謝を送るように、この日のバトンをつなぐように凛々しく歌い上げた。多くの人々の心にカンザキの音楽が響いているのは、どれほど苦悩に駆られようとも彼が彼でいることを手放さず、自分自身の感情を誤魔化していないからだろう。それは不器用な人間でなければ生み出せない勇気であると噛み締めた。

対するホストのGuianoは、全12曲中11曲を2026年の楽曲、さらにそのうち9曲を最新アルバム曲で構成したセットリストで臨んだ。彼はこれまで“愛”をテーマに様々な思考を巡らせ、その心の機微を素直に曲に落とし込んできたアーティストだが、最新作のように“あなた”に向けた思いを綴ることはさほど多くはなかった。さらに今回は彼にとって初のツーマン/対バンツアーである。ゆえに過去公演と比較すると、進化の真っ最中ならではの揺らぎと高揚感を含んだステージとなった。

バンドメンバーの演奏に乗せて颯爽と登場すると、ギターを抱えて「ただいま東京、着いてきてくれるか!?」と呼び掛け、最新アルバム1曲目でありタイトルトラックの「風景を見るあなたの瞳に、神はいた」でライブをスタートさせる。大海原が目の前に広がるような爽やかさやすがすがしさを纏った演奏、挑戦の一歩を踏み出す際に湧き上がる焦燥感と衝動がない交ぜになったボーカルは、新たな物語の始まりを強く印象づけた。

そこから間髪入れずに「ポストロマンチック」につなぐとギターリフが作る心地好い浮遊感で包み込み、ドラマチックなイントロが躍動感を掻き立てる「せかいのしくみ」では自身に湧き上がる感情を解放するように歌い上げる。「午前四時、車窓」では一転、夜明け前の開放感と寂寥感で包み込んだ。こうして『The Sky』と『風景を見るあなたの瞳に、神はいた』の楽曲を並べて聴くと、前者が心象風景と密接なサウンドデザインで、後者が彼の目で観た景色を解像度高く表現した楽曲であることを再確認する。彼の熱い思いに奮い立たされたかと思いきや、彼の記憶の中にある景色が自分の思い出と紐づき漂うような感覚にもなり、彼の音楽家としての振れ幅の広さを身をもって実感した。

Guianoはカンザキのステージについて「すごかったね! 1発目から心つかまれた」と目を輝かせながら賛辞を贈る。そしてツーマンツアーについて「好きなジャンルが違えども一堂に会してそれぞれの音楽を楽しむ最高のお祭り」と語り、すべての観客に「間違えてもいいからいっぱい声を出して楽しんでくれたらうれしい」と呼びかけた。

ポップナンバー「時化」はハンドマイクで届け、音楽を介して観客とともに存分に楽しむ。幻想的なサウンドで彩られた「幽霊」ではマイクスタンドでじっくりと楽曲に向き合い、優しさと激しさを丁寧に歌にした。するとソウルミュージック風のピアノの導入から、2018年に発表した「Ever」のセルフカバーへとつなぐ。10代の彼が書いた、明後日離れ離れになる“君”へ贈るラブソングだ。君の手を離さないようにマイクをしかと握り、天を仰ぎながら思いを届けるように歌う様子は、君と僕の深い関係を表すには十分すぎるほど隅々まで誠実だ。まさに中盤のクライマックスだった。

センチメンタルでポップな「花火」ではアウトロでハミングバードの弦が切れ、急遽ギターを置いて観客により大きなシンガロングを求める。ドリーミーで壮大な「四季は移ろう」では音で描く穏やかな安心感と、歌で作る悲喜こもごもの思いで会場を満たした。その様子は、人と深く関われば関わるほど様々な感情をたくわえていくことを我々に示すようでもあった。

競演者と肩を並べられる音楽を届けたい、競演者のパフォーマンスから吸収したいという意志をもってこのツアーに臨んだことを振り返るGuianoは、「巡り巡ったものがこの東京公演に還ってきてる感覚があって、途中で泣きそうになってしまった」と明かす。さらに「悔しい思いをしたり、打ちひしがれたりしたことも思い出になって音楽になっていく」「その音楽で少しでも痛みや感情を共有できたらいいなと思うし、今日もそういう場にしたい」と告げた。このツアーは彼にとって大きな転換期であり、己の芯にあるものを見つめ直すきっかけになったのだろう。その後披露した「あなたはmusic」には、願いを込めて未来へと思いを馳せるような、晴れ晴れとした空気が生まれていた。

「April 02」に乗せて、あらためてGuianoは自身の思いを語り始める。ライブの経験が多くない自分が競演アーティストに認めてもらえるのか、ファンがツーマンという形式のライブをどのように感じるのかといった恐怖と不安を抱えたままツアーをスタートさせ、自分の未熟さを痛感する日々であったこと、それと同時に成長を感じられ、終わるのが惜しいほどにいま胸を張ってステージに立てていることを表明する。そして全国各地の観客と顔を合わせたことで得た「ここにみんながいてくれて、ここで音楽ができるというだけで、そのために生きている」という確信を、強い眼差しと笑顔で語った。

「何があっても大丈夫。俺は音楽をやめないし、みんなも生きていける。忘れないでこのことを」と告げ、「私の心に、あなたがいた」で自身のライブを締めくくる。13歳で楽曲を発表してから約12年、音楽を通して様々なトライを重ねてきた彼は、様々な人との出会いを迎え、たくさんの愛情を受け取ることで、それを返したいと強く思うようになったのだろう。持ちうる体力を振り絞るように全身を震わせて歌う彼と、そんな彼の音楽に笑顔で大きなクラップとシンガロングを送る観客の間には、健全なエネルギーの交換が生まれていた。

アンコールでは再びステージに紗幕が降り、バンドメンバーの演奏に乗せて下手からGuianoが、上手からカンザキが現れ、ステージの中央で熱い抱擁を交わす。そしてGuianoの「死んでしまったのだろうか」と、カンザキの「命に嫌われている。」をツインボーカルで届けた。歌い進めるのと比例してふたりの熱量は高まり、向かい合って歌っていたかと思いきや、最終的にはアウトロで掴みかかるようにユニゾンで歌い始める。するとカンザキがGuianoに向かって衝動的に「音楽って楽しいなあ!」と叫んだ。あのときステージにいたふたりは紛れもなく、音楽に魅せられた少年の姿だった。

Guianoはカンザキとステージに立つのが初めてであると話を切り出すと、「イオリさんの真横で歌って、まさに曲に魂を捧げるように血気迫る熱量や表情を間近で感じられてうれしい」と喜び、カンザキも「初めて会ったときに、こんなことが実現するなんて思わなかった」と感慨に浸る。さらにGuianoのファンへ賛辞を送り、Guianoも「今回のツアーでそれを何よりも感じられた。ついてきてくれるみんなの表情と声が素敵」と返す。するとカンザキが感極まって目に涙を浮かべる。Guianoはそんな彼の肩を笑いながらさすって、自分たちの音楽を愛してくれている人たちの思いを噛み締めた。

「会えてよかったよ」「本当に!」と言い合い再びハグをしたふたりは、Guianoの1stフルアルバム『Love & Music』収録のGuianoとカンザキの共作曲「ハレルヤ」のセルフカバーでこの日とツアーのラストを飾った。ふたりの間に流れているあたたかい空気がそのまま音になったようなハッピーエンドで、観客のシンガロングもまたそのムードを高めていた。

笑顔でステージを去った後、Guianoは影アナで「伝え忘れていたことが1件ございまして」と前置きし、2027年6月に東名阪のCLUB QUATTROを回るワンマンツアー「Guiano Quattro Tour 2027 ―海を見ていた、水平線の先には何があるのだろうか―」の開催を発表する。そして「もうひとつ伝え忘れてました。愛してるよ」と言い残し、観客も大きな拍手と歓声でその思いを返した。このスプリットツアーで新たな信頼関係を築き、これまで積み重ねてきた自身の活動の芯をさらに深めたGuiano。彼の描く景色がこの先まだまだ広がることを予感させる、夜明け前のようなツアーファイナルだった。

SET LIST ※掲出は出演順

カンザキイオリ
01. アダルトチルドレン
02. 成長痛
03. 自由に捕らわれる。
04. 死ぬとき死ねばいい
05. 畢生よ
06. ダイヤモンド
07. 無題
08. 音楽の使い方
09. 不器用な男

Guiano
01. 風景を見るあなたの瞳に、神はいた
02. ポストロマンチック
03. せかいのしくみ
04. 午前四時、車窓
05. 時化
06. 幽霊
07. Ever
08. 花火
09. 四季は移ろう
10. あなたはmusic
11. April02
12. 私の心に、あなたがいた

ENCORE
Guiano×カンザキイオリ
01. 死んでしまったのだろうか
02. 命に嫌われている。
03. ハレルヤ

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