ゆず、デビュー30周年の幕開け!Kアリーナ横浜で迎えた記念日は「最初からずっと幸せがとまらない」熱気溢れるライブレポート

ライブレポート | 2026.11.08 12:00

ゆず 30周年開幕記念ライブ 心をとめないで
2026年10月25日(日)Kアリーナ横浜

「すごく不思議なんだ。心がとまらないんだよ。何回か枯れたかなとか、もう終わったかなとか、もう無理かなとか、正直言って思ったことがある。だけど、みんなを見るたびに、また蘇っちゃうんだ。心がとまらないんだよ。お前らがオレたちに火をつけたんだから、どうにかしろよ~!」(北川)

そんな言葉に、観客が大声援と熱烈な拍手で応えた。心がとまらないのは、ゆずの2人だけではない。おそらく会場に詰めかけた2万人(3日間で合計6万人)の観客の心も動きっぱなしだったに違いない。ワクワク、ドキドキ、感動、熱狂、そして驚きが連続するコンサートだったからだ。ゆずのアニバーサリーライブ『ゆず 30周年開幕記念ライブ 心をとめないで』3Daysの最終日、10月25日のKアリーナ横浜。この日はゆずのデビュー記念日。かつて横浜・伊勢佐木町にあった「横浜松坂屋」の閉まったシャッターの前で路上ライブをやっていたゆずは、30年後、こんなにも大きな空間で、胸を張り、凜とした歌声を高らかに響かせていた。

ラジオ体操で手足を動かして体を温め、心臓の鼓動を大きく感じたら、準備OK。オープニングナンバーは最新アルバム『心音』のタイトルナンバー「心音」だ。鼓動のようなダンスビートに会場内のハンドクラップが加わり、<心をとめないで>という岩沢の歌声と「横浜~!」という北川のシャウトが、スタートの合図となった。2人の凜々しい歌声と力強いバンドサウンドが一丸となってアリーナに響き渡った。照明のまばゆい白い光がシャワーのように降り注ぐ演出も圧巻だ。横長のステージの上下左右や前後、斜め方向など、アリーナ内のいたるところに照明が設置されていて、その膨大かつ多彩な光が圧倒的な没入感を生み出していた。音楽をストイックに究めていくミュージシャンであると同時に、楽しいステージを徹底的に追求するエンターテイナーとしての要素を兼ね備えているところに、ゆずの独自のスタンスがある。そのエンターテイナー気質の表れのひとつが比類なき光量によるアプローチだ。照明と映像を巧みに取り入れたステージは「空間アート」と呼びたくなるほど、見事だった。

この3日間のために結集した“心とまらないバンド”のメンバーは、磯貝サイモン(Gt/Key/Cho)、芳賀義彦(Gt)、前田恭介(Ba/androp)、松原“マツキチ”寛(Dr)、松本ジュン(Key)、佐藤帆乃佳(Violin)、三國茉莉(Violin)、菊地幹代(Viola)、結城貴弘(Cello)の9人。北川と岩沢のコーラスでの<新音よ響け>というフレーズは、まるで30周年の開幕宣言のようだ。「30周年、始まったぞ~!」と北川。

岩沢のギターの弾き語りで始まった「飛べない鳥」では、岩沢の伸びやかな歌声と北川の温かみのある歌声のハーモニーに、胸が熱くなった。この曲は2000年発表の曲だが、<また歩き出す>というフレーズが、彼らの今の思いとも重なった。彼らの歌声に胸を揺さぶられるのは、その響きの中にファイティング・スピリッツが宿っているからだろう。3曲目には早くも代表曲「栄光の架橋」が演奏されて、会場内のシンガロングが加わった。スケールの大きな名曲だが、つい口ずさみたくなる身近さも備えている。ゆずのライブの魅力は“観る”“聴く”だけではない。参加すること、そしてともに“歌う”こと、みんなで声を合わせることにもある。ゆずの歌がこんなにも多くの人に愛されているのは、誰もが感じる喜びや悲しみなどの普遍的な感情を純度の高い音楽として昇華しているからだろう。この歌は、おそらく人生のさまざまな場面とともに記憶され、愛されているに違いない。

「10月25日はゆずの記念日です。今日は20周年以降から振り返りたいと思います。これからも頑張っていくぞという矢先にコロナがあり、その中でどうやって音楽を届けようか、いろいろ模索しました。配信でライブをやったりして、こうしてみんなで楽しめるようになって、奇跡みたいだと思っています」(北川)

ここからの数曲は、ステージ背後のLEDスクリーンに近年のツアーの映像を映しながらのパフォーマンスとなった。彼らの出身地である横浜にちなんだ曲で、「桜木町」の17年後を描いた「NATSUMONOGATARI」では、夏の横浜の光景が鮮やかに浮かび上がった。無観客・オンラインで開催された「YUZU ONLINE LIVE 2021 YUZUTOWN / ALWAYS YUZUTOWN」の映像も映し出された。凝ったセットのもとで多くのダンサーが踊っている。無観客でも手抜きなし。ゆずは、無念の思いまでも糧として進んできたのだろう。

ラブソングであると同時に、ゆずとリスナーとの絆の歌のように響いてきたのは2022年のアルバム『SEES』収録曲の「君を想う」。2人の歌とコーラスからは、人と人とが出会い、思い出を共有していくことのかけがえのなさまでもが伝わってくるようだった。『YUZU ARENA TOUR 2022 PEOPLE -ALWAYS with you-』でのCGを駆使した映像も交えた演奏だ。流麗なストリングスで始まった「Chururi」では、観客もシンガロングとハンドクラップで参加。<Chururi>というフレーズはまるで魔法の呪文のようだ。ゆずと一緒に口ずさむと、胸の中に明るい光が満ちていく。映像は『YUZU ARENA TOUR 2024・2025「図鑑」』からのもの。これらの映像を交えての演出によって、コロナ禍という困難を乗り越えてきた彼らの山あり谷ありの道のりも再確認した。ゆずはファイティング・スピリッツを“笑顔を生み出すエネルギー”へと変えてきたのだろう。北川が手をくるくると回し、観客も同じ振りをしながら楽しむ光景が微笑ましかった。

「カップリングの中にも隠れた名曲があります」という北川の言葉に、おそらく多くの観客が深くうなずいたに違いない。彼らのステージが特別な輝きを放っているのは、どんなに最新の機材を駆使して、大掛かりな演出を施したとしても、歌とギターとハーモニーという核の部分が揺るぎないからだ。『心をとめないでクイズコーナー』を挟んでの、カップリング曲コーナーでは、その核が際立った。ステージ下手に北川と岩沢が移動して、バイオリンとキーボードも加わってのアコースティック編成で、まず横浜にちなんだ歌、「赤いキリン」が披露された。郷愁を誘う歌とコーラスがじわじわと染みてきた。空と海を背景として赤いクレーン車がキリンのようにたたずむ映像も詩的だ。佐藤のバイオリンのたおやかな音色にも聴き惚れた。いつのまにか映像の空はあかね色に染まり、クレーン車の“赤”に“オレンジ色”が重なった。曲の時間の流れとシンクロするような映像表現が鮮やかだ。懐かしいような、少し寂しいような、余韻が残った。

続いて、北川と岩沢がステージの上手に移動し、磯貝と松本と松原も加わり、ジャズテイストの漂う「朝もやけ」が披露された。軽快なリズムにハンドクラップとギターのカッティングが加わっていく。北川はタンバリンを叩きながらの歌。岩沢の歯切れのいい歌声が気持ちいい。磯貝が先導してのコール&レスポンスもあった。ニューオリンズファンク風のリズムも交えてフィニッシュし、岩沢が「サンキュー・エブリバディ!」と感謝を伝えると、大きな歓声が起こった。横長のレイアウトを活かしたステージングからは、彼らの“創意工夫”と“おもてなしの精神”も感じた。

再び中央に移動して、チェロの深遠な調べから始まったのは「月影」。スクリーンに映し出された海の上に月が浮かんでいて、その影が波に揺れて輝いていた。岩沢の端正な歌声、北川のふくよかなコーラス、そしてたおやかなストリングスの相性は絶妙だ。ゆずの音楽は、静と動、緩急、明暗など、実にバラエティーに富んでいる。「翔」はゆずの2人のアコギで始まり、アコーディオンも加わっての演奏。芯の強い歌声、ザクザクとしたタッチのアコギ、空まで届きそうなハープが清冽な空気感を生み出した。2コーラス目からは、バンドの全員が参加し一気に世界が広がった。パーソナルな身近さとスケールの大きさが1曲の中で共存するところにもこの曲の魅力がある。聴き手を一緒に飛翔させる歌だ。

“心とまらないバンド”のメンバー紹介は、バンマス磯貝の主導のもとで、バンドのテーマソング的なナンバーに乗って行われた。<Can't Stop>などの英語とともに、「LOVE & PEACH」の<ぷり ぷり ぷり ぷり>などのフレーズも織り交ぜたユーモラスな構成が楽しい。「ビューティフル」は、<響き合うよ 僕らは 少しずつ彩ってゆく>という北川のアカペラで始まり、ハンドクラップとコーラスが加わり、さらにバンドが入っていく展開がスリリングだった。起伏に富んだ歌と演奏に圧倒された。強力なダンスビートに客席が波打ち、そこに光のシャワーが降り注いだ。「表裏一体」は、白と黒を基調にした映像に2人の姿が映し出される中でのパフォーマンスだ。疾走感と躍動感を備えた歌声が胸を躍らせる。エンディングで、アコギのカッティングに連動するかのように、瞬時に次々と消えていく光の演出に、大歓声が起こった。

さりげないピアノの調べに、深みのあるチェロが加わり、儚げな北川の歌声と寄り添うような岩沢のコーラスが入ってきたのは、「カナリア」だ。歌うほどに、少しずつ希望の成分が増えていくような展開が素晴らしい。間奏でのアコギ・ソロの味わい深さは特筆ものだ。<何度だって 明日の空へ 飛び立とう>という歌声が、挫折を味わったことのある人々を優しく励ますように響いた。鳥かごをモチーフとしたシンボリックな映像に想像力を刺激された。北川と岩沢の共作曲「公私混同」は、観客もハンドクラップで参加。北川と岩沢の掛け合いも交え、アニメ映像も用いて、会場内が一体となって盛り上がった。今年6月にリリースされた「ニュービギニング」は30周年の記念日にぴったりの歌。<何度でも「これから」「ここから」始めよう>というポジティブな内容だからだ。モータウンテイストのある演奏に乗って、ゆずの2人が歌い、観客の<ウォーウォー>というシンガロングが加わり、雄々しいエネルギーがアリーナに充満した。

「夏色」はライブの定番曲として、リリースから約28年、ずっと愛されてきた曲。お約束の展開がこんなにも楽しいことを教えてくれたのは、ゆずの2人だ。北川の「季節はすっかり秋ですが」という前フリの言葉に続いて、「ソレソレソレ」という北川のかけ声と岩沢のギターのイントロのフレーズを合図に、「夏色」が始まった。会場内の2万人がタンバリンとハンドクラップでリズムを刻み、北川はアリーナに下りて、客席の通路を走り回り、ちびっ子にキャップを配るなど、観客とコミュニケーションを取りながら盛り上げ、お祭りムードがさらに色濃くなった。北川がアリーナの真ん中に設置された金色のくす玉を割ると、「祝30周年」という文字の書かれたたれ幕が下がった。

「ゆずデビュー30周年、開幕しました。ありがとうございます。ティーンの頃に30年くらい音楽やっている人たちをイメージしたことがあります。少なくともタンバリンを持って走り回り、真ん中あたりでくす玉を割るような感じじゃなかった。だけど、こんな30年目、とっても気に入ってます」という北川の言葉に温かな拍手が起こった。さらにこんな発言。「いつもライブって、幸せなの。みんなに会えるし、歌を聴いてもらえるから。だけど今日はダメだね。最初からずっと幸せがとまらない」(北川)

とまらないのは、幸せだけではない。ゆずはデビューからここまで、ノンストップで走り続けてきた。毎年、コンスタントに楽曲制作とライブ活動を行うのは決して簡単なことではないだろう。30年続けてきたことについては、「ひとえに僕たちの努力のおかげ」と北川が冗談半分に言い、バンド、スタッフ、そして観客への感謝を伝える場面もあった。

「ゆずは30周年で落ち着くつもりは全然ありません。これからも走り続けます。そして、みんなに最高の曲と最高のパフォーマンスを届け続けます。僕たちは常にing(アイエヌジー)でこれからも走り続けます。そんなオレ達の今の思いが詰まった、出来たばかりの新曲をお届けします」(北川)

本編最後の曲は発表されたばかりの新曲「心をとめないで」。強靭なダンスビートに乗って放たれたゆずの渾身の歌声が、観客の胸を打ち、肉体と精神を解放していく。スクリーンには、この曲のMVとともに、“White Bird”という名のドローンによるアリーナの映像が映し出された。低空飛行しながら撮影された映像を見ていると、鳥になったような気分も味わえる。疾走感と臨場感あふれる映像が、「心をとめないで」で描かれている“とまらない衝動”を象徴するかのようだ。この曲の<歩き続ける><心をとめないで>といったフレーズは、30周年に突入したゆずの決意表明であり、観客へのエールでもあるだろう。

アンコールでは観客による「贈る詩」のシンガロングの中、ゆずの2人が登場。まず、2027年5月15日、16日に日産スタジアムで「YUZU 30th ANNIVERSARY STADIUM LIVE 2027 日産スタジアム」を開催することと、2027年春にオールタイムベストアルバムが発売されることが告知された。さらに「準備はいいか! 行けるか~!」と北川が叫び、「アゲイン2」に突入。聴けば、勇気が湧いてくる歌、歌えば、自らを奮い立たせてくれる歌。毅然とした2人の歌とコーラスがアリーナに響き渡り、観客もハンドクラップとシンガロングで参加した。2002年にリリースされた曲だが、<新たな旅立ちへ>というフレーズが、30周年の始まりを告げるようだった。

「2026年は走り続けた1年でした。その間に世界と日本では、天災、人災、紛争、戦争……。僕らは日々この世界をどんな気持ちで受けとめたらいいんだろうね。苦しくなることもあります。でも、そういう中で僕らは『幾重』という楽曲を誕生させました。全国いろんなところで歌ってきて、大切な楽曲になりました。みんなの1年とオレ達の1年に捧げたいと思います。今日、このKアリーナで最高のスタートを切ることができました。これからもゆずは走り続けます。どうかオレ達を支えて、応援してください。オレ達は必ずみんなの思いに応えます」(北川)

30周年記念日の最後の曲は、東日本大震災15年 震災伝承ソングとして制作された「幾重」。たおやかなストリングスの調べに続いて、ピアノとピアニカが加わり、思いの詰まった歌声が会場内を包み込んだ。優しく温かなハーモニーは、未来への道標のように響いてきた。これは未来を開く歌。「30周年イヤー、みんなへの感謝を形にしていきます」との北川の言葉もあった。

この日演奏された19曲から見えてきたのは、デビューから現在まで、とまることなく走り続けてきたゆずの30年の軌跡と現在地と未来の地図だった。彼らは“フォークデュオ”としてスタートを切り、さまざまな音楽のエッセンスを吸収しながら、歩みを進めてきた。パンクバンドみたいにギターを激しくかきむしり、渾身の声を振り絞ったり、ポップでカラフルなダンスミュージックで踊りながら歌ったり、ロックンロールバンドみたいに、初期衝動をむきだしにしたり。ロックを象徴する言葉に、“ライク・ア・ローリング・ストーン”というのがある。転がり続けるのは石だけではない。ゆずは長い長い坂道を転がり続けている。下り坂、上り坂、曲がりくねった道、でこぼこ道などなど。彼らをとめるものはない。転がり続けるエネルギーは尽きることがない。彼らの歌声の根底にあるのは、音楽への情熱、創作欲、成長への意思、そして、生命あるものへの愛だろう。彼らのまなざしの先には、希望に満ちたまっさらな景色が広がっている。

SET LIST

01. 心音
02. 飛べない鳥
03. 栄光の架橋
04. NATSUMONOGATARI
05. 君を想う
06. Chururi
07. 赤いキリン
08. 朝もやけ
09. 月影
10. 翔
11. ビューティフル
12. 表裏一体
13. カナリア
14. 公私混同
15. ニュービギニング
16. 夏色
17. 心をとめないで

ENCORE
01. アゲイン2
02. 幾重

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公演情報

DISK GARAGE公演

22年ぶりとなる日産スタジアムライブ2DAYS開催決定!
YUZU 30th ANNIVERSARY STADIUM LIVE 2027

2027年5月15日(土)16日(日)日産スタジアム

15日:DAY1「ゆ」
16日:DAY2「ず」

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INFO

ゆず 30周年開幕記念ライブ「心をとめないで」
WOWOW & Lemino にて放送・配信決定

INFO

2027年春にオールタイムベストアルバムのリリースが決定!

  • 長谷川 誠

    取材・文

    長谷川 誠

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  • 撮影

    中島たくみ、鈴木健太(KENTA Inc.)、高田真希子

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