
Psycho le Cémuの『Tour 2026 REVIVAL STORY〜再生の絆〜』が、10月4日、渋谷WWW Xでファイナルを迎えた。5月3日から始まったこのツアーで、彼らは過去のコンセプトを改めてパフォーマンスしてきた。それは懐かしくも単なるノスタルジーに終わらず、seekの言葉を借りるならば、過去と向き合い、出会う、かけがえのない機会となっただろう。そんなツアーの集大成の一夜についてレポートする。
ファイナルのコンセプトは、ツアー初日と同じ『Psy遊記』。『西遊記』をもとにしたストーリーで、初めて披露されたのは2004年1月3日の東京BAY NK HALL。22年を経て初日に見事に再現されたこのストーリーを、ファイナルではどう見せてくれるのか。開演前から期待は高まる。
オープニングのお芝居では、5人(1人と4匹?)の紹介に始まり、天竺へと向かう決意が語られる。初日はさすがに緊張が否めなかったが、今日は彼ら自身が生き生きと楽しんでいるのが伝わってくる。
そのまま「激愛メリーゴーランド」が始まった途端、ツアーの充実ぶりを手に取るように感じた。ツアーを経てバンドが成長するのは決して珍しいことではないが、既に27年のキャリアと実力を誇るPsycho le Cémuもその実力にさらに上乗せするような成長ぶりを見せつけてくれた。
前々日の10月2日は、24年前にメジャーデビューを果たした記念日。そのデビュー曲「愛の唄」が、フロアをぎっしりと埋めたファンへ届けられた。長い歳月を重ねても決して色あせることのないこの曲を、人生経験を積んだ現在の彼らがプレイするさまは何とも味わい深い。幸せいっぱいの雰囲気のまま、「春夏秋冬」へ。続けて「輝きの中へ・・・」が始まり、軽やかに駆け抜けるビートが心地よく響いた。
と、そんな空気を一変させる「漆黒のゲルニカ」へ突入。さらに「Mind Core」「聖~excalibur~剣」と続くこのブロックでは、曲調もサウンドも猛々しく、何もかもを粉砕するかのような迫力に満ちている。もちろん音楽は聴覚で楽しむものだが、それ以上にフィジカルの存在を実感させられる圧倒的なパワーが放たれる。そんな中でも、LidaとAYA二人のギターの音色やフレーズの組み合わせの妙に、ロックバンドとしての魅力をおおいに堪能した。
次に始まったお芝居では、天竺へ向かう一行が仲間割れを起こす展開へ。ストーリーは同じでも格段にパワーアップし、AYAによる一発ギャグメドレーには会場が爆笑の渦に包まれる。AYAは女形という特異なキャラの魅力を振りまいたかと思うと、ファンを一瞥もせずにプレイに集中し、さらにフロアをおおいに沸かせるなど、その存在感が終始光っていた。
再び全員揃ったところで、アカペラの「浪漫飛行」をはさみ、ゆったりと和んだ空気を「DANCE Ⅱ HEAVEN」の無機的なデジタルサウンドとビートが引き締めていく。楽器隊4人がダンスに徹すると、「AREA」ではDAISHIとともにYURAサマがツインヴォーカルを務め、芸達者ぶりを見せつけた。
「おっは~」と、元気いっぱいのAYAの挨拶でMCがスタートしたが、なんとこれが大間違い(笑)。中国を舞台にした『西遊記』にちなんで、「ニイハオ」と言うべきところだったとか。本気で照れつつも、「盛り上がってるから、いいんだブー(猪八戒だけに)」とファンに返すさまは、やはりどこまでもキュート。
静かに始まった「この星に願いを」を、DAISHIはどこまでも丁寧に、心からの願いを込めて歌い上げていく。その迫真のヴォーカリゼーションは、このツアー全箇所で歌い続けたという「With」にも通じ、伝えたいという真摯な思いを歌にしっかりと載せることに成功していた。
DAISHIは、「みんな本当に愛してるよ」と優しくささやいたかと思うと、「俺たちが欲しいか?」と雄叫びをあげ、「銀狼」で再び加速。続く「LAST EMOTION-Long ver.-」では、DAISHIが軽快にラップを聴かせ、ミクスチャー的なノリで進行しつつも、サビでは弾かれたようにオーディエンスが前のめりに突っ込み、ヴィジュアル系のライヴならではの様相が展開された。そんな様子を見ていたseekはステージを降りると、フロアの後方にあるPA卓へ。PA卓を囲む柵へと腰掛け、至近距離のファンと熱いコミュニケーションを交わした。
一方ステージでは、DAISHIが「インディーズっぽく行くぞ。前、来い!」と呼びかける。みるみるステージ前がぎゅうぎゅうのすし詰め状態になっていくのは何とも爽快だ。体と体がぴったり触れ合うような距離感は賛否両論分かれるかもしれない。彼らが活動してきた27年の間にはライヴハウスを取り巻く環境も大きく変わった。けれども、こういう熱さや生々しさもまたライヴハウスの魅力でもある。
本編最後は「Murderer・Death・Kill」。対バンのファンでも知らない人はいないんじゃないかと思われるほど、いつだって大きな盛り上がりを見せる名曲。近年、彼らのミュージシャンとしての成長を感じていたが、こうして過去を振り返ると、そもそも高いクオリティの素晴らしい曲をつくり上げてきたことを実感する。だからこそ、長い時間を経てもこうして見応えのあるステージになるのだろう。それは、ステージを重ねた5人も実感していたことだろう。清々しい爽快感が漂うなか、YURAサマの「ロケットバイビー」で本編は終了。
アンコールで始まったのは、ツアー初日にはなかったストーリーの続き。火焔山の火を消すために、牛魔王のもとへ行き、芭蕉扇を手に入れようとする孫悟空演じるDAISHI。そこで牛魔王に要求されたのは、なんと一発ギャグメドレー。これまでDAISHIの指示のもと、ギャグを披露し続けて来た仕返し(?)に、AYAがDAISHIを振り回す。おおいに照れまくりながらも、なんとかギャグを披露し続け、芭蕉扇をゲットした。
ここからは、会場が一体になって火を消すための共同作業がスタート。ファンが団扇(入場時にサプライズ配布され2027年メンバーバースデーライブのスケジュールが記載されていた)を手に一緒にあおいでいると、Psycho le Cémuデビュー24周年を祝うケーキを手にLidaが登場。『西遊記』の中のエピソードを、バースデーケーキの蝋燭を消す演出と重ねる展開は見事だった。
ツアーの最後を飾ったのは、「REMEMBRANCE」。繰り返されるファンの歌声に耳を傾けながら、万感の思いを噛み締め、そして笑顔を浮かべる5人の表情は、彼らの明るい未来を示すようにキラキラと輝いていた。その眼差しは、日本武道館へと続く道のりを見据えていたはずだ。
アンコールのMCでは、長く所属してきた事務所を離れたことを口にし、「僕たちとみんなしかいません」と語りかけたDAISHIをはじめ、未来への覚悟めいた真剣な言葉が続いた。リバイバルという特別なツアーは、単なる企画ではない。Psycho le Cémuが目指す“あの場所”、日本武道館というステージへ進むために、彼ら自身にとって必要な経験だった。ここで確実に何かをつかみ、決意を新たにした彼らが、“あの場所”へ向かってどんなふうに進んで行くのか。このツアーを目にして、楽しみがさらに広がった気がする。
















