レトロリロンが最新EP『アブノーマルライフハック』で示す覚悟と進化。新体制で迎えるZeppツアーへの想い

インタビュー | 2026.09.24 18:00

レトロリロンのMajor 1st Digital EP「アブノーマルライフハック」は、多くの困難を乗り越えて、今もなお前進し続けている彼らの最新の姿が刻まれたアグレッシブな作品となった。自分たちの信じる音楽を鳴らしていく強い覚悟や決意が音の中に宿っている。彼らにとって、2026年は激動の日々となっているに違いない。1stアルバム『コレクションアローン』のリリース、ワンマンツアー、数多くのフェスへの参加、メンバーの脱退、初の韓国公演などなど。それらを糧として完成したのが、この「アブノーマルライフハック」だ。アニメのオープニングテーマ「エゴ」、ドラマのオープニングテーマ「Dear」、配信リリースされていた「ミッドナイトタイムカプセル」「AMANO-JAKU?」、そして、現状に満足しない意思を表明した「EMPTYISM」。彼らはこれらの曲を作る過程でも、自らと向き合い、成長し続けている。レトロリロンの3人に、新体制での最初の作品となるこのEP、さらに10月15日にスタートするZeppツアーについて、話を聞いた。
──「アブノーマルライフハック」は激動の中で作った作品と言えそうです。完成しての感慨を教えてください。
涼音(Vo&Ag)ともかく必死でした。Zeppツアーを発表した時点で、このEPを持ってツアーを回ることは決定していたので、必ず新曲を作らなければならない状況がありました。その中で、タイアップの話をいただいて、「エゴ」を作り、シングルとして「ミッドナイトタイムカプセル」を作り、EP制作へ向かう流れがありました。今回に関しては、アルバムのタイトルもコンセプトも、最初の段階で僕が決めてスタートしました。
──早い段階で、先々のイメージがあったんですね。
涼音はい。前作の『コレクションアローン』もそうだったんですが、次に何を書きたいのかがどんどん固まってきていて。そのこととスケジュールとの戦いでした。制作以外の仕事も結構入ってきていたので、時間も限られています。空いている時間はほぼ歌詞を考えていました。なので、最近は、あまり寝てなかったかもしれないです。
──楽曲制作には集中力と瞬発力に加えて、持続力も必要ですよね。
涼音そうですね。思った以上に体に負担がかかっていたみたいで、結果としてOSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL 2026のキャンセルにつながってしまったので、反省ではあるんですが、かなり密度の濃い数か月間でした。
──永山さんは、「アブノーマルライフハック」が完成して、どのようなことを感じましたか?
永山タイキ(Dr)涼音が、今出したいテーマみたいなものを提示してくれたので、そのテーマをしっかり汲み取る能力が必要だなと思いました。「いろんなところにアンテナを張っておいたほうがいいよ」という話になって。ライブを重ねることもそのひとつですし、映画やドラマを観る際の感じ方を大切にすることもそうですし。涼音が出してくれたテーマに対して、アンテナを張ることによって、感情的な要素も音に入れられた作品になったんじゃないかと思います。音に感情を入れるという意識は以前からあったのですが、ツアーをやり、今後のことを考える中で、広いところで演奏してみんなに届かせるためには、どういう風に音を入れ込んだらいいのか、しっかり考えられましたし、その結果がこのEPにも表れていると思います。
──miriさんは、「アブノーマルライフハック」が完成して、どんなことを感じましたか?
miri(Key)制作の仕方や自分の課題と向き合い方など、『コレクションアローン』でしっかり突き詰められたからこそ、このタイトなスケジュールの中でも、「アブノーマルライフハック」を作ることができたんだろうなと思いました。アレンジに関しても、涼音が出してくれたアイデアに対して、「こういうアプローチはどうかな?」って、いろんな角度から考えられるようになってきた気がします。
──個々の楽曲についても伺います。1曲目の「AMANO-JAKU?」は、コーラスから始まり、コーラスで終わる構成が特徴的な曲です。どんなきっかけから生まれたのですか?
涼音自分の中で仕切り直しをしたいという気持ちがあって、作った曲です。メンバーの脱退もありましたし、状況的にも精神的にも、ここで一個、線を引かないと、グダグダになりそうな気がしたんですよ。同時に、どういう状況になっても、僕たちの音楽を聴いてくれている人たちに対して、自分の意思を明確に提示しておきたいと思ったので、自分の生き方や哲学、価値観をなるべく詰め込んでいきました。

AMANO-JAKU? (Official Music Video)

──タイトルが「AMANO-JAKU?」ですが、アマノジャクというテーマについては?
涼音僕は性格的にマジョリティに行かない傾向、マイノリティを選ぶ癖があるので、そのことも含めて、アマノジャクだなと。ただし、単純に大多数の中の少数でありたいわけではなくて、逆に行くことにもちゃんと意味を持たせたいんですよ。かといって、マジョリティとマイノリティ、どちらかを選ぶことに正当性はないとも思っています。人に迎合せず、自分にとっての正解を見いだしていくことが重要だと考えているので、タイトルをあえて断定形にせずに、“?”をつけました。
──ブルースやロックンロールなど、古くからある音楽の多くは、マイノリティ側の発信から始まり、発展してきた歴史もありますし、個人的にも、「AMANO-JAKU?」の歌詞に共感するところが数多くありました。<より今を乱す方へゆけ>というフレーズにもグッときました。最初と最後のコーラスはどんな意図が?
涼音最初と最後のコーラスは、自分の中ではマイノリティとマジョリティの表現でもあるんですよ。イントロは楽器を使うことが多いですが、声も楽器のひとつなので、ひとりでどこまでゴスペルワークをできるか、トライしました。大勢の人を呼んでコーラスするのもいいんですが、ひとりでやるのもいいかなと。コーラスは大人数だと映えますが、リードボーカリストの主旋律はひとりでしか歌えないので、マジョリティとマイノリティの共存みたいな意味も込めて、コーラスでスタートする構成にしました。
──永山さんはこの曲を演奏する際に、どんなことを意識しましたか?
永山これまでバンドが持っていたビート感とは違う部分があったので、ドラムアプローチでは新しい要素とのバランスをどうしていくかを考えました。初めて打ち込みに挑戦して、エレクトリックなハットやキックを入れていて、それだけでも曲としては成立するんですが、自分がドラム叩く意味も入れたくて、打ち込みにプラスして、自分の生の音を重ねて演奏しました。そのことによって、生ドラムの空気感や疾走感も加えられたので、レトロリロンの中でも新しいサウンドに仕上がった手応えがありました。
──miriさんのピアノもとても自在です。
miri他の楽器のリズムが強い分、“音で歌う”みたいなことが鍵盤の役割かなって、みんなで話をして確認したんですよ。この曲でピアノでできることは、歌とリズムを繋ぐことだと考えたので、レコーディングでは、歌の動きを楽器でも表現できるようにと意識しました。
──この曲でベースを弾いているのは、Ryo' LEFTY 'Miyataさんです。この人選はどこから?
涼音今回のEP制作では、いろいろな人の期待や不安がのしかかっているような気がしていて、そこを気にして作るのは嫌だなと思ってしまったんですよ。なので、心の赴くままに、自分が一緒にやってみたかったLeftyさんにお声がけしました。もともとLeftyさんは、アレンジャーとして黒木渚さんのいろいろな曲に関わってきた方で。僕は高校時代から渚さんの曲を聴いていて、楽器のアレンジもいいなと思っていたこともあり、事務所のスタッフに繋いでもらって、お願いしました。自分としては、初めて意思を持ってやってみたいなと思っていた人と一緒に作れたのが、「AMANO-JAKU?」でした。なお、「EMPTYISM」と「Dear」は、ライブでサポートしていただいている石丸哲也さんにベースを弾いていただいています。
──7月に飯沼一暁さんが脱退したことで、リズムの構築に関して、変化したことはありましたか?
涼音メンバーがひとり脱退したことによって、いろいろな方に不安を与えてしまったと思うんですが、「アブノーマルライフハック」の制作で特に困ることはありませんでした。というのは、Leftyさんとも石丸さんとも、一緒に話し合いながら、有意義に制作することができたからですね。もともと、ベースのフレーズも僕が考えることが多かったので、作り方はとくに変わっていませんし、サウンド面では、どんどん良くなっていると思います。
──「エゴ」はテレビアニメ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。Season 2』のオープニングテーマでもあります。歌詞の中にアニメの主人公の名前でもある“ブライド”という言葉が入ってきたり、作品の内容とリンクする<未来を取り返せよ>といったフレーズが入っていたりしますが、作る上で心がけたことは?
涼音タイアップに関しては、自分たちの作品を作るというよりも、人の作品に携わらせていただくという意識のほうが強いんですよ。作者の頭の中で作られたものが形になっていて、その世界にお邪魔させていただくというテンション感なんです。かと言って、媚を売るようなものにはしたくないので、タイアップさせていただいている作品と自分たちの作品として作っていくものとの共通点を探しながらの作業でした。加えて、遊び心みたいなものがほしかったので、主人公の名前を使わせていただいたり、いろいろな意味に取れる歌詞を考えたりしました。

TVアニメ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。Season2』ノンクレジットオープニング映像|レトロリロン「エゴ」

エゴ(Official Music Video)

──リズムの力強さが際立っている曲でもあります。ドラムはどんな意識で?
永山この曲のドラムは、レトロリロンの中でもっとも激しくて力強いものになったと思います。そういう要素を表現したかったということではなくて、作品を観た時に感じたものをそのまま入れ込んだらこうなりました。制作中にアニメを観て、涼音が書いた歌詞とも照らし合わせながら演奏したので、ドラムに関しては、すんなりと出てきたものたちですね。
──「エゴ」の世界観を形成する上で、キーボードの多彩な音色も大きな役割を果たしていますよね。
miriイントロはオルガンを使って、途中のソロではシンセを使って、音色もバラエティに富んだものになるように心がけました。ただ単に強さを表現するだけでなくて、その中から垣間見える“揺らぎ”や“葛藤”も音で表現できたらいいなと思いながら弾いていたことを覚えています。
──涼音さんのボーカルも表情が豊かで、力強さと柔らかさとが混在していて、声の重ね方も多彩です。
涼音エレキギターがいない中で、ロックなものを作りたいと思っていて。それを表現できるのがボーカルなので、歌に関してはかなりロックな感じを意識して歌いました。
──歌声がさらに力強くなっていると感じましたが、ご自分ではその実感は?
涼音パワーがついてきたと思っていたんですが、先日、喉を壊してしまったので、改めて考え直さなきゃいけないのかなと思っています。いつもいつもうまくいくわけではないなって。“歌い方が悪かったのかもしれないな”と、いろいろと考えることもありますし、一旦、また振り出しに戻るという感じですね(笑)。
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