兵庫慎司のとにかく観たやつ全部書く:第202回[2026年1月後半・奥田民生や、GRAPEVINEと柴田聡子や、オペラや、くるりなどの8本を観ました]編

コラム | 2026.03.04 17:00

イラスト:河井克夫

音楽などのライター兵庫慎司が、自分が観たすべてのライブのレポを書く連載の202回目=2026年1月後半編です。基本は音楽だけど、音楽以外も生で観たら書く、というルールですが、この1月後半は、ラジオの番組イベント・演劇・オペラもある、という、バラエティに富んだ回になりました。

1月18日(日)18:00 奥田民生 @ さいたま市文化センター大ホール

奥田民生『MTRYツアー2026 “春 Ooh La La”』の2本目。奥田民生のライブは、11月・12月・1月で、4本観た。1本目(11月29日江戸川区総合文化センター大ホール)と2本目(12月11日LINE CUBE SHIBUYA)は「名盤ライブ『30/奥田民生』」で、3本目(12月31日広島グリーンアリーナ)はOoochie Koochie、そしてこの4本目はMTR&Yでのツアー。OTと共にすべてのステージに上がっているのは、キーボードの斎藤有太だけで、1&2本目と3本目と4本目で、全部違うコンセプト・違うメンバー・違う楽曲のライブなのである。
そんなことをやっている60歳のミュージシャン、いる? 日々、日本各地の小さなハコを回りながらセッション生活、みたいな人なら他にもいるだろうが、ホールやアリーナの規模で、つまり多数のスタッフやメンバーと共に、こんなハイペースで次々と別のことをやっている人、いないと思う。すごい。この日のステージも、そのへんの大変さなど微塵も感じさせず、いつもどおり飄々とやっている、というふうにしか見えなかったところまで含めて、すごい。
始まったばかりのツアーなので、ネタバラシは避けるが、ニューEP『あまりもの』のリリース4日後から始まったツアーではあるものの、その作品のリリース・ツアーです、そこからの曲をみっちりやります、という感じではない(あの作品の位置付けを考えると納得だが)。『あまりもの』からも何曲かやるけど、それ以外に、おなじみの曲はもちろん、レアな曲や久々の曲もふんだんにやります、みたいなセットリストになっていた。コンセプトがあるとしたら、ラウドな曲もその逆の曲も含め、MTR&Yでやると映える曲を選んでいる、という感じだろうか。
あとOT、ここ数年はモジャモジャチリチリヘアで通してきたが(少なくとも大晦日まではそうだった)、この日はそれより前の頃の、ハット姿に戻っていた。髪、ばっさり切ったのかな。

1月20日(火)19:00 『#尾崎ニシダラジオ in 武蔵野公会堂』@武蔵野公会堂/PIA LIVE STREAM

ラジオアプリ『GERA』の人気番組『ぴあpresentsクリープハイプ尾崎世界観とラランド ニシダのダブルスタンダード』の、番組イベント。配信もあり。ふたりの他、ゲストで大島育宙(XXCLUB)が出演。
オフィシャルのレポをぴあに書きました。本当に笑ったし、本当に刺激的でもあった2時間だったので、ぜひ。
書店員に扮してコーナー満載!ゲストに大島育宙も登場『#尾崎ニシダラジオ in 武蔵野公会堂』オフィシャルレポート

1月22日(水)17:30 『クワイエットルームにようこそ The Musical』@ 新宿THEATER MILANO-Za

観劇二回目。一回目(前回書きました)は、1階二列目どまんなかよりちょっと右寄り、という、それなりに長いこと松尾スズキの演劇を観て来たけど、こんな至近距離で観るのは初めて、な席だった。俳優たちの息遣いや、身体を動かした時の音まできこえるくらい近くて、それはもうど迫力で至高の観劇体験だったが、反面、舞台の全体像は視界に入り切らなくて、カーテンコールの時、ステージ両端の縦型LEDに「撮影OK」と文字が出ていたのに気が付かなかったりした。
なので、二回目はその逆で、最上階の最後列を買った。で、ステージセットや、照明などの演出や、大勢がステージで歌い踊る時のフォーメーションなども含めて、楽しむことができた。
にしても、何度観てもすごい、この作品。斬新だし、笑えるし、でも重たい話だし、そして何よりも、歌と踊りが見事だし。ミュージカルの本業の演出家がこれを観たらどう思うのか、知りたい。

1月23日(金)19:00 GRAPEVINE、柴田聡子(BAND SET) @ リキッドルーム

GRAPEVINEの東名阪対バンツアー『SOMETHING SPECIAL 2026』の最終日、柴田聡子(BAND SET)との共演日。ぴあにオフィシャルのレポを書きました。
GRAPEVINE『SOMETHING SPECIAL 2026』柴田聡子との共演、刺激し合う両者が起こした化学反応がとてつもない音楽時間を作り上げた東京公演をレポート

1月27日(火)19:00 フラワーカンパニーズ @ 四日市CLUB CHAOS

フラカンのライブ、11月3日の渋谷のduo以来、観ていない。コロナ禍の間を除くと、自分がフリーのライターになった2015年4月以降で、こんなに長いことフラカンのライブを観ていないの、初めてかもしれない。
なので、2月4日の下北沢シェルターを待てずに四日市まで行きました。平日は他のライブが少なくて動きやすいのと、四日市、行ったことないので一度行ってみたかった、というのもあります。
そしたらフラカン、グレートマエカワが座ってベースを弾いていた。片膝が悪いのをかばいながらライブをやっていたら、その負担で腰なども痛くなってしまい、この前の週末の高知→広島の、高知の途中から座って弾いているそうです。
ただ、それ以外の部分では、演奏も鈴木圭介のノドも絶好調だし、平日なのにお客さんいっぱいだし、選曲も曲順も11/3とは全然変わっていて新鮮だったし(そういうバンドなんだけど)、総じて「行ってよかった!」と心底思えるライブだった。
グレートさんの下半身だけ心配ではあるが、ご本人としては、座って弾くと、丁寧に演奏しやすくなるだけではなく、立って暴れまくりながら弾いている普段とは違う発見が、いろいろあるそうです。
なお、普段のフラカン、地方のライブでは、終演後にグレートが物販に立つことが多いが、この日は圭介が立っていた。というのも、普段と違ってよかったことかも、ファン的には。

1月30日(金)19:00 TESTSET @ EX THEATER ROPPONGI

ニューアルバム『ALL HAZE』のリリース・ライブ。
『ALL HAZE』収録の9曲すべて聴けた(ただし「Initiation」は演奏ではなく、このライブのSEとして使用された)。LEO今井と永井聖一のツイン・ボーカル体制もすっかり板についた。『ALL HAZE』の曲たちが加わったことで、METAFIVE時代の曲が1曲もなくなった、というのも、大きいと思う。
立ち位置が4人横一列、というステージ上のフォーメーションはこれまでと変わらないが、前は4人とも台の上に立っていたが、右端のドラムの白根賢一以外の3人は台がなくなり、床に直になった、という変化もあった。たぶん機材配置とかの都合だと思う。
効果映像も新しい空気感のものになっていたし、総じて、いろんなことが新しく始まった、という実感のあるステージだった。なるべくまたすぐライブを観たい。

1月31日(土)14:00 『妖精ヴィッリ&カヴァレリア・ルスティカーナ』@ 東京文化会館大ホール

オペラの公演です。『妖精ヴィッリ』と『カヴァレリア・ルスティカーナ』の2本で1公演になっていて、東京で1月31日・2月1日、2月7日(土)に愛知芸術劇場大ホールの3公演で、東京は1日目と2日目でキャストが全員替わる、というもの。
自分は完全に門外漢であるオペラを、なぜ観に行ったのかというと、東京の1日目の『カヴァレリア・ルスティカーナ』の方に、古い友人であるオペラ歌手が出演しているからです。出演者5人のうちのひとりが彼女(ルチア役の牧野真由美)で、それ以外にアンサンブル・キャストが、見たところ、30人くらい。
オペラって、歌舞伎や古典落語がそうであるように、みんなその演目のストーリーを把握した上で観るものではあるが、歌詞がイタリア語なので、ストーリーを知った上で観ても、舞台の上で歌われたり演じられたりしている今のこの瞬間が、物語のどのあたりなのかがわからなくて、話に付いて行けなくなる、ということがある。
20年くらい前だっけ、ここ(東京文化会館)に彼女が出演するオペラを観に来た時、見事にそうなったが、今のオペラってステージの両端に縦型のLEDがあって、そこに歌詞の翻訳が出るようになっているんですね。おかげで最後まで振り落とされずに楽しめました。彼女の歌、それはもう見事だったし。

1月31日(土)18:00 くるり @ Zepp Haneda(TOKYO)

という、上野でのオペラ観劇が3時間で終わって、17:11上野駅発の電車に乗って京急天空橋駅に17:51着、『くるりツアー 25/26 〜夢のさいはて〜』最終日=Zepp Haneda2デイズの2日目の開演に、間に合った。
本編23曲、アンコール3曲の全26曲。ニューアルバム『儚くも美しき12の変奏』のリリースが、この日から10日後(2月11日)で、そのアルバムに収録される先行リリース曲の5曲のうち「La Palummella」(Daniele Sepeとの共作曲)以外の4曲=「Regulus」「瀬戸の内」「oh my baby」「ワンダリング」が演奏された。
で、その中の「ワンダリング」を、22曲目にやる前のこと。岸田繁が、10月に東京ドームにオアシスの来日公演を観に行った、という話をする。
「ドント・ルック・バック・イン・アンガー」で、ノエル・ギャラガーはサビを歌わない、お客さんに歌わせる。自分は「いや、きみらの歌を聴きに来てるわけじゃない、ノエル、あなたの歌を聴きに来てるんだ」と思う方だ。でも、気づけば俺も一緒に大合唱していた、涙を流しながら。俺もあれをやりたい、と思ったが、くるりにはなかなかそういう曲がない……あ、1曲あるじゃないか!
──というわけで、「ワンダリング」の「Hobo! Hobo! Wandering」の部分をオーディエンスに教えて、みんなで練習してから、その曲に入った。みんな最初は笑いながら歌っていたが、曲の後半では、それはもう感動的な状態になりました。
あと、アンコール恒例・佐藤征史の物販コーナー紹介が、「岸田がアコギで弾き始めた曲のメロディで、佐藤が替え歌でグッズを紹介するコーナー」と化していて、めちゃめちゃ笑った。オアシス「ワンダーウォール」クイーン「ボヘミアン・ラプソディ」くるり「ハイウェイ」の3曲でした。

  • 兵庫慎司

    TEXT

    兵庫慎司

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