back number tour 2016 “ミラーボールとシャンデリア”
2016年7月14日(木) 日本武道館
TEXT:兵庫慎司
PHOTO:半田安政(Showcase)
昨年12月9日発売の5thアルバム『シャンデリア』のリリース・ツアー、1月24日千葉・市川市文化会館から4月29日群馬・前橋ベイシア文化ホールまで27本のホールツアー、そのあとさらに名古屋ガイシホール・幕張メッセ・大阪城ホール・マリンメッセ福岡・日本武道館・最後は地元のヤマダグリーンドーム前橋、いずれも2デイズのアリーナツアー──すべて合わせて39本にのぼる大規模なツアーを行ったback number。その中の、日本武道館2デイズの1日目、7月14日を観ました。
ステージ後方の壁に額がいくつも重なっていて、その額が画面になっていて、メンバー3人の姿が、早いカメラ切り替えで次々と映し出されるというセット。
『シャンデリア』の10曲目、「Liar」でライブはスタート。武道館があっさりと興奮に包まれる。
続く「泡と羊」も含めて『シャンデリア』の12曲すべてと、「青い春」や「高嶺の花子さん」などの過去のシングル、そして「スーパースターになったら」「そのドレスちょっと待った」などのライブ・アンセムがプレイされた。
「わたがし」で照明が夕焼け色に変わり、虫の声が響き、画面に縁日の風景が映し出されたり、「半透明人間」でカメラが客席のオーディエンスを抜いたり、「青い春」や「クリスマスソング」でレーザーが飛んだり、本編ラストの「スーパースターになったら」で銀テープが発射されたり──という演出もあったものの、基本は音楽の力、歌の力をどーんとまんなかに置いた、シンプルな見せ方・シンプルな聴かせ方のライブだった。こんな大規模なキャパにしてはめずらしいくらいそうだった、と言ってもいいかもしれない。
清水依与吏、3曲歌い終えたところで、「いや、久々に来たけど、すごい作りだね。すごい近い、ありがとう」と、この日本武道館という会場の特殊な形状(大規模の会場としては他にないくらい、アリーナ・1F・2Fがステージから近いのです)と、そこを埋めた満員のファンに感謝を述べた。
「僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい」「いつか忘れてしまっても」「思い出せなくなるその日まで」「君がドアを閉めた後」の4曲を歌ったあとは、「悲しいの続いたね、悲しいブロックでした。よく耐えたね、みんな。ありがとう」とコメントし、皆を笑わせた。
「助演女優症2」をやる前は、「今日お越しの10代の方、両手を耳に当てて次の曲は聴かないでください」と注意。そしてアンコールでは、「これからも、自分たちが本当に思っていることだけ歌っていくので、ここにいる人が全員幸せになれるようなことは書かないと思います」「なんで自分たちの思いどおりにならねえんだ、っていうことを歌います」と宣言。オーディエンス、大歓声と大拍手で応えた。
というようなMCに顕著に表れているが、そしてそれ以上にそれぞれの曲にはっきりと表れているし、その曲たちをこうして生で聴かせる時の態度や表情やふるまいなどにも表れているが、清水依与吏は、back numberというバンドは、バカ正直な自己申告しかしない。自分をよく見せようとか、大きく見せようとか、取り繕おうとかいう意識が、ちょっとどうかと思うほど、ない。思ったこと、感じたこと、考えたことをそのまんま歌う。女のことばっかり考えているグズグズ野郎だったり、ほとんどストーカーと化す寸前の思考だったりを隠さない。しょうがない。だって俺はそうなんだから、という。で、それを隠すんだったらそもそも歌う意味も歌を作る意味もないし、という。
そんな、みっともなさやカッコ悪さ込みのバカ正直さが、こんなにも多くの人の心を射抜いていること自体がすばらしいことだと思った。もちろんメロディメーカーとしての天賦の才能あってこそのことではあるが、でも、この、言うなれば「思いがすべてをひっぱっていく音楽」として存在し続ける限り、back numberはいつまでも愛されていくんだろうな、と改めて実感した。彼らと同じように、自分の思いに日々振り回され続けている聴き手たちから。