2012.7.19 up
ニューアルバムの曲中心に、じっくりと歌を聴かせた一夜
21作目となる最新アルバム『MASTERPIECE』は、ユニバーサル・ミュージック移籍後もっとも穏やかな、いや、エレカシの全キャリア中でも稀に見る優しい表情に包まれた、じっくりと歌を聴かせるタイプの作品だった。
そのアルバムを携えての全国ツアー、東京公演2DAYSの2日目。
病気療養中と伝えられたドラムの冨永も元気に復活し、1曲目「大地のシンフォニー」から、豊かな包容力にあふれた、威風堂々たる演奏でオーディエンスを圧倒する。
続けて『エレファントカシマシⅡ』収録の「優しい川」を歌ったのには少々驚いたが、25年に近い時をへだてても変わらぬエレカシらしさを、こうして新鮮に感じられるのはライブならではの醍醐味だ。
その次の「化ケモノ青年」は2004年作品だから、時代はあちこち飛び回るのだが、ストイックに熟練を極めたバンドサウンドと、宮本の歌の放つ強烈なパワーで、すべてが“今のエレカシ”に集約されてゆく。
ここから5曲、『MASTERPIECE』収録曲を一気に聴かせる。
どれも名演だったが、特に宮本のソウルフルな歌いぶりが胸を打つ「約束」、シンプルなロックンロールのビートに乗り、宮本とサポート・ギターの藤井謙二がゴキゲンなギター・バトルを聴かせた「穴があったら入いりたい」など、聴きどころはたっぷり。
「穴があったら入りたい」の歌詞“飛び出せSaturday”のあとに“今日はThursday”と付け加えるなど、ニヤリとさせる小技も利いている。
ここから打ち込みビートの「眠れない夜」、さらにファースト収録曲「てって」、定番曲「珍奇男」と、趣の違う曲が続く。
「てって」では宮本がキーボードを弾く、珍しい光景にオーディエンスが沸く。
「珍奇男」の長い間奏では、宮本と藤井、石森、高緑との楽器バトルが繰り広げられ、場内の熱気がグンと高まった。
短いメンバー紹介をはさみ、後半は再び『MASTERPIECE』から5曲を披露。
宮本がギター弾き語りで歌いかけた「七色の虹の橋」では、アルバム・タイトルになった“誰の人生だってMasterpieceさ”というフレーズが、ひときわ輝いて聴こえる。
超ヘヴィな「世界伝統のマスター馬鹿」を経て、「飛べない俺」では再びキーボードに向かう宮本が、誰に言うともなく“絶好調!”とつぶやくのが確かに聴こえた。
そして強烈なストロボ・ライトが輝く中、静から動への音の躍動感が素晴しい「我が祈り」で、ライブの本編は幕を下ろす。
アンコールでは、過去のヒット曲と代表曲を4曲続けて畳み掛ける。
メロディアスな「今宵の月のように」「so many people」のあとに、猛烈な怒りと攻撃性にあふれた「ガストロンジャー」を、そして「ファイティングマン」へと連なる流れは、まさに唯一無二のエレカシ・ワールド。本編ではほとんどしゃべらなかった宮本が、得意の“エブリバデー!”を連発しながら吠える姿に、「これがエレカシだ」と思ったファンも多かっただろうが、『MASTERPIECE』の、穏やかな優しさの下に力強さを秘めたスタイルもまたエレカシだ。
25年近くも、つねに新たな感慨を与えてくれるバンドとして、エレファントカシマシの存在がますます貴重になっていることを、痛感させられるライブだった。
Report by 宮本英夫
Photo by 岡田貴之
M1. 大地のシンフォニー
M2. 優しい川
M3. 化ケモノ青年
M4. 東京からまんまで宇宙
M5. 約束
M6. ココロをノックしてくれ
M7. Darling
M8. 穴があったら入いりたい
M9. 眠れない夜
M10. てって
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M11. 珍奇男
M12. ワインディングロード
M13. 七色の虹の橋
M14. 世界伝統のマスター馬鹿
M15. 飛べない俺
M16. 我が祈り
EN1. 今宵の月のように
EN2. so many people
EN3. ガストロンジャー
EN4. ファイティングマン
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INFORMATION
■RELEASE
4th Single
『ズレてる方がいい』
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