永野×HONEBONE鼎談 『トゥーフェイス』と『MAD MASK』で表現した悲しみと希望【後編】

インタビュー | 2026.09.30 19:00

永野の言葉をきっかけに、自分たちの二面性を肯定できたというHONEBONE。後編では、永野がニューアルバム『トゥーフェイス』をどう聴いたのか、エミリと川口が永野監督作の映画『MAD MASK』に何を感じたのか、それぞれの作品をめぐって踏み込んだ言葉が交わされた。吐き出すことで生まれた作品の次に、何を作るのか。表現者同士だからこそ語れる“これから”が見えてきた。

<前編はこちら>
永野×HONEBONE鼎談 出会うべくして出会った3人 永野の言葉が『トゥーフェイス』を導くまで【前編】
──永野さんは、『トゥーフェイス』を聴いて、どのような感想を持たれましたか?
永野『トゥーフェイス』と『MAD MASK』には共通点があって、多分、どちらも吐き出し系なんですよね。このアルバムは、今のこの年齢の2人が考えている、生のものが出ているアルバムだと思いました。
歌詞の内容も「みんなで頑張ろう」みたいなことは言っていない。自分の心を吐き出すことで精いっぱい、という感じがしましたね。世の中のみんな、二面性なんて持っているから、『トゥーフェイス』に決まっているんですよ。本人たちはどう思うか分からないけど、僕はすごくフォークっぽいと思いました。本当のこと、リアルなことを歌っている。ふざけてるかもしれないけど本人たちは(笑)。
川口嬉しい分析です!

ラップをやっても、フォークをやっても、どっちも生々しいところがHONEBONEらしさなんだと思います(永野)

永野あと、以前、2人がSNSにラップっぽい動画を上げていたじゃないですか。あれを金子ノブアキさんが見ていて、「ラップ、いいですよね」と言っていましたよ。
エミリ&川口えーーーっ!!
エミリ認知してくださっているんですか!?

──当メディア独占の情報ですね(笑)。
エミリいや、ほんとに!
永野金子くんには、ラップじゃなくて、フォークの人たちだよと伝えたんですけど、あの「だりい」とか「冬、マジ寒い」みたいな感じが刺さっていた。だから、ラップをやっても、フォークをやっても、どこか似ているし、どっちも生々しいところがHONEBONEらしさなんだと思います。
──非常に興味深いです。
永野でもね、次に『トゥーフェイス パート2』を作ろうとするのも、違うと思うんですよ。
川口それは、めちゃくちゃ分かります。今までの歴史でいうと、僕たちは期待されること自体は多くなかったんです。でも、それでも気にしてしまって。昔、人情系の曲が多くなった時期に、「暗い君たちが好きだった」と言われたりするんです。でも、またそこに寄せようとすると、「わざと暗さ」になっちゃうかなと。
永野あーー!分かる、それ!だから、比較的楽しい作風である『トゥーフェイス』後に、「わざと笑い」みたいな作品を作るのは、どうかなと思うわけ(笑)。
エミリギャー!それは、恥ずかしい(笑)!!
永野もっと売れたとして、ただ、金持ちになって「金があります、幸せですね」だけだったら、僕も聴きたくはない。幸せなら幸せで、「だったらもっといい歌を」という方向へ行ってほしい。これからどうしていくかが、楽しみなんです。

いわゆる「いい歌」を真っすぐ出すことに恐怖がある(川口)

──アルバムの中で、特に好きな曲を挙げるとしたら、何でしょうか?
永野意外と言うと怒られるかもしれないけど、「さよならといっしょに」ですかね。
エミリえーっ!
川口意外!
エミリより、永野さんが分からなくなってくる(笑)。いや、ああいう曲はむしろ、「こういうのいらない」と思っているかと……
川口でも、シンプルにうれしいです。
永野「どうか、どうか…」や「最悪」もいいのですが、「さよならといっしょに」は、そっと琴線に触れてくる。歌としての純度が高いし、具体的に描きすぎていないから、聴く人によっていろいろな「さよなら」になる。そこにドキッとしましたね。
川口歌の内容は、さっき、永野さんがおっしゃってたことに近いですね。この先どうするかっていうことを歌っています。永野さんのような人が、自分たちのそういう面を「いい」と言ってくださると、それも一つの自信になります。ああいう真っすぐな歌は、性格上、怖いんですよ。尖っていないし、いわゆる「いい歌」を真っすぐ出すことに恐怖がある。
永野僕のラッセンのネタも、当時は売れなさすぎて、売れたくて作ったんです。リズム芸を超狙って出した。でも、いまも「あれは何なんだ」「本当はラッセンが好きじゃないんだろう」と言われる。僕は「本当に好きなんです」と言うけど、どう考えても意味が分からないし、何言ってんだと(笑)。
エミリ&川口アハハハハ!!

永野結局、狙って作っても人間が漏れちゃうんですよ。だから、何気に期待しているのはHONEBONEも、次は「さよならといっしょに」のような曲を量産するつもりでアルバムを作ったら、面白いことになるんじゃないかと思う。
エミリ&川口ああ~~!(意外でありながら、どこか納得といった表情で)
永野本人たちはヒットソングを狙っていても、エミリと川口の個性や哀愁が、絶対に乗ってしまうと思うんです。『トゥーフェイス』は胸の中をガーッと見せるアルバムだけど、「さよならといっしょに」だけ少し異色に感じました。そこが次への鍵になるかもしれない。もっと広い層へ届けようとした時に、扱われ方までガラッと変わるような展開がありそうです。
──永野さんは、次回作の構想はあるのですか?
永野最初は次作を『MAD MASK MIYAZAKI』にしようと思っていたんです。略して「MMM」みたいな(笑)。『MAD MASK』で描ききれなかったものが、音楽で言えば、あと3曲分くらい残っている気がして。でも時間が経ったら、「もういいかな」となったんですよ。自分は、もうそこに留まっていない。もっと広がったものを見せたい。まだ少し『MAD MASK 2』のような部分はあると思うけど、次の場所へ行きたいと思っています。自分で「俺はこういう人間なんだ」と示すより、もっと受けを狙う方向へ行ったら、逆に面白くなる気がしていまして。ラッセンのネタを作った時のような頭でやってみたい。さっき、2人に言ったことにつながるのですが、HONEBONEにも、同じようなことを感じているんです。

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