2月25日に東京・日比谷野外大音楽堂で、インストバンドのみが出演するフェスティバル「“Instrumental Festival” in 日比谷野外大音楽堂 Supported by Playwright & TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」の開催が決定。2021年まで新木場STUDIO COASTで開催された「TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」の流れを受け継ぎつつも、新しいフェスとして開催されるこの日には、ADAM at、fox capture plan、H ZETTRIO、POLYPLUSの出演が決定。そこで今回はfox capture planの岸本亮と井上司、ADAM atの玉田大悟、POLYPLUSのTSUUJII、YUKI、Gotti(岸本はPOLUPLUSのメンバーでもある)、さらにはPlaywrightを主宰する谷口慶介も交えての座談会をリモートで開催。前編では2010年代からの流れを振り返りつつ、≫後編では昨年末にfox capture planが「紅白歌合戦」のグランドオープニングを担当するなど、話題豊富な現在のインストシーンについても語り合ってもらった。
——まずは谷口さんからフェスの開催に至る経緯を話していただけますか?
谷口ぶっちゃけて言うと、DISC GARAGEの尾形さんから「野音、押さえられたんですよ。谷口さんやりません?」って言われたからです。「ちなみに、2月なんですけど...」とも言われたんですが、二つ返事で「やります」って言いました。「野音で何かやりたい」っていうのはずっと言ってて、ただ日比谷野音で興行をやるということがどれだけ大変なことかはみなさんご存じだと思いますので、「やりたい」だけじゃやれないわけですけど、今回「この日やりません?」と声をかけていただいたので、すぐにお返事しました。
——今日お集まりいただいたみなさんは「TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」とも縁の深い方々なので、それぞれフェスについて振り返っていただけますか?
岸本(fox capture plan/POLYPLUS/JABBERLOOP)一回目の2015年はまだ僕らがデビューして3年目とかで、メインステージじゃなくて、サブステージの方だった気がします。我々だけじゃなくて、例えば、Schroeder-Headzさんとか、今や結構ベテランの域にいる人たちが、当時はサブステージで、→Pia-no-jaC←とかDEPAPEPEがメインステージに立ってたのは何となく覚えてますね。お客さんは初回からすごい入りで、コーストはageHaでクラブイベントもやってたじゃないですか。Kyoto Jazz Massiveのお二人がクラブジャズ系のイベントをやってたり、そういう時代を思い出して、インストバンドシーンも当時のクラブジャズブームと同じぐらい市民権を得てきたのかなっていうのを実感した年でもありました。
井上(fox capture plan)一年目は確か僕らトップバッターとか、結構早い時間だったんですよ。でももうパンパンに人がいて、すごく衝撃を受けたのを覚えてて。そこから毎年のように出させてもらって、個人的に印象的だったのは、→Pia-no-jaC←に僕一人だけドラムで参加した年があって、えげつないキメをめちゃくちゃやらされました(笑)。そういう交流は普段のライブだとあまりないことなので、いろんなミュージシャンが架け橋的に混ざり合ってる、面白いイベントだなっていう印象でずっと見てました。
——ADAM atも2回目の2016年から出ていて、2021年まで毎回出演されていましたね。
玉田(ADAM at)2016年のサブステージから出させてもらったんですけど、僕だけ地方住みというのもあって、あれだけの人がいることに対しての驚きはそんなになかったんですよ。「都会はこれだけ人が集まるんだな」っていうイメージでしたけど、それと同時に「このジャンルをやってて正解だったな」と思いましたね。印象深いのは、大御所のT-SQUAREさんが出られた年(2019年)であったり、あとはコロナ禍で開催した2021年もすごく印象深かったですね。時期的にどうしても人が減ってしまって、寂しかったりもしましたけど、逆に今年を契機にまたあの熱気が戻ってくればいいなと思ってます。
——YUKIさんはPOLYPLUSでは出てないけど、JABBERLOOPやADAM atのサポートで何度も出られていますね。
YUKI(POLYPLUS/JABBERLOOP)「この日はインストバンドしか出ません」ってちゃんと謳った上で来るパイがどれぐらいいるんだろうっていうのは最初全然わからなかったんですけど、「こんなにいるんや」って思ったのが最初の印象ですね。「スタジオコーストが満員になるんや、すげえな」って、それに勇気をもらったというのはありました。「頑張ったらこれぐらいの人たちの前で演奏することができるんだな」と思って、ものすごくありがたい機会やなと思ってやってました。
──TSUUJIIさんもCalmeraで何度も出演されています。
TSUUJII(POLYPLUS/Calmera)僕もみなさんと一緒で、「インストというシーンでこれだけの人が集まってくれんねんな」と思ったのがまずは大きかったですね。SOIL & “PIMP”SESSIONSに憧れて、その同時代にいたPE’Zの背中も見て、JABBERLOOP先輩の音を聴き、ずっとやってきた身としては、大学生の頃にパンパンのライブハウスでやってる諸先輩方を見てきたので、「こういうもの」というか、もともとすごく人気のあるジャンルだと思ってたんです。でも大人になるにつれて、「これはちょっとニッチなジャンルと呼ばれるところにいるっぽいぞ」っていうのを感じる機会も出てきた。でもそれを打ち砕いてくれたのが、「TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」だったなって。「全然インストでコースト揺らせるやん」っていう、それが一番。あともう1個あるのが、Playwright STAGEが何年目かに出来ましたよね(2017年)。バーカンの方のギュッとしたエリアではあったけど、すごく熱狂的なライブをPlaywrightメンバーがやっていて、そのときはまだPOLYPLUSがPlaywrightに合流してない頃だったので、「Playwrightがシーンを牽引してるんだな」と思ったのは覚えてます。
Gotti(POLYPLUS/ Neighbors Complain)僕は「TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」自体は出てないんですけど、2017年とか2018年くらいに、僕がやってるNeighbors Complainのスタッフ陣が常々「Playwrightがすごい、fox capture planがすごい」っていうのを言ってて。当時のスペースシャワーのレーベルの人に「これ読んで」って、谷口さんの記事を教えてもらって、「この人すごいんやな」って思った記憶もあるし、僕らのようなR&B、歌もの系の人らのとこにも情報がバンバン入ってきてて、それはよく覚えてます。
──Playwrightにとって「TOKYO INSTRUMENTAL FESTIVAL」はどんな場所だったと言えますか?
谷口いつもインタビューで言いますけど、俺は何かを引っ張っていくタイプじゃないので、「ああいう場を与えていただいて、ありがとうございます。」っていうくらいなんです(笑)。好きなことをやっててよかった、続けてれば野音の話も舞い込んでくるんだなっていう、もうそれしかない。今回のフェスもそうなんだけど、ブームを作ってる感じは全くしなくて、何でもそうなんだけど、「とりあえずやってみようか」って感じ。多分さっきGottiが読んだ記事は金子さんが書いてくれたやつで、そのときも言ったと思うけど、Playwrightを始めたときも、fox capture planとbohemianvoodooとorange pekoeの3組から同時期に声を掛けられたから、「とりあえずやってみっか」で始めたんですよ。「TOKYO INSTRUMETAL FESTIVAL」にしても、最初はそんな感じだったんじゃないかな。でもそれが結果的に大きくなったから、今回も野音でやって、この中にいる誰かが伝説を作るんじゃないかなと。誰かがソロを30分延々やり続けるとか、楽しみにしてます(笑)。