──2006年5月31日は、ソロ・アーティストGAKU-MCにとって、とても大きなターニング・ポイント。
そうです。その時の名義は「GAKU-MC/桜井和寿」でしたけど、実質的にウカスカジーの最初のリリースですし、トイズファクトリーさんとの出会いでもありますし。…あれ、どっちが先だっけ？そのあと、『世界が明日も続くなら』というアルバムを、トイズファクトリーさんから出したんだっけ？
──そうですね。『世界が明日も続くなら』は、2009年10月21日リリース。
そうか。だんだん記憶もあいまいになってきますね。20年もたつと(笑)。
──そういう大きなターニング・ポイントって、何回かありました？
あったと思います。まず、1999年にソロ・デビューできたこと。そして3枚目のアルバムに、「昨日のNo,明日のYes」という曲が入ってるんですけど、今もずっと歌い続けている曲で、それを桜井がBank Bandでカバーしてくれて、音楽的に繋がれたこと。その前にアンティノスさんがなくなって、3枚目はレンタル移籍という形で、ワーナー・ミュージックさんに行くわけです。レンタル移籍って何だよ？と思いながら。
──あはは。サッカー選手みたいな。
でもそれはそれで、楽しい移籍でしたね。アンティノスさんがなくなり、ブルーワン・ミュージックさんという名前になって、それもなくなり。事務所がなくなって、さてどうするんだ？と。そこで、桜井との縁もあって、烏龍社という事務所に行くんですけど、そこでトイズファクトリーさんから『世界が明日も続くなら』を出す。そのあと、2011年に震災がありまして、すぐにテントと炊き出し道具を持って、3週間ぐらいボランティアしてきたんですけど、その時自分の音楽は、今考えると、あんまり進んでいなくて。「もっとやりたいこと、いっぱいあるのにな」と思ったのと、環境を変えたくて、「自分でやります」ということで、ラップラスエンターテインメントというレーベルを立ち上げて、『キュウキョク』というアルバムを出すんですけど、自分でやるのってこんなにめんどくさいのかを、思い知らされました。CD盤1枚出すのに、スタジオを取って、レコーディングして、プレスの会社を選んでとか、毎日事務作業の連続で、今までのスタッフに「すみませんでした！」という気持ちになって(笑)。でも、そういう経験があったからこそ、いろんなものを無駄使いしなくなったし、時間も経費も、人とのコミュニケーションも、一つ一つの意味が明確になった。そこで『キュウキョク』と、『ALL YOU NEED IS RAP』を出しましたね。その次、何でしたっけ？
──ベスト盤ですね。2014年の『THE BEST“GRADATION”』。
そうそう。その頃、「毎年1枚出そう」という意気込みでやっていたんですけど、一回ベストをはさんでみるかという気持ちになって、曲を選んで、ソニーの音源が多かったから、「出してもいいですか？」ってソニーに聞いたら、「曲数の割合が何％以上だと、ソニーの音源は使えません」「おおー。なるほど！」みたいなことがあって。
──ああ、そういう契約が。
各社の音源を並べた時に、ソニーの音源が50%を越えないようにしなきゃいけないとか、そういうルールを聞かされて。知らないじゃないですか、そんなの(笑)。じゃあ選び直しますと言って、バランスを変えたりして。さらに「使用料はこれくらいです」「ちょっと待て、使用料って、自分の曲だぞ！」みたいな(笑)。でも、そういうものなんですよね。まあ、それでベストを出しました。次に、『ついてない1日の終わりに』で、トイズファクトリーさんに戻るんですけど、いろいろやってきて、任せるところは任せたほうが楽だということに、ようやく気が付きまして。「あらためて、よろしくお願いします」という話をして、去年『Rappucino』を出して、ここまでたどり着いたわけです。
──はあ…。まさに波瀾万丈の20年。
Jリーグで言うと、ユースからトップに上がって、ずっと同じチームにいたわけじゃなくて、移籍ばっかりして、時にJ3まで落ちて(笑)。
──またJ1に戻って来た。そういう選手は応援したくなりますよ。
だから、「ターニング・ポイントは？」と聞かれると、いっぱいあって絞れないけど、紆余曲折はこれぐらいたくさんあって、細かいものも入れればもっとある。でも出会いに関しては、恵まれてるんじゃないかと思います。あ、そうそう、この二つを忘れてた。2012年に「アカリトライブ」を立ち上げたことと、MIFAを立ち上げたことは、自分にとって一番大きいことだったと思います。「アカリトライブ」に関しては、震災を経て、何かできることはないか？ということで、始めて、ちゃんと形になって今も続けられている。毎回、だいたい二組のゲストをお招きして、彼らの楽曲を僕らのバンドが弾くので、すごく勉強になる。なんでこの曲がヒットしてるんだろう？という理由を解明したり、結果、それが自分のクリエイティブにもいい影響を与えてます。あとは、ここ（MIFA）ができたおかげで、居場所というか、人と人が繋がって、目に見えるリアクションがあって、音楽イベントもできますし。家族ぐるみでここを使ってくれる人も多い中で、サッカーと音楽がどうやって人に影響していくのかがすごくよく見えるんですよ。
──そして、デビュー20周年記念Anniversary Live Tour“ハタチ旅”が、10月21日の渋谷PLEASURE PLEASUREからキック・オフ。これ、演奏曲をファンからリクエストを募ってましたよね。
はい。8月で締め切りましたけど、けっこうな数が来て、みなさんの好みがわかって、面白かったです。
──上位3曲は必ずやります、という公約でした。
もしかしたら、もっとやるかもしれない。まだギターを弾いていない頃で、「けっこう難しいコード使ってますね」というものもいっぱいあるので、どうしようかな？とは思いますけど、全曲リクエスト順でもいいかなと思ってます。今は。
──初期の曲のリクエストも？
いっぱい来ました。一番新しい『Rappucino』からの曲も入ってたし、いいバランスですね。面白いです。
──“ハタチ旅”というのは、ソロ・アーティストとして、成人式を迎えましたという気持ちですか。
はい。それと、もう一つのテーマとしては、二十歳の頃にやりたかった旅を、ちゃんとやるという裏テーマがありまして。昨年度に引き続き、キャンピングカーで行きます。去年のツアーを収録した『トラベルノート』というDVDが評価されて、「カートラジャパン2019」アンバサダーの称号をいただきまして。今、オリジナル・キャンピングカーを作ってます。
──えっ！それはすごい。うらやましい。
GAKU-MC号を作ってるんですけど、これは本当にすごいことだと思っていて、それに乗ってツアーに行きます。ただ渋谷PLEASURE PLEASUREに関しては、停める場所がないので、外観と内装の写真をお見せしながら、「これに乗って全国行ってきます！」ということになると思うんですけど。メンバーと、スタッフ1人ぐらいで行くと思います。みんなで運転と、洗濯と、料理と、毎晩UNOやったりしながら、二十歳みたいな気持ちでいこうかなと思ってます。行く先々で、サッカーの試合も組んでるんで、それも楽しみです。
── 一石五鳥ぐらい。楽しみしかない。
そうそう。そして。また動画を撮って、DVDにして、次の旅の資金に回す(笑)。そこがさっき言った、インディーズを経てきた強みですね。
──新曲とか、やります？
新曲は、本当は今年出してもいいんじゃね？ぐらいの感じで、ずっと曲作りをしてたので、あるんですけど、20周年のツアーなので、新しい曲は出さなくてもいいだろうと。曲はたまってるんですけど、ここは焦らずに、年が明けたらまとめる作業に入ると思います。ただ何曲かは、未来を予感させる感じで、入れていこうかなとは思ってます。
──過去と未来が見えるツアー。
後ろばっかり振り向いてても、性格に合わないので。
──昔聴いてて、しばらく離れてた人とかも。この機会にぜひ。
歴代のマネージャーも呼びましょうか(笑)。20年間のスタッフだけで、何十人にもなっちゃいますね。
──いいですね。同窓会ですか。
確かに。2月のデビュー日に、ちょっとしたイベントを、MOTION BLUE横浜でやったんですけど、その時もそういう感じでした。ソロの1枚目に入ってた「ハタラコウ」という曲を聴いて、「40越えて、“ハタラコウ”って歌うとは思わなかった」という人もいたし(笑)。いろんな時代の曲を聴きに、ぜひ来てほしいです。
PRESENT
トラベラーTシャツ(S、Mサイズ)を各1名様に！
※転載禁止
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