Cloud Nine Fes 2026『滴音録-Tekinroku-』
2026年9月19日(土)恵比寿ザ・ガーデンホール
出演:アヤセミサキ、大宮陽和、梟note/弱酸性、shallm、栗林みな実、ファントムシータ、夜々、ゆとりくん、IVYJCT
Adoや平手友梨奈などを擁する音楽プロダクション・クラウドナインが、初の主催音楽フェス「Cloud Nine Fes 2026『滴音録-Tekinroku-』」を9月19日に恵比寿ザ・ガーデンホールにて開催した。出演者はアヤセミサキ、大宮陽和、梟note/弱酸性、shallm、栗林みな実、ファントムシータ、夜々、ゆとりくん、IVYJCTの計9組。それぞれのアーティストのカラーが発揮されると同時に事務所の朗らかな空気も感じ取れる、アットホームかつジャンルレスでカラフルな一夜となった。
オープニングは5人のソロアーティストによるコラボステージ。生バンドの演奏に乗せてアヤセミサキと夜々はアヤセのオリジナル曲「坂道を下って」をポップで清楚に、大宮陽和、梟note/弱酸性、ゆとりくんの3名はゆとりくんが所属するユニット・69の「pool feat.さらさ」をソウルフルに届ける。ホールならではの豊かな響きが会場を包み込み、記念すべき初回開催の幕開けを彩った。
SEを挟んで本編に入り、一番手として躍り出たのはシンガーソングライターの梟note。“弱酸性”名義で歌い手活動も行う彼だが、この日は梟noteのオリジナル曲で臨んだ。メジャーデビュー曲「オボツカナシ」で低音を活かしたボーカルで魅了したかと思いきや、スリリングにたたみ掛けた「正偽」、軽快な「patience」、ポップソング「彩られた理想へ」と振れ幅の広さを見せる。どこか陰を纏いながらも少年漫画の主人公的な実直さも持ち合わせた絶妙なバランスと、的確なリズムで作り出すグルーヴがフロアを小気味よく揺らした。
観客とコミュニケーションを愉しんだあとに「最後に皆さんと楽しめる曲を持ってきました」と告げ、ジャズロック調の「女王」で締めくくる。色気と情熱に富んだ歌声と演奏が観客のテンションを煽り、盛大なコールも起きるなど、第一走者としてイベントを勢いづけた。
今年6月に現名義に改名した大阪府出身のシンガーソングライター・アヤセミサキはアコギを抱えてステージに登場し、まず清涼感を帯びたギターロックナンバー「ぱっぱーらたった☆」で青春を描く。この日が彼女にとって初のバンドセットでのライブということで、「今もドキドキしててすごく楽しい」と興奮を素直に語った。
繊細かつ強い意志の伝わるボーカルが響き渡った初期曲「夜」、ほろ苦い夏のムードが心地よい現名義初作品となるEP『make a change!』収録曲「夕暮れ、茜空に」と、瑞々しい声は楽曲にしたためた心情をこちらの心にダイレクトに染み入らせる。「いつかこの会場をひとりで埋められるくらいでかくなって帰ってきたい」と宣言し、「どんなに苦しい日も明るい未来につながっていると信じて書いた曲」と告げ披露した「それは光になって」は、歌の隅々にまで彼女の純粋で切実な願望が漲っていた。
高校生で音楽活動をスタートさせた2001年生まれのシンガーソングライター・大宮陽和は、自身初のアニメタイアップ曲「キミ攻略ゲーム」で鮮やかに自身のステージをスタートさせ、観客もジャンプやクラップ、コールで歌と演奏を楽しむ。その後も疾走感のあるアッパーな「東京Noisy」、メジャーデビュー曲「404」とロックナンバーをたたみ掛け、パワフルかつ情感豊かな歌声でもって迫力あるバンドの演奏を颯爽と乗りこなした。
MCでは2025年に音楽活動を休止していたことに触れ、その生活のなかで「結局自分を救ってくれるのは音楽」と気づいた旨を明かす。そして「わたしのように生きることが苦しいと思っている誰かに寄り添って抱きしめられる楽曲にしたかった」「“長いようで短い一瞬の人生をどうやって生きていくの?”と考えながら作った曲」と言い、今年10月にリリース予定の新曲「泡沫」を披露した。本心を歌にする姿は非常に清らかで、観客もその思いを噛み締めるように聴き入った。
様々なクリエイターとタッグを組んで自身の可能性を広げ続けているシンガーソングライターの夜々は、今年3月にリリースされた1stフルアルバム『0:00』の中から選りすぐりの5曲でガーデンホールを彼女ならではの夜の世界で彩った。1曲目「0:00」で伸びやかな歌声とダンス経験が活きたしなやかなステージングで堂々かつ可憐に会場を導くと、メジャーデビュー曲「Lonely Night」でロマンチックなムードに包み込む。「Nonsense」では観客のクラップに乗せて艶やかなダンスパフォーマンスを見せ、「Let go」ではグルーヴとピュアなメッセージで高揚感を生み出して観客のハートを掴んだ。
クラウドナインに所属するアーティストをリスペクトしている旨を語ると「フェスを通してみんなと同じ空間でひとつの時間を作り上げられることをとても幸せに思います」と続け、会場に集まった観客に感謝を告げる。最後にアルバムのラストの「Ray」で眩しいばかりの朝を描いて、なめらかにバトンをつないだ。
アパレル企業yutoriの代表取締役を務めながら2024年に音楽活動を開始し、メジャーデビューを控えるゆとりくんは、インタールードに乗せてマイクスタンドの前に着くと、最新EP『ミラーボールを消して』の1曲目「fashion」を歌い始めた。観客のクラップに「気持ちいいー!」と喜びをあらわにし、ハンドマイクにチェンジすると演奏に身を委ねながら「VintageTee☆」を届ける。彼からいま湧き上がる興奮が歌声に乗り、パッションあふれるパフォーマンスに観客も笑顔を浮かべた。
MCではこの日の楽屋でインサイダーゲームが盛り上がっている旨を明かし、なかでもshallmのliaが熱中していたというエピソードは会場の笑いを誘う。彼の卓越したトークから異なる個性を持ったアーティスト同士の交流が垣間見られ、フロアの空気もより和らいだ。その後は物憂げで穏やかな「ハグレモノ」、ディープかつユーモラスなラップ曲「スピってる」、キャッチーな「バブりたい」と観客も前のめりにゆとりくんの音楽を楽しむ。様々なアーティストのファンが集まる会場が終始ハッピーなムードに包まれたのは、ゆとりくんが経営で培った人の心を掴む力や、牽引力も影響していたと言っていいだろう。短時間ながらに人生で得た強みを効果的に活かしたステージだった。
今年歌手デビュー25周年を迎えた実力派アニソンシンガーの栗林みな実は、この日のセットリストを「脂っこい」「からあげしか入っていないお弁当」と例えていたが、その言葉に違わずパンチのある楽曲を立て続けに披露して会場を大いに沸かした。「Sympathizer」で凛々しいボーカルを響かせると、「dream link」ではエッジの効いたモーションとともに魂を震わせながら歌唱し、バンドメンバーのギターソロも彼女に触発されるように熱い音色を轟かせる。ステージに立ち続けるアーティストでしか習得できないであろう覇気が漲る栗林の姿に、フロアも熱い視線を送った。
栗林は他アーティストに賛辞を送り、同じステージに立てていることへの喜びを表明する。そしてクラウドナインに所属して4年経ったことに触れ「ガラッと人生が変わったかのようにいろんな活動をさせてもらっている」と感謝を告げると、「本当にあたたかい事務所なので、みんなにもその空気が伝わったらいいなと思っています」と呼びかけた。「君の中の英雄」でさらにギアを上げると、「翼はPleasure Line」では伸びやかな歌声で空へと羽ばたくような開放感を作り出す。4曲ながらに濃厚で熱いライブは、イベントの折り返し地点を燦爛たるものとした。
自伝性の強い完全新作コンセプトEP『ANTI AFTER SCHOOL』のリリースを控えるshallmは、ソングライター兼ボーカリストのliaが「皆さん盛り上がる準備できてますか!?」と景気よく叫び、ロックナンバー「G2G」で初手から会場を一気に盛り上げる。たくましさのなかに色香が滲む歌声が会場を照らすと、「何なんですか?」ではイントロでフロアからシンガロングが起き、shallmの描く世界はたちまち会場を支配した。
楽屋が友達ばかりで楽しいと笑顔で語るliaは「皆さんもぜひ今日新しい出会いを見つけてくれたらうれしい」と呼びかけると同時に「shallmも皆さんをファンにして帰る予定です」と気合いを覗かせる。そして「最近この曲のことをよく考える」と前置きし、ロックバラード「短夜の星」を披露した。歌詞にしたためた思いに熱を封じ込めるように絶唱する彼女の姿に目を見張ると、続いての「コンビニアイス」では夏の青春と感情の機微を描き、「まっさかさマジック!」は新たな未来を切り開くようなポジティブな躍動感に溢れる。抑えきれない衝動を抱えてギターをかき鳴らす彼女の姿は、非常に眩しかった。
そしてコラボステージとしてshallmに栗林が合流し、liaは栗林とともにハンドマイクスタイルにチェンジする。「好きな仲間たちが集まってフェスができるって最高」とliaがこの日の感想を語ると、栗林も「こんなにいろんなタイプの音楽を感じられるイベントはない」「いろんなアーティストから刺激を頂いて本当に幸せ」と感慨に浸った。そしてふたりで栗林の2013年リリース曲「ZERO!!」を歌唱する。冒頭から息の合ったハーモニーを響かせ、芯の強さを感じさせる歌声は楽曲の強度をさらに増幅させた。
イベントのラストを飾ったのはガールズグループ勢である。まずは2023年結成、今年5月にクラウドナインへの所属を発表したIVYJCTが登場し、初リリース曲「Merry-Go-Round」を届ける。展開の多い楽曲に合わせてダンスやボーカルアプローチを変え、観客を翻弄するように会場をドライブする姿は非常に輝かしい。「Super Girl」では「一緒に手を回して!」と呼び掛け、クールかつキュートなパフォーマンスがフロアの熱をさらに格上げした。
MCでは緊張を明かし、フロアがあたたかく迎えてくれたことへの感謝を告げる。以降も果敢なステージを見せ、「Hop!! Step!! Jump!!」ではタイトルに違わずバウンスを活かした華やかなダンスで楽曲を彩ると、「皆さんの明日が輝きますように」という言葉の後に披露した最新曲「Piece of cake」ではエモーショナルな歌声から新しい世界へと飛び出すような健康的なエネルギーを生み出した。表現を一人ひとりに届けることを何よりも重んじた真摯なステージに、観客も熱い拍手を送った。
そして“レトロホラー”をコンセプトに活動するファントムシータが、8組がつないだバトンを受け取る。初手はグループのコンセプトソングとも言うべき「ホラークイーン」。Adoがプロデューサーともあり、彼女の表現力を直系で受け継ぐ4人のボーカルは強烈なほどに激情的である。多数盛り込まれたキャッチーな台詞、楽曲の世界を濃厚に落とし込んだダンスを手玉に取るような佇まいも含めて、憑依型アーティストと言っていいだろう。その後も真っ赤なライトに照らされるなか情念を表出させた「おともだち」、噛みつくようなボーカルと狂気的な振り付けが息を呑む「キミと✕✕✕✕したいだけ」と、結成からの2年強の期間で磨き上げたグループの世界観を遺憾なく発揮した。
MCでは等身大の語り口でここまで登場した他アーティストへ賞賛を送る。その後の最新シングル曲「にんぎょひめのうた」では再び楽曲の世界に入り込み、キュートで少女らしい恋する気持ちを表現した冒頭から、その恋が叶わぬことにより愛憎の念が滲み出す様子を生々しく表現した。こちらの脳内を侵食するような気魄溢れるパフォーマンスは、この日集まった多種多様な観客を虜にしたと言えるだろう。
最後にファントムシータとIVYJCTのコラボレーションステージとして、ファントムシータの「botばっか」を披露する。歌謡曲的メロディとポップなサウンド、8人によるフォーメーションダンスという豪華絢爛な情景で、4時間にわたるイベントは締めくくられた。同じ事務所に所属しているというまったくカラーの異なるアーティストが作ったこの日は、絵巻物に描かれた多種多様な世界を追体験するような刺激的な時間だった。この日出演したshallm、栗林みな実、IVYJCTは10月よりツアーがスタート、梟note/弱酸性、ゆとりくんは単発ライブが決定している。それぞれがこの先歩む物語や、クラウドナインという組織が音楽シーンにどんなエンターテインメントを届けるのかにも、引き続き注目したい。
SET LIST
アヤセミサキ×夜々
01. 坂道を下って
大宮陽和×梟note/弱酸性×ゆとりくん
02. pool feat. さらさ
梟note
03. オボツカナシ
04. 正偽
05. patience
06. 彩られた理想へ
07. 女王
アヤセミサキ
08. ぱっぱーらたった☆
09. 夜
10. 夕暮れ、茜空に
11. それは光になって
大宮陽和
12. キミ攻略ゲーム
13. 東京Noisy
14. 404
15. 泡沫
夜々
16. 0:00
17. Lonely Night
18. Nonsense
19. Let go
20. Ray
ゆとりくん
21. fashion
22. VintageTee☆
23. ハグレモノ
24. スピってる
25. バブりたい
栗林みな実
26. Sympathizer
27. dream link
28. 君の中の英雄
29. 翼はPleasure Line
shallm
30. G2G
31. 何なんですか?
32. 短夜の星
33. コンビニアイス
34. まっさかさマジック!
shallm×栗林みな実
35. ZERO!!
IVYJCT
36. Merry-Go-Round
37. Super Girl
38. Hop!! Step!! Jump!!
39. Piece of cake
ファントムシータ
40. ホラークイーン
41. おともだち
42. キミと××××したいだけ
43. にんぎょひめのうた
ファントムシータ × IVYJCT
44. botばっか




















