乃紫、1年ぶりのツアー・東京公演!「みんなが楽しんでいるのを実感できている今が本当に幸せ」

ライブレポート | 2026.07.22 19:00

noa live tour 2026
2026年6月27日(土)東京・EX THEATER ROPPONGI

乃紫にとって音楽は第2の青春なのだろう。ステージに立つ彼女は、高揚やときめき、葛藤、感謝、愛情など、様々な感情を抱えながら音楽という概念に果敢に挑み、観客に感謝を伝え続けていた。1年ぶりのツアーとなる「noa live tour 2026」のEX THEATER ROPPONGI公演では、音楽に恋焦がれる等身大の彼女の多彩な表情を観ることができた。

開場中にはアヴリル・ラヴィーン、シェリル・クロウ、ニルヴァーナなど、90年代から00年代を代表するロック/ポップアーティストの楽曲が流れる。BGMが止まると、紗幕に覆われたステージの背面が紫と青のライトで照らされ、4人編成のバックバンドがおもむろに幻想的な音色を奏でる。するとシームレスに「杯杯」へとつなぎ、ステージが紫色に染まると中央前方には乃紫のシルエットが浮かび上がった。大人のムード漂うアンニュイなライブアレンジと、しゃくりやためなど歌謡メロを存分に活かした歌唱で魅了すると、紗幕が上がり颯爽と「メガネを外して」へとつなぐ。恋が走り出す心情を綴った歌詞にこの日を迎えられた喜びを重ね、晴れやかな歌声を響かせた。

ドラムのビートに乗せて「今日みんなに会えるのを楽しみにしていました。わたしと一緒に青春時代に還りましょう!」と溌溂と告げると、ギターボーカルスタイルで「ヘントウタイ」を届け、「ハニートラップ」ではサングラスを装着し、ハンドマイクで観客の近くに寄ってタオルを回すなどして会場を盛り上げる。するとお立ち台に飛び乗って鮮やかにそのタオルを投げ捨て、「ハンサムボーイを捕まえに来ました」「わたしのタイプはライブでしっかり跳んでくれる人!」という言葉を合図に彼女の真後ろに再び紗幕が降りて「初恋キラー」へ。紗幕には歌詞が映し出され、曲のカラフルな展開に合わせて観客を沸かした。

その後もコール&レスポンスから「2つ上の先輩は好きですか?」と問いかけ、アウターを脱ぎ捨てて「先輩」につなぐ。冒頭からここまでの6曲、彼女は表現力豊かなボーカルと、口上やライブアレンジなどを用いた小気味よいライブ運びで、会場を巻き込んでいく。なかでも核となっていたのは、歌詞の輪郭を際立たせた歌唱である。ライブならではの一体感を作るだけでなく、言葉をブライトに届けることで、観客を乃紫の描く物語の一員として招き入れることに成功していた。

無事に開催を迎えられたことを喜ぶ乃紫は、「今日は皆さんに最高の思い出を作ってもらえることを約束します。今日は最後までどうぞよろしくお願いします!」と高らかに宣言する。すると再び彼女の前に紗幕が降り、一面に夏の景色が映し出されて「とある夏」へ。映像の右端には映画の縦書き字幕のように歌詞が映し出される。現実世界のステージと交差した映像演出、歌詞の言語表現、どこか懐かしさを覚えるメロディ、瑞々しい演奏と歌唱の力で空間が支配され、記憶にない夏の風景が自分のものと錯覚するような感覚に陥った。

「東京依存症」では傘を差し、紗幕に映し出された音符混じりの雨が降るなかで歌詞に合わせて身体を動かす。心地好いビートにいざなわれるように観客も身体を動かし、ニューミュージックテイストのシティポップ「バグった女神」ではカラフルな色づかいの首都高を走る車のアニメーションが流れ、80年代ライクのトレンディな香りで包み込んだ。「踊れる街」ではギターを弾きながら歌う彼女の姿とMVの映像が重なる。焦燥感を帯びた演奏と歌が、楽曲に込められた真夜中の刹那的な高揚感を巻き起こした。

彼女が人生で観てきた景色や東京という街、駆け抜けた日々が乱反射するステージに陶酔していると、「緑色反応」では観客をクラップやワイパーにいざなうなど、あたたかい空間が生まれる。ベーシストに恋をした女子の心情を綴ったポップなロックナンバー「ベーシスト」ではバンドメンバーのソロ回しを盛り込み、最後に「バンドマンはやめとけ!」と一蹴するなど、ユーモラスに届けた。

変わらずに曲作りに精を出している旨を話す乃紫は「ほんとにいい曲しかみんなに聴かせたくないから、選りすぐりの未発表曲を数曲持ってきました。今から歌うのは、最近めちゃくちゃ気に入っているラブソングです」と続け、「泣きぼくろ」を披露する。艶福家に片思いをした女子の切ない心情や純愛、強がりなどが瑞々しく綴られた歌詞を、凛とした歌声で彩る彼女に、会場も熱い視線を送った。

続いて「配信やネットで聴いてもらってるだけだと、自分の曲がみんなの生活にどれぐらい溶け込めているかがわからないんです。だから今日、ライブでこうして直接会えて本当にうれしいです」と感謝を言葉にし、「銃口をハートに向けて」と「ホットレモン」をアコースティックアレンジで届ける。歌詞に色を挿すように、願いを込めるように透明感のある歌声を響かせた前者、ふくよかな歌声で冬景色に生まれるぬくもりを表現した後者と、異なる趣で誠実な気持ちを伝えた。

乃紫は大学時代の夏、大学で使用していたノートパソコンに音楽ソフトを入れ、当時住んでいた学生寮の1畳もない物置きスペースで楽曲制作を開始したことを振り返り、「ミュージシャンとして生まれる時代をミスったなと思うんですよね」と切り出して「ライブは最も流行から遠い場所だと思う」と自論を述べる。それは“SNSでバズるアーティスト”という称賛と、“時代を超えて残り続ける音楽を作りたい”という強い思いの狭間にいる彼女ならではの見解だった。

ショート動画が主流となった今の時代は激流のようであり、20秒間で音楽の魅力が本当に伝わるのか疑問に思うこともあると明かす彼女は、「流行から最も遠い場所であなたたちに会いたくて。それが“ライブ”であり、“生活の中に流れる音楽”だと思っています。時代を超えて残り続ける音楽を作りたいし、みんなの青春時代になりたい」と続け、その思いをギターボーカルスタイルでロックバラード「リアルタイム」と、SNSで一部公開されていた「明日東京が滅ぶ」の未発表の新曲2曲に込めて届けた。

どちらの楽曲にも“バイタル(生命を維持するうえで必要不可欠なこと)”というワードが用いられており、彼女の音楽にかける熱い信念と、自身の音楽とともに人生を歩む人々への強い感謝が伝わってくる。するとそのまま「あと一歩が踏み出せない、あなたのために歌います」と堂々と告げ、紗幕が上がり大学時代の実体験をしたためた最新リリース曲「イクジナシ」へとなだれこんだ。キュートで凛々しいボーカルに導かれるように観客もクラップに興じ、ラスサビ前のコール&レスポンスでさらに思いを通わせる。乃紫の音楽やファンへ向けた愛情と、観客の好意が培養され、彼女の生んだラブソングはより輝きを増していた。

乃紫は「こんな時代に音楽を始めたからこそ、ライブでみんなにちゃんと会って、一人ひとりに感謝の気持ちを伝えに来た」「みんなが楽しんでいるのを実感できている今が本当に幸せ」とあらためて感慨に浸ると、「一人ひとりの顔を記憶に焼き付けて明日も曲を作りたいし、みんなもわたしの曲を食べて生きてほしい」と呼びかける。そして大学生の頃に、自分の作る音楽に自信はあり、見つけてくれる人が現れると信じながらも、10曲リリースをして世間から反響がなかったら音楽をやめてもいいのかもしれないと思い描きながら楽曲制作をしていたことを明かし、「一昨年の冬、いつもと同じように20秒で曲を作ってTikTokに載せて、それが(音楽をやめない)きっかけになるなんて思ってみませんでした。10曲目のリリースです」と告げ、「全方向美少女」を披露した。

そこからさらに、いまこの瞬間に湧き上がる感動をさらに加速させるようにロックナンバー「A8番出口」「アフターオール」で純度の高いエモーションを展開する。彼女の佇まいやボーカルに、高らかにクラップを鳴らす観客の姿や、紗幕に映し出された膨大な量の彼女の大学時代の思い出の写真が合わさることで、とても清らかで美しい空間が生まれた。彼女はつねに誰かに届いてほしいと願いながら音楽を発信し、人との出会いや交流を介して心が震えた瞬間を音楽に閉じ込めてきているのだろう。それをより生々しく痛感した場面だった。

残り2曲となり、本日最後の未発表曲を披露する旨を告げると「最近わたしがいちばん大事にしている曲で、皆さんのために作りました。わたしと、わたしの音楽をいつも聴いてくれているみんなとの、1対1の関係性の曲。みんなのいい思い出になりますように」と続け、「LとR」を歌い出す。切なさも喜びも純度高く宿った楽曲に観客も身を委ねながらじっくりと聴き入り、音に思いを重ねた。

そして「また皆さんとライブで会えるのを楽しみにしています。それまで音楽でつながっていましょう!」と呼び掛け、「1000日間」でライブを締めくくる。観客に熱いまなざしを向けながら歌い、終盤では歌詞に合わせて花びらが降り注いだ。フレッシュかつ強い意志がほとばしる歌声は、彼女が音楽にハートを燃やし続けていること、今後も音楽に人生を注いでいく覚悟を証明するに充分だった。彼女の青春はここからさらに広がり、新たな景色を臨むだろう。彼女の熱源と美学が貫かれた、潔いステージだった。

SET LIST

01. 杯杯
02. メガネを外して
03. ヘントウタイ
04. ハニートラップ
05. 初恋キラー
06. 先輩
07. とある夏
08 東京依存症
09. バグった女神
10. 踊れる街
11. 緑色反応
12. ベーシスト
13. 泣きぼくろ(新曲)
14. 銃口をハートに向けて(アコースティックver.)
15. ホットレモン(アコースティックver.)
16. リアルタイム(新曲)
17. 明日東京が滅ぶ(新曲)
18. イクジナシ
19. 全方向少女
20. A8番出口
21. アフターオール
22. LとR(新曲)
23. 1000日間

  • 沖 さやこ

    取材・文

    沖 さやこ

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