KIKKAWA KOJI 35th Anniversary Live
2月1日(金)2日(土)日本武道館
吉川晃司のデビュー35周年ツアー「KIKKAWA KOJI 35th Anniversary Live」が2月1日、2日の東京・日本武道館公演からスタートした。喉のポリープの影響によって、しばしライブ活動を控えていたため、吉川がステージに立つのは昨年1月20、21日の武蔵野の森総合スポーツプラザ以来、約1年ぶりだ。35周年をともに祝うべく結集した超満員の観客の前で、吉川はスケールの大きな歌声と躍動感あふれるパフォーマンスを披露して、鮮やかに復調を果たした。
通常のライブでは終盤で演奏される「Juicy Jungle」からのスタート。観客も一緒に歌い、踊り、会場内が熱狂の渦に包まれた。さらに代表曲が惜しげもなく繰り出されていく、豪華かつド派手な始まり方だ。アニバーサリー・ツアーということで、初期のヒット曲や代表曲がずらりと並ぶスペシャルな構成になっていて、ライブの始まりから終わりまで、すべてがクライマックスと言いたくなるような熱い盛り上がりとなった。吉川の歌声も圧巻だった。力強さ、伸びやかさはもちろんのこと、しなやかさも深みも増している。
「聴いていただいたとおり、声は治りました。ポリープさんはいなくなりました」とのMCに観客から大歓声と盛大な拍手が起こった。ギターを弾いたり、激しいパフォーマンスを披露したり、全身を使って表現するその姿からはステージに立つ喜びも一緒に伝わってきた。シンバルキックも何度も炸裂。日々鍛錬し続けているからこそのパフォーマンスに客席が沸く。
80年代のシングル曲の数々が披露された場面では、懐かしさと同時に、新鮮さがもたらされる歌と演奏が見事だった。当時のアレンジに沿ったサウンドなのだが、歌も演奏もハイレベルで、なおかつ気迫がほとばしっていて、実に鮮度が高い。バンドのメンバーはここ数年ともにステージに立ってきた生形真一(Gt)、ウエノコウジ(Ba)、湊雅史(Dr)、ホッピー神山(Key)に加えて、新たに70年代からソロ、バンド、プロデューサーなど、多方面で活動している土屋昌巳がギタリストとして参加して、新風を吹き込んだ。
ホッピー神山のピアノの調べに続いて、アカペラで始まって、自在な歌声を披露したのは「I'M IN BLUE」だ。1984年リリースの1stアルバム『パラシュートが落ちた夏』収録曲なのだが、今現在の吉川の柔軟かつ自在な歌声によって、2019年の「I'M IN BLUE」となっていた。10代の頃から揺るぎない部分と、進化し続けている要素、その両方を堪能できるステージだ。
「笑顔の再会をありがとう!」との挨拶もあった。ちょうど35年前にリリースされたデビューシングル「モニカ」は35年の節目に歌われることによって、特別な輝きを放っていて、コール&レスポンスがひときわ高くなった。“武道館の夜だぜ”“アニバーサリーの夜だぜ”というフレーズが加わった「恋をとめないで」でも会場内が一体となって、シンガロング。感謝祭的なセットリストではあるのだが、前に向かって進み続けているその姿勢が刻まれた曲も目立っていた。吉川はこれまで節目のタイミングで、所信表明的な曲、表現というよりも体現と言いたくなる曲を作ってきている。それらの曲の数々も演奏された。本編ラストでも愛と闘志が詰まった歌声によって、会場内が感動に包まれた。
「失敗を恐れず、新しいことに挑んでいきたいと思っています」とのMCもあった。さらに「オリンピックまで応援の意を込めて、そして自分を鼓舞する歌でもあります」との言葉に続き、水球日本代表Poseidon Japan公式応援ソング「Over The Rainbow」も演奏された。自分自身だけでなく、会場内の全員を鼓舞していくような真摯な歌声だ。アンコールのラストナンバーは初日と2日目とで日替わりとなっていた。その2日目の最後の曲の前にはこんな発言。
「わけのわからない男でずっといたいなあというサビが出てくる歌をやります。ずっとそういう男でいたい。誰にも理解されたくない」とのこと。つまりこれからも変わらず、己の信じる道を突き進んでいくということだろう。信念と闘志、愛と感謝、様々な思いが詰まった歌声が真っ直ぐ届いてきた。初日はこれまでの1年間に蓄積していたエネルギーを一気にほとばしらせていくようなスリリングなステージとなった。2日目は初日を踏まえて、さらに研ぎ澄まされ、進化したステージを展開。2日間だけでもそれぞれ色合いが異なっている。共通していたのは35周年のアニバーサリー・ツアーのステージでありながら、ノスタルジックな空気が微塵もないこと、そして渾身のステージであること。また新たな冒険の旅が始まったのだというワクワク感が漂う武道館2DAYSとなった。
5月から全国を回り、9月8日の幕張メッセ国際展示場でファイナルを迎える。祝いながら進化していくツアー、春から夏にかけて、未知なる景色をたくさん見せてくれることになるだろう。