パール兄弟40周年記念ライブ「未来はパール 2026」。水樹奈々ら豪華ゲストと共に熱狂と感動に包まれたパール兄弟の記念碑的ステージをレポート

ライブレポート | 2026.10.08 18:00

パール兄弟40周年 未来はパール 2026
2026年10月3日(土) LINE CUBE SHIBUYA[渋谷公会堂]
スペシャルゲスト:水樹奈々
ゲスト:⼿塚眞(舞台総覧) / リーマンズ(ラッキィ池⽥、かとうけんそう、中嶋勇⼆、齋藤眞紀、林茂助、朝⽇太⼀) / ⾹瑠⿎

パール兄弟がデビュー40周年記念ライブ「パール兄弟 40 周年 未来はパール 2026」を開催した。
1986年にアルバム「未来はパール」でデビューしたパール兄弟。2013年に一時バンドを離れていた松永俊弥(Dr)が復帰し、オリジナルメンバーのサエキけんぞう(Vo)、窪田晴男(Gt)、バカボン鈴木(Ba)、さらにキーボードの矢代恒彦を加えた5人でライブを再開。2022年に矢代が逝去した後も、サエキ、窪田、バカボン、松永の4人編成で活動を継続した。
今回の40周年記念ライブは、2024 年にスタートした「ROAD to KINGDOM 〜目指せ、渋公3か年プロジェクト〜」のゴールに設定された公演。パール兄弟のMV作品を数多く手がけたヴィジュアリスト・手塚眞が舞台総覧を担当。パフォーマー集団・リーマンズ(ラッキィ池田、かとうけんそう、中嶋勇二、齋藤真紀、林 茂助、朝日太一)、「鉄カブトの女」「快楽の季節」などのMVにも出演した振付師の香瑠鼓に加え、スペシャルゲストの水樹奈々が出演し、アニバーサリーライブに花を添えた。

ライブは「第一部 崩壊→復興」「第二部 バブル」「第三部 未来」の三部構成。昭和、平成、令和、そして未来という時間軸のなかで代表曲・人気曲・新曲を交えたロックオペラとして表現された。
「第一部 崩壊→復興」は、けたたましいサイレンと赤いライトから始まった。緞帳が上がると、そこにはパール兄弟の4人とサポート役の米内山尚人(マニュピレーター、Gt…etc.)、リーマンズ、香瑠鼓の姿が。オープニングナンバーは1986年の1stシングル「鉄カブトの女」。サエキはトーキング・ヘッズの「ストップ・メイキング・センス」を想起させるダンボールスーツをまとい、鋭利かつタイトなバンドサウンドとともに〈白昼のNightmare〉というフレーズをリフレイン。最後はリーマンズに衣装を剥ぎ取られ、ステージに倒れるというシアトリカルなパフォーマンスが繰り広げられた。

先人たちが経験した無に還る悲しみ、信じられない葛藤に思いを馳せるかとうけんそうによる“ナレーション“を挟み、10月21日リリースのニューアルバム「発射。」収録曲「穴」へ。歌、コーラス、ギターによるドゥワップ的な音像のなかで、都会の隙間にあいている“穴”をモチーフにした歌がじんわりと広がっていく。
「お風呂入ってるかい!? 歯磨いてるかい!? ロック聴いてるかい!? パール兄弟です!」(サエキ)という挨拶からメンバー紹介。客席を埋めたオーディエンスは、まるでアイドルのライブのように色とりどりのペンライトを振りながら歓声を送る。

続いて「『未来はパール』でデビューして40周年。ここまでやってこれたのは、最初に作った曲のコンセプトのおかげかもしれません」(サエキ)と紹介されたのは「しがらみクラブ」。“ニューウェイブ×歌謡曲”なスタイルの楽曲をさらにアップデートさせ、2026年のパール兄弟が演奏する。時空を飛び越えるような感覚とともに早くも大きな感動が押し寄せる。
さらに“ヒヒ〜ン(ブルルル)”のコール&レスポンスが巻き起こった「馬のように」、アニメ『N・H・Kにようこそ!』エンディングテーマ「明日はたぶん大丈夫」と00年代の楽曲を披露。そして2019年リリースのミニアルバムの表題曲「歩きラブ」へ。窪田のアコギ、サエキが紡ぎ出すいなたいメロディが溶け合い、会場全体を包み込む。驚くべきはバンドの演奏力の高さ。80年代からバカテクバンドとして知られていたパール兄弟だが、40周年を迎えた現在、そのクオリティはさらなる向上を果たしていた。正確無比にして強靭な松永のビート、緻密なプレイと創造的な音色で楽曲の世界観を描き出す窪田のギター、ボーカルの裏メロを支えながら濃密なグルーヴを生むバカボン鈴木のベースを軸にしたアンサンブルはまさに鉄壁。ビックリするほどの声量と張りでシニカル&ディープ&キッチュな歌詞を響かせるサエキのボーカルも素晴らしい。

「……一生のなかで40年はまるで昨日のことのように思えたりもしますが、しかし、人類史のなかでは40年とは信じられない変化を生んでいたのです。パール兄弟がデビューした1986年は、そう、バブル発動の前年……」というナレーションに導かれた「第二部 バブル」の1曲目は、1987年発表のアルバム「PEARLTRON」収録のアッパーチューン「世界はゴー・ネクスト」。〈オハヨウ、きのうのままでは笑われるよ〉という歌詞はバブル期の世情と重なっているだけではなく、現代のスピード感とも完全にリンクしていた。松永の作曲による「君にマニョマニョ」はパール兄弟の代表曲のひとつ。再びリーマンズが登場し、コミカル&ノリノリのダンスで会場を盛り上げる。
続く「100度目のバイバイ」はバカボン鈴木が作曲を手がけたナンバー。パール兄弟流のAORと言いたくなる流麗なサウンド、間奏における華麗なベースソロにも心を打たれた。

ここで呼び込まれたのは、赤の花柄ワンピースに身を包んだ水樹奈々。“ドラムの松永が水樹のライブバンド“Cherry Boys”のメンバー“という縁によって実現したコラボレーションだ。披露されたのは水樹奈々のオリジナル曲「COSMIC LOVE」、窪田のアレンジメントが光る「真赤な太陽」(美空ひばり)のカバー、そして“和のパール兄弟”を代表する「江戸時代の恋人達」はサエキ&水樹のデュエット。完璧なピッチと抜群の表現力を兼ね備えた水樹のボーカルがとにかく圧倒的。(水樹さんのファンのみなさんの“ペンライトさばき”も流石でした)

水樹がバックステージに戻ると、バカボン鈴木がチャップマン・スティックを使ったタッピング独奏を響かせ、香瑠鼓がコンテンポラリーダンスを披露。その奥深い余韻のまま「ヨーコ分解」へ。研ぎ澄まされたバンドサウンドと危うい人間関係を描いたリリックの対比は今もなお刺激的。アウトロにおける“煌びやかな緊張感”と称すべきギターソロも鮮烈だった。

そして「第三部 未来」。波の音を想起させるSE、「……それでも我々の心にはいつも未来があります。それはヒリヒリするようなこの現実の向こう側にあるのです……」というナレーションに導かれたのは「TRON 岬」。白い風船があしらわれた衣装に着替えたサエキが近未来的なイメージの音像とともに、サイバーパンク的な〈CHIBA CITY〉の情景を歌い上げる。

さらにパーカッシブなビートと没入感を生み出すサウンドが響き渡った「TOYVOX」(「パール兄弟、やってきてよかったと今思いました! 『TOYVOX』は難曲でなかなかできなかったんです!」と叫ぶサエキの表情も印象的だった)、シンプルなギターリフを軸にしたアンサンブルのなかで“若き日に感じていたことは間違っていなかったはず”という思いを込めた歌詞が広がる「青いキングダム」と80年代の名曲を重ねていく。ここで一気に時間をワープし、小室哲哉との共作による2025年の楽曲「RUN-NEW バックステージ」へ。観客はタオルをぶん回しながら盛り上がり、ラストのサビではサエキが客席に降りてグルリと一周。会場全体に多幸感と一体感を生み出してみせた。

〈本当に欲しかったものは色以下〉というラインを含む「色以下」からライブはクライマックスへ。リーマンズとともにパフォーマンスされた「プルプル通り」を経て、本編の最後は「快楽の季節」。香瑠鼓、水樹奈々も登場し、極上のロックンロール・サウンドによってライブは最高潮へと達した。

アンコールの1曲目はアルバム「発射。」からの先行配信曲「ぬくもり列車 with 水樹奈々」。カントリー、フォークを有機的に織り込んだバンドサウンド、牧歌的なメロディと未来へ旅するような歌が一つになったこの曲は、まちがいなくパール兄弟の新機軸だ。演奏とともにスクリーンに投影されたMVにおける、現在・過去・未来のパール兄弟を映し出す映像も素敵だった。
最後はもちろん「バカヤロウは愛の言葉」。「バカヤロウ、コノヤロウという言葉を我々にぶつけてください!」と呼びかけたサエキは、ラスサビで再び客席に突入。熱狂が渦巻くなか、ライブはエンディングを迎えた。

40周年記念アルバム「発射。」のリリースに続き、2027年3月には東京、大阪、名古屋でクアトロ・ツアーを開催。月並みな言葉ではあるが、40周年は一つの通過点。現代から未来を見つめる独創的な歌の世界、卓越したテクニックと理論に裏打ちされたバンドサウンドを両輪とするパール兄弟の音楽はさらに前進を続けるはず。その確信を得られたことこそが、この日のライブのもっとも大きな収穫だったと思う。
「パール兄弟40周年 未来はパール 2026」のアーカイブ配信(10月10日〜11月3日)も決定。この記念すべき公演をぜひ追体験してほしい。

アーカイブ配信決定!
パール兄弟40周年 未来はパール 2026
2026年10月10日(土)12:00〜2026年11月3日(火・祝)23:59

≫配信チケットご購入はこちら

SET LIST

第一部 崩壊→復興

1. 鉄カブトの女(リーマンズ、香瑠鼓)
2. 穴
3. しがらみクラブ
4. 馬のように
5. 明日はたぶん大丈夫
6. 歩きラブ

第二部 バブル

1. 世界はゴー・ネクスト
2. 君にマニョマニョ(リーマンズ)
3. 100度目のバイバイ
4. COSMIC LOVE(水樹奈々)
5. 真赤な太陽(水樹奈々)
6. 江戸時代の恋人達(サエキ&水樹奈々)
7. バカボンスティックソロ 香瑠鼓ダンス
8. ヨーコ分解

第三部 未来

1. TRON岬
2. TOYVOX
3. 青いキングダム
4. RUN-NEW バックステージ
5. 色以下
6. プルプル通り
7. 快楽の季節(水樹奈々 リーマンズ、香瑠鼓)

ENCORE
1. ぬくもり列車 with 水樹奈々
2. バカヤロウは愛の言葉

公演情報

DISK GARAGE公演

東名阪クアトロツアー決定!

2027年3月5日(金)東京・渋谷CLUB QUATTRO
ゲスト:KIRINJI

2027年3月21日(日)大阪・梅田CLUB QUATTRO

2027年3月22日(月・振休)愛知・名古屋CLUB QUATTRO

RELEASE

「発射。」

40周年記念の新譜

「発射。」

2026年10月21日(水)SALE

≫詳細はこちら
  • 森朋之

    取材・文

    森朋之

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  • 撮影

    金丸雅代

  • DI:GA ONLINE 10周年

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