──今回のコンサートの醍醐味のひとつとして、加藤さんとトワ・エ・モワさんがいらして、六角さんがいらして、さらにYae(ヤエ)さんと白鳥マイカさんという違う世代が参加されて、ともにフォークソングを歌う点にあるのではないかと思います。
加藤世代がまぜこぜになっている感じを楽しみたいですよね。
──今回のコンサートでは、Yaeさんとの親子の共演も実現します。このことについて、加藤さんはどう思われますか?
加藤私は“Yaeと親子じゃなければよかったのに”と思うことがあるんですよ。というのも、アーティスト同士の出会いでありたいからです。でも、この間、同じステージに立った時の写真を見たら、私はYaeと手を繋いじゃっているのね(笑)。そこは反省です。Yaeが「80億の祈り」を発表した時も、とても素晴らしい作品で、本当に恐れいったんですね。私にはこういう歌は作れないと思いました。何が違うかというと、世代が違うんですよ。私とはまた違う時代の真っ只中にいて、途方に暮れながらも子どもを育てながら、歌を歌っているんだなと感じました。だから共演できることはとてもうれしいんですが、親子という関係ではなく、それぞれ自立したアーティストとしてステージに立ち、手を繋がないようにしたいです(笑)。
──1960年代末から70年代にかけてのフォークソングと2025年のリアルタイムの歌とが、時を超えてリンクしていくようなステージになるのだろうなと感じました。
加藤このコンサートでは、すべての曲を過去の歌としてではなく、今のリアルタイムの音楽として出会いたいですね。
──六角さんは、フォークソングをルーツミュージックとして聴いてきたと思うのですが、自分の音楽として表現したいということはありますか?
六角そんなものはありません(笑)。自分がやりたいことをやっているだけなので、人がどう判断しようと、いいんですよ。要はご縁ですからね。
加藤そういう発想も昭和っぽいですね。普通は、もっとかっこよく答えるでしょ。でもこの感じがおもしろくて、いいのよ。若い人たちに、この路上感みたいなものの良さも伝えられたらいいですね。路上感って、視点を変えれば、空の下で繋がっているということだから。私は4月に自伝を出したんですが、そのタイトルが『トコちゃん物語 いつも空があった』なんですね。空の下で生きた時代を少し知っていることが、私の生きるエネルギーの源になっているなと思って、このタイトルにしました。
──路上って、見方を変えれば、空の下にあるものだから、つながっていますよね。加藤さんはフジロックフェスティバルの魅力についても、“野外で原始人みたいな生活を送るところにある”と著作の『「さ・か・さ」の学校 』の中で書かれていましたよね。
加藤フジロックは、道が遠くまで続いているし、雨が降るとドロドロだし、かなり大変ですけどね。でもウッドストックとも通じるところはあるし、私は好きですね。
──過去にもフジロックに数多く出演されています。今年は今回のコンサートやツアーの他にも、生まれた土地でもあるハルビンでのコンサートも予定されているんですよね。
六角そうか、加藤さんの空の下って、大陸の大きな空も含んでいるんですね。だから、こんなにパワーがあるんだとわかりました。加藤さんは本当に皆さんから必要とされている方ですよね。今日初めてお会いして、加藤さんからパワーとオーラが伝わってきました。こんな80オーバーの方がいらっしゃって、活動されていることが大きな励みになります。僕にとっては俳優の先輩である橋爪功さんもそうなんですよ。加藤さんと橋爪さんから大いに刺激をいただいています。
加藤私も今日、楽しく対談させていただきました。だって、六角さんみたいな方、いないですから(笑)。
六角僕が“路上感”だとしたら、加藤さんは“空の下で生き抜く力”があるんだなと思いました。でも、空の下で生き抜くのは大変なことだから、人から何かをしてもらったら、多分感謝すると思うんですよ。加藤さんからは、そういう感謝する気持ちもひしひしと伝わってくるところが素晴らしいなあと思いました。
加藤そこまで感じていただいて、ありがとうございます。
──対談のまとめとして、今回のコンサートに来る方々にメッセージをいただけますか?
加藤ホールの中ではありますが、空の下で車座になって歌うみたいな空間にしたいですね。今って、完成度の高いステージを見せる時代になってきているけれど、そうではなくて、ともに歌を共有することのかけがえのなさを伝えられたらいいなと思っています。
六角コンサートを見に来るというよりは、“一緒になりに来る”という感覚で来てもらうのがいいのではないでしょうか。
加藤さっき打ち合わせをしていても、六角さんからいっぱいアイデアが出てくるんですよ。多分、まだたくさん出てくると思うんですが、それがどちらに転ぶかわからないわね(笑)。
六角できることとできないことがあって、自分にできることは一生懸命やります。でも、できないこともたくさんあるので、そこはなにとぞご容赦ください(笑)。