──野音の話をしましょう。5月24日、東京・日比谷野外大音楽堂での初ワンマン。ここでやりたいと思った理由は?
染谷FUNKISTは常に過去の自分たちを超え続けていたいと思っていて、新しい挑戦を考えた時に、やっぱり野外が一番しっくりくるんですよ。自分たちの音楽は、屋内よりも野外が似合うと思うので。ただ、すごく強烈な雨バンドで、過去に30か所ぐらいフェスで雨を降らせてきてるので(笑)。俺らの時間になると雨が降るというのは周知の事実なので、今回は野音開催の1年前、まだ野音開催のことも発表してないのに「来年5月24日にポンチョを出します」というのを発表したんですよ。
ヨシロウ突然「ポンチョ大発売!」って。
染谷それでファンの人たちが、「ポンチョ?あいつら、野外でやる気だな」と(笑)。そのあと、野音を発表しました。
──さすが。ファンもよくわかっている。
染谷ただ野音はなかなかスケジュールが取れないので、1年8か月、抽選に通いました(*野音の日程は抽選制)。僕らは5月結成なので、2025年の5月が取れなかったらもう25周年も終わっちゃうし、諦めようと言って、最後の抽選に挑んだところで日程が取れて、今回できることになりました。9月に野音が改修工事に入るので、すごい激選で、自分らが用紙をもらった時点で1200番目とかだったから、そのくらいの応募があったんじゃないかな。
宮田しかも、野音の改修工事の開始が長引いてくれたおかげで…。
染谷元々、去年で閉まるはずだったから。本当に一番いいタイミングで、僕らは5月31日の結成なので、その1週間前にやれるという、ここしかないタイミングに恵まれたというのが、野音が決まった経緯ですね。
──野音に子供たちを無料招待するという、クラウドファンディングもやりましたね。
染谷野音が決まった時に何個か軸を決めていて、一つは「One Family Action」という活動で、前回のツアーでも「ライブハウスから世界を変える」をテーマに、カンボジアの子どもたちを支援してる団体とか障害を持った方を支援してる団体とか、国内外で様々な活動をしている仲間たちに各会場でブースを出してもらったんですけど、今回野音でも2団体にブースを出してもらおうと思っていて、その活動に触れてもらうことで、世界が良くなるきっかけにしたいと思ったのと。もう一つは、自分たちは南アフリカの子供たちに楽器をプレゼントする活動を続けているんですよ。きっかけは、2013年ぐらいにみんなで南アフリカに行った時に、ソエトという、アパルトヘイト時代に黒人居住区と呼ばれてた場所に行って、銃を持ったギャングに囲まれたんです。大ピンチだったんですけど、その時ガイドをやってくれてたカメラマンが、ソエトの子どもたちを支援している人で、「彼らに手を出さないでくれ」と言ってくれて、ギャングのほうも「お前の友達なら、俺たちの家族だ」みたいに言ってくれて。
──まさに危機一髪。
染谷そこで、「なんでこんな犯罪をするんだ」って、ちょっと踏み入った話をしたんです。そしたら「見てみろ。裸足で歩いてる子供たちがいっぱいいるだろう」と。「俺たちに仕事があれば、働いてこいつらを食わせたいけど、この国には仕事がない。奪うことでしかこいつらを食わせてやれない」という話を聞いて、仕事がない現状がそうさせているのかと思った時に、「仕事になるものを子供たちにギフトしたい」と思って、ツアーの収益で楽器を買って、届けることを始めたんですね。楽器を送って、それを子供たちに教える人を見つけて、そういう活動を10年ぐらい続けてるんですけど、去年その養護施設に行った時に、その養護施設のお母さんが「ニュースがあるわ」と。「あなたたちが7年前に贈ってくれた楽器を練習して、二人がプロのミュージシャンになったわよ」と教えてくれて。
──素晴らしい話です。
染谷たった二人かもしれないけど、犯罪に手を染めなきゃいけなかったかもしれない子たちが、音楽で飯を食える未来を俺たちのライブで作れたというのは、自分たちにとってはすごく大きくて。その延長で、日本でも何かしたいなと思ったのがクラウドファンディングです。子供たちに楽器を届けるプロジェクトも、ファンの人に「これからチケット代を200円上げる。それで楽器を買う。子供たちに楽器を贈るのは俺たちじゃなくてみんななんだ」という話をして、みんなに当事者になってもらったことがすごく大事だと俺は思っていて、今回のクラウドファンディングも、ファンの人にクラウドファンディングを楽しんでもらって、その収益を子供たちの招待にあてて、「私たちが呼んだ子たちだ」というふうにみんなに思ってもらいたかったので。
──クラファン開始からあっという間に、すごい勢いで100%を突破しました。
染谷4時間で達成しました。そして次の日には200%。現状だと、250人ぐらいの子供たちを招待することができると思います。だから野音が決まった時に、「One Family Action」と、クラウドファンディングと、25周年をファンの人たちと盛大に祝うという、3本柱は決めていました。
──あとは最高のライブ見せるだけ。野音への意気込みを聞かせてください。
染谷本当に最高の1日になるだろうなと思ってます。今のツアー(*2000~2025年までの曲を振り返るツアー/4月29日に終了)を回りながら、昔の曲をやったり、メンバーも7人編成で、フルートとパーカッションも入れてやっているので。
──バンド初期の編成と同じですね。
宮田ツアーを回りながらも、走馬灯のようにいろんな思い出が巡って、曲もそうだし場所もそうだし、それを懐かしく見てくれてるお客さんもいるし、新しいものとして見てくれてる人もいるし、25年にはいろんな出会いの瞬間があったと思うので、それを全部野音に持っていけるのがすごく幸せだなと思っています。「7人FUNKIST」で見せれることもそうだし、クラウドファンディングもそうなんですけど、未来のために少しでもきっかけになったら嬉しいと思ってます。僕は今、不登校の子たちが通うフリースクールで音楽を教えてるんですけど、やっぱり音楽の力ってすごいなと思ってて、音で会話できるので、普通の担任の先生よりも打ち解けるのが早いらしくて。そんなふうに、子供たちに音楽の持っている何かをキャッチしてくれたら嬉しいなと思ってます。「この無邪気にはしゃいでる大人を見ろ!」と。
──要は、そういうことですね(笑)。態度で見せる。
染谷「大人は楽しいぞ」と。
宮田そのためにも、誰よりも楽しんでやりたいと思います。そう思って臨みますので、よろしくお願いします。
ヨシロウ「こんなに応援してくれてる人がいっぱいいるんだ」ということをすごく感じています。ツアーに来てくれるお客さんも、「10年以上来られなかったけど昔の曲をやるから来た」みたいな方もいらっしゃって、1本1本がクライマックスみたいになってて、同じセトリが1個もないぐらいに毎日曲も入れ替えて、「今日はこの場所だからこの曲は絶対必要だよね」みたいなことをやったりしてて。結果的に、僕らも周りもなんか盛り上がってきたことがすごく実感されていて、25年の感謝を込めて、野音ではがっつりそれを出すことと、そしてまだまだ続くこれからのFUNKISTを見せること、現在と未来が繋がる集大成にできればいいなと思ってます。
染谷野外を選んでよかったなと思うのは、「この曲は夕暮れに聴きたいよね」とか、照明も含めていろいろ考えられることで、演出も「Pride of Lions」というタイトルの通り、「霞が関にジャングルを作りたい」というのがあって、舞台の装飾として森の中にいるような雰囲気にしたいな、とか。あんまり言うとネタバレになっちゃうけど、そういう感じにして、夜になったらこういう演出を入れたいとか、野外でしかできないことをいろいろ考えてます。
──めちゃくちゃ楽しみです。そしてバンドにとっては、まだまだ通過点ですか。25年は。
染谷そうですね。でも今まで以上にやれることを全部やり切って野音に挑みたいなと思っていて、全部一つ一つ丁寧に大切にちゃんと積み上げて、「今やれること全部やった」思って通過点にしたら、26年目は見える景色が違うような気がしているので、野音は通過点だとは今は言わないようにしてます。ここで自分たちが25年積み上げてきたものを全てやって、その上で次の景色を見れたらいいなと思ってます。
PRESENT
メンバーサイン入りシングルCD「47climax」「GLORY DAYS」「パレード」を各1名様に!
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