──1月15日にメジャー1st EP『フラグメント e.p』リリース。2月15日からは、全国9箇所を回る初の全国ワンマンツアーがスタートするosage。まずはリリースも多数あって、8月にはメジャデビューと充実した1年となった2024年を振り返って、というところからお話を聞きたいのですが?
山口 ケンタ(Gt,Vo)昨年は2月にミニアルバム「ENSEMBLE CAST」をリリースして、6月に「残り香」、8月に「マイダイアリー/透明な夏」、9月に「ジオメトリック/and goodbye」をリリースして。自分たちの中でも作れる曲幅がすごく広がったし、「残り香」や「マイダイアリー」は早くもライブの定番曲になっていて。僕らだけでなく、お客さんの中でも育っていくような曲がリリース出来たって意味でも、すごく充実した1年だったなって思っています。
──僕は7月に開催した「TOKYO SPYRAL」でライブを見て、レポートを書かせてもらったんですが。「新曲です」って「残り香」をやっていた、メジャーデビュー直前の大事なタイミングで。制作の充実ぶりと同時に、ライブの本数もハンパなくて。それを同時にやれたことが自信にもなったし、濃厚な一年になったでしょう?
山口そうですね。その前の5月には、山中湖で作曲合宿をして、ソニーチームとosageチームのほぼみんながそこで集うみたいなことがあったり。そこでチーム全体の仲が深まったり、ツアーを回ってPAさんとかも含めてのバンドとの一体感も増して。バンドの状態として、すごく良くなった1年なのかな?って思います。
──メジャーデビューして状況や環境も変わって、楽曲や発想に変化はありました?
山口より大きなイベントに出演出来るようになったのが大きくて、12月15日には広島で『結びの夢番地』に出演させていただいて。福山のビッグ・ローズってアリーナ会場でライブをさせたいただいたんですが、新たに知ってくれる人やosageを見つけてくれた人も多くて。ここまでやってきてライブ力だったり、コミュニケーション力は培ってきてるつもりだったんですけど、それを披露するタイミングがなかなか無かったので。そういった大きなアリーナの環境でも臆することなく、普段通りのライブが出来たってことにすごく成長を感じたし。強肩力じゃないですけど、そういったところでビュッと投げれたという手応えもあって、すごく良かったなって思います。
──最新EP『フラグメント e.p』を聴いて。「フラグメント」のスケール感あるサウンドにバンドの大きな成長を感じたし、メジャーでタイアップが付くと聴かせ方も変わってくるんだなと感じたんだけど。それと同時にカップリングの楽曲たちを聴いて、安心したというか。芯の部分は変わらずに、多くの人に届く聴かせ方が出来るようになっているんだなと思って。ライブもきっとそうだと思うんです。ライブハウスでもアリーナ会場でも、芯の部分は変わらず、それをたくさんの人に届ける見せ方を身につけたんだろうなって。
山口変化だけを見せてしまうと、不安を感じる瞬間って増えると思うし。自分たちでも変わってきた中で、大きな変化を詰め込んだ曲がリードトラックになっていると、僕らの中でも不安の要因になり得る部分があるんで。今回はあえて、自分たちらしくというか。例えば、「春のベランダ」とかosageが始まった頃というか、5~6年前の作風みたいな曲だし。そういうところをあえてやりたくなった瞬間でもあったので、みんなに安心して欲しいポイントでもあります。
──「フラグメント」と同時にそういう曲が入ってることで、EPとしてのバランスもすごく良いし、今作からosageを聴いてもバンドの魅力が見えるものになっているなと思って。僕は今作を聴いて、春の風をふわっと感じたんだけど、そこが僕の思う山口くんの曲のすごいところで。山口くんの曲は半径5mの身近なところを描いた世界観で、日常の中でふっと気持ちが動く瞬間や気持ちの機微を捕まえて表現出来ている。それを今回のEPからも感じられたのが、すごく良かったなと思いました。
山口ありがとうございます。メジャー1st EPで盤を出せるってところで、どうしても肩に力の入った作品になりがちだなと思って。想像できるところもそうだし、先輩たちを見ても気合いが入ってるのはすごい感じるんですけど。ガチガチに固めてしまっても、僕ららしくなくなってしまうだろうなと思って。言葉としては語気が強く、言い切れるようにはなってるんですけど。サウンドまで強くなってしまうと、osageである必要がないなと思ったので、そこはすごく意識したところで。それもあって、ずっと信頼しているアレンジャーのスッチーさん(須藤優)にお願いしたという背景もありました。
──うん、osageがタイアップをやる意義もあるし、自分たちのやりたいこともちゃんと落とし込めていると思います! ……ごめんなさい、すっかり脱線してしまいましたが。クサマくんは2024年振り返っていかがですか?
ヒロ クサマ(Ba,Cho)はい(笑)。ありがたいことにすごく忙しくさせていただいて、ツアーを周りながら制作をしたり、いままでで一番忙しかった一年じゃないか?と感じているんですが。メジャーデビューしてソニーと一緒にやることになったり、事務所のスタッフが変わったり、PAや照明の人が付いてくれたりして。僕個人としては、すごく自分のことに集中出来て。身体的にとか精神的にシンドかったという感覚はあまりなくて、すごく充実していたって感覚が一番強いです。
──プロ意識みたいなところはどうですか?
クサマそこはあまり変わらないかも知れないですね。ありのままでいたいっていうのは常日頃から思いますし、osageがどうなってもそれは変えたくないので。そこは変わっていないかも知れないです。
──田中くんは2024年振り返っていかがですか?
田中 優希(Dr)7月にメジャーデビューするって発表して、8月にメジャーデビューしたんですけど。そこから時間がさらに加速した感はありました。体力的には「疲れたな」って日もあるんですけど、バンドの予定がなにもなくて、ほぼバイトみたいな時期と比べたら、すごく精神的にも健全というか。音楽的なことへの関心も以前より能動的になって、自分から探りに行きたいって気持ちもすごく強くなったし。考え方も柔軟になった部分もあるし、ここだけはちょっと変えられないなって部分も見えてきて。ある意味、自分がどういう人間かよく分かった1年にもなりました。
──いままでは音楽以外にもやらなきゃいけないこと、考えなきゃいけないことがたくさんあって。音楽やプレイスタイルについて見つめ直してということも、なかなか出来なかったでしょうからね。
田中そうですね。「これ、俺好きなんだな」とか、やってるうちに気付くことはあるんですが。それが積み重なって、「つまり、俺はこういうスタイルが好きなんだな」というのが見つかってきたなって年で。それはバンドの音楽的なことではない仕事も減って、雑念がちょっと減ったというのはきっかけのひとつだったのかなと思います。
──金廣くんはいかがですか?
金廣 洸輝(Gt,Cho)僕はosageを結成した7年前からギターを手にとって、10年くらい経ってますけど。ようやく胸を張って、「osageのギタリストです!」と言えるようになった年だったなと思っています。メジャーデビューを発表したライブでも言ったんですけど、ライブの数をこなしながら色々考えて。制作でもカッコいいことを追求していく中で、osageのギタリストとしての自信が生まれたというか。「自信がつくとパフォーマンスも変わるんだな」っていうのも実感出来ていて。いままでは、「osageでギターを弾けてたら、それでいいんだ」って満足してたんですけど。最近はギターのプレイを褒めてもらえる機会も増えて、「俺はosageのギタリストだ」って思えるようになった、自分にとって大きな一年でした。
──素晴らしいです! そんな金廣くんの自信や成長は、osageのライブや制作にも絶対に反映されていると思いますよ。
金廣制作も苦しかったんですけど、今回の「フラグメントe.p」はずっと楽しく制作に取り組めて。「音楽って楽しいな」というのを再確認出来ました。
山口今年に限らずずっとなんですけど、金廣は移動中の車の中でも、遠征先のホテルでもギターをひたすら弾いてるんです。レコーディングとかだと、録るのは夕方の6~7時なんですけど。午前中の搬入の時間から7~8時間くらい、取り憑かれたようにひたすらギターを弾いてるんです。でも、それが楽しくてしょうがないんだろうなっていうのは、見てても感じ取ることが出来たので。俺たちにとっては、「ずっとosageのギターだよ」って気持ちはあったんですけど、そこに自信や堂々とした部分や、「楽しい」って気持ちが入ってきたことはすごく良いことだなって思って見てます。
──そして、そんな2024年を経てリリースされる、EP「フラグメント e.p」についても改めて聞かせて下さい。タイトル曲の「フラグメント」は、TVアニメ『青のミブロ』EDテーマにも起用されています。
山口初めて、アニメのEDテーマを書き下ろさせてもらって。アニメのテーマ曲をやりたいというのはバンドとしての夢でもあったし、アニメへの思い入れの強いメンバーもいるんですけど。なにより、成果が実った作品になったことがすごく嬉しかったです。
──アニメ作品があって、テーマありきで楽曲を書き下ろして。いろいろな制約もある中で、自分たちらしさも出してって、すごく難しかったと思うのですが?
山口テーマがあって曲を書くのって、結構好きなんですよ。以前、ドラマでそういう機会をいただいた時も脚本や概要書をくまなく読んで。「これを自分の中でどう落とし込もうか?」とか、「王道じゃないところを切り取ってみよう」と追ってる時間がすごく楽しいので。「フラグメント」もそこまで気負うことなく、すんなりと受け入れた上で落とし込めたかな?と思ってます。特に“壬生浪士組=新選組”っていうひとつの屋号の下で、メンバーもバラバラだけど、それぞれ思うことがあって。それぞれの正義があって、ひとつの目標の下に同じ旗を掲げて、チームとなって戦うというのがバンドにも通ずるものがあるなと思って。それに気付いてからは、本当にすんなり書けました。それぞれの正義があるけれど、この名前を掲げてる限りはこうすることが最善だろうとか。そこに生まれる葛藤があったり、いがみ合いつつも目標に向かっていくという姿勢にすごく共感出来て。
──確かに。バンドに例えたら、“正義=カッコいい”だったりして。ロックバンドの旗を掲げて、それぞれが自分のカッコいいを貫き通すと考えたら、確かに一緒ですね。もともと、『青のミブロ』は知ってたんですか?
クサマ僕は元々、安田剛士先生の『DAYS』ってサッカー漫画が大好きで。『青のミブロ』もめちゃくちゃ面白くて、主人公のにおがどう成長していくか?っていうのにすごく興味が湧いてます。13歳なのにすごく大人びた発言が多かったりするんだけど、根っこの部分では13歳らしい部分もあったりして、すごく魅力的なんです。第1シーズンを全部見て、この続きに僕らが曲を添えられるのがすごいことだなと思いますし、単純に続きが気になります(笑)。
山口僕もお話をいただいた時から、単行本を読んだり、アニメを見たりしたんですが。登場人物も実際にいた人物が、アニメに沿ってる部分ですごくデフォルメされていたりして面白くて。すっかり作品のファンになっちゃいました。
──「フラグメント」のレコーディングはいかがでしたか?
田中アニメのEDってところは、みんなすごく意識してたんじゃないかな?と思ってて。今までだと、メンバー各々が調和を意識して、引くところは引いたりって部分が強いんですけど。アクションもあるアニメのEDっていうのを踏まえて、いつもより派手になったんじゃないかな?と思います。スタンドプレーが多かったけど、それぞれにターンが回って来て上手くハマるみたいな感じがあったと思います。
──結果、1曲の中に緩急あって、すごくドラマチックに聴ける曲になって。フルで聴いた時、TVサイズでは伝わりきらない楽曲の物語性を感じました。
金廣僕はずっとアニソンを聴いて育ってきたので、アニソンへの思い入れもあって。アニソンって曲調と歌詞が、そのアニメの世界観とマッチしてたら見ている視聴者もすごく愛してくれる曲になると思うし。海外の人も言語が分からなくても曲を聴いてもらえるので、どうしたらそういう曲が出来るかな?っていうのをすごく考えて。汗臭いけどちょっと哀愁感のある音を目指そうと思ったし、そこに気付いてもらえたら嬉しいですね。
──“ド青春新選組”だから汗臭さも欲しいし、EDってところで哀愁も欲しいですよね。持論だけど、アニソンってOPよりEDの方が絶対難しいと思ってて。アニメって良いところで終わるから、「早く続きを見たい!」って来週を待たなきゃいけない人たちの気持ちを超えてくるって、結構大変だと思うんですよね。
山口確かに始まりのワクワク感より難しいかも知れないですね。
田中でも、結局のところはその楽曲の力量だと思うんで。そこは言い訳をする必要はないんじゃないかと思っています。
金廣うん、それが出来る楽曲になったと思います。
──それくらい自信を持って出せる曲になったと。あと、歌詞の面で聞きたいことがあって。山口くんの歌詞って、ネガティブワードで始まること多いですよね?
山口確かに(笑)。一番カッコいいのって、ポジティブな言葉で自分語り出来ることだと思うんですけど、なかなかそんな人っていなくて。僕はそれが出来ないのであれば、すごいネガティブなこともめちゃめちゃポジティブに言ったら明るく伝わるなと思ってて。それを独り言にせず、なんなら自虐ネタくらいにニヒルな感覚で言うことで、面白いと思ってくれたり、耳を傾けてくれるっていうのが実際あるなと思って。
──いきなりポジティブな言葉で上から来られても、「そういうのいいから」って思っちゃうことはありますよね。
山口そもそも、僕がそういう気質の人間じゃないので。どちらかというと負の感情からの方がペンが進むし、ネガティブなことばかり言ってしまう楽曲があったとしても、めちゃめちゃキレイなメロディとかコードがあれば、心を掴んでしまうと思うんです。なので、ネガティブをめっちゃハッピーに歌うっていうのは、ずっと変わらないところで。今作も無意識ですけど、それが出てるんじゃないか?と思います。
──「フラグメント」に関しては、それがすごく効果的で。<もうどうなったっていいさ>って投げやりにも取れるフレーズから始まるけど、その後に<世界よ 僕に続け!>と力強く歌うことで開き直りの強さみたいなものも感じるし、グッと楽曲に引き込まれます。
山口ネガティブを言う代わりに、それを超えるポジティブな感情なり、なにか聴いた後の感覚を残さなくてはいけないので。そういう意味で、<明日を笑うための今日だ>ってすぐに歌うことに、「確かにそうだ」って自分でも書きながら納得したし。負の感情から始まる方が、きっと親しみを持ちやすいだろうなと思って。
──EP収録の「Selfie」も、<最低なんですこんなんで傷心中>って、どん底から始まる物語だけど、<そのままでいざ前へ>と終わる楽曲を聴き終える頃には、すごく前向きな気分になれます。
山口イメージとしては、携帯投げたくなるような感じで始まるんですけど(笑)。<Oh Yeah!その心が踊る方へ>って歌うことでこの曲を聴いてる間だけでも、これを聴き終わってなにか気持ちが変わるでもいいんで、ポジティブになってくれたら嬉しいですね。ライブとかは逆にめちゃめちゃハッピーというか、プラス思考でやっているので。そういうギャップも面白いなと思って足を運んでくれたら、もっと嬉しいです。
──俺が思うに、ライブハウスって毎日楽しくて仕方がない人って来ないと思うんです。
山口そうなんですよね。毎日楽しかったら、地下への階段なんて目に止まらないし、わざわざ行こうと思わないですよね?
──そう。毎日上手くいかないし、日々シンドいけど、週末のライブを楽しみに頑張れるとか。ライブハウスに一歩入ったら日々の嫌なことも全部忘れられるとか。ライブハウスに足を向かせる行動力って、ネガティブな感情のような気がするんですよね。
山口それはちょっと僕も思いますね。だから、osageの音楽はそういうところで鳴ってる音楽でありたいし。大きい会場が似合うというのも大事なんですけど、部屋を暗くして聴いた時によりスッと入ってくるような感覚は絶対に無くしちゃいけないと思ってます。そこで時には歌って発散するのも必要だと思うので、「Selfie」はフェスシーンとかも想定して入れた楽曲だったりするんですけど。この曲を必要とする人に届いて欲しいです。