LiSA『LiVE is Smile Always~ASiA TOUR 2018~[eN]』
2018年6月14日&15日 日本武道館
LiSAにとって武道館という場所は特別だ。
それは単に、誰もが目標とする場という意味ではない。彼女にとって武道館は、オーディションの最終選考で夢を勝ち取った原点であり、“またいつか単独公演でこのステージに立ちたい!”と心に誓った目標の場所であり、完璧なライヴが作れなかったことで、大きな悔しさを残した場所であり、“いつかまたここで完璧なライヴを魅せたい!”とリベンジを誓った場所でもあり、それを乗り越えた先にあった最高の景色を作ることができた、特別な場所なのである。まさに。LiSAというアーティストの歴史的にももちろん、常に彼女自身の人生の大きな“きっかけ”を作っている、大切な場所だと言っても過言ではないだろう。
2018年6月14日、15日。LiSAは3年ぶりにして、4回目の武道館に立った。
メインステージの後ろにも客席を設けた武道館。1階と2階のスタンド席のオーディエンスが照らすサイリウムのピンクが、ステージとアリーナ席を包み込むように360度円を描いていた。今回のツアータイトル[eN]にちなんだ構成だ。LiSAは、そんなピンクの光に包まれながら、自らの声だけで唄い始めた。
“Believe in myself いつか この曲聴いた 誰かが 今を 愛せたらいい———”
ライヴのオープニングとして用意された「Believe in myself」の歌い出しだ。彼女は、この曲の歌い出しのフレーズをこの日の“0曲目”として置いていたのだ。まさしく。歌詞として書かれたその言葉は、LiSAがこの日伝えたかった言葉であり、常に心に置いている言葉であり、もっと言うなれば、LiSAが歌う意味そのものだ。
LiSAは、一番届けたい想いを導入とし、両日共「Rising Hope」を1曲目に一気に加速させたのだった。場内は1曲目からライヴ中盤のような熱気に包まれた。LiSAの歌に合わせて投げかけられるオーディエンスの歓声は地響きの様だ。LiSAの歌声がオーディエンスの力となり、オーディエンスの歓声がLiSAの力になる。LiSAのライヴでは、そんな双方の求め合う力を強く感じることができる。
14日、15日と、セットリストを変えて届けられたライヴであったが、どちらも前半戦ではポップな楽曲たちを並べてオーディエンスを楽しませ、中盤戦では黒いマントに身を包み、声質を低く変化させ、「EGOiSTiC SHOOTER」「L.Miranic」を間髪入れずに届け、小悪魔的な“黒LiSA”でダークなロックを歌って魅せ、さらに、そこから続けて届けられた「DOCTOR」「Empty MERMAiD」(14日は『罪人』)では、
ランチュウを思わせる真っ赤な着物を纏い、番傘をさしながらゆっくりと中央の花道に身を置き、妖艶なパフォーマンスと共に、ヴィジョンに浮かび上がった“艶”を見事に演じながら、“ロックヒロイン”の貫禄をまじまじと見せつけたのだった。
後半戦。空気を一変させたのは「シルシ」だった。透明な光に包まれ、真っ白なドレスに身を包んだLiSAは、迷わずに自分を追いかけてくれたオーディエンスに、自分が生きたシルシをしっかりと歌って届けたのだった。
「武道館のステージにワンマンライヴで立つのは3年ぶりです。私にとって武道館は夢の場所でもあって、初めて立ってから4年が経つんですけど、4年前の武道館は正直最悪でした。そのときの武道館は本当に広くて、みんなが本当に遠くて、すごく不安がいっぱいあったんですけど、4年経って、いろんな会場でライヴを経験して、今日は、みんなのことを“こんなにも近く感じる!”と思っています。武道館って怖い場所じゃなかったんだなって。武道館には魔物がいるって言われているけど、きっとその魔物は、夢の場所に向かうドキドキとか不安とか、いろんな自分の気持ちが作り上げたものだったんじゃないかなって思うんです。そんな魔物と戦った初めての武道館から4年、またこんなにもたくさんの人達と一緒に、ベストアルバムのお祝いとして戻ってこれたことが本当に本当に嬉しいです。ありがとうございます。デビューした頃から、いや、子供の頃に夢見た頃からしたら数えたら20年くらいになるけど、その頃の自分は、こんなにもお客さんが居てくれる武道館を想像することはできませんでした。歌うことが好きだなって思って、歌う事を夢にして、地元の岐阜県から出て来て、今まで一生懸命一生懸命歩いてきて、今日、ここに立っています。何が言いたいか伝わっているかな? とっても嬉しいってこと。こうして、武道館という場所に立って歌えるシンガーになれたんだな、1つのレガシーを残したんだな、みんなと一緒にレガシーを残したんだなと、本当に嬉しく思っています」
LiSAは、真っ白なドレスにギターをかけると、この言葉の後に「WiLL~無色透明~」を届けたのだった。みんなを楽しませるために、一生懸命練習したのだろう、たどたどしかったギタープレイは、目を見張るほど成長していた。イントロのコードを力強くLiSAが弾いて始まったこの曲は、LiSAの言葉通り、歌うことを夢見た彼女が上京し、何度も何度も挫けそうになる自分を奮い立たせ、懸命に夢を追いかけ、自分の歌を求めてくれるみんなと出逢い、そして、此処に立っている今そのものだった。
LiSAが求められる理由。それは、彼女が、嘘のない、ありのままの生き方を歌うからだと私は思う。オーディエンスは、そんなLiSAの歌声を噛み締めるように受けとめていたのだった。