引きこもり、人見知り、超アニメオタクでオカルト好き。その個性を最大限に生かした独創的な楽曲を、アコースティックギターを掻き鳴らしながら歌うシンガーソングライター、カノエラナ。2018年は自身の集大成となる1stフルアルバム『「キョウカイセン」』をリリースしたあと、作詞・作曲・演奏・歌のすべてをひとりで手がけた『ぼっち2』を会場限定でリリースすると、たったひとりで全国をまわる「ぼっちツアー」を精力的におこなってきた。まさに“弾き語り”から始まった音楽人生の原点に返ったと言える1年の締めくくりとして、カノエは12月13日(木)にワンマンライブ「上昇祈願~鹿江神社、来たれ旋風2019~」を新宿BLAZEで開催する。さらに、11月14日(水)にはニューアルバム『ぼっち2りみっくす』も発表。原点回帰とチャレンジの2018年を経て、亥年生まれのカノエは2019年、年女になる。ますます猪突猛進に我が道をいくカノエに話を訊いた。
──12月13日(木)に開催される「上昇祈願~鹿江神社、来たれ旋風2019~」は、ライブ三昧だった1年を締めくくる日になりそうですね。
年内のラストワンマンですね。忘年会みたいな感じになると思います。来年に向けて、1回ここで締めておいて、「ここから走るぜ!」みたいな。2018年の締めくくりであり、スタートであり、みたいなライブになりますね。
──WIZYのクラウドファンディングサービスと連携したライブになるそうですが?
そう、今回は企画があってのライブになるんです。もともと年末にワンマンライブをやりたいっていうのはあったんですけど。そこにWIZYの企画のお話をいただいて、何か絡めてやったら面白いんじゃないかなっていうことになって。
──お話がきたとき、すぐに「面白そう!」っていう感じだったんですか?
正直なところ、最初お話がきたときは「どうしよう?」と思いました。そういうタイプではないというか。みんなを集めて、「がんばろうぜ!」っていうより、地味にコツコツとっていうタイプなので。あんまりやったことがなかったけど、乗っかってくれる人と一緒に作っていこうぜっていう感じですね。こういう企画だからこそ、今回はグッズのデザインも全部やらせてもらって。他の人のデザインだと違う気がしたんです。できるだけ自分が発信したもので、楽しみながら絡んでいったほうがいいかなと思ってます。
──そのなかの目玉のひとつが、勇者のみんな(サポーター)からテーマに添ったエピソードを募集して、カノエくんが曲を作るというプロジェクトですよね。
それも初めてのことなんですよね。でも、ラジオで曲を作ったりもしてるので、その延長線上でラクにやっていければと思います。
──曲のアイディアはたくさん集まってるんですか?
かなり濃い内容のものが集まってますね。読むだけでも大変そうなんですけど(笑)。それを、いまからどう調理しようかって悩んでるところです。ひとつに絞るんじゃなくて、いろいろなエピソードをつなぎ合わせて曲にしようかなと思ってます。
──その新曲も12月のライブで披露される?
そうですね。その日は、たぶん弾き語りになると思うんですけど、そこから、さらにアレンジも詰めていけたらなと思ってます。
──ライブのタイトル「上昇祈願~鹿江神社、来たれ旋風2019~」ということですけど、この日のテーマは神社?
和風が好きなので。しかも、来年は亥年じゃないですか。私、年女なんですよ。「あ、イノシシっぽいな」って思われると思いますけど。
──うん、猪突猛進(笑)
だから、2019年も「おりゃー!いくぜ!」みたいな感じですね(笑)。そういうライブをするっていう意味もタイトルに含めていけたらと思ったんです。
──内容的には、弾き語りかバンドか、どちらになるんですか?
弾き語りでやるんですけど、ふつうとは違うライブにしたいと思ってて。二部構成にして、そこで何が起こるのやら?っていう感じにしたいと思ってますね。いままでワンマンライブでも一部と二部でやってたりもしたので。その流れも引き継ぎつつ、いつもとは違った感じの新しいものになればいいなと思ってます。
──今年は弾き語りツアーも多かったけど、ライブの手応えは変わってますか?
最近、バンドの感覚を忘れるぐらい弾き語りばっかりやってますね。1曲1曲をじっくりやれるようになってるんです。いままではサラッとやって、「あれ? 時間が余った」みたいになってたんですけど、いまは「時間、ギリギリじゃね?」ってなるぐらい、1曲1曲で、しっかり間(ま)を持ちながらやるようにはなってるので。楽しいんですよ。そういうのも12月のライブでは出せたらなと思います。
──カノエくんって、最初からライブは好きでした?
いや、全然です。すごく怖かった。曲数も少なかったから、いつもセットリストも同じだったし。MCも、セリフじみてたんですよ。
──台本どおりに喋るみたいな?
そうなんです。舞台にあがるのなんて、ピアノの発表会でしかやったことがなかったから、「MCって何なんだろう?」っていう感じで。とりあえず曲の名前を言えばいっかっていうぐらいでしたね。人のライブも見たことがなかったので、発表会みたいな感じでした(笑)。そこから対バンをしていくうちに、「あの人めっちゃ喋ってる」みたいなことに気づいて。あ、喋らなきゃいけないんだって思うようになったんです。
いままでは「全部に届けよう」で、いまは「ひとりひとりに届ける」みたいな気持ちでやってる
──自分のなかで、ライブの手応えを掴めてきたのは、どれぐらいの時期?
それこそ、いまやっとですね。お客さんがどの位置にいる?みたいなことを、やっと把握できるようになってきたんですよ。ずっと自分のやることに精一杯で、お客さんのことを考える余裕があまりなかったので。いまはライブで人を見る余裕が出てきたから、このあいだのライブだと、ネコの曲を歌いたいと思ったときに、お客さんがネコのものを身に着けてたりすると、「それそれ!次、その曲やるよ」って言ってみたりとか。
──そうなんですか。観てる側としては、ここ1~2年のライブでも、しっかりお客さんのほうを向いて、盛り上げてるように感じてましたけど。
ああ、たぶん全体として見てたんですよね。空間として見てた。でも、いまはちゃんと個々のお客さんを見てる気がします。いままでは「全部に届けよう」で、いまは「ひとりひとりに届ける」みたいな気持ちでやってる気がします。
──そのほうが大事だって気づいたから?
それも、いろいろな人のライブを観に行ってからですね。武道館をやってるアーティストを見たり、逆に、四谷天窓(カノエが初めて出演したライブハウス)みたいな、アーティストの表情が見える場所とか。それを交互に観に行くことで、全然違って見えるんです。そこで「自分だったらこうするな」みたいなことも考えられるようになってから、ライブが変わってきたような気がしますね。
──ひとりひとりに届ける気持ちでやると、お客さんの反応も違いますよね?
そうなんですよ。ライブ中に「初めての人はどれぐらい?」「カノエのライブが人生初めての人?」って聞くんですけど、めっちゃいるんですよ。そういう人が恐る恐る手を挙げてくれると、会場のみんなで「すごいよね」って拍手をしたりしてますね。
──人見知りのカノエくんが、ちゃんとコミュニケーションをとってる(笑)
ありえない話ですね。
──無理してない?
全然してないです。すごく楽しんでます。
──いまはライブ好きですか?
好きですね。いつも歌い足りないぐらいです。私はもともとすごく人見知りだし、それはいまもなんですけど……、昔は、曲に対して「これでいいのかな?」って後ろ向きだったんですよ。でも、いまはライブに来てくれる人をちゃんと見ることで、「これで良かったんだ」って自信を持てるようになったと思います。ライブに来てくれること自体が、1個自分の殻を破ってくれてるわけじゃないですか。だから、来てくれる人は「敵じゃない、味方なんだ」って思えるようになったんです。