これまでいいことも悪いこともあったよね、でもまだまだこれから上にのぼるよというのを歌詞のなかに入れて
──Sabãoの現在ゾーンについても聞かせて下さい。ここにはズラリと企業とのタイアップ作品が並んでますけど。
楠瀬タクヤ
ええ。本当にいろんな企業さんとコラボさせてもらいましたね。
Tama
始まったきっかけがそうやもんね?Sabãoは。企業さんのオファーから始まって。それをやったら、また他の方からオファーを頂いたりして。
楠瀬タクヤ
シャボン玉みたいなものだから、放っておいたら消えそうなものなんだけど。「やってるんやったら、これどうですか?」って年ごとにお話があって。
Tama
そやな。細々とやってたのはそれがあったからやもんな?逆にそれがなかったら。
楠瀬タクヤ
やる必要はなかったし。
──そういう意味では企業さんがSabãoの活動を促してくれたというか。
楠瀬タクヤ
そうですね。こんなお話がきたんやけど。
Tama
嬉しい、やるやる〜って(微笑)。
──そうして、最後の未来ゾーンに収録されたSabãoの新曲「未RISE」は、このアルバムの締めに本当にふさわしいバラードでした。
楠瀬タクヤ
ストーリーとして作品を考えたとき、このアルバムでは、僕たちのダイジェストを見せることになる。そうなると、1曲目の「春 ~spring~(Sabão ver.)」はセールス的にも作品力を考えても、いきなり最終回を見せるぐらいパワー感ある始まりになる。そんな作品の最後を飾るエンディングで、どこまでパワーを出せるのかと考えると、すごいプレッシャーがあったんですね。ヒスブルといえばパワーポップというイメージが一般的には強い。アルバムの並びを考えたとき、強くて早くて元気で力強いものは15曲目までで十分出せてるなと思ったんですね。Tamaは歌い上げたときに声ののびがいいし、ここはライブのことも考えて、この20年という深みをしっかり表現できる曲調といったら、テンポも穏やかで、しっかり歌詞が聴き取れるものがいい。そこを目指すとスローな曲になったんです。スローだけど、サビのキャッチーさは僕のメロディーの生命線だと思ってるんで、それが出てくるまでがしんどかったです。サビのメロディーがきたぞっていうときに、Aメロはこれ、別の曲だったんですよ。昔Sabãoでお台場でライブをやったときに、「春 ~spring~(Sabão ver.)」を歌う前に、前奏としてTamaちゃんにギターをバックに歌ってもらったものがあって。それをいまのいままで忘れてて。それがここに合流したんです。Tamaちゃんもそんなのがあったのは忘れてて。
Tama
忘れてた。いわれて「そんなんやったっけ?」「ああー、そんな感じのしたかも」って。だから、ある意味降って来たんやな?忘れてたメロディーが。
楠瀬タクヤ
そうそう。5年前に、新しい俺たちなのかどうか分からないけど、なにか表現したくて作った前奏がこのタイミングで帰ってきたから、これは思し召しだと思って。このメロディーで終わって1曲目の「春 ~spring~(Sabão ver.)」につながるようにしようと思って、その前奏をAメロにしたんです。それで、曲もAメロで終わるようにして。ちゃんとリピートしたときにつながるように、最後に転調もして。曲のなかには「春 ~spring~(Sabão ver.)」のギターのフレーズもオマージュとして入ってたり。そういういくつもの理由が連続できたんですよね。
──ちょっと神ってる曲だったんですね(微笑)。
楠瀬タクヤ
かもしれないですね。それで、歌詞は最初からアルバムの『MeRISE』と合わせて「未RISE」にしようというのがアイデアとしてあって。「未RISE」はまだまだRISEしてないよ、これからまたRISEする何かがあるぞというポジティブな意味で。僕らはまだ続けていくから、先が暗いとは思わせたくない。ファンの人や、これで僕らを知った人に。この先おっちゃんになってもRISEの仕方はまだまだある。それを僕らは先輩を見て知ってるんで。これまでいいことも悪いこともあったよね、でもまだまだこれから上にのぼるよというのを歌詞のなかに入れて。アルバムとしてここまでの15曲を振り返ることができて、ライブの最後に聴いてもそうなれるものを目指して作りました。
Tama
Sabãoだけじゃなくて、それぞれの人生に当てはめられる歌詞だと思うんですよね。私も自分の人生にすんなりと当てはめて歌うことができたんで。この曲は何回か歌っていくうちにライブのシーンが見えてきたんですね。ライブをイメージして歌ってみたら、すごく気持ちよかった。声がのびるところ、広がるところがすごく気持ちよくて。お客さんの前で歌ってるんだと思ったらすごい優しい気持ちになれました。
──この歌から感じられる包み込むような包容力は、そういうところから生まれてきてたんですね。
楠瀬タクヤ
うん、そうですね。20年やってきての集大成の最後を飾るという曲だったから、私自身が優しい気持ちになったんだと思います。
──とくに後半3曲はヒスブル聴いてましたという方々に届けたい楽曲なのかなと感じましたが。
Tama
とくにこのゾーンはそういう人たちに向けた曲ですからね。
楠瀬タクヤ
「今 ~present~」と「また明日」はSabãoのファンクラブの人用に作ったものを、今回オケだけ録り直して入れたものですから。
Tama
ファンのみんなへありがとうという感謝を込めたこの2曲から「未RISE」なんで。だから、当時ヒスブル聴いた人から、Sabãoは知らなかったっていう人も、最後はみんなありがとうっていう感じになってます。