"告うた"と呼ばれるジャンルを作った張本人。それが、シンガー・ソングライターのericaである。「告白」、「失恋」、「片思い」をテーマに描いた楽曲に共感をおぼえた女子中高生、大学生を中心に、彼女の代表曲となった「あなたへ贈る歌」は口コミだけでYouTube動画再生回数は2200万回超えという驚異的な数字を記録。その他の曲も含め、いまも日々リスナーからの書き込みが止まらない。そんなソーシャル型アーティストとして人気を集める彼女が、5月12日に2年ぶりにワンマンライブ『ericaワンマンライブ2018〜ようこそerica映画館へ〜』を開催する。彼女の「告うた」がなぜ同性たちに圧倒的に支持されるのかを紐解いていくと、彼女の報われない恋愛体験とともに、あの泣ける歌からは想像もつかないericaの天然キャラが見えてきて、なぜかインタビューは爆笑トークに。猛烈に面白いぞ、erica!!
──ericaさんは山梨の観光大使をされてるんですよね?
そうです。山梨観光大使もそうですけど、私は山梨の北杜市というところの出身なんです。この間、北杜市の親善大使にもなりまして。名刺を持ってるんですけど、私、すぐものを無くすのでマネージャーさんに持ってもらってるんで。いまお持ちしますね。
──おてんばなところもあるんですか?こんな歌作ってるのに。
(軽やかに)はいっ!すっごいおてんばです。私の場合、まずSNSで歌が広がったから歌と本人の顔が一致しない、顔と性格も一致しない。一致しないだらけなんですよ。
──(早口のおしゃべりに圧倒されながら)あ、はあ。なんか、わしゃわしゃ落ち着きのない感じといいますか(苦笑)。
そうなんです(笑顔)。じっとしていられないタイプなんで、みんな曲と違いすぎてびっくりしますね(笑)。「あれ、こんな人だったの?」って…思われました?
──えっ…ええ(苦笑)。
みんなそういうんですよね。ふははっ(笑)。
──(ここで名刺到着)。
まずこの山梨の観光大使は、とにかく勝手にツイッターとかで毎日山梨のことをアピールしたり、山梨でイベントがあるたびに「観光大使やりたいなー」って言いまくってたら「なりませんか?」と言って頂いて。結構強引にもらった感じで(笑)。北杜市のほうは、市のお祭りとかでも歌ったりしてて。私の知名度もちょっと上がってきたところで市のほうからついこの間、お声をかけて頂いて就任させていただいたきました。
──人柄も行動も活発な印象を受けますけど。子供の頃からそうでしたか?
はい。私が育ったところは信じられないぐらいど田舎だったんですよ。山と山の間に生まれたので、コンビニは歩いて1時間、バスも1時間に1本しかなくて。テレビも3チャンネルぐらいしか映らないから、遊びは秘密基地を作ったり蛇を捕まえたり釣りしたり。野生児みたいに育ったんですよ。そもそも男っぽかったんですよね。高校卒業するまで髪の毛もモンチッチ級のショートで、マラソンとかバスケとかをやるようなスポーツ少女だったんです。
──目の前にいるericaさんイメージは、そっちのほうがぴったりハマりますね(微笑)。
そうなんです。それで、音楽は3歳からピアノを習っていて。そのピアノも、他に遊ぶものがないのでラジオから流れてくる曲をカセットテープに録音して、それを聴きながらピアノでコピーしていくというのが遊びの一環だったんです。だから、音楽に触れる感覚も、ニューシングルが出たとか、いまこれがブームだからとかという触れ方じゃなくて。有名な曲なのかどうかも知らずに、いいなと思った曲をコピーして弾いて。それをまたラジカセで録音して。それを流しながら、友達をゲストに呼んで"ラジオごっこ"をしたりしてたんですよ。
──あまりにもエピソードが昭和すぎるんですけど(苦笑)。
そうなんですよー。
──ericaさん、本当にキャラが歌と違いすぎるー(笑)。
ええ。だから、いまのプロデューサーさんには最初「このキャラを隠したい」と言われたんですよ。露出も控えて、歌だけ出したいと。MCもキャラがバレないように3秒は下向いててって言われてやってました(笑)。そこで一旦黙ろう、みたいな感じで、最初はキャラを隠してたんですよ。でも、ダメでしたね。すぐボロが出ちゃって。例えば、その昔MCで「ブラウン管の向こうにいる人にもこの曲が届きますように」というのを「ドラム缶の向こうに」って言っちゃったり。
──ぎゃはははっ。それはヤバイ。
ヤバイんですよ。そういう粗相があまりにも多すぎて、途中から「もういいよ」と言われて解放したんですけどね。
──子供の頃、家族にそういうところがあるから気をつけなさいといわれたりしなかったんですか?
途中から「この子は無理だな」と思ったみたいで諦めてたと思います。学校でもこのキャラ全開な上にうるさかったんで、当時の私を知ってる人は「なんであいつが北杜市の親善大使?」って絶対思ってると思いますね。
私は"恋愛のスペシャリスト"がアドバイスするような感じではまったくなくて、"共感型"なんです
──こんな人が、なんであんな歌が書けるんだろうって不思議でしょうがないですよ。
ですよね?でも、私も学生の頃は恋をしたんですよ。人並みに。そうすると、こういう性格ゆえに、まったくもって"恋愛対象"に思われないんですよ。男子に。
──ああー。それ分かります。
私が好きになる人は、だいたい静かで品のある女の子が好きなんですよ。私はくしゃみとかはクラスの誰よりもデカい音でしたいという変なポリシーがあったり。
──うははははっ(笑)。
まったく女っぽくなかったんで、好きな人にも相手にもされなかったんですよ。逆に相談とかされて。キューピット役をしてたんです。好きな人のそばにいるのに、一番遠い人みたいな。そういう恋をしてきて。だから、実らない恋が多かったんで、そこで恋に対してとか、片思い特有の届かない思い、みたいなものはすごくいまの恋愛ソングに。
──反映されてますね。いまのお話を聞いて思いました。
だから、リスナーの方からご相談を頂くと「本当に分かる」っていう相談が多くて。私は"恋愛のスペシャリスト"がアドバイスするような感じではまったくなくて、"共感型"なんです。一緒に朝までファミレスでドリンクバー飲みながら「分かる分かる」っていいながら、「でも頑張ろうぜ」みたいな感じ。こうするべきだよ、絶対こうしなとかではなく、一緒に悩んで一緒に頑張って一緒に前に行こう、みたいな。だからたぶん、私の恋愛の歌は、相手に押し付けるよりも"こんな私なんか"みたいなところからスタートしてるものが多くて。常に下から、"よければこんな私でも寄り添っていいですか?"というスタンスのものが多いんですよね。
──ああ。確かにそういうものばかりですね。
常に私はキューピットをやる盛り上げ役か地蔵。どちらかでしたから。
──地蔵というのは?
好きだからしゃべりたいんだけど、なにも話せなくて「あれ?そんな子いた?」という存在のこと。「今日はしゃべろう」って決めて学校に行くんだけど、なにもしゃべれなくて。家で泣いて泣いて。夜にしゃべれなかったことをノートに書いてたんですよ。それがだんだんとポエムになっていったんですよね。いま、みんながYouTubeのコメントに書いてくれるようなことを私はずっと毎日ノートに書いてたんです。
──活発な性格とは裏腹に、恋愛活動はかなり暗い(笑)。
ホントですよね(微笑)。気持ち悪いかもしれないんですけど、渡せなかった手紙も何百通ってありましたから。
──えーっ!!
毎日告白するつもりで手紙を書いてたんですけど、渡せなくて。好きってバレないような、ふわっとしたものしか渡せなかったですね。好きなことがバレて、そこで「ごめん」っていわれたら恋が終わっちゃうんで。どうにかつなぐために、本当はどん底に重いんだけど、その重い感じがバレないように。どんだけそのふわっとしたなかで、好意があるよという思いを伝えられるかというのに命かける。みたいなことを勝手に駆け引きしてて。そういう当時の私の気持ちと、いま相談を寄せてくれる子たちの気持ちは「同じだよな」って思うんですよ。で、そうやって、相手にまったく気づいてもらえない日々を過ごすなかで、これは自分が好きな自分にならないと振り向いてもらえないんだなって気づいたんですよ。「なんで私に気づいてくれないんだろう?」「なんで振り向いてくれないんだろう?」「なんで私よりあの子と仲いいの?」って相手に求めるんじゃなくて。
──歌詞にも相手に求めるようなフレーズって、出てこないですよね?
書けないんです。自分に自信がないから。自信がないから誰かと比較なんてできないんですよ。でもある時、なんで自信がないのか気づいたんです。全然自分の好きな自分になろうともしてなかったんですよ。「全然私頑張ってないじゃん」「好きな自分になる努力してないじゃん」って思って。そこから「この服着られるようにダイエットしてみよう」とか、「勉強してみよう」とか「いま好きなことに挑戦してみよう」とか「いま嫌いなことを克服してみよう」とか「朝寝坊しない」とか「人の悪口いわない」とか、なんでもよかったんですけど。私は「その人に似合う私になろう」というのをテーマに、大嫌いだった勉強をすごく頑張ったんですよね。その人がとても頭がよかったので。
"綺麗な人が輝いてるんじゃなくて、頑張ってる人が輝いてる"というのを習得しました
──そうしたら、なにか変われました?
「あー、私頑張ってる」って自分を認められるんですよ。"綺麗な人が輝いてるんじゃなくて、頑張ってる人が輝いてるんだ"というのを習得したんです。「なんだ、容姿じゃないじゃん!大事なのは努力じゃん!」と思って。自分ができることをひたすら頑張って。そうしたら、自分が次のテストで何点とれたら告白しようというのに目標が変わったんですよね。それで、その自分になるためにめちゃくちゃ頑張って。テストで自分が目標としてた点数をとった時は、もう卒業式のちょっと前で。その時に告白しましたね。初めて本気で。
──それでそれで?
そうしたら「知ってたよ」といわれたんですよ。「頑張ってたことを」って。それで、付き合いました。
──うわーん。それ、嬉しかったでしょう。
その時は「見ててくれたんだ」って本当に嬉しかったですね。でも、すぐに私が東京に行っちゃったんで、遠距離になっちゃったんですけど。あの大恋愛はいまでも大切な思い出ですね。本当に自分が頑張って、努力したから、その時は告白して振られてもいいと思ってました。やりきったから。後悔のない告白でした。あれは頑張りましたね。中学の時も告白したことはあるんですけど、その時好きだった人には彼女がいたんです。そのキューピット役をやったのが私で。私はその人に「好きだったよ」と失恋のための告白をしたんです。「私のこと、友達じゃなくあなたを好きだった人として覚えててね。そしてちゃんとふって」という気持ちでの告白だったんですよね。