東京スカイツリータウン(R)にあるコニカミノルタプラネタリウム"天空"にて、2017年4月から不定期で開催されているライヴエンターテインメント『LIVE in the DARK』。プラネタリウムというシチュエーションでしか味わえない特別な体験を提供するイベントを一から立ち上げた、コニカミノルタプラネタリウム株式会社の佐野大介さんに『LIVE in the DARK』に込めた思いや、その魅力を訊いた。4月20日に開催されるVol.5にはShohey(Vo)の『テラスハウス』出演が話題になっている今年注目のエレクトロバンド、THREE1989(読み:スリー)の出演が決定しており、その見どころも合わせて語ってもらった。
プラネタリウムが提案する新しいエンターテイメントのかたち
──『LIVE in the DARK』を立ち上げた経緯を、まず教えていただけますか?
音楽に絡めて何か面白いことができないか?ということから、プロモーションとして"プラネタリウム"で生の音楽を"体感"する新しいエンターテインメントを立ち上げることができないかと考えました。プラネタリウムで音楽や生演奏を聴けるイベントは、もともと各地のプラネタリウムでもクラシックコンサートやクリマスコンサートというかたちで結構行なわれているのですが、それとはまた違う角度のイベントを立ち上げたいと。タイトルを"LIVE in Planetarium"としなかったところにもちゃんと理由があって、暗闇の中で音楽を聴くとびっくりするぐらい音がよく聴こえるんですよ。普段集中したい時にも目を閉じるみたいに、視覚をシャットアウトすると耳の感度がすごく上がるんです。暗闇の中でホンモノの音楽を生で聴いたら、その体験の価値は上がるんじゃないか…それが『LIVE in the DARK』の根本にあるんです。
──企画を実現するうえで、解決しなければいけない問題はありましたか?
収支をはじめいろいろあったのですが、一番最初の開催に関しては出演者のブッキングがなかなかできなかったことですね。いろいろなところにお声掛けしたんですけど、どこもやったことがないイベントだったので"前例がないとねぇ"って断られ続けて。その中で、安藤裕子さんが"面白い!"とオーケーしてくれて2017年4月12日のVol.1が実現しました。私の中ではかなり背伸びをしたキャスティングではあったんですけど、"大人の夜"や"ホンモノの音楽"というイベントの趣旨にはドンピシャで、ほんとによくぞオーケーしてくれました!って感じでした。安藤さんに出ていただいたおかげで、その後はアーティストサイドからお声掛けいただけるようになったんですよ。実は、今年はすでに夏から秋まで出演アーティストがほぼ決定しているんです。
──プラネタリウムの暗闇の中ではアーティストの顔がはっきり見えませんが、そこは?
実はこれが一番の課題だと思っていました。でも考え方を変えて、見えないことを価値にしようと考えました。プラネタリウムというハンデをアドバンテージに変換するというか…さっきも言ったように、耳の感度が上がることで今までと違う音楽体験ができることを事前に周知すれば分かってもらえると信じてやってみたところ、アーティストが見えなかったことに対するクレームはほとんどなかったし、逆に"今までにない音楽体験ができました"という声の方が多かったんですよ。
──暗闇の中で音楽を聴くことが主体のイベントとはいえ、映像もやはり見どころではないかと思うのですが、映像はどんなこだわりや考えで作っているのでしょうか?
"一夜の夢"をテーマに、夕景から始まって、朝焼けで終わるというルーティンはどのアーティストにも共通するものとして決めています。単純に"星空を見ながら音楽を聴きましょう"では他のプラネタリウムコンサートと変わらないので、そこはひとつうちならではのストーリーが欲しいと考えました。映像に関するこだわりを言うと、セットリストを決めてもらった中で"この曲は絶対映像を付けたい!"という曲が必ず何曲か出てくるので、そこにはオリジナルで映像を付けています。だから、始まりと終わりは固定なんですけど、中盤…たとえば、Vol.3(2017年9月15日)に出演してもらったRie fuさんの「Until I Say」という曲で言えば、曲を聴いた時に温かい春のイメージがあったので、花びらが舞っている映像を作ってもらって投映しました。花びらが舞っているだけのシンプルな映像なんですけど、音楽を聴きながらドームを見ているとかなり吸い込まれる感じがあるんです。曲のタイトルだったり、歌詞だったり、いろいろなところからインスピレーションを受けて、この日だけでしか楽しむことができない映像を作ってもらっています。
特殊な空間で聴くことで、音楽の価値が上がればいい
──平面のスクリーンと違ってドームに映し出す全天周の映像は、とても迫力がありますよね。
吸い込まれるような映像を作ることができるんですよ。舞い上がったり、回転したり、時には酔っちゃうぐらい。三半規管を持っていかれるので、"没入感"ってプラネタリウムでは言うんですけど、その世界に疑似的に入り込むことができる。VRとはまた違ったリアリティーがあるというか、空間や奥行きが感じられて、本当にその場にいるような空間演出ができるんですよ。
──新しいエンターテインメントとおっしゃいましたが、初めて見た時、その迫力にびっくりして、これはこれからコンサートの新しい方法論になるんじゃないかと思いました。
ありがとうございます!今、音楽の聴き方がどんどんインスタント化していっているじゃないですか。YouTubeで聴く時代から、月にいくらか払って好きな曲をダウンロードして、好きな時に聴いて、好きな時に削除しできる時代に。音楽が使い捨てのようになっていっていると思いました。それが良いとか悪いとかって話ではないのですが、一時期流行ったフェスとかは音楽の楽しみ方をひとつ提案しましたよね。いろいろなアーティストを一度に観られるという。それと同じように特殊な空間で音楽を体感することで、音楽の価値が上がればいいなと思っています。