Ivy to Fraudulent Game、SIX LOUNGE、Saucy Dog、リーガルリリーの4バンドで全国9ヵ所を回った『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2018』のファイナル、3月11日(日)マイナビBLITZ赤坂。この日は、リーガルリリー、Saucy Dog、SIX LOUNGE、Ivy to Fraudulent Game、という出演順。
トリのIvy to Fraudulent Gameはアンコールで「革命」をやって、そのあとさらにアンコール・セッションがあった。他の3バンドのボーカリストが加わってエレファントカシマシの「今宵の月のように」、そして各バンドのメンバー全員がステージに出て斉藤和義の「歩いて帰ろう」を歌い、ツアーがしめくくられた。
このツアー、初日の2月22日(木)福岡BEAT STAIONを観て、当DI:GA ONLINEでレポをアップした。
こちらです。
この時は、1本目だったので各バンドのセットリストの明記を避けるなどして書いたが、最終日なんだからそこはもう気にしなくていいし、初日と同じように1アクトずつ、初日とは違ってネタバレありで、どんなライブをやったかを書いていくつもりで観始めたのだが。途中で、何かこれ、そういうことじゃないな、と思った。というか、もっとこのイベント全体について感じたことを書きたくなった。それ、『スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR』がどういうものであるかを知っている方にとっては、今さら改めて書くまでもないことなんだけど、そうでない人たちに知ってほしくなったのだった。
その前にまず、各バンドのセットリストから。初日の2/22福岡のものも併記しておきます。
リーガルリリー
【3/11東京】
1 うつくしいひと
2 ぶらんこ
3 スターノイズ
4 the tokyo tower
5 リッケンバッカー
【2/22福岡】
1 トランジスタラジオ
2 ぶらんこ
3 スターノイズ
4 うつくしいひと
5 リッケンバッカー
Saucy Dog
【3/11東京】
1 煙
2 いつか
3 新曲B
4 ナイトクロージング
5 真昼の月
6 グッバイ
【2/22福岡】
1 煙
2 新曲A
3 ナイトクロージング
4 真昼の月
5 いつか
6 グッバイ
SIX LOUNGE
【3/11東京】
1 くだらない
2 ふたりでこのまま
3 プラマイゼロ
4 トラッシュ
5 俺のロックンロール
6 僕を撃て
【2/22福岡】
1 俺のロックンロール
2 STARSHIP
3 ふたりでこのまま
4 夢見た君が大好きだ
5 プラマイゼロ
6 トラッシュ
7 僕を撃て
Ivy to Fraudulent Game
【3/11東京】
1 夢想家
2 E.G.B.A.
3 青写真
4 アイドル
5 青二才
アンコール 革命
【2/22福岡】
1 !
2 青写真
3 アイドル
4 error
5 革命
【3/11東京】
アンコール・セッション
1 今宵の月のように
2 歩いて帰ろう
というように、初日と同じセットリストでライブをやったバンドはひとつもない。その日の出順によって、あるいは前回のライブの感触によって、毎回曲目・曲順を変えながらこのゴールまで辿り着いたのではないか、と思う。
Saucy Dogの石原慎也(Vo&Gt)はMCで「たくさん悔しい思いをして、楽しいこともたくさんあった。忘れちゃったら出してもらった意味ないと思うので、このツアーを永久に僕の胸の中にしまっておきたい。このツアーに出させてもらって、こんな気持ちにさせてもらって、ありがとうございます」と言った。
「いろいろ想像してなかったことが起きました。こんなに燃えるイベントだと思ってなかった」という話を、SIX LOUNGEのヤマグチユウモリ(Gt&Vo)はした。
トリのIvy to Fraudulent Gameの寺口宣明(Gt&Vo)に至っては、「ブルブル震えながら今日を迎えました。おかしくなりそうでした、このツアーで」「とんでもないものに参加してしまった、と途中まで思ってました」「もっと自分のことを強いと思ってました。自分のことが嫌いになったツアーでした」と、思いを言葉にした。
「いろんなバンドがいて、すごい楽しかった。毎日ハッピーでした」と、重たい言葉を使わずにこのツアーの感想を述べたのは、リーガルリリーのたかはしほのか(Vo.Gt)だけだった。
このイベント、出演するのは基本的に新人であって、お客さんもそれらのバンドのファンである若い子たちなので、そんな重たいトーンの言葉を聞いて、「何がそんなしんどかったの? 楽しくなかったの?」と思う人もいるかもしれないなあ、と思ったので、勝手ながらちょっと補足しておきたい。
うわ。えっぐいイベントだなあ。僕は素直にそう思った。このツアーが特にそうだったわけではなくて、『スペースシャワー列伝JAPAN TOUR』というイベント自体がそういう基本設定である、と言っていいのだが、今回特にそうだったかもしれない。
仲間とか同じマネージメントとかではない、それぞれバラバラな新人が、「有望である」というだけの共通項で集められ、同じお客さんの前でライブをやる。つまり、競わされる。単発のイベントならその場限りだが、その同じメンツで全国各地でライブをやる、要は何度も同じ相手との闘いが続くことになる。
今日は俺らがいちばん盛り上がらなかったとか、今日はあのバンドには勝ったけどあのバンドには負けたとか、そういうことが目の前のお客さんから直で伝わって来てしまう。いやいや、盛り上がればいいってんなら、ラウドで激しい音のバンドの勝ちってことになるけど、音楽ってそういうもんじゃないじゃん。うん、そういうものではない。ないし、ここに出ているバンドたちはおそらく、そんなわかりやすい次元など最初から超えている。踊っていようがいなかろうが、騒いでいようがいなかろうが、自分たちの発しているものが目の前のこの人たちにちゃんと届いているかいないか、刺さっているか刺さっていないか、どんな感情を宿したかどんな表情でステージを観ているか、自分たちの音を聴いているかを日々感じながら、ステージに立ち続けていると思う。
でまた、「このバンドが終わったらお客さんみんな帰っちゃった」みたいなことだったら、ショックだけどまだわかりやすい。が、この『列伝ツアー』のお客さん、「新人を自分の目で確かめに来ている」というシビアかつ前のめりな姿勢の人が大半なので、帰らない。開演時にみんなちゃんと来るのは出順が発表されないからだろうけど、だったらお目当てのバンドが終わったらだんだん帰って行きそうなもんなのに、そうならない。
福岡でも東京でも、トリのバンドが「最後までこんなにいっぱい残ってくれてありがとう」みたいなMCをしていたが、それ、純粋にうれしさからだけ出ている言葉ではないと思う。恐怖もあったと思う、「こんなシビアな人たちを俺らは相手にしているのか」という。
そんなにキツいなら出なきゃいいじゃん、というわけにはいかない。新人にとってこんなにおいしいイベント・ツアー他にないし、「あいつらがどいてくれれば入れるのに」ってバンド、山ほどいるだろうし。つまり、出ない、ということは、イコール「イモ引いた」ということだし。
つくづく大変、出るバンド。という話なのだが、そんな重たい思いを赤裸々に言葉にしながら、同時に石原慎也は「今日が楽しみで、昨日の夜は眠れませんでした」とも言った。ヤマグチユウモリは「8本一緒にやって来て、(今日で終わるのが)すごくさみしいです」と漏らした。Ivy to Fraudulent Gameのベースのカワイリョウタロウは「自分のライブの価値観が変わったツアーでした」とマジなことを口にして寺口宣明につっこまれ、「え、おもしろいこと言うとこだった?」とあわてていた。
要は、イヤになるほどガチだったけど、イヤになるほどガチじゃなきゃ得られなかった喜びを、どのバンドも感じていたということだ。現に、1本目の福岡と9本目の東京を比べると、どのバンドも飛躍的にいいライブ・パフォーマンスになっていた。このツアーがあろうがなかろうが普段からライブの本数の多い人たちなので、9本やったからよくなったとは考えにくい。このメンツで、このツアーで回ったからこそよくなったのは、あきらかだと思う。
余談。であるがゆえに、各バンドのヒリヒリしまくった、「鬼気迫る」じゃなくて「もう鬼そのもの」みたいなパフォーマンスと、アンコール・セッションの「今宵の月のように」「歩いて帰ろう」の時のゆるくてあったかい温度、すごくギャップがあった。そこもまたおもしろかったです。最後に「ここは写真撮っていい時間です」とお客さんに伝えて、みんな横一列に並んで手をつないであいさつしたけど、その写真だけ観た人、ほんわかした楽しいイベントだったと思うだろうなあ、全っ然違ったんだけどなあ、と。
この日の緊迫感やテンション、きっと映像からも伝わると思う。4月29日22:00~23:30、初回放送だそうです。ぜひ。