インタビュー/武市尚子
──6月29日に初のソロライヴ『JAKIGAN MEISTER FIRST LIVE[ejaculation]』がZepp DiverCity(Tokyo)で行われた訳だけど。
咲人 ライヴとしては、まったく初だったからね。やる前は本当に自分でもまったく想像がつかなかった。サポートメンバーは居てくれるんだけど、歌うのも自分だし、とにかく自分次第だなと思ったのもあったから、ライヴをいいものにするには、自分自身の精度を上げるしかないなと思って、ライヴ前に個人練習に何回も入って備えてたんだよ。衣装のヒールもすごく高さのあるものだったから、それにも慣れなくちゃなと思って、服は普通の私服なんだけど、靴だけ衣装のSMみたいな靴履いて、すっごい変なコーディネートで1人リハーサルを何度もして(笑)。まぁ、そのかいあってというか、本番もその延長線上で出来た気はしてるかな。もちろん、本番はお客さんも入っているし、見えてる景色も違うし空気感も違うから、別物ではあるんだけど、“自分がやること”としては同じ意識で向き合えたというかね。“こういう方向性でいきたい”という理想を自分の中で作っていたから、そこに限りなく近い形で出来たかなと。
──特に緊張することもなく?
咲人 やっぱり緊張もあったし、実際に本番を振り返ってみると、“あれが出来なかった”“これが出来なかった”っていう細かい反省はあるんだけどね。
──6月14日に自身初のソロアルバム『Ejaculation』をリリースした訳だけど、実際にライヴでやってみて、音源とライヴで変化を感じたことはあった?制作していたときに思い描いた景色が想像通りだったのか、全くちがったということもあったのか?とか。
咲人 どうなんだろうね、正直まだ1回だから分からないかな。ここからツアーをやっていく中で、そういう変化を感じることもあるんだろうとは思うけど、正直今の段階じゃまだそこまで分からない。でも、やろうと思ってたことは全部出来たかなって。俺も初めてだったけど、来てくれたみんなも初めてな訳でしょ。だから、聴き慣れたNIGHTMAREの曲みたいに盛り上がってくれるとは思ってないというか、そんなのは無理な話でさ。だから、みんなをノセるのも盛り上げていくのも、全部自分の責任だなって思ってたから。
──なるほどね。ファンのみんなもやっぱり最初に音源を生で聴ける貴重な時間だっただろうし、久しぶりにステージに立つ咲人の姿を見るということもあって、聴き入っていたり、見入っている感覚の方が多かったし、まだノリ方を探っている感じは受けたかな。
咲人 そうだね。俺自身もね、その辺りはちょっと自分に変化を感じている部分もあって。
──変化?
咲人 そう。NIGHTMAREの時とかって、どれだけノセられるか、とか、どれだけ盛り上がってもらえるか、っていうところを1番に考えてるところがあったけど、この前ライヴをやってみて、お客さんたちが盛り上がるんじゃなく、ただじっと聴いてくれてた曲もあったことに対して、“うわっ、ヤバイ。ノってくれてない!”って思うことはなかったんだよね。そこは自分が大人になったからなのか分からないけど、それが嫌ではなかったし、怖くなかったというか。昔は、外国のバンドが“日本のお客さんはおとなしく、静かに音楽を聴いてくれるから嬉しい”って言ってたりするのを聞くと、“何言ってんの?それって盛り上がってない証拠なんじゃないの?”って思ってたりしたんだけど、そういう気持ちが分かったというか。盛り上がってる盛り上がってない、っていうところじゃなくなったというか。自分の歌だったりギターだったりを、いかに精度を高く届けるか、というところに頭がいってて、ノリとかはあまり気にしなかったんだよね。
──キャリアを積んできた上でのソロという魅せ方を、今、出来ているからこその感覚なのかもしれないね。
咲人 そうだね。もう少し前だったらそういう感覚になれていなかったかもしれないよね。あと、曲に対しての不安がなかったというのも大きかったのかも。制作段階において、すべての楽曲たちを、自分の求めるクオリティまで限りなく上げたつもりだから、想い通りと言うか、悔いなく出来たと思えているのも大きいと思う。行き当たりばったりじゃなく、ちゃんと目標を定めた作り方が出来ていたからね。ライヴの構成も同じくね。
──目標を定めていたということは、『Ejaculation』は、着手する前から、咲人の中ではっきりと完成が見えていたということ? 何か軸となるコンセプトが予めあったということ?
咲人 曲順うんぬんとか、細かいところではなく、“こういうものにしたい”という大枠はあった感じ。細かい部分はもちろん変わっていったんだけど、なんとなくなイメージはあったからね。NIGHTMAREの場合は、やっぱり1人じゃなくメンバー5人で作っているもので、5人の意見あってのバンドな訳だから、自分が“こうしたい”というところに必ずしも向かえる訳ではないんだけど、今回はソロだから、自分が計画を立てたらそこに向かうだけだったから。
──なるほど。ライヴはそれを理想通りに具現化していく形でもあった訳だからね。
咲人 そう。だから、そこに心配や不安はなかったかな。しいていうなら、歌詞間違わずに歌えるかな?ピッチ外れないかな?っていう技術的な心配くらいだったかな(笑)。万全を期したつもりだったけど、ライヴ後にマニピュレーターの人から“リハーサルの方がクオリティ高かったね。やっぱりちょっと緊張感が出ちゃってたね”って言われて、悔しかったりもしたしね。
──最高の瞬間を見てる内側のスタッフは、ジャッジのレベルも高いだろうからね。演奏面や歌では感じなかったけど、MCではちょっと緊張を感じた節はあったかな。ちょっと噛んでたりもしたし(笑)。
咲人 MCはあんまりカッチリ決め込まない方がいいなと思って、何も喋ることを考えてない状態だったからね(笑)。まぁ、曲さえ良ければMCはどうでもいいからさ。そこまでキメキメにした形のライヴにしようとは思ってなかったから。