インタビュー/東條祥恵
2017年、A9が新章突入を告げるニューシングル「MEMENTO」を2月28日(火)にリリース。その新作を掲げての全国ツアー<IDEAL HORIZON>を開催することも発表になった。
昨年からワンマンでは次々とコンセプチュアルなライブを繰り広げ、L’Arc~en~CielのKen主催のライブイベント<PARTY ZOO~Ken Entwines Naughty stars~>や<VISUAL JAPAN SUMMIT>でのアクトなどで、再び世の中から注目を集めるA9。
綺麗でカッコよくて、曲もキラキラしていて、V系バンド随一の王子様のような印象を抱かせてくれる彼ら。だが、A9を知れば知るほどその王子キャラからは遠ざかっていく。
そのギャップ全てをうめるべく作られた「MEMENTO」について、作詞/作曲者である将(Vo.)と沙我(Ba.)に話を訊いた。
Vo.将
将:事務所を出てリセットして、1から10まで自分たちで作っていくスキームができた。表現できることの幅は確実に広がったんですね。
──最近のA9のライブは、『LIGHT AND DARKNESS』を出した後のツアーでは光と陰をコンセプトにバンド初の2部構成でライブを行ってみたり。また<名前は、未だ無ひ。>と名付けた昨年の12周年を祝うワンマンでは、“原点回帰”をテーマにビジュアルまで原点回帰させ、初期の曲だけでライブを行った。昨年末には<WHITE Christmas Live With A9 CHANNEL Dress Code:WHITE>を開催し、2017年1月からは、それと対をなす<Tour BLACK PERIOD Dress code: BLACK>を行っていて。ずっと企画色の強いライブが続いている印象なんですが。
これまで作った楽曲が約130曲ぐらいありまして。曲調もすごく幅広くて、かなりヘヴィーなものからキラキラしたものまであるんですね。その中で、毎回ベスト盤的なライブをやってしまうと、何を伝えたいのかが見えてこないものになってしまいがちなんですよ。なので、コンセプトを決めて、何を見せたいのかを明確にしてからライブをやろうというのがテーマとしてあったんです。
外からはあまり見えないところで僕たちもいろんなことがあって。事務所を出てリセットはしましたけど、そこからさらに環境が目まぐるしく変わっていって。そのなかで、表現できることの幅は確実に広がったんですね。これまでは決められた予算の枠組みの中で、発注されてやってる音楽の業者みたいな感じだったものが、いまは1から10まで自分たちで作っていくスキームができた。なら、これを使ってもう1回原点をやってみようということで、12周年で原点を確認できたのは本当に良かったんです。そして、この間やった“WHITE”と “BLACK”はそこからの流れで、今度はもう1回幼稚園をやり直してる感覚ですかね。それぐらいの気持ちで色々なプロダクトを作ってますし。
まず原点回帰で初期の曲をやってみて。当時の曲といまは何が違うかが分かったんです。最初のアルバムを作って、次のアルバムを作るってなると最初とは違うものを作ろうとしますよね?どうしても過去の作品が軸になって、そこから広がってるように見えて過去に縛られたものになっていくんですよ。活動を続けていくとそこに陥りがちなんです。でも、初期の曲はそういうものがまったくないんですよ。過去がああだったからこういう曲を作ろうとかがなく作ってるんで、どの曲もまっさらな土地にこれから家を建てるぜ、という曲だったんですね。その感覚をもう1回取り戻して新曲を作ろうと思って作ったのが「MEMENTO」なんです。過去がこうだからというのを1回無くして、またまっさらな土地に街を作り始める。そういう気持ちで曲を作り出したんですよね。そういう意味では、12周年のライブはすごく影響を与えてますね。
──つまり、クリエイティブなところもリセットできた訳ですね、あのライブで。
そうですね。去年の春にやった2部構成のツアーも、あれは僕らがこれまで一番やらなかったことをやったツアーだったんですよ。曲もそう。「PRISMATIC」とかブラック的な要素を取り入れたオシャレな曲って、一番最後まで使ってない色だったんですね。作品を重ね、過去にやっていないことを探してやっていった結果、残ったものがもうあれしかなかった訳です。最後に残った色をあそこで使い果たして、そのあと原点に戻って。そこから生まれたのが「MEMENTO」という流れですね。
Ba.沙我
沙我:先輩たちに言われたんですけど、僕らといえば、「白」「キラキラしたイメージ」って。ただ、激しい音楽もやりたい。自分たちが一番似合う服は知ってるんですよ、でも、同じ服ばかり着てたら飽きちゃうんですよ。
──「MEMENTO」を制作していくなかで行った“WHITE”と”BLACK“のライブ。こちらにはどんなコンセプトがあったんですか?
“WIHTE”はTALK SHOWパートとLIVE SHOWパートがあって、ピースフルな曲を中心に僕らのポップな部分を凝縮した公演をだったんですけど。“BLACK”は対照的に激しい公演で。
僕らといえば、「白」だったり「キラキラしたイメージだ」って<PARTY ZOO>に出たときにいろんな先輩たちに言われたんですけど。その部分を排除したものを凝縮して。プリンにかかってるカラメルソースの部分だけでやる公演ですね。
──いま<PARTY ZOO>のお話が出ましたけど。A9はみなさんから王子系のイメージを持たれるんですね。
みたいです。<PARTY ZOO>でみんなが言ってくるんですよ。「むせ返るぐらい“俺カッコいい”オーラ出せよ」って。「お前らそのルックスで腰低くてどうすんだよ」って(笑)。
「もっとそのカッコいいルックス活かせよ」って。
お前らにしかできない世界観を作り込んでやりきったほうがいいんじゃないかというアドバイスを受けたんですよね。
──王子系に振り切れということですか?
ええ。でも、僕ら、中身がそうじゃないんで(笑)。ライブに来た方々に対して、A9を観た感を圧倒的なものとして残さなければいけない。その一つの方向性として“WHITE”はあるんですけど。でも、僕らを近くで応援してくれている人は、なんで僕らのことを何年も応援できてるかっていったら、“WHITE“なところだけじゃないアクのようなものがあるからだと思うんですね。それが沙我君のいうカラメルソースの部分で。見ると「なんだ、意外とロックなことやってるんだ」「ロックな部分も大事にしてるんだ」というのがわかるのが“BLACK”のツアーで。それをいま若手の元気がいいバンドとやりあったら面白いんじゃないかというので、ONEMAN SHOWと“With GUEST”という形でDEZERT、DIAURA、ペンタゴンを招いてツーマンをやったんです。他のイベントも含め、気になってる後輩たちとはこの1~2月でほぼ一緒に演れたんですよ。
──ちょっと話がそれるんですけど、A9から見て、いまの若手はどうですか?
僕らが出たときって、同期にいいバンドはいても自分らがちょっと頑張れば何とかなっちゃうような相手ばかりだったんですよ。でも、いまの世代のバンドを見ると、システムも確立されているからベースのクオリティーがめっちゃ高いんですよ。レコーディングもMVも表現もバンドが運営していくというシステムもかなり洗練されてて、僕らの世代と比べるとすごいレベルが高いなという印象です。そういうバンドと対バンして、僕らが砕けるなら早く終わったほうがいいでしょという感じだし。逆に、何か残せるならやり続けたほうがいいし。そういう試金石でもありましたね。“BLACK”のツアーは。
俺も、俺らの昔の時代とは違うなと思いますよ。将君がいったみたいに、全体的にクオリティーが高いんですよ。イベントでやるノクブラ(NOCTURNAL BLOODLUST)なんかは、俺は昔から気になってたんですよ。
沙我君は昔から「ノクブラいい」っていってて。前の事務所の社長に「入れたほうがいいんじゃないですか?」って進言してたぐらいなんですよ(笑)。
そうしたら「ちょっと違う」って社長に言われました(笑)。