──「愛の塊」の聴きどころは。演奏面で言うと?
柄須賀曲の構成で言ったら、ラスサビの前の落ちサビっていうところですかね。一瞬ベースとメロディだけになるところがあるんですけど、お客さんにも一緒に歌ってほしいなみたいなイメージで構成を作ったところはありますね。
柄須賀the paddles って歌える曲が多いのに、シンガロングするような曲が意外となくて。ただ、いわゆるシンガロング曲をいきなり書くのはちょっと違うなって思った時に、みんなでこういう感じ(ゆっくり横揺れで)で歌える曲があったらいいなっていうので書いた曲。この間弾き語りで歌ったら、みんな歌ってくれました。ライブハウスでみんなで歌うのって、最近やっと馴染んできた文化やと思うんですよ。コロナ禍で一回、一掃されたじゃないですか。それを経て、あらためてみんなで歌いません?みたいな気分になったんで。
「余白を埋める」は初めてバンドのことを書いた曲
──それとEPの3曲目「余白を埋める」、これも大事な曲じゃないですか。
柄須賀the paddlesはここ1年ぐらいは、恋愛の曲だったりとか生活のことを歌う曲が多かったんですけど、初めて自分の中でバンドのことを書いた曲ですね。そもそも「余白を埋める」っていうタイトルが、the paddlesがコロナ禍以降ずっとやってきたイベントのタイトルで、意味的には、コロナ禍の生活にできた余白を、それぞれ好きなことに使ってるんやったらいいんですけど、SNSとかで消費しちゃってる感じがあって、「それだったらライブ見に来てよ」っていうことで。俺たちはずっとライブハウスでやってるから、俺たちに余白の時間を使ったら?っていうのでつけたタイトルだったんですよ。なんとなくつけたんですけど、いつの間にかお客さんもすごく大事に思ってくれるようになっていて、この間のO-Crestのワンマン(10月4日)もそのタイトルでやったし、そこで初披露しようって言って作ったんですよね、この曲は。
──珍しいですよね。イベントタイトルが先で、曲があと。
柄須賀それはね、サポートの田中(智裕/Dr)さんがきっかけをくれたんですよ。機材車で東京に来る途中、「余白を埋める」っていうタイトルの曲があったらみんな嬉しいんちゃう?って。それですぐ作ったよな。
松嶋早かった。
柄須賀1日2日ぐらいで書いて、スタジオで合わせて、1週間ぐらいで出来た。いい曲ができる時って、1日ぐらいでできちゃうんですよ。「カーネーション」とか「ステレオタイプ」もそう。
松嶋自分たちの体の中に入ってるフォーマットでやれる曲は、パッとできちゃう。
柄須賀わかりやすく大事な曲にしたかったんで、歌詞の中に今までthe paddlesが書いてきた曲のタイトルを、「東館3F」とか「ファンファーレ」とか、“スーツ姿で飛ばすラジコン”って「22」のジャケットのことを入れてみたりとか。あと、友達のバンド名をめっちゃ入れましたね。“荒削り”“トラック15番”“boundary”、“地下室のもぐら”はシャイトープで、“華のない友達”はhananashiで。koboreも“零れ落ちた涙が乾く前に”っていうとこで入れさせてもらったりして。過去に「余白を埋める」に出てくれたバンド中心で、これから先も一緒に走っていくだろうなっていうバンドの名前を入れさせてもらって。勝手にですけど(笑)。事後報告で「入れました」って言って音源送りつけて、「マジで?」って言われたり(笑)。
──でもめっちゃ嬉しいですよそれは。きっと。
柄須賀最後に「青い“ガラガラのライブハウスから来た”」って書いてるところが寝屋川VINTAGEのことで、“いつまでも変わらずフライトしていく”が府中Flight。“ガラガラのライブハウスから来た”っていうのは、地元の後輩のBlue Mashの優斗がMCで「ガラガラのライブハウスから来たんですよ」ってよう言うてるんで。Blue Mashって入れにくい単語やったんですけど、それやったらあいつがよく使ってるフレーズで入れたらいいかなっていうので。the paddlesって、お客さんも含めて仲間のバンドとずっと一緒に走ってきてるからこそ今があるっていうのは強く意識してて、今回歌詞に出てきてるバンドだけじゃなくて、いろんな仲間と一緒に走ってきたからこそバンドが続けれてるんで。そういうアンセム的な曲になればいいなっていうので、厚かましく行かせてもらいました。
──これは全部パッとわかったら、the paddles検定合格でしょう。
松嶋O-Crestのワンマンの時に、この歌詞が載ってるポストカードを配布したんですけど、その時点で気づいてくれてるお客さんが結構いて。さすがやなと。
柄須賀写真撮って、画像にマルつけて「ここがあれで」みたいな考察をみんなしてくれてたんですね。それが一番理想やんな。やっぱりお客さんが気づいてくれるっていうのが一番いいんで。さっき、ここ最近パッと聴いてわかる歌詞を意識してるって言いましたけど、こういう読んでストーリーがわかるものもやっぱり素敵やなって思うんで、CDで買って歌詞カードを見てほしいな。今回は特にそう思います。