03. バカ!バカ!バカ!バカ!
──この曲は既存のcali≠gari曲で言うと「クソバカゴミゲロ」や「37564。」の系統でしょうか。
桜井サウンドのアプローチはそっちですよね。ライヴで「クソバカ」をバーンってやると盛り上がるんですよ、曲のパワーみたいなものがあって。そういうのが一曲だけっていうのはもったいないから、近しいものを作ろうっていう。今回のアルバムの自分の中のテーマのひとつに、ライヴのときに既存の曲と合わせられるような、パーツ的な意味合いの曲を作るっていうのもあるんですよね。これなんかはアンコール用。詞の中身はいつも書いてる死生観なんですけど、とりわけ今年はその意味合いが違っていて。いつかはどうせ死ぬんだからそれまではちゃんと生きよう、待ち人は逃げないのだから、とかそういう歌です。
──確かに、歌詞の根底にあるテーマは最近の楽曲と共通していますね。
桜井いつもとちょっと違うのは、死にたいときに死ねるっていいなあっていう。これから先、そういう日本になればいいなって。「銃夢」って漫画があるんですけど、そのなかに最終喜械(エンドジョイ)っていう全自動自殺マシーンが出てくるんですね。死にたいときにそこに入ると死なせてくれるっていう。色々と思うところはあるけど、死のタイミングを自分で選べるっていうのは素敵なことだなって。スイスに行くと自死を認めてくれるじゃないですか。難病に罹ってしまって自死を選んだ日本人女性のドキュメンタリーとか見ていてもそう思っちゃって。特に去年は「PLAN 75」の話をしたばかりじゃないですか。
──しましたね。
桜井あの映画でもそういうことを感じたから、ダメになったときはさっさと笑って死んじゃいたいなって。楽しかった、って言って待ってる人のとこに行きたい(笑)。別に刹那的な意味で言ってるわけじゃないですよ? どういう結果になるかわからないけどいつかは死ぬから、それまではとにかく楽しみましょうよって。“生きてる”ってことと“生かされてる”ってことは違うと思うし。(「北斗の拳」の)ラオウの「我が人生に一片の悔いなし!」みたいな(笑)?つまりはアレですよ!
04. 乱調
──「乱調」は跳ねたビートがとてもクールです。
石井これはクラウトロックから始まって、後半でわかりやすいヴィジュアルショックみたいになっていっちゃうみたいな、そういうテーマで作った曲ですね。歌詞もめちゃくちゃで、だから「乱調」ってことで(笑)。
──そういうテーマはお二人に伝わっていました?
桜井これっぽっちも伝わってなかったですね。「ここでコーラスを歌ってください」って言われて歌ったのが「ナーイティナーイティナーイン♪」って、何事かと思いましたよ。「ナーイティナーイティナーイン♪」なんて2024年のいま歌わないでしょ? なのに「ここで世紀末キター!」みたいな(笑)。いちばん最初にデモを聴いたときはザ・キュアーっぽいなって思ったんですけどね。
石井ああ、「A Forest」とか?
桜井そう。あと「10:15 Saturday Night」とか?それと、最初はドゥッドゥッドゥッドゥッって単調だったのが、Aメロが終わった瞬間に“ジャーン!ジャカジャーン!”って。「はい、キュアー終了~。違う曲でーす」って感じでした(笑)。
──石井さんの曲ではときどきありますよね。全然違う音楽性をくっ付けてみました、みたいなものが。
石井そうですね。それもcali≠gariをやってなかったらそういうふうにはならないんだろうけど。cali≠gariは(音楽的な背景が)ぜんぜん違う人たちでやってるじゃないですか。そういうバンドでやるっていう頭があるからこういう曲を作っているっていう。
──あと、この曲は歌詞もぶっ飛んでいるといいますか……。
桜井何がすごいって、最後ですよ。「ワンチャン/ネコチャン/オサルサンバ」って、もう何を言ってるんだっていう(笑)。
──尖っていますよね。
石井それは世の中で言うところの「ワンチャン」に対するアンチテーゼなんですけど。
──“可能性がある”という意味のワンチャンですよね?
石井そうそうそう。ワンチャンっていうのはもうネコチャンと何も変わらないよっていう。
桜井(声にならない爆笑)。
石井「ワンチャン」を「ネコチャン」に変えたところで何も変わらないじゃないですか。そういうワンチャンでしょ? いま皆さんが使ってるワンチャンは。
──念のためにお聞きしますが、“One Chance”のワンチャンですよね?
石井そうそう。最初にワンチャンって言い出した人はきっとそのワンチャンだったんですよ。でもいま「ワンチャン」って言ってる子どもたちは、本来の意味で使ってるわけじゃないでしょ? だからもう、そんなのネコチャンでもいいだろうっていう。
桜井じゃあ、オサルサンバは(笑)? お猿さんは3回目ですよね?
石井お猿さんは3回目。
──「混沌の猿」と「アイアイ」に続くcali≠gariのお猿さん曲です。
石井お猿さんっていうのは人間のこと言ってんですけど。
──ああ、そう言われると……もしかして……深い歌詞なんです……?
桜井騙されちゃダメです(笑)。
石井だから「乱調」ってことなんですよ。
桜井乱れすぎでしょ(笑)。「アンゴルモア(ネコチャン)」も出てくるでしょ? ノストラダムスの恐怖の大王のアンゴルモアですよ。もう誰も覚えてないですよ。恐怖の大王も来なかったし、2000年問題もなかったですよ。ホント久々に、「揚げ豆腐」(『10』に収録の「−踏−」の歌詞)以来のヒットがきてますよ(笑)。
──それは私も感じました。活動休止から復活したころの尖った雰囲気が歌詞に感じられるというか。
石井これはそうかもしれない。もうめちゃくちゃなものを書こうという頭で、リミッターを外してバーッて書いたら、こういうものが一気にドバっと出てきて……みたいな。そういう歌詞ですね。
05. 化ヶ楽ッ多
──そして次は、研次郎さんが作曲した「化ヶ楽ッ多」です。
村井これはテレビで「ゴーストバスターズ」を観て、“お化け”をテーマに作った曲ですね。
──ああ、わかりやすいフレーズがありますよね。
桜井「何で?」のとこね。
村井で、お化けがテーマだし、と思って「バケラッタ」ってタイトルを付けて。「オバケのQ太郎」(に登場するO次郎の決まり文句)ですけど、僕、そこに出てくるドロンパが嫌いなんですよ。
──星マークがついてるキャラですね。
村井そうそう、キザなヤツじゃないですか。ちょっと空気が読めない感じとかが小学校のときに苦手だった子に似ていて。それで、その嫌いなところを箇条書きして秀仁君に送ったんです。
──作詞は石井さんなんですよね。
石井タイトルは仮なんだろうけど、もうそのまんまでいいやと思って。歌詞ももらったメモをモチーフに、ブレずにその軸でいこうと思って書いた感じですかね。
──初見だと何のことやらという歌詞ですが、背景を伺うと「わかる!」ってなりますね(笑)。
石井歌詞には一部、フランク・チキンズも入ってるんですよ。「We Are Ninja」ですよ。「煙幕投げてドロン」ですよ。そのまんま入れてますから。
──ああ~、気づかなかったです。
石井あと、シンセのリードのフレーズはシーラ・Eの「The Glamorous Life」。というか、石川秀美の「もっと接近しましょ」とか。「もっと接近しましょ」ってカヴァーでもないのに「The Glamorous Life」とまったく同じだったじゃないですか。「もっと接近しましょ♪」ってところ、イントロにまんまのフレーズが入ってるんですよ。研次郎君の「ゴーストバスターズ」に全然違うものも乗っかって、グチャグチャになったらおもしろいかなって。
後編へ続く「暗い空、雨音」、「ナイナイ!セブンティーン!」、「恣」、「東京アーバン夜光虫」、「月に吼えるまでもなく (17 ver.)」、「沈む夕陽は誰かを照らす」の曲解説とLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演に向けてのインタビューを6月20日(木)に公開予定です。(プレゼント情報も掲載!)お楽しみに♪